あしかのらいぶらりぃ
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執筆者: ディン/投稿日時: 2026/02/02(月) 00:57:47
投稿者コメント:
今回から最終章です。 残り十数話ほど、いつまでかかるか分かりませんがお付き合いくださいませ。
第五十一話 そして全てが始まった
「まさか、この島にあんな物が埋まってるなんて……」
大会が半ば強制的に終了したシティトライアル島では、一般の観客達は無理やり帰路につかされていたが、『七彩の暴食』のメンバー達は残っていた。 彼らにとっては仲間であるサファイアが狙われたのだ、他人事では無い。
彼らに囲まれる様に、ウォーキーは腰を下ろして項垂れていた。 決して彼を責めるつもりはない。 ただケケ達は事実を知りたかった。
「レッド選手が掘り起こした……デカい豆電球。 ありゃ一体何ですか?」
「お前さんも、言い伝えぐらいは知っておるじゃろ。 ある青年が莫大な財宝を地上に持ち帰ったという『伝説』」
「ええ、しかしあれは700年の間、何も手がかりもないただの昔話のはず」
「あの電球が、莫大な財宝の一部なんだよ」
ウォーキーとモソの会話に割る様にソードが重い口を開いた。 連盟から招聘を受けたソードを含む精鋭部隊、敵を取り逃がしたとなれば恥の上塗りだ。 彼らは上層部に指示を仰ぐ前に『七彩の宝玉』にリベンジだと息巻いている。
「なんと……。 だからレッド達はこの大会に参加して、上は彼らを捕えるため今まで野放しにしていた」
「まぁ、全部裏目に出たわけだが。 奴らには逃げられ、パーツも奪われた」
その会話に、納得できないのは誰よりも『七彩の暴食』だ。 さっきから黙って聞いていたマルク達よりまっさきにケケが立ち上がり、悲しそうな目で声を荒げた。

「待ってくださいソードさん、昔サファイアから聞いたんです。 『七彩の宝玉』はノヴァを手に入れるクエストを受けて、失敗して解散したって……おかしいですよ!! 彼らが『伝説』を諦めないならまだしも、サファイアを狙う理由がない!!」
「それは……確かにそうだが」
ケケの言葉はもっともだ。 パーツを集めるだけなら『電球』を奪えばそれで終わりのはず。 そこから更にサファイアに手を出したのは、仲間であるケケ達にとっては納得し難い。
「何か……ワケがあるんだよナ? なぁ、サファイアの中にいるっていう……」
「オレンジとラベンダーだっけ」
マルクとピッチはサファイアの瞳の奥に潜む『存在』に向かって語りかけていた。 二人から距離を置く様に仁王立ちしているドロッチェはハットを深く被って彼らの思いを代弁した。
「この場にいるほとんどはサファイアとは付き合いが長いんだ……ちょっとは教えてもらう権利ってのがあるだろ、なあモソ」
「なんじゃワシにも振るのか。 まあ構わんが」
モソは伺う様にサファイアの瞳を覗き込む。 橙色と紫に光るサファイアの瞳の奥に潜む主人達は、静かに息子の首を縦に振って口を開いた。
『ドロッチェさんのおっしゃる通り、皆さんには全てを知る権利がある。 あれは今から七年前。 僕たち三人は命からがらププビレッジに逃げ果せたのです』
「あの日は月明かりも無い薄暗い夜じゃった。 皆ずいぶん驚いたもんじゃよ……ウィスピーの森を、小さな子どもが一人で彷徨ってたんじゃ」
モソはその日を懐かしむかの様に、目を細めた。 いつの間にかモソとオレンジとラベンダーの昔話に、周りにいる誰もが口を挟まずただ黙って耳を傾けていた。

ーーあの夜、村の入り口付近で小さな子どもが手ぶらで彷徨いていた。 いくらププビレッジが平和とは言え夜中に子ども一人がうろつくのは危険じゃ。 すぐに村の住民がサファイアを保護して村に連れてきた。
「君、名前は? 親はどこにいるんだ」
誰かがそう話しかけた途端に、サファイアは唇を震わせながら自分の名前を答えたよ。
「サファイア……」
奴は何かにずいぶん怯えていた様じゃった。 ただ事では無いとワシらはすぐに彼をギルドに匿った。


 第五十一話 そして全てが始まった



 七年前。 ポップスターのとある村。
「ムッキー!! せっかくボクが一番だと思ったのになんで赤君が先についていたのさ!?」
「うっせーな白玉、お前が道草食って女と駄弁ってたのが悪い」
村のど真ん中で白と赤の色をした二体のティンクルが叫びあっている。 そんな二人の様子を見て村のティンクル達は「また始まった」とばかりに苦笑いだ。
「なんだいなんだい難題!!(誤字) 赤君はウチの中で人気は下から数えた方が早いクセに」
「この間のお宝の総額はお前いくらだったっけ」
「ふふーん!! 聞いて驚くな3000万デデンだ、参ったと言いたまえ」
「俺、3200万。 やーりぃ勝ちぃ〜」
両手を頭の上で叩いて戯ける男と、対照的に彼を『赤君』呼びした白玉は膨れっ面だ。 そんな二人を嗜める様に、紫色と薄緑のティンクル二人が背後から拳を脳天に叩きつける。
「うるさいよ二人とも」
「ちょっとは落ち着け」
二人の手は岩の様に硬化しており、まるで風船の様に白玉と赤玉の脳天からたんこぶが出てくる。 それを短い手で触れながら、涙目になって赤玉の男は叫んだ。
「シトラス、グレープ!! 俺は悪くねーだろ、先に突っかかってきたのはスノウだ」
「バカに応対するお前はアホだレッド」
「みど君、今ボクのことバカって言った!? イケメンランキング三年連続一位(スノウ調べ)のボクに向かって!?」
「はーい、スノウは少しおとなしくなろうね〜」
そういうとグレープはスノウの首元に細い弾頭ミサイルを突きつける。 喉をゆっくり鳴らすスノウに、囁く様にグレープは呟いた。
「あの世とこの世の美女、どっちが可愛いか比べたいっていうなら騒いで良いけど〜?」
「やだなーぶどう君。 ボクを待っているかわい子ちゃんはこの世にたくさんいるからまだ死ねないよ〜」
スノウは上擦った声で空元気に叫ぶ。 ようやく二人が収まったとシトラスは溜息を吐いて、グレープは背中を押してある大きな酒場の中へと誘導する。
「はいはい、報告あるでしょ、ピンクが待っているよ」
「お、おう」
四人は村の中心部にある大きなレンガで組み立てられた建築物に入っていく。 そこが彼らが所属するギルドーー『七彩の宝玉』の本拠地だ。
「スノウおかえりー」
「そこでレッドとやり合ってたな〜また喧嘩か?」
外の様子はもう中にいる彼らにも知り渡っている。 スノウとレッドは顔を真っ赤にしながら、噂の出どころを見渡した。
「……グレープ? お前か」
「いや、毎度の事だけど情報は鮮度が大事だし」
「そんな情報いらないよー!! もっとかっこいい噂を流してよ〜!!」
涙目になりながらスノウはカウンターに座る薄紫と黒いティンクルの元に駆け寄る。 薄紫のティンクルの背中には、おんぶ紐に背負われる群青の小さなティンクルがいた。
「ラベンダーちゃん、カーボンちゃん!! ぶどう君が酷いんだよ〜」
「人妻に泣きつくなよ気味が悪い」
レッドのツッコミも冴える、スノウは鼻水垂らしてまで女性二人に泣きつく様は不様としか言いようがない。 それに追い打ちをかける様に、カーボンと呼ばれた女性はスノウの手を取って答えた。
「だ、大丈夫ですよ!! スノウさんがおかしいのは周知の事実ですし、むしろそれが面白くて良いというか!!」
「カーボン、それフォローになってないよ」
「キャハハ」
ラベンダーが背負っておる子どもが大笑いするのを、スノウは顔を真っ赤にして頭を掻いて恥ずかしがっていると酒場のど真ん中に桃色のティンクルが一人柏手を打って辺りに注目を集めた。

「ちょっと良いかな皆」
「桃君」「ピンク」
皆が各々彼の名前を呼んで見つめる。 ピンクと呼ばれた青年は、静かになるのを見計らって一人演説を始める。
「今日集まってもらったのは他でもない。 ご先祖様が四つの穴の中で見たと言う『最も美しいお宝』の場所が分かったんだ」
「ほ、本当かい桃君!? あの『タライとホース』と『ささやかなもの』が!?」
「バカ白玉、『トライフォース』と『さざなみのふえ』だろ」
スノウのボケを、横にいたレッドが丁寧に拾うと周りはドッと大きな笑い声に包まれる。 その空間を遮る様に、シトラスはピンクに手を挙げて質問をした。
「待てピンク。 大体のエリアは、俺たちも手分けして探し回ったはずだぞ」
「ウン、僕もすっかり見落としていたんだ。 巨塔の地下深くに、隠し部屋があるだなんてね」
ピンクはそう言うと、プロジェクターにある地図を映し出す。 それは『七彩の宝玉』のメンバーにとっては何度も地図と睨めっこしながらあの探索した四つの穴の一空間だった。
「ここ、この地下へと降りていくエリア……妙な空間があると思わないかい」
「あ……ま、まさか桃君!! そこに」
「可能性は十分にあると、信頼できる情報筋だよ」
ピンクはしてやったりと満面の笑みだ。 わっと歓声が沸く中で、グレープだけは悔しそうにテーブルに拳を叩きつけて顔を伏せる。
「そ、そんな……僕が調査しても分からなかった情報を、ど、どこの誰が!?」
「ぶどう君すっごく動揺してる」
「国一番の情報屋って自負してたからな。 そりゃ悔しいだろうよ」
スノウとレッドが憐れむ様にグレープを眺め、カーボンがまた宥めている。 グレープを冷やかす様な声と、ピンクの話の続きはまだかとギャラリーは色めきだっていた。
「情報提供者は……チャオだよ」
「チャオちゃん!? って事はつまり……『幽遊の鬼ヶ島』が教えてくれたの!?」


『幽遊の鬼ヶ島』。 当時のポップスターでは『七彩の宝玉』に並ぶ名高いギルドだ。
二つのギルドはライバルとして時には協力しあい、四つの穴を競い合って探索する関係だった。
「ピンク……本当にその情報大丈夫か?」
「『幽遊の鬼ヶ島』って、最近では犯罪行為まがいもやってるって話が……」
ただ、その関係も700年の歴史の中でゆっくりと移り変わっていくもの。 代を経るごとに『幽遊の鬼ヶ島』は単なるお宝の収集以外にも手を出す事になる。
その中に、『国際ギルド連盟』が禁止している『不当な取引』があった。 ざっくり言うと臓器密売や麻薬の取引だ。
「グレープ、最近の奴らの動きは?」
「今の所、怪しい動きはないけど……それでも『幽遊の鬼ヶ島』の本拠地は相変わらず派手な都会だよ」
最近は世界一でかいカジノがオープンしたんだって、とグレープは付け加える。 その場にいる皆が相手に警戒を露わにする中、ピンクは自信満々に付け加える。
「問題は無い。 これはギルド同士が手を組んで仕事をする訳ではなく、プライベートの仕事として持ちかけている。 向こうのお偉いさんは来ないはずだ」
向こうもわざわざ押しかけて戦争をする理由はないからね。 とピンクは最後に熱弁した。 その彼の自信満々の言葉に、スノウ達は大人しくなるしかない。
ポツポツとメンバーは「やるか」と膝を叩いてピンクの持ち掛けた仕事に腰を上げてきていた。 その中でラベンダーは不安な表情で、ギルドを飛び出した。 その最中、外から帰ってくる様にオレンジ色のティンクルと鉢合わせた。
「お、オレンジ!!」
「ラベンダー、どうしたんだサファイアを抱えて……走り出したら二人とも危ないだろ」
オレンジと呼ばれた男は、ラベンダーの肩を抱えたまま彼女を諭す。 彼女は不安な顔で、今回の『共同作戦』の事を語った時、オレンジは神妙な面持ちで顔を背ける。
「そうか、ピンクが『幽遊の鬼ヶ島』の女の子と……」
「いくら信頼できる相手と言っても、相手は私達をライバル視してるのよ。 ひょっとしたら、戦争になったら……もしもサファイアに何かあったら」
ラベンダーの心配事は何よりサファイアの身だった。 争いになれば、このギルドにいる全員が戦いに駆り出されるに違いない。 そしてその標的は幼いサファイアにも向く可能性はゼロではない。
「わかった、落ち着いてラベンダー。 ピンクとその子の信頼をまずは信じてあげるんだ……そして僕もどうにかするよ」
「ど、どうにかって?」
ラベンダーの質問に、オレンジはバツが悪そうな顔で見つめる。 彼は静かに口を開いて優しい声でラベンダーを安心させようと必死だ。
「……僕も『幽遊の鬼ヶ島』のメンバーと仕事をした事がある。 その人に確認をしてもらうよ、ウチとあっちが戦争する様な事がないか……それに、心配ならサファイアの見識を広める為と言ってその日は僕達だけで仕事に行こう。 大丈夫、サファイアの為だっていえばピンクも理解してくれるさ!!」




 ピンク達の『七彩の宝玉』の所在する村がある場所から海を大きく渡った先にある大陸。 その海岸にまず見えるのはネオンが昼夜問わずに輝きを放つ大都会。 『幽遊の鬼ヶ島』のある街リポジトリムリズムは今日もド派手に賑わっていた。
移動手段はエアライドマシンだけではなく四輪自動車や飛行機も街を支配する。 金銀様々な装飾を着飾った大人達が笑いながらスクランブル交差点を練り歩き、ビルの壁に埋め込まれた巨大なテレビジョンからはエアライドレースの中継が映されている。

そんな都会の中心地。 天まで高く貫こうと巨大な一本の高層ビルは、一面黄金や宝飾品で飾られた豪華絢爛。 そこが『幽遊の鬼ヶ島』の本拠地だ。
鬼ヶ島とは裏腹に孤立どころかデカいクラブの様に街のど真ん中にドンと居座るビルの中に入ると、ビリヤード、パチンコ台、ポーカーのカウンターやダーツ場。 もはやギルドの酒場ではなく一種のアミューズメントパーク。
「金は、チカラだ。 世界中の財宝が我が元に集まるほどギルドは潤い、街の名声も高まるネ」
そんなビル内、人々が賑わう遊技場の奥に黄金の玉座に腰掛けながらワインを飲む中華料理人の風貌をした一つ目のヒトガタがいた。 彼こそが、『幽遊の鬼ヶ島』のマスターであるモウ・タクサン。 玉座を囲む様に彼の背後には踊り子や屈強な剣士達が立っている。
「ワタシ達の儲けのおかげで、この国の王も世界の会議の発言権がデカくなる。 ただ……世界中のヤツらが我々の意見をなかなか聞かないのはどう言うコトネ」
タクサンの言葉は、不満ごとの様に聞こえてくる。 踊り子や剣士達が困り果てて顔を見合わせていると、巨大な中華帽に丸々身を包んでいる男が彼の横にやってくる。
「タクサン様、海の向こうは世間知らずな国が多いのです。 その連中は我らを差し置いて、あるギルドを標榜していると聞きます」
「ああ……『七彩の宝玉』ダナ。 世界一のギルドとかぬかしている」
不服そうに舌を打ってタクサンは踊り子が差し出した皿の盛り山の様なフルーツを片手で掴み頬張った。
「不快だ!! 何が四つの穴を制覇した青年が作ったギルドダ!! ただ運が良かったダケで、神輿に担ぐ世界の気がしれん!!」
「我らこそが最強!! 歯向かう者は全て駆逐してきた、金も、宝も、この国の土地が豊かなのも全て我々のおかげだ!!」
そのギルドの外にまで響くような演説に、ビルの中にいるギルドのメンバーや客達は大いに盛り上がる。
「タクサン様ー!!」
「俺達に世界制覇の夢を見せてくれる、最強の魔導士!!」
ギルドが馬鹿騒ぎで盛り上がる中、裏口から真っ赤な中華服に身を纏った女の子のヒトガタがコッソリと出て行った。
「もう、マスターもキョウ・シィさんも過激なんだから……もしもし、ピンク?」
『けいたいつうしんき』を取り出して、路地裏に隠れるように彼女は電話の向こうの主人に声をかける。
「ごめんね、ピンク……いつも電話出るの遅れちゃって、私も他の皆もマスター達に表立ってあなたと仲良しだって言えないから」
「ははっ大丈夫だよチャオ。 君達があの物騒なマスターみたいな過激な人じゃないってのはここにいる皆が知っている」
『七彩の宝玉』の屋上の展望台に、ピンクは一人笑って電話の向こうに安心させる。 コレはギルド同士の同盟ではないためお互いに一人になるタイミングでないと連絡はできない。 ピンクとチャオも暗黙の了解として連絡は不定期だった。
「それにしても、そっちのマスターに怪しまれない? 僕達と仕事なんて知られたら」
「ふふっ、私が『半端者』だなんてもう皆知ってる事だもの。 平気よ」


『半端者』。 これはかつて虹の島でチュチュが呼ばれていたように、ティンクルやヒトガタ、アニマの種族から少し離れた者を指す言葉。
チャオは、ギルドやピンク達信頼できる者にも自身の身分を知らせている。 彼女は−−。
「私はどこからきたのかも分からない。 物心がついた頃にはアニマの優しい人達に育ててもらっていた。 たったそれだけで、ヒトガタと匂いが違うからって除け者にされていたけど、ピンクの様な人達と出会えて世界を知れたわ」
「プププランドの様な国を渡り歩けるなんて、こんな仕事『半端者』のリスクを被ってでもお釣りが来るわ」


チャオはいつの間にか満点の星空が見える夜空を裏路地の木箱に腰掛けて見上げている。
「この街の人は話してみたら案外いい人達よ。 きっとマスターやキョウ・シィさん達も『七彩の宝玉』の事を分かってくれる」
「うん、僕も同じ考えだ。 『七彩の宝玉』はティンクルしか入れない規則、いつからあるか知らない。 でも外の世界は姿形が全てじゃない、チャオと出会えてそれが間違いじゃないって再認識できた」
「ふふっ、それじゃあ今度の仕事の打ち合わせなんだけど……」
チャオとピンクの打ち合わせは、『相互理解を深めるため』の仕事だと事前にすり合わせていた。 チャオは自分のギルドが競争や争いばかりに目がとらわれている事に不安を感じていた。 彼女が仲良くしているピンクら『七彩の宝玉』も、古くからあるしきたりに疑問を感じている者やそうでない者の壁の隔たりがあった。

「『七彩の宝玉』と『幽遊の鬼ヶ島』、お互いのギルドのあり方に疑問を感じている人がいるならば」
「私達で手を取り合って、種族の壁なんてくだらないって証明すれば良い!! ピンク、今度のお仕事楽しみにしているわ」
ピンクとチャオ、二つのギルドの異端者は一つの目的の為に手を取り合った。

 ピンクは『ティンクルしか入れない』と言う『七彩の宝玉』のしきたりを、チャオ達との仕事をキッカケに緩和させたい。

 チャオは『世界最強』に囚われて強さばかりを追い求めるギルドに、友好を今一度思い出してもらいたい。


 目的は違う様で似通っていた。 友好と親愛。 二人はこの計画が成功すれば、有意義になると信じて疑わなかった。
そして、数ヶ月後。 プププランドとリポジトリムリズムのちょうど中間にあるとある海域の島。
「情報によれば、巨塔の奥へ続く穴の伝説がこの島にあるらしいんだよ」
「ぶどう君、それチャオちゃんからの受け売りだろ」
スノウの容赦ないツッコミにグレープは悔しそうにノートを握りつぶして白い歯を見せる。
「それにしても、オレンジとラベンダーは今日も別行動か。 大丈夫かね。 良い結果は持ってきてくれるけど、大所帯の仕事もパスされたらウチの品格ってのが」
「居ない人の事を言っても仕方ないよ、レッド。 二人には二人の育成方針があるんだよ」
『七彩の宝玉』でピンクが選抜したメンバーが今回の仕事に参加していた。 ごく一部は先約のあった仕事や都合により不参加だったが、大所帯ではなく十数人ほどに絞った理由とは。

「言ったでしょ。 これはプライベートの仕事なんだ。 チャオが居るとはいえ彼女以外は初対面。 そんな所に何十人もなだれ込んできたらどう思う?」
「そりゃ……罠か何かと疑うよな」
「チャオちゃん達を人質にして喧嘩を売る気かって疑われても仕方ないね」
レッドとスノウは考えうる最悪の展開を想像していた。
「おっと、連絡だ」
ピンクはそう言うと『けいたいつうしんき』を取り出して画面を確認した。 連絡相手はチャオだった。
「チャオちゃんから? 何だって?」
「えっと、都合によって穴に先に向かってるって。 僕達も彼女に続こう」
ピンクはチャオからの連絡を何の疑いもなく伝達した。 確かに周りには彼ら以外人の気配はない。 空や海からも誰かがやってくる様子も見当たらない。
「待ち合わせしてたのに、先に向かってるだぁ?? 怪しすぎだろそれ」
シトラスは照りつける太陽光を手で遮りながら、先陣切って歩いているピンクに着いていく。
「ダメだよみど君!! チャオちゃんのご好意がないと今回のお宝探しは無理だったんだよ!! 彼女らが分け前を多少先取りする権利はあるはずさ」
「はは……スノウが言う事も一理あるね。 気持ちが先走ってお宝探しに行く気持ちは僕も分かるからね、合流したらちゃんと取り分はチャオと擦り合わせよう」
先陣を切っていたグレープやアイボリーら調査班はある場所で足をとめた。 後ろをついてきていたピンク達も彼らに続く様に足を止めると、目の前には真っ暗な穴が深く続いているではないか。
「ここから先が『巨塔』への入り口だ」
「久しぶりだな、こんな大冒険も」
レッドが掌に炎を発火させて両手を叩く。 皆各々の武器と特技の調子を確認してから、ピンクの合図を機に一斉に飛び降りた。
「行こう、巨塔のもう一つの空間に!!」




 そして、ピンク達が飛び込んだ『巨塔』の地下深く。 今回の『七彩の宝玉』と『幽遊の鬼ヶ島』の共同作戦の目的地。
そこには切り刻まれて血まみれになった大小様々な種族が顔を伏せて倒れていた。 中にはまだ幼い子供の姿も見える。
そんな凄惨な場所に中華料理人風の男と中華帽に身を包んだ男。 チャオの所属する『幽遊の鬼ヶ島』のマスターと側近であるモウ・タクサンとキョンシィだ。
「全く、裏でこそこそ何をやっているかと思えば……『七彩の宝玉』と共同作戦だと? チャオ、私の可愛い部下どもを唆して、よくもやってくれたな」
タクサンの視線の先には血まみれのまま壁にもたれかかっているチャオ、彼女は既に満身創痍で血まみれの顔を目の前のマスターに向けている。
「何故……ピンク達や、私の信頼できる人にしか今回の作戦は伝えてなかったはず」
「こいつだよ。 我々が先んじて手に入れていた『しんじつのかがみ』の力だ」
タクサンがそう言うと黄金の縁に模られた鏡を取り出した。 彼はその鏡を既に骸になっている『幽遊の鬼ヶ島』の一人に向けると、そこにはチャオがピンクと仲良さそうに電話している様子が映し出された。
「そ、それは……!!」
「お人好しのお前は、仲間に裏切りの電話をしている様子をいつの間にか見られていたのさ。 後は一人ずつ、かがみの力でその記憶を持つ者を探し当てれば良い」
「そしてーーさらなる裏付けとしてうちのギルドのメンバーが『七彩の宝玉』に接触していたのだ」
キョンシィの合図と同時に、そこにはオレンジ色のティンクルが、『幽遊の鬼ヶ島』のメンバーと話している様子があるではないか。
「彼は以前から『七彩の宝玉』のメンバーと仕事をしていてね。 まあ、全てはお前の様な裏切り者が居ないか聞き出す為のスパイだったわけだが」
「そして彼は懸命な活動の末、裏をとってくれたよ……今日この日、ウチのギルドと『七彩の宝玉』が共同作戦をやるとね」


タクサンはそう言うと手を上げて合図を送る。 キョンシィの手には、白と黒の色で分けられたピエロのお面の様なもの。 そいつをチャオの顔にゆっくり近づける。
「ちょうど良い。 ここに『七彩の宝玉』が来るのだろう? 奴等への制裁は貴様に任せよう。 安心しろ、『しろくろマスク』の力があれば、お前の生ぬるい優しさも忘れてアイツらと心置きなく戦えるぞ」

チャオは戦慄した。 マスターは、いやこの男は彼女自身や仲間に罰を与えるに飽き足らず、ピンク達と殺し合いをさせるつもりなのだと。
「さて、我々は高みの見物だ。 キョンシィ、やれ。 早い所見晴らしのいい場所を確保しなければ」
「はいタクサン様。 チャオよ、元気でな」
その言葉は、激励でも何でもない。 チャオは混濁した記憶の中で、マスター達に初めて恐怖した。
「やだ、やだ……戦いたくない、やめてください!! 罰なら私一人で受けますから!!」


 ーー来ないで、来ちゃダメよ!! ピンク!!


 チャオの願いは、叶わない。 それは決して誰にも届かない。
彼女の思いとは裏腹に、ピンク達『七彩の宝玉』は、嬉々した声を弾ませながら彼女の待つフロアへと足を運び入れたのは、それから数分も経たない事だった。

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