真・格闘王への道A
次の日。
雨漏りがひどい会議室(?)で、真格闘王の登場順番決めが行われる。
床にはたくさんのバケツとタライが。ところどころ水溜りもある。
もはや会議室と言えるのか怪しい。
「なんでこんなとこで会議すんのサ!」
「エアコンが唯一使えるのがここだからZOY☆」
マルソがシャドウアッパーをかまそうとした。
「おいやめろ!やるなら外でアローアローにして」
ギャラクティックナイトがすかさず注意を入れるが、
「はいはい、どうでもいい喧嘩はやめてちょーよ。順番決めを始めるから。皆何番目がいい?」
ワムバムジュエルが言って、登場の順番決めが始まった。
瞬時に、マスクドデデデが声を上げた。
「和紙が一番をやるZOY☆四天王のトップバッターをキメるZOY☆」
ノリでマルソも続く。
「ボクは絶対最後をキメるのサーー!なんてったって四天王のリーダーで一番かっこよくて人気があって、皆からも信頼が厚くて、強くて最k……」
ギャラクティックナイトがマルソの口を塞いで、さりげなく言った。
「マルソ、黙れ。………あ、僕は3番目にします〜」
ワムバムジュエルは、
「じゃー俺は余ったのでいいや!2番目で!」
と言い、あっさり順番決めが終わってしまったが、これが後に喧嘩へとつながる…
実は、4人が思っていることはどれも同じ。
「真格闘王なんて、甘いもんでしょ」
練習は個人でテキトーにしたが、もしものことを考えての順番調整は全くしなかった。
明らかに団結力がない四天王だ。
ついに当日。
四天王は、指定されたコロシアムへ向かった。
「カービィをフルボッコにするのサ!」
途中で、マルソがみんなに声をかけた。
「カービィなんかチョロいもんだよねw僕なんか10秒でフルボッコするわw」
ギャラクティックナイトが笑いながら答えた。
「10秒?そんなの遅いZOY☆このマスクドデデデ様なら1秒でフルボッコだZOY☆」
マスクドデデデが調子に乗って堂々と言い返す。
「マジ?やってみwww」
ワムバムジュエルは信じていないながらも3人のノリに乗っている。
雑談等しているうちにコロシアムが見えてきた。
「あ!コロシアムなのサ!早く行くのサ!」
テンションが高まったマルソが叫んだ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!カービィッ!待ってろよぉ!!!」
ギャラクティックナイトが剣を振り回して言った。
その時、持っていた時計が落ちた。
「振り回すと危ないZOY☆通行人に刺さるZOY☆はい、時計☆」
マスクドデデデが拾って渡したとき、
「え、ちょっと待って、今何時?」
ワムバムジュエルが何かに気づいたように言った。
「え?4時15分だろ?」
マルソが時計をみて答えるが、
「いやこの10分時計ずれてんだよ、てことはさ……」
空気が一瞬にして凍りつく。
遅刻しそうなことに今更気づいたのだ。
「あ〜…」
「遅刻するZOY☆」
「とりま急げ!!!!」
でもこれでは間に合いそうにない。
その時、
「あれなんだろう?大砲?」
「そうだ!それを使うのサ!」
そこら辺に捨ててあった大砲に気づき、それを使うことにした。
丁度、コロシアムがある方向に向いている。
「マスデデ!鬼殺し火炎ハンマーやって!」
「了解ZOY☆」
マスクドデデデが導火線に火をつけ、4人が乗り込んだ。
同時に、大砲は普通に発射され、コロシアムについた…と思いきや、数々の家の壁をぶち破って進んだ。
「ねー待って!家の壁ぶち破ったんだけど!?」
「いや知らねーよ!大砲ってそういうもんだろ!」
「住民のみんな、許してちょーよ♡」
「それ許してちょーよで済むかよ!?」
「わははは楽しいZOY☆」
相変わらずうるさい四天王だ。
もはやこれから真格に挑むとは思えない。
大砲は、コロシアムの壁もぶち破り、爆速で到着した。
会場はたくさんの人で賑わっている。
何人の人がエントリーしたのだろうか。
「あ、…なんとか間に合った…の、サ。」
「おい、マルソ!しっかりしろ!」
ギャラクティックナイトがマルソを叩いた。大砲の勢いでフラフラしているようだ。
「もうすぐ始まるZOY☆」
マスクドデデデはハンマーのメンテナンス(?)をしている。
3人をおいて、こちらへ受付のワドルディがやってきた。
「だ、大丈夫ですか…?4人でお間違えないですか?」
「あいつらは大丈夫だと思います、はい、4人です。」
ワムバムジュエルが冷静に答えた。
「承知しました!料金は後払いになります。」
受付のワドルディはそう言って、戻って行った。
「おい、もうすぐで開会式始まるから戻るぞ。」
自由気ままな3人を連れ戻して、適当な席に座った。
3分ほどすると、開会式が始まった。
司会と実況役のワドルディがステージにやってきた。
マイクを握って、声を上げた。
「みなさんこんにちは!本日はお集まりいただきありがとうございます!本日開催されるのは、真・格闘王への道!たくさんの方々から応募を頂きました!」
「改めましてありがとうございます〜!」
観客席から拍手が上がった。
この時点でかなり盛り上がっている。
「さらに!本日ご参加頂く方の中には、なんと!あの超有名な四天王も!4人とも、ステージにどうぞ!!」
司会のワドルディが続けて言った。
席を立とうとした四天王だが…肝心なマルソが寝落ちしている。
「おいマルソ!?起きろ!!」
ギャラクティックナイトがマルソに叫んでいるが、起きそうにない。
「ここは和紙が連れて行くZOY☆」
仕方なく、マスクドデデデがおんぶしてくれるそうだ。
ステージ前にやってきた四天王だが、観客席から笑いが起こった。
「なんかマルクソウル寝てるんだけど!?w」
「あれが四天王!?おもろすぎだろw」
そのような声も多数聞こえる。
「さぁ盛り上がってきたところで!自己紹介をお願いします!」
司会ワドルディが、四天王にとって最悪なお願いをした。
「ねぇやばいって!?恥ずいんですけど!?」
「終わったZOY☆」
その声は届かない。その間にも観客席からは「早く〜」とせかす声が聞こえてくる。
マルソが寝落ちしているので、ギャラクティックナイトが1番にマイクを握った。
緊張した声で、言った。
「みんな、わ、わかったよ!え、えっと、な、名前は、ギャラクティックナイトです!!がんばります!」
「え、それだけ!?それ子どもの自己紹介だろ!w」
「おもろいZOY☆ww」
他の2人はヒソヒソ話している。
観客席のみんなも、拍手をしながら笑いを必死で堪えている。
次に、ワムバムジュエルがマイクを握った。
「えっと…はい。俺はワムバムジュエルです。四天王として頑張りまーす。」
見事な棒読みだ。
「お前こそ棒読みで草w」
「緊張してるからしかたねーだろ!?」
我慢できないのか、観客席から密かな笑い声が聞こえてきた。
マスクドデデデがマイクを交代し、
「和紙はプププランドで1番最強で最高で天才でかっこいいマスクドデデデ様ZOY!!!!!みんな、見習うがいいZOY☆ここで一曲ZOY☆即興で考えた自信作だから聴いてZOY!!」
音割れするほど大きい声で言った。
「いやうるせぇよ!?あとなんで一曲聴かなきゃいけねーんだよ!?さらに即興ってなんだよ!?怪しいんだけど!?」
「それはダルいって!?あ、マイクをオフにすれば!」
ギャラクティックナイトは、歌い始めようとしたマスクドデデデが手にしていたマイクを奪い取り、電源をオフにした。
観客席からの笑いが絶えない。
「なにするZOY!?」
「歌は後で!」
ギャラクティックナイトが司会ワドルディにマイクを渡そうとした。すると、
「マルクソウルさんの自己紹介もお願いします!」
と言って、寝ているマルソにマイクを渡した。
何も言わないだろうと思い、観客席が静まり帰った時だった。
「やった〜〜、優勝なのサ…これでエアコン100台はボクの手に……」
微かな声でマルソが言った。明らかに寝言だろう。
その瞬間、観客席からの笑いが復活してしまった。
「エアコン100台!?停電するだろww」
「いや四天王可愛すぎだろ!」
「本当にあれが四天王なの!?友達なりたい…」
様々な声が聞こえてくる中、四天王は気まずい空気にのまれてしまった。
果たして優勝できるのであろうか…