あしかのらいぶらりぃ
はじめにお読み下さいこの小説を修正する最近のコメント・評価キーワード検索
設定メインページに戻るサイトトップに戻る
大 中 小
執筆者: ディン/投稿日時: 2026/01/05(月) 01:19:33
投稿者コメント:
新年あけましておめでとうございます。
1/1更新を目指していたけど結局ダメでした。

今年の目標は色んなところに書いてるけど完結まで進める事!! 今年も『七彩の暴食』をよろしくお願いします
第四十八話 虹をかける翼
『レッド選手がハイドラを完成させたァアア!!!!』
島中にハイドラの登場を知らせるファンファーレ、薄暗くなる空、観客たちの大歓声、ネット上で追いつかないほどの実況の書き込み、そしてうなぎのぼりの視聴率!!
その全てが、注目が、広いシティトライアル島の一点に注ぎ込まれる。 緑の巨大な怪物はまさに轟く歓声を凱歌にするに相応しい存在感!!
島のど真ん中に降り立ったレッドは勝ち誇った表情でハイドラに生気を注ぎ込む様に高く掲げた左手でマシンを強く叩いた。 エンジンが唸り声の様に吹き荒れて、島を蹂躙せんとばかりに走り出した。
「さぁ行くぞハイドラ!! まずはサファイア達の制圧だ!!」
レッドの勝利宣言が如くの叫び声は、島にいるサファイア、マルク、ブレイドに確かに聞こえていた。 これはただの試合である。 しかし三人には悪寒が過ぎる。
「コイツはちょっと……野放しにするとマズいね」
ブレイドの直感は鋭い。 森林エリアに目を向けると地上に降りていたハイドラが、岩、木々を次々と砕いていく。 それと並行する様に青いコンテナに真っ正面から衝突したハイドラは圧倒してコンテナを砕いていく。 その中にあるアイテム全てをは漏れる事無くレッドが回収していく。
『まさに無敵、強靭、最強!! この地上の殺戮兵器に他のライダー達はどう対抗するのか!!』
「レッドを止めないと、試合は一方的になっちまう」
「だが、このデカブツが邪魔してくる……ブレイド、二人でボンカースを抑えるのサ!! その間にサファイア、お前が」
マルクがサファイアを城の外へ出そうとした瞬間に、瓦礫の山から崩れる音が聞こえてくる。 ルインズスターに乗っていたアドレーヌだ。
「無事だったかい!! アドレーヌ、今は一旦休戦してコイツを止めるよ……」
「待て!!」
ブレイドがアドレーヌに手を差し伸ばそうとした瞬間に、サファイアが止める。 その威勢の良い言葉にその場が静まると、アドレーヌはボンカースの様な虚な瞳を向けている!!
「アドレーヌもおかしくなってる……コレもイベントなのか」
「違う!! オレとマルクは少なくとも、コレに似た様な事を見た覚えがあるぞ」
サファイアの言葉に、マルクはハッと顔を上げる。 彼の記憶の底から上がってきたのは、ケケの故郷でレッドとアドレーヌが襲撃してきたあの時の。
「ガメレオアーム、アイツも洗脳されてた時と似てるってワケだな」
「洗脳……確かにあの呆然とした顔は、ケケの時も見覚えがあるね」
マルクの言葉に、ブレイドも剣を構えて思い返す。 アドレーヌがケケを操って、オープン前のギルドで彼女を脅してきていたあの日。 ケケは自力で覚醒したものの、直前まではアドレーヌに操られていて彼女の意のままだった。
「つまりコイツらを……操ってる張本人がいるってワケだね!! 一体どこの誰が」
「もう答えは出てるじゃねえか……スノウ、レッド、グレープ!! アンタら何の目的があってここまでするんだ!!」
サファイアの叫び声と同時に、城の入り口三方向からはスノウ達がそれぞれ陣取り包囲している。 駅のレーン両サイドにはスノウ、グレープとフロス。 アドレーヌとボンカースの背後、正面入り口にはハイドラに乗ったレッドがジワジワと迫ってきている!!

「目的? そんなのは簡単だ。 邪魔者を排除してもう一つの伝説のマシンを手分けして探す」
「その為に他の参加者を操って相打ちを狙うのかい? 随分と穏やかじゃないやり口だね」
ブレイドは剣を取り出し正面に身構えると、マルクとサファイアがそれぞれ左右のレーンに目を向けて視線を外に向ける。 背中を合わせる三人のうち、マルクが囁いた。
「ブレイド、サファイア。 この城にはシャッターってのがあるのサ」
「ああ、あの四角形の小部屋みたいな場所か……過去の大会でも、何度か見たことがあるな」
マルクの視線の目の前には確かに壁で囲われた小さな小部屋が。 そこには過去何度か強力なカスタマイズパーツが大量に出てきて、試合の逆転劇が起こったりとこの大会で最大のサプライズの一つだ。
「ココを切り抜けるには、もうそれに賭けるしかない。 最悪イベントが発生しなくても……ボクならあの壁を無理やり壊してアイテムを回収する事もできる!!」
「……っ!! 『マルク砲』だね。 つまりアタシ達に囮になってくれってかい」
「話が早くて助かるのサ。 あの化け物マシンを相手にするには、こっちも集中的に強化するしか方法はない!!」
マルクのその言葉と同時に、サファイアのワープスターは目の前にスノウ一人のレーンサイドに飛び出し向かう!!
「サファイア!! 人気者に嫉妬する気持ちはわかるよ!! ボクに勝って女の子の歓声を受けたいんだね!!」
「虹の島では世話になったが、そっちがその気なら容赦しねえよ!!」
サファイアの氷の剣は、スノウにまっすぐ振り下ろされるがスノウは真っ白な氷の膜を自身の周りに広げるとサファイアの剣を受け止める。 半球型のドームは傷一つ付かずに、サファイアの剣は弾き返される。
「ボクにこの技を使わせるだけ立派だよ。 流石あの人達が乗っ取っただけの事はある」
「……乗っ取った?? どう言う意味だ」
サファイアは攻撃の手を止めてスノウにしかめ面を見せる。 サファイアの理解できないと言う顔にスノウはアッと口を手で塞ぐ。
「まさかサファイア……本当に記憶が無いんだね。 赤君、ぶどう君、今の聞いた!?」
スノウのその言葉に、ブレイドを相手にしているグレープはフロスに一旦攻撃を任せたのか、海岸の上にライトスターを停止させる。 彼の手には細い弾道ミサイル……『ボムボム』の能力を展開している。
「もちろん、可哀想にサファイア……僕たちがちゃんと目を覚ましてあげるからね!!」
グレープは目の前に手を突き出すとミサイルは一斉に周りに発射される。 サファイアやブレイド、マルクだけでは無い。 アドレーヌ達諸共と言う容赦無い一撃だ。
「来るよマルク、まだなのかい!!」
ブレイドの説教を背に受けながら、マルクは城の中のシャッターに向かって大きな口を開ける。
「今やるのサ!! コウゲキでもクラッカーでも出てこいやァ!!」
マルク砲、城のシャッターに向かって真っ白な光線がゼロ距離で放たれる。
それはすぐ後ろの城壁までも貫いて、レッド達を横目に飛んでいく!! 場所によっては巻き込まれて大惨事と言う場面だったろう。 だがマルクの半ば反則スレスレの行為はこの緊急事態には黙認されている。
『マルク選手、恐ろしい攻撃!! コレが予選で起きていたら……とんでもなかったですね〜』
ウォーキーの実況を横目に、マルクは崩落したシャッターの中に足を踏み入れる。 大量のカスタマイズパーツを独り占めすれば、マルクのデビルスターは一気に強化だ。
「さて、連中の進撃もここまでーーッ」
マルクが見たその光景、タイヤの絵に青い下矢印が描かれた薄暗いパーツの山、山、山……。 会場にもそれとマルクの唖然とした顔が映っている。
「ピッ君、アレって……」
「最悪だ、スピードダウンのマイナスパーツだ」
頭を抱えて俯くピッチは先ほどまで勝ち誇った様なマルクの顔を見ないせめてもの情けか。 当事者はシャッターの中のその光景に青筋を浮かべて、轟音が響いた。
「使えるかクソボケがァ!!」
『八つ当たりで壁を壊さないでください!!』
「ミサイルが来るよ!!」
ブレイドの合図と同時に城内に次々とミサイルが着弾する。 サファイア達は顔を手で覆い煙から身を守るが、サファイアの背後にはすぐに数多のミサイルが飛んできていた。
「サファイア!! 後ろなのサ」
「うわああ!!」
マルクの言葉に気づいた時には時すでに遅し。 ミサイルの爆風に巻き込まれサファイアのワープスターは勢いそのままに空を飛んでいく。 その様子を眺めていたグレープはあっと声をあげる。
「しまった、サファイアを仕留める気は無かったんだけどな……」
「サファイアー!!」
ブレイドが目でサファイアを追いかけ叫んだ、その時だった。 城の正面に構えていたレッドは右側からの気配に気づいたか、空を見上げる。 今この場にいる参加者とは違う。 全く別の存在。
「来たか、国際ギルド連盟」
はるか上空、まだ目を凝らさないとよく見えないが、スリックスターやフォーミュラスター、様々な種類のマシンに乗った制服を着た兵士達がシティトライアル島に近づいてくる!!

「目標、レッドスノウグレープ三名のティンクル!! 彼らに狙われてる他の参加者の救助と安全な場所までの誘導はC班とD班に任せる」
リーダー格らしき兵士は、次々と指示を出す。 それに応じて城に向かってくる兵士達は離散し、作戦通りの配置につく。
「神聖な大会を穢したんだ。 ただの逮捕や裁判じゃ済まさんぞ『七彩の宝玉』め」
その様子をスノウやグレープは見上げていた。 彼らにとっては兵士達も邪魔な存在。 戦力を分散させるのは理に敵わない。
「どうする赤君?? どっちからやるの」
「俺一人で行く。 お前達はあのピエロと女剣士を外へ逃すな……」
そう言ってレッドが背を向けた瞬間をマルクは見逃さなかった。 デビルスターを急発進させた彼は氷の剣を構えてまっすぐレッドの背中に向かって突進する。
「バカ!! マルクやめな」
ブレイドが引き止めようとした途端に、駅のレーン両サイドに陣取っていたスノウとグレープが動き出す。
「お前ら全員邪魔なのサ!!」
マルクの口からはまるでドラキュラの様な牙と真っ黒な翼。 彼も覚悟を決めたのか、目を大きく見開いてスノウとグレープに威嚇する。
「バカだなぁマルク君。 コレは君とブレイドを引き止めるための作戦さ!!」
マルクに続かんとばかりにブレイドが向かってくる。 だがそれに割り込む様にアドレーヌとボンカースとフロスは素早く飛び込んだ。
「アドレーヌ、アザラシ、大猿!! そこをどきな!!」
ブレイドの剣、アドレーヌの絵筆、フロスの氷、ボンカースの大槌が交錯する。 四つ巴の内三人は洗脳を受けている。 数的ではブレイドは圧倒的に不利だ、マルクの援護もサファイアの救助もできない。
「やれやれ……ちょっと痛いかもしれないけども、死ぬんじゃないさね三人とも」
全てを覚悟したブレイドは呼吸を整えて剣を前に突き出した。

「お前達一体何の目的があってここまでするのサ!?」
アローアローを放ちながらマルクはスノウとグレープに叫ぶ。 目まぐるしい猛スピードで回避する二人は、ワープスターとライトスター対デビルスターと言うハンデをものともせずに、確実にマルクの背後に周り擦り傷を増やしていく。
「ごめんねマルク君。 本来ならこんな強行策を取らずに君たちを引き込めるはずだったんだ」
「引き込む? ボクは『七彩の暴食』以外に行くつもりは無いゼ?」
スノウの言葉は、誘いか否か。 マルクは翼から数多の矢を展開さえて二人に放つが、スノウは氷の様な盾で、グレープは細いミサイルでそれを撃ち落としていく。
「いいや、君は……ピッチ君にケケちゃん、そこにいるブレイドに、モソやドロッチェも、サファイアによってウチに合流する手筈だった」
グレープの言葉に、マルクの手が止まる。 サファイアの名前を聞いた途端に、彼がかつてスノウと交わした言葉を思い出す。



 ーー今更何の用ですか。 七彩の宝玉の再結成をするつもりじゃあない。

「おいおい、まさか本気で」
「あの時の僕たちには力が足りなかった。 四つの穴に唯一生還したギルドだとか、何の意味もなさない名誉は不要だ」
そういうとグレープは巨大な爆弾を構えていた。 着弾すれば先ほどの隕石に匹敵かそれ以上だ。
「サファイアがなびかない以上、ボクやぶどう君、赤君はある作戦をとったーーサファイアが戻ってきた時、『七彩の暴食』が無事でいなかったら、彼はどうするかな?」
「……おい、その作戦の為にケケはあんな目に遭ったんじゃないだろうな!!」
マルクの眉間に大きなしわと血管が浮き上がる。 彼らの作戦の為に知らずのうちに自分たちのギルドは危機に晒され続けていたと言う事実はマルクには耐え難い物だった。

「ちゃんと殺さなかっただけ、アドちゃんも手加減してくれてほっとしたよね」
「貴様ぁ!!」

『ぎゃあ、た、助けーー』
その瞬間に、マルクの目の前にマシンと一緒に地上に落下する兵士の姿が割り込んだ。 文字通り流れ星の如くに島中に黒煙をあげて落下していくマシンの群れは、各所に散り散りになって行く。 そしてそのマシンを破壊していくのは、空中庭園に陣取るレッドのマシン……ハイドラだ。
「ウォームアップにもなりゃしねえ。 スノウ、グレープ!! この辺りにはもうレアコンテナもマシンのパーツも見当たらねえ。 ピンクには伝えておけーードラグーンは無かったってな」
レッドとハイドラは情け容赦無く兵士のマシンを撃ち落としている。 観客達は呆然と眺めるしか無いが、その光景を野次馬とは全く違う目線で見ていたのはハルトマンだ。
「ピンク……今ピンクと言ったかあの男?!」
「ハルトマン?」
ケケが首を傾げて問いかける。 暴食の皆は上の空でつぶやいているハルトマンに違和感を覚えるが、彼は一人推理を続けるように呟く。
「奴らのマシンの異常な強さ、近年ネットオークションを莫大な資産で荒らしまわっていた奴の名前……KINP、K I、PI…まさか!?」
「なんじゃいハルトマン!! 何がわかったかハッキリせい!!」
モソがハルトマンの耳元で大声で叫ぶ。 ハルトマンの顔は青ざめている。
「何と言う事だ。 彼らは解散していたのではない!! 潜伏していたと言うことか!! ……モソよ、この連中の異常な強さの秘密、分かったぞ!! 今すぐ私にパソコンをよこせ!!」
「何するつもりじゃ!?」
「この大会は奴らに逆に利用されていたのだ!! ドラグーンとハイドラが奴らの手に渡れば、我々は『人類の選抜』に対抗する術は無くなるぞ!!」


「そっか、じゃあ地下深くに隠しているかもしれないね。 どうする赤君」
「島を掘り起こして探すしかねえだろ。 アイボリー、準備はいいか?」
『はいはーい!! イベントスイッチ『隕石』オーン!!』
アイボリーの気前のいい声と同時に、空が再び暗くなる。
薄暗い空から、真っ赤な火球が近づいていく。 それに気づいた観客やウォーキーも流石にこの試合の違和感に気づいた、この試合はーー仕組まれていると。
『に、二度目の隕石!? こんな事大会史上初です!! 何が起きてるんだ!!』

「クソ、もう逃げ回る隙も無いのさ」
マルクはスノウとグレープに取り囲まれ、ブレイドはアドレーヌ達の相手に精一杯。 一歩でも隙を見せれば集中砲火は必至だ。 既に試合はスノウ達が支配していると言っても過言では無い。
「大丈夫、死にはしない。 順番が逆になっただけさ。 君達を利用してサファイアはこっちに降ってもらう。 痛くは無いよ」
グレープはそういうと桃色に光るハートを取り出した。 手始めに、と言いたげにマルクにそれをかざす。 フレンズハートは効力を発動すると、アドレーヌ達のようにマルクは奴らの手中に堕ちる。
「何か言い残す事は?」
スノウの気の利いた見え透いた挑発。 勝利宣言だ。 絶体絶命とも言える危機に、マルクは身体を半分に割って抵抗の意思を示す。
「どうせなら道連れを狙ってやるのサ」



 時間は少し遡る。 グレープによってはるか上空に飛ばされたサファイアはワープスターを必死に操舵するがコントロールが効かずじまい。
「クソっ、この状態じゃ……島に戻るのは無理だ」
必死に体制を整えて、辺りを見渡す。 ワープスターのエンジン部は黒煙が噴き上がってきており船体も赤く点滅している。 既に限界を迎えているマシンは、他のものに乗り換えなければいけないがあいにく上空。 代わりになるものは何一つない。
このままでは落下をしてマシンも大破、それはこの大会では失格を意味する。 サファイアは必死に船首を上に向けてワープスターの落下を少しでも遅らせる。
サファイアは一縷の望みに賭けていた。 予選『エアグライダー』で見えた謎の影、この試合が始まってからも彼一人探し続けていたマシンの正体。 何故か彼には分かるような気がしてならない。
ずっと飛んでいたから、今もこの上空を飛び続けているかも……そう予感していたが全く見える気配がない。 ハイドラの様に、コンテナの中に隠されているのか。

「だとすれば、もうレッド達が完成させてるかもしれねえ」
焦燥が募る。 今地上ではマルクやブレイドが必死に戦っている頃だろう。 一縷の望みを捨てて、捨て身覚悟でマルク達と合流して戦うべきではないだろうか。 そんな予感が脳裏をよぎる。
だが今更戻ったところでどうした、下手をすればマルク達はやられて孤立無援の算段が大きい。 サファイアの今の勝つ手段は、カスタマイズパーツをかき集めて相打ち覚悟の特攻しか思い浮かばない。
「あぁ、もう!! 全部あのハイドラのせいだ、あれさえなければまだ戦えたのに」
ハイドラの攻撃力はゲームブレイカーには十分だ。 今の彼に対抗する手段は残されていない。
「ゴルドーボールをかき集めて、後ろから狙うか……マルク達に任せるわけもいかねえし」
そう覚悟を決めた瞬間、彼の後方に光が差し込んだ。 振り返ると、シティトライアル島とは全く逆方向に桟橋の生えた島が浮かんでいる。 青い結晶が島の下部に突き出ており、陽の光がそれに反射しサファイアに当たっていた様だ。
「あれは……」
サファイアは無意識にワープスターをその島に向けている。 何があるかわからない。ひょっとしたらスノウ達が既に漁った後かもしれない。 だが既に危機的状況にいたサファイアはすがらずにはいられなかった。 直感だった、『ハイドラに対抗する何かがある』ーーと。
フラフラと揺れるワープスターを必死に操舵して、サファイアは桟橋に着陸した。 シティトライアル島とは比べ物にならない狭い島だった。 しかし彼の目に映ったそれは島で見てきたパーツや、コピーとは比類できない神々しさを放っていた。

「お前……こんな所にあったのか」
虹色の羽と薄桃色の翼と船首部。 朱色の模様が目立つその三つのパーツは、見る者の息を飲み込むのも忘れてしまうほどに神々しい。
サファイアは意を決してパーツに手を取る。 一つ、二つ、パーツ同士は意思を持った様に接合されサファイアのそばに転がった。 既にハイドラは完成されている。 暗雲が島を支配しているのは変わらない。

「今からでも、俺に力を貸してくれーー」



  第四十八話 虹をかける翼




 ハイドラを進軍させていたレッドの動きが止まった。 空は既に真っ赤に染まり隕石が今にも地上へ落ちてくる数秒前。 マルクとブレイドはスノウ達『七彩の宝玉』とボンカースら洗脳された者達の相手に苦心していた。
実力者である二人も強化されたマシンを同時に何機も相手にしては、心身もそしてマシンも限界を迎えていた。
そして、スノウとグレープが次々放り投げている桃色のハート『フレンズハート』、マルクとブレイドはそれを次々はたき落として、洗脳から逃れている。
「マルク君、もうそろそろ楽になりなよ!!」
スノウがそう叫んで投げ続けるハートを、マルクは黙って弾き続ける。
「ブレイド!! 僕がここを惹きつけるから、早くサファイアを……!!」
「そうしたいのは山々だけどね!! こうも囲まれては」
会場は個人戦ではなくてチーム戦の様相だ。 マルクとブレイドを取り囲む様に、スノウ達がギルドの垣根を越えていたぶるその絵は、見る者全てに異常性を知らせるのに十分すぎた。

「そろそろだ。 いくぞスノウ、グレープ……アイボリー」
『はいはーい、イベントスイッチオン!!』
レッドの合図と同時にアイボリーが遠隔操作でイベントを弄る。 観客のタブレットからは、告知用の二つの帯が同時に現れた。




            – マシンが重力に引きずられる!! −

            – マシンが飛びやすくなった!! −

「お、おいどう言う事だ!!」
観客の誰かが会場を指差して叫んだ。 レッド、スノウ、グレープ三人のマシンはまるで紙の様にはるか上空をどんどん飛んでいき、一方でマルク達のマシンは地面から一向に離れない!!
「やられたな……アレはイベントスイッチがハッキングされてるんだ」
ドロッチェの推理は当たっている。 彼らの目的はマルク達が空へ逃げる手段を奪い、隕石で木っ端微塵にするのだと子どもでも分かる非道な手だ。
「クソっ、アドレーヌ!! 逃げるんだよ、こんな所で死んでいいのかい!?」
ブレイドが虚な目のアドレーヌに必死に問いかける。 彼女は返事をせずに攻撃の手を緩めない。 ボンカースも、フロスも隕石から逃さないとマルクとブレイドを必死に繋ぎ止めている。
「チクショウ、貴様ら!!」
「マルク君、君達の抵抗は凄かったよ。 でも僕たちにも時間がないんだ。 ……君とブレイドはやっぱりここでくたばってくれないかな」
「仲間を巻き添えにしてでもか!!」
マルクの言う仲間とは、フロスやアドレーヌの事だ。 すでに言葉も介さない、意識を持たない人形になった彼らはブレイドとマルクが隕石の巻き添えになる様にその場から繋ぎ止めるための道具だ。

「大丈夫、僕らの願いが叶った暁にはアドちゃん達も復活できるんだ!! ……『人類の選抜』の為なら本望だろう」
空から見下すスノウの口調は、バトルウィンドウズや虹の島で邂逅した時の穏やかな声色だった。 だがその裏腹にマルクは確かに感じ取っていた、ドス黒い、闇の様な不穏な感情。
「バイバイ、マルク君」
そう勝ち誇った様にスノウが呟いた瞬間だった。 次々と隕石が砕け街中に散り散りになる、真っ赤な夜空は黒い雲がかかるとマルクとブレイドのマシンの速度は錘がとれたように軽くなる。

「イベントが強制終了された!! 一体どうして!!」
客席のアイボリーも慌てふためいてパソコンのキーを叩きつける。 しかしハッキングしたはずのデータベースに再ログインしようとした途端に警告音とウィンドウが表示される。
「ログイン権限が剥奪……だって!?」


「あっぶねえ!! もう少しで直撃だったのサ!!」
そう言うマルクはボロボロになったデビルスターを走らせて地下エリアへと避難する。 ボンカースがマシンから蹴落とされ、そこにブレイドが縄で縛り上げていた。
「ブレイド、お前いつの間に……」
「一人だけなら生け捕りは容易いさね。 しかし一体どうしたんだい!? 隕石が突然砕けるなんて、マルクお前がやったのか」
「いや、ボクじゃない……だけどあの『冷気』には覚えがある」



 会場では、突然のイベントの中断に観客達は騒然としていた。 例年にないハプニングに次ぐハプニング。 雑談が絶えない中、ハルトマンは一息吹いて肩を下ろす。
「……パスワードさえ変えてしまえば、もう悪さはできん、そして……マスターモソ、後はあんたの所の若造に任せますよ」
会場のはるか空に、虹色の橋が飛行機雲のようにかかっていく。 薄暗い空にかかるそれは、絶望かそれともーー希望か。
虹の架け橋を目で追ううちに、ケケとピッチは立ち上がった。 二人の目には確かに映っていた。 この試合の『希望の灯火の星』が。


『あ、あれは……なんと言う事だ!! この大会を見た人々は幸運すぎる、アレはハイドラに並ぶもう一つの伝説のマシン……』
ほぼ同時に観客のタブレットにテロップが流れた。 ウォーキーの実況にも熱が籠る。 客席からの大歓声は、彼の帰還を、もう一人の主役を歓迎する讃美歌か。



『……サファイア選手が、ドラグーンに乗って戻ってきたァアア!!!!』



      サファイア が ドラグーン を 完成させた !!!!

この作品についてのコメント/評価 (0)
 前の話へ  次の話へ 
(c) 2010, CGI Script by Karakara