あしかのらいぶらりぃ
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執筆者: ディン/投稿日時: 2021/01/02(土) 10:59:26
投稿者コメント:
新年あけましておめでとうございます。
今年ものんびりですが更新していきます。
後皆さんの作品にも感想とか書けたらいいなて思います。
今年もよろしくお願いします。
第八話 ピッチ
「さて……」
バトルウィンドウズを前にして、サファイアは不敵な笑みを浮かべた。 目の前にはバトルウィンドウズの親玉一体。
「親玉がどれほどか、見せてもらおうじゃないの」
そういうとサファイアの掌からは冷凍光線が放たれる。 目の前にいるバトルウィンドウズにそのまま一閃するが、その間に一体の魔法使いのグラフィックが現れた。
魔法使いは杖を前に突き出すと、炎が飛び出してくる。 それはサファイアの放った冷凍光線と真正面から衝突し蒸発した。
「……なるほど、それじゃあこれは――どうだっ」
次にサファイアはウィンドウズの頭、左右、足元とつぎつぎと冷凍光線を発射する。 ウィンドウズも、それに対応するかのように魔法使いを細かく出現させてはサファイアの出した冷凍光線を順番に攻撃して対応してくる。
そして――サファイアもそれを面白がるように冷凍光線を次々と発射する。 さながらそれは意地の張り合いだ。
「サファイア! そんなんじゃ体力の無駄遣いだろ!」
スノウがサファイアのムチャクチャな攻撃に心配して叫ぶが、サファイアは彼の言葉に耳を傾けない。
それどころか、今のサファイアはバトルウィンドウズとの意地の張り合いに執心の様子だった。 スノウも、それに痺れを切らして彼の横に立って参戦をしようとするが――。

「スノウ、ピッチ、中にいろよ」
サファイアの氷のドームが再び生成される。 その中にいつのまにか入っている形になっていたスノウは、ある変化に気付いた。

――マルクは、どこに。

「サファイアがお前の注意を引いてくれてる間に、その魔法使いの攻撃の射程距離と攻撃時間を測る時間は十分稼げたのサ」
マルクの声だ。 ドームの天井は窓のように透明になっていて、バトルウィンドウズのずっと上空に、マルクは翼を広げて浮いていた。
&



  第八話 ピッチ




「この距離ならお前さんの攻撃はもう当たらない――さあ、お陀仏に」
翼からはおびただしいほどの数の矢が出現する。 マルクの狙いはもちろん、バトルウィンドウズの辺り一帯。
「なるのサ! おーっほっほっほ!!」
アローアロー……矢が一斉に洞窟の天井から発射される。 もう至るそこらあたり一面に無差別に突き刺さる矢は、サファイアが作ったドームだけはそれを弾いてくれる。
目の前のバトルウィンドウズは――魔法使いは消えて、鎧をつけた騎士が現れている。
「『あくまのきし』だ! あいつもバトルウィンドウズのデータにあったのか」
スノウもその姿を見て驚く、しかしあくまのきしは目の前にいるサファイア達から離れると、彼らに向けて背を向ける形で走り出す。
「逃げるよ!」
ピッチも慌ててあくまのきしの後ろ姿を見る。 マルクはアローアローをあくまのきしの走る方角に向けると、もう一度発射をしようとするがーー。

「マルク、後ろ!」
「ーーッ!?」
マルクの背後から、炎が飛んでくる。 しかし間一髪のところで、スノウは氷の盾を地上からまっすぐ天井高くまで伸ばして、マルクと炎の間に割り込めた。 氷は解けるが、マルクは無傷。
「あーぶね、助かったのサ」
「そうか、洞窟の入り口にいた、メタナイツを襲ってたバトルウィンドウズが戻ってきたのか」
スノウの言う通り、親玉のバトルウィンドウズとは別の群体がサファイア達がやってきた道からウヨウヨとこちらに近づいてくる。
「なるほど、お前らのその必死さでもう全部答えが出たわけだ」
サファイアはあくまのきしの走っていく壁に向かって、氷の刃を投げつけた。 あくまのきしを遥かに凌ぐスピードで飛んでいく刃は、そのまま壁をーー突き破る。


「お前たちみたいな、おびただしい化け物が画面のような存在だなんて、まるでゲームだ」
「言葉も介さない、こちらと意思疎通もできそうにない。 こうなれば何らかのプログラムが組まされているとしか思えないのサ」
サファイアが、投げた氷刃が突き破った壁の先ーーそこはまるで一つの小部屋だった。
洞窟のようなゴツゴツした岩肌から、人為的な手が施された、真っ白な空間。 そこに真っ黒な巨大な箱が、赤や緑のランプを点滅させていた。
「あれがバトルウィンドウズの本体! あのコンピュータがバトルウィンドウズを操作している!」
「それじゃあバトルウィンドウズが必死に集まったり、あくまのきしがあの壁に向かって走ったのはーー」
「あのブラックボックスに、何かあれば守るプログラムがあったって話だね!」
スノウも、ようやくカラクリを理解したようで笑顔を見せる。 だが、バトルウィンドウズの群れはすでにそのブラックボックスの唯一の入り口となっている横穴を、一斉に並んで防御する。

「ほら見ろ、こんだけ必死になるから弱点ですって教えてるようなもんだ」
「しょせん機械の思考なのサ。 人間ならもう少し頭働かせてハッタリでもかますよ」
サファイアとマルクはあくまのきしの群れの前に立ちはだかる。 スノウもドームから飛び出すと氷の刃を精製して、笑みを浮かべて並んだ。
「よし、それじゃあこれが最後の決戦ってワケだね!」
「ああ、そうだなーー本当に機械ってバカだわ」
サファイアは、戯けて見せた。 少しばかりバトルウィンドウズを小馬鹿にする顔をすると、諸手を挙げて何かの合図をするーースノウは、ずっと目の前の奥のブラックボックスに視線を向けた。

「ヤッホー、僕みたいな小さな鳥を敵と認識しないなんて、バトルウィンドウズさんも結構あまちゃんだよね」
ピッチだ。 既にピッチはブラックボックスの頂点に居座っており、腰を下ろした。
「今から、このブラックボックスぶち壊しまーす…はーい、3、2、1…」
あくまのきしは、ピッチに気づいたか走り出す。 しかしそれは既に遅かった、ピッチの足元からはメリメリと亀裂と大きな荷重がかかったようにくぼみが出来て来る。
「ゼロ」
ブラックボックスの中にピッチはどんどんめり込んでいった! 一秒、二秒! 時間が経つたびにどんどんどんどんピッチの身体はブラックボックスの中にめり込んでいく。
中にあった配線やら基盤はピッチに押しつぶされてバキバキと音を立てていき、ピッチに向かって行ったあくまのきしは、テレビの砂嵐の画面のように掠れていきーー消えて行った。

そして、ピッチの体はようやくブラックボックスの奥まで到達する。 ぶちぶち最後まで配線が切れる音がしたかと思えば、点滅していたブラックボックスは一気に消灯しーー機能を停止する。
そしてそこに残っていたのは、横並びになったサファイアとマルク、そしてスノウの3人だけだった。 ずっと彼らを苦しめていたはずのあくまのきし達はもう夢の中ーー先ほどまでとは打って変わって、静寂が辺りを支配した。
「……えっ、何が起きたの」
スノウはそれだけを言って目の前の光景をただ眺めているだけだった。 ピッチはブラックボックスをよじ登り戻ると、ひとっ飛びしてサファイアの頭の上に乗っかった。
&
「いやぁ、久しぶりにやったから楽しかったよ。 ……配線が絡まって出てくるのに面倒だったけど」
「流石だなピッチ、こう言うときはお前に任せるのが一番だわ」
「ふふーん、まあね」
二人だけの世界に入って、満足げになっているピッチとサファイアにスノウは少し恐る恐る問いかける。
「今の何!?」
「どストレートだな」
「僕の重力魔法さ、10秒間だけ好きに重さを変えるだけのねーー名付けて」
ピッチはサファイアの頭の上に立ち上がって顎に手をかける。 ちょっとばかりカッコつけた格好だ。
「メテオストライク」


サファイアが冷凍光線を放ったのも、マルクが天井から矢を放ち続けたのもーー全てはバトルウィンドウズの本体を探すためのブラフ。
最終的にピッチの攻撃が決定打で、バトルウィンドウズは影も形もなくなっていた。 親玉も、洞窟からここに加勢に来た手下分のバトルウィンドウズも、ピッチのお陰で綺麗さっぱりいなくなっている。

「…なーんだ、結局ボクはみんなを連れてカッコつけてただけだったね」
スノウは少しばかりガクゼンと肩を落として洞窟に座り込む。 サファイアはあくまのきしが立っていた足元にできている、氷の塊を見ていた。

「……結構念には念をってやってくれてんじゃん、スノウさん」
「何か言った? 後はこの穴にあるお宝に僕らは用があるんだからね、これで終わりじゃないよ」
スノウは笑顔で立ち上がり、小走りに走り出す。 マルクも顔が明るくなってスノウについていく。
「やっぱりあるのか!? 四つの穴のお宝、ボクも気になるのサ」
「今回は君たちの大活躍だったから、そっちの取り分6でいいよ〜、残りは白の騎士団から七彩の暴食への情報料でこっちが4ね」
ブラックボックスのあった横穴ーーそこには、確かに見たことも無い宝飾類が散らばっていたーーそう、まるで玩具箱からひっくり返した、オモチャの様に。
「……サファイア、さっきお前がこの壁に向かって氷刃投げたよな」
マルクは、少しばかり憮然とした顔でサファイアの横を見る。 彼は少しばかり冷や汗をかいて、その散らばった財宝を眺めていた。
「……俺のせい……に、なるよな」
「なっちゃったね」
ピッチも少し不満げに、呟いた。 彼らの目の前には、先ほどからお宝部屋に入っていたスノウが肩を落として無事なお宝の選別作業に入っていた。

「……ごめん」
サファイアは、ちょっと申し訳なさそうに呟いた。
そんなサファイアの哀愁ある背中を、氷のドームの中でずっと待っているメタナイツのみんなも、無言で見つめてるだけだった。




 そしてーー。
七彩の暴食、ギルド内部では。
「そういえば、モソさん今年もやるんですか」
ブレイドがクエストボードのチラシを整理しながら、モソに問いかける。 モソはアゴに蓄えたヒゲを撫でながら、ああと答える。
「もちろん、あれはウチと町の交流と活性化のイベントの一環じゃしな。 今年も周りの飯屋の連中も腕が鳴るって言ってたわ」
「なになに!? 何するんですか」
モソの横にいたケケが、目を明るくして問いかける。 ブレイドはにこやかな笑顔で言い放った。

「年に一度、ウチの町の一大イベントーーグルメレースさ」

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