あしかのらいぶらりぃ
はじめにお読み下さいこの小説を修正する最近のコメント・評価キーワード検索
設定メインページに戻るサイトトップに戻る
大 中 小
執筆者: ディン/投稿日時: 2026/08/05(水) 12:48:39
投稿者コメント:
この最終章で一番書きたいシーンを書けました。 場面が目まぐるしく変わっていきますが、次回はスチールオーガンのシーンを集中的に書けたらいいなって思います。
第五十五話 真実
 ププビレッジ。 いつもはキャピィ族の住民達の生活で賑わう村も今は閑散としている。
八百屋やバー、コンビニやエアライドマシンのスタンドと多様な職業を営んでいるキャピィ族達は、毎日ケケ達『七彩の暴食』のメンバーや物珍しい観光客、近海に居住地を構えているスイートスタッフら海の住民達を相手に商売をしているはずだが、まるで寝静まったかの様に静かだった。

そんな異変を……知ってか知らずか。 サファイアの精神に残留しているオレンジとラベンダー。 そしてピッチとブレイドの三人は村の外れにある巨大な瓦礫の山の中に足を踏み入れいていた。
ここは子どもたちの遊び場にもなっている、『昔この村を統治していた王様』のかつての住処のお城だ。 村のみんなはここの壁に映像を映して『シティトライアル』の応援をしていたのは記憶に新しい。
「ブレイド、どうして今更ここに……」
「隠れるならココが一番なのさ。 マスターが言うにはね」
そう言うとブレイドは瓦礫の山をどかす。 するとそこには地下へと続く階段が露出した。 初めて知ったとばかりにピッチは「おお」と声を上げるとブレイドは二人を手招きして誘導する。
「ここを知るのはギルドのメンバーでもウチと旦那とマスター……あとは考古学者のキュリオさんぐらいさね。 ここに隠れておけば、サファイアの身体を狙っていると言う連中にはまず見つからない」
「ブレイドさん。 何から何まで申し訳ない」
階段を最下部まで下り切ると照明が切れている手狭な通路にたどり着く。 瓦礫が行く手を塞ぐように散乱する、もう通路と呼べる代物ではない道ざらぬ道を抜けていくと……そこは地下牢のような空間だった。
「キュリオさん曰く、ここがこの遺跡で辿り着ける最深部だ。 悪いけどここに隠れてもらうよ……ピッチ」
「うん」
ピッチは返事を返すとブレイドから携帯通信機とエアライドマシンを手に取る。 バトルチャリオットと呼ばれる、重量級のマシンだ。
「コイツはハルトマンから譲り受けた、試作機らしいが……なかなか頑丈でスピードも出るらしいよ。 いざと言うときアンタがコイツでサファイアを守ってくれよ」
「分かった。 ブレイドは、どうするの」
「アタシは今から外の様子を見てくる。 いいかい、サファイアのご両親をしっかり守って、アンタ達もピッチの言う事は守ってくれな」
「分かりました。 ブレイドさん、ご武運を祈ります……」
城の地下室からピッチとサファイア(の中に眠るオレンジとラベンダーの精神体)を残してブレイドは廃城の地下から地上へと出てくる。 そこはいつもの穏やかな平和な村とは一転……まるで嵐が来る前の静けさのように喧騒が聞こえてこない。 まるで……。
「こ、コイツは……」
真っ暗な地下室から明るい地上へと出てくる中でブレイドの視力はゆっくりと力を取り戻していく。 その中でずっと抱いていた違和感が正体を露見させていた。 まずは窓があったであろう空間、そこには薄汚れて破れていた緋色のカーテンがいつも隙間風に揺らめいているはずなのに、そのカーテンが不自然なほどに宙にはためいたまま止まっている。 壊れた空調から時々漏れていた汚泥の混じった水溜り。 何度も足を踏み鳴らしても水面はまるで鏡のように硬いままだ。 まるで、時が止まってしまったかのように!!
「まさか、皆!!」
ブレイドは城から慌てて村の外へ飛び出した。 村の住民達は避難の準備をしているはずだった。 ギルドのメンバー達……マルクとドロッチェ以外は外で住民達を安全な場所へ誘導していれば、この静けさはまだ納得できた。 しかしそれ以前にブレイドは最悪のケースを想定していた。
「こんな魔法、聞いたことがない……マスター、無事でいてください!!」
ブレイドがギルドの元へ向かう中で、白い雲は我関せずにと青空を漂っていた。



  七彩の暴食
「なんと言うことじゃ……こうも世界中のギルドが機能不全に陥るとは」
モソはタブレットを手にしながら世界中のニュースを眺めている。 各地のギルドの通信だけでなく、各国の主要機関まで音沙汰がない。 ニュース番組は最初はほとんどのチャンネルでこの異変を知らせていたが、時間が経つにつれ切り替えても電波が途切れたのか真っ暗になっていく……電波が悪いと言うよりは、妨害を受けているかのようだ。
「おい、返事をしろ……この番号も繋がらん」
モソは手当たり次第に友好関係のあるギルドの長に連絡を試みるも、全く通じない。 途方に暮れる中で、窓の外に目を向けた。
「こ、こいつは……」
ギルドの外にいるのはデッシーやネスパーら、村を巡回していたはずのギルドのメンバー達。 しかし彼らは地面の突っ伏した様に、寝息を立てて熟睡していた。頭には紫色のナイトキャップを全員がお揃いの様にかぶっている。 モソは窓を叩いて彼らの反応を試みるが、顔を向けるそぶりもない。
「おい!! 起きんかお前ら!!」
「無駄ですよ。 彼らは外部からの刺激には一切合切応じない」
ギルドの玄関口から、桃色のティンクルがゆっくり歩いて中へ入ってきた。 それはモソもよく知っている、ププビレッジとその近郊のギルドの配達係だ。
「……バタモン、マルクとドロッチェを送ってくれたのか。 しかし今の言葉はどういう事じゃ」
「僕はいつも通り仕事に来ただけ……。 ついでに与太話にも付き合ってください」
そう言うとバタモンは配達袋の中に、ププビレッジの住民が用意した手紙や梱包された箱を次々と放り込む。
「僕は生まれながらあの世界指名手配犯ピンクに瓜二つなので、評議院や国際ギルド連盟に怪しまれてきた……まあ、そのお陰でケケみたいな宝玉のファンにチヤホヤされて悪い気はしなかった」
バタモンは時折大きめの荷物をメジャーや量りで計測しながら、袋の中に入れていく。 中は四次元空間なのか、無茶苦茶な大きさの荷物を次々入れても袋は全く漏れる様子はない。
「この人気は結構世界各地で使えました。 警察や連盟のお偉いさんは別として、みんな僕を伝説のギルドのメンバーの様にチヤホヤしてくれるから、情報収集の役にたつ」
「そう、お前さんはそうやってウチに美味しい依頼内容も斡旋してくれてたな」
モソはコルクボードに貼り付けられた依頼書に目を向けて、バタモンの会話に付け加える。 バタモンは荷物をあらかた詰め終えたのか、一つ溜息を吐くと近くの椅子に腰を据えてモソと正面から相対する。


「はい、お陰でサファイアがココにいる事を突き止めるのも簡単でした。 まさかあんな赤ん坊がいきなり青年になっていたのは驚きでしたが」
「やはり、お前さんは『七彩の宝玉』と……ピンクと繋がっていたのか」
モソのその言葉を聞いたバタモンは、目を伏せて横に流すと赤色の右足の踵を何度か軽く床に叩きつける。 一度、二度、普通の足音とは違うヒールを叩きつける様な音が聞こえると、今度はパキリとへし折れる音が聞こえた。 右足の『何か』を折った後は、左足から同様の音が聞こえた。
「繋がる……? 少し違うな、僕はピンクそのものだ。 僕はずっとサファイアを見守っていたのさ、『七彩の宝玉』のマスター・ピンクはね」
「な……ッ!?」
バタモンの足元から、粉々に砕けたガラス細工の何かが床に散乱する。 それに注目を集められるや否や、モソはすぐにバタモンに目を向ける。 先ほどとは変わり映えのない姿のバタモンそのもの、だがモソは違和感を抱えながら呟いた。
「人格誤認魔法……!? その透明なハイヒールは」
「『四つの穴』に点在するお宝の『ガラスのくつ』だよ。 コイツを履いている限り、周囲の誰もが僕を『ピンク』だとは認識できない。 サファイアすらもね」
バタモン……いや既に『ガラスのくつ』を放棄しているのでピンクは不適な笑みを浮かべながら右手をかざす。 カウボーイハットを被り鞭を振るう姿、そのまま鞭はモソの胴体を厳しく巻き付いた。
「サファイアの身体が、この村に隠されているのは分かってる。 死にたくないなら早いところ吐くんだね」
「……貴様っ、曲がりなりにも同胞を手にかけるのに、心は傷まんのか?」
モソも痛みに耐えながら精一杯にピンクに吐き捨てる。 そんな問いかけにピンクは脳裏に一瞬幼い頃のサファイア、オレンジとラベンダーの顔が浮かび上がるが、眉一つ動かさないまま平然と言い返した。
「僕の心の傷に比べたら、あの三人の命なんて軽いもんさ」
「悪魔め……」
「悪魔? 残念、古代プププ語でピンクは『魔獣』って意味さ」
その瞬間だった。 モソを縛り付ける伸びる鞭はそのど真ん中で一刀両断される。 胴体の苦しみから解放され、息を整えるモソの前に背を向けて、代わりにピンクに立ちはだかるのはブレイドだ。
「バタモン……いや、アンタは指名手配犯のピンクだね、村の連中を解放してもらうよ」
剣をピンクに向けてブレイドは言い放つ。 ピンクは彼の目的成就の為に、モソとブレイドに条件とばかりにフィギュアの台座の様な小さな道具を手にかざして言い放った。

「邪魔者を解除する手段も既に『集めた』。 アンタ達が隠しているサファイアさえ見つければ後はこっちのものさ、さあ身柄を渡してもらおうか……裏切り者が入った器をな!!」


  第五十五話 真実


「複製!! スチールボール!!」
ピンクがそう叫ぶと台座は大きな輝きを放ち、ピンクを真っ黒な鉄球に変貌させる。 そいつはギルド内部の椅子や机を潰しながら、モソとブレイドの目の前に急接近する。
「んらァ!!」
ブレイドは剣で鉄球の勢いを止めるが、すぐに火花が飛び散り刃がこぼれる。 勢いに押されるとすぐに判断するや否や、モソを脇に抱えて横っ飛びをして鉄球との衝突を回避する!!
「ちっ!! コイツは厄介だね」
ブレイドの言う通り、ピンクが変身した鉄球はギルドの壁をお構いなしにぶち破る。 真っ向から衝突すれば大怪我は避けられない。
「やるね、それじゃあコイツはどうかな」
ピンクは余裕とばかりに呟くと台座が再び輝き始める。 次の瞬間ピンクは真っ赤なベレー帽に大きな絵筆を抱えて、飛び出した。 筆を振うと同時に、絵の具は真っ赤な炎となって飛びかかる。
「情熱の炎!!」
「なっ、それはアドレーヌの能力!!」
ブレイドは呆気に取られてもすぐさま剣で炎を断ち切り攻撃を防ぐ。 だが、今ピンクが見せた能力は、エアライドの大会でブレイドも目の当たりにした、アドレーヌの力そのものだ。
「ブレイド、アレじゃ。 ピンクが持つ『金色の丸いコースター』の様な奴……アレが光るとアドレーヌの能力が出てきた」
「ご名答。 僕はコレを『コピーのもとデラックス』と呼んでいる。 僕達の複製の能力を属性問わず自由に切り替える物だ」
「なんだいその何でもありな……いや、複製そのものがふざけたチカラだけどもさ」
ブレイドは呆れる様に呟いてピンクの攻撃を弾き返し続ける。 モソは配達袋を取り出そうとかざしたが、すぐにあることに気がついた。
「あっ……」
「ヘタを打ったねモソさん。 アンタの魔導士としての商売道具はマルクとドロッチェの元にしっかり届けたよ。 つまりアンタはこの闘い戦力外さ」
「マスターの道具を手の届かない場所に持っていくのも、計算の内か」
「いや、アレは嬉しい誤算ってヤツだよ。 複製、ミラー!!」
ピンクが次に使った能力、マルクのそれに瓜二つの二股帽子を被ったと思えば、ピンクの姿は二つに分身する。 そしてそいつは剣を構えてブレイドとモソに同時に襲いかかる!!
「しまった……マスター!!」
ブレイドは片方の分身に手一杯。 攻撃手段のないモソに、頭から覆う様に襲いかかるピンクの顔は、勝ち誇ったものだった!!
「アンタら二人を殺したら、ゆっくりサファイアの所へ行くとするよ」


「ほぅ、ならその前に俺も相手してやろうか?」
ギルドの天井から、ブレイドが聴き慣れた男の声が聞こえてきた。 ピンクが顔をそこに向けると、翡翠色の鎧を着たヒトガタの男が、大剣を薙ぎ払ってピンクの分身を一気に切り裂く!! 分身は煙の様に霧散して、掻き消える。
「ソード!!」
「アンタ、一体どこに行ってたんだ!?」
ブレイドがホッとしたように叫ぶと、ソードはニヤリと笑みを浮かべて入り口を指差す。 そこには大きなタンコブを頭に浮かべながらも笑っている『七彩の暴食』やププビレッジの皆だ!!
「すまん、コイツら叩き起こすのに時間がかかった!!」
ホヘッドやデッシー達は笑顔ながらも少しうんざりとした表情だった。 青あざ混じりの顔からして、それは予想通りの感想であって。
「ソードさん、せめて起こし方ってもんを考えて欲しかった」
「俺たち魔導士はともかく、キャピィ族の皆にもジャーマンスープレックスはやりすぎだわ」
半ば強引な起こし方だったようだ。 ギルドの入り口からも文句混じりのブーイングが起きているが、すぐにソードとブレイドとモソの三人は視線を周りに散らす。
「ピンクはどこに消えた!?」
「あの一瞬だ、外に逃げるにしても時間的に遠くへ行けないはずじゃ」
モソのその言葉を合図に、ギルドの内部をメンバーが散り散りになって捜索する。 カウンター席の裏、テーブルの下、マルクがいつも寝床にしている二階の屋根裏!!
「皆さん!! 我々も外をくまなく探すのです!!」
ププビレッジの唯一の警官、ボルンの合図で住民達も村の大通りや自宅や施設の近辺をくまなく探す。 しかしピンクの姿はどこにも見当たらない!!
「逃げたのか??」
「そんな、アイツはサファイアさんの身柄が欲しいのに、ここまできて逃げるはずが……」
ネスパーの言葉にブレイドはハッと目を窓に向け走り出すと、窓から一気に飛び出した。
「しまった。 睡眠魔法も、分身も……全部このためのブラフか!! ピッチ、今すぐバトルチャリオットを使って城から逃げるんだ!!」
そう、ブレイドは直前のピンクのセリフを覚えていた。 彼は、サファイアを探すとは一言も言っていない。 まるでサファイアの身体がどこにあるか知ってるかのような物言いだった。


 丘の上にある瓦礫の山の地下。 そこはキュリオやブレイド達ごく一部しか知られていない秘密の場所。 部外者には、それこそ思いもしない様な身の隠し場所の、はずだった。
「僕の仮初の肩書きを忘れたわけじゃないよねピッチ。 バタモンはこの一帯の情報屋さ。 古城の地下室ぐらい、ちょっと探索すればすぐに分かるんだよ」
ピンクだ。 彼は隠れていたはずのピッチとサファイアの元へあっという間に辿りついていたのだ。 羽を鋼鉄のような重さにして殴りかかろうとピッチは応対したが、それよりも素早くピンクはピッチの首を締め上げた。
「……ぐっうぐ……」
「ピ、ピッチさん!!」
ピンクがピッチの首を締め上げるのを見せつけられるオレンジとラベンダー。 二人は息子の身体の中からその酷い光景、息子の親友の危機を目の当たりにするとすぐに声を荒げる。
「やめて!! ピンク、あなたの目的はこの身体だけでしょう!!」
「そうだね『ラベンダー』、でもコイツらは僕らの計画を邪魔しすぎた」
冷静な声とは裏腹に目と腕力は本気だ。 ゆっくりと確実にピッチの首を締め上げ、ピンクは確かに命の芽を摘みにきている。
「ハルトマン、アドレーヌの村、リボン……それだけじゃない、コイツらは数え切れないほどの経験を積んでなお、僕達の計画を確実に邪魔立てしてきた。 コイツらは危険だ」
「フレンズハートで洗脳できたとしても、こんな奴らを近くに置くなんておっかないからね。 僕たちの脅威になるなら、その芽は摘み取らなきゃ」
「……へへっ、『七彩の宝玉』も、随分と臆病なギルドなんだね」
締め上げられたままピッチはピンクに向かって毒を吐き捨てる。 そんな挑発に乗るまいとピンクは眉間の皺も微動だにしない。
「そうだ、僕達は……人は臆病だ。 だから絶対安全の世界を作り上げて、君達をその仲間にしてあげるって話なのに……オレンジとラベンダーが邪魔をした」
「たとえ、その計画が成就しても僕やケケ達は絶対ついていかないよ」
その時だった。 瓦礫を拾い上げたサファイアの身体が、ピンクに向かって放り投げる。 目の前に飛んでくる瓦礫を目にして、ピンクは『コピーのもと』を光らせると一気に鋼色の肉体に変貌する。
「複製、メタル……そんな瓦礫で僕の身体に傷はつかないよ」
「ええ、構わないさ。 狙いはそこじゃないからね」
ピンクの体に弾かれて飛び散った瓦礫の破片、砂塵。 それはピンクの目に飛び込んだ。 目眩しの一撃にピンクは思わず怯み、ピッチを掴んでいた手の力が緩む。
「ナイス!! オレンジ、ラベンダー」
「クソッ!!」
ピッチはすぐさま低空飛行でピンクから距離を取り、それにすれ違い様にサファイアの身体がピンクの背後に回り込む。 尖った破片を片手に掴み、ピンクの首元に突きつける。
「これ以上村の人達に……サファイアの友達に危害を加えるな」
「それで勝ったつもりかい? オレンジ……一つだけ言おう、僕をここで殺したとしても、レッドやスノウ達がこの村を包囲しつつある。 合図一つで十数のギルドの連合が君を確保しにくるよ」
「……なんだって!?」
ピッチは城の地下室から外へと飛び出した。 ププビレッジから村の外へ駆り出す草原に舗装された道、海には確かにギルドの群衆……そして空からは彼も見慣れた大きな戦艦が。
「あれは……ハルバード!! 『メタナイツ』も洗脳したのか!!」
「メタナイト……いや、ネイビーは元々『七彩の宝玉』の同志さ。 彼のギルドの仲間にもフレンズハートの力が効いてるんじゃないかな」



 戦艦ハルバード艦内、そこには確かに目が虚になったバル艦長や、メイスナイトらが操舵をしていた。 船首の窓からププビレッジを見下ろすように、仮面を外した群青のティンクルは黄色く光る瞳を地上に仕向けて、それ以上は何も動かない。
「我らがリーダーの指示が来るまで待機。 サファイアの身柄を確保を最優先だ!! そして……」

「マルク、ドロッチェ。 この二人が帰ってきて助太刀が出来ないように念の為ププビレッジ周辺を完全包囲!! 蟻一匹中に入れるな」
虹の島で聞いた、メタナイトの声色。 冷静ながらも優しさのある声は形をひそめる。 ピッチは『メタナイツ』すらも、ピンクの支配下にある事を理解した。
「チクショウ、サファイアどころか僕達を村から一歩も出さないつもりか!!」
「あっちに助太刀に行かれても、帰ってこられても困るからね。 さてシトラス、そっちの調子はどうだい?」
『けいたいつうしんき』でピンクはサンドーラに無線を飛ばす。 ほぼタイムラグなしで、男の声が雑音混じりに帰ってきた。
『ああ、ピンク……そっちも調子良さげだな。 こっちは』



「もうすぐ片が着く頃だ」
スチールオーガンの巨大なクレーターのある広場、埃汚れひとつないシトラスとは対照的にマルク、ドロッチェ、ケケとバヘッドの四人はボロボロだ。 彼らの攻撃はほぼシトラスに赤子の手をひねるようにかわされ、手痛い反撃を受け続けていた。
「くっそ……四対一だぞ、普通こんな一方的な展開になるかよ」
バヘッドは悔しそうに苦虫を噛み潰す表情だ。 シトラスはゆっくり足を進めると、うずくまっているケケの元へ足を止めると、彼女の腹を思い切り蹴り飛ばした。
「ぐふっ!!」
「お前あの女と友達なんだってな。 じゃあアイツにとどめ刺してもらえたら本望だろ」
ケケは身体を宙に浮かせてシャボン玉の中にいるアドレーヌの元へ転がっていく。 虚な瞳のアドレーヌは、シャボン玉の内側から逃げようと叩き続けていたが、すぐ目の前に落ちてきたケケに視線を落とす。
「アドレーヌ……っ」
ケケの言葉に耳を傾けず、アドレーヌは絵筆を振り翳してケケに叩きつけようとする。 すぐさまドロッチェの杖の冷凍光線が、絵筆の先をへし折ると、ケケは力を振り絞って立ち上がり、アドレーヌの襟袖を掴む。
「コレで……良いわけ!? コレがあなたの望んだ未来なの!? 人を好き勝手洗脳して、洗脳されて……何が『人類の選抜』よ、アンタ良いように利用されてるだけよ、賢いアドレーヌならどこかで気づいているでしょ!!」
ケケの精一杯の叫び声に反応してか、アドレーヌの瞳から一筋の涙が溢れた。 それを見たマルク達は確信する、ケケの言葉は確実にアドレーヌに届いていると。
「洗脳、解ける鍵があるはずなのサ」
「ああ、だが一体どうすれば」

ケケは右手を大きく振りかざして思い切りアドレーヌの左頬に向かってフルスイング!! 渇いた音が響くとバヘッドは思わず目を瞑って怯んだ。
「ひぃっ、ケケちゃん流石にやりすぎ」
「目ぇ覚めた!? コレがダメなら頭に電気ショックでもする!? いやクラッカーで脳天ぶち抜いた方が良いかな!! バヘッドさん緑コンテナ見つけてきてくださいよ!!」
ケケの喧騒に聞き飽きたのか、シトラスは懐から腕輪を取り出した。 それはサファイアの魂を、アドレーヌ達を洗脳するときに使った『たましいのうでわ』だった。 マルクはその一瞬を見逃さない。
「鬱陶しいな、あの女も先に洗脳して黙らせるか」
シトラスが腕輪をはめて腕を突き出した瞬間、ドロッチェが声を張り上げた。 ケケに、逃げろと伝える為に。
「ケケ!! シトラスが狙ってるぞ!!」
「ケケちゃん!!」
バヘッドが頭を抱えて目の前の光景に目を逸らそうとした途端に、シトラスとケケの間を割り込むように黒い影が飛び出した。 そいつは数多の矢を地面を這うように発射させると、シトラスは一気に後ろ跳びして距離を取る。
「……マルクさん!!」
「全く、お前はいつまでも甘ちゃんで嫌になっちゃうのサ。 ドロッチェ、バヘッド!!」
背中を向けるマルクの言葉に、呼びかけられた二人はオウと返事をして立ち上がる。 ケケは、切れた口の中から溢れた血を手の甲で拭ってマルクの後ろ姿を見つめていた。
「マルクさん……その姿」
マルクの姿は、普段とはまた違う異形だった。 明るい赤と青がトレードマークの二股帽子の先の白いポンポンは、弾けたような形。 色もどす黒さが混じる濃い色になっている。
問題はその顔だった。 大きな目と、牙の生えたその大きな口は、見る者を怯ませる恐ろしいものだった。 ケケやドロッチェと違い、ギルドにマルクと長い間一緒にいるはずのバヘッドですら、その姿を見るのは初めてだった。
「アレが……マルク、なのか?」

マルクは、彼自身はこの変身を『ソウル』と名付けていた。 あまりにも醜い姿になるので、サファイアやピッチぐらいにしか教えていない、その変身。
「ああ……とうとうやっちゃったよ。 嫌いなんだけどネ、この変身」
マルク自身もこの変身はできれば避けておきたい最終手段だった。 仕事で助けたはずの子どもにも、依頼主達にも恐れられていたその姿を、顔を、封印したはずの姿をーーケケは。

横顔を覗かせて、すぐ後ろのケケと視線を合わせたマルク。 その瞳に映っていた友人の顔は、恐怖ではない、仕事の時も、休みの時も、エアライドの大会で見せていたときのような静かで、穏やかな笑顔だった。


  ––ああ、そうだ。 ケケ、君は。

あの日の記憶を、マルクは思い出していた。 初めてケケと仕事を組んだあの日のケケは、マルクの醜悪な顔をしての攻撃を見て、笑っていた。


「カッコいいじゃないですか」
「怖いもの知らずめ」



––そういう奴だったのサ。
口角をあげて、興奮を抑え切れないといった笑顔のケケに呆れる様に、マルクは言い返した。二人に並ぶ様に、ドロッチェとバヘッドは立ち上がっていた。 四対一、一方的に押されていた絶望的状況だったが、今となっては何故か勝てる気がすると、ケケは興奮で手が震えていた。
「どんな屈強な奴でも、生身では電圧には耐えられない。 俺とバヘッドがシトラスの動きを止める」
「その後は頼むぜ、マルク、ケケちゃん!!」
覚悟を決めたドロッチェとバヘッドの言葉に、マルクとケケは首を縦に振った。 ケケはマルクの背中に飛び乗ると、三方向に飛び散って再び彼らはシトラスと距離を詰めて走り出した!!

この作品についてのコメント/評価 (0)
 前の話へ  次の話へ 
(c) 2010, CGI Script by Karakara