第四十七話 破神の襲来
この放送は、『全宇宙に未来をつなぐ』ホーリーナイトメア社。 『小さな子どもからお年寄りまでの足に』エアライドマシンのハルトマンワークスカンパニー。 ご覧のスポンサーの提供で、ポップスター中にお送りします。
大会の期間中、テレビ局にしつこいぐらい流れるCM。 宇宙の企業まで一枚噛んでいると噂のワールドエアライドカップは、それだけ影響力が大きい。 テレビは今まさに決勝戦『シティトライアル』の中継が流れている。
「既にいくつかのエリアではライダー同士の一騎打ちがなされています!! 今流れているのは『廃墟エリア』のボンカース選手対マルク選手!!」
ウォーキーの紹介の通り、画面にはデビルスターに乗ったマルクとレックスウィリーに乗ったボンカースが衝突している。大柄なボンカースが一見有利に見えるこのカード、人々は固唾を飲んで見守る。
「やるなぁ、暴食の。 だが、この攻撃に耐えられるかな!?」
ボンカースはそういうと両手に大きな木槌を持って、横にあるコンテナを破壊する。中からはボクシンググローブの描かれたパーツが出てくる。『マッハアタック』だ。
「ハンマー二本で攻撃力二倍、マッハアタックで更に倍増だァ!!」
「そんな単純な計算でいいのかヨ」
マルクは呆れる様にボンカースにツッコミを入れる。 マルクはそばにあった赤いコンテナからフリーズのパーツを手にすると周囲に冷気を漂わせる。
「サファイアの技、剣とか作るやつ……見様見真似でやってみたいけど。 アレはちょっと難しそうだよね」
そう言うとマルクは真っ直ぐ突貫してくるボンカースを間一髪身のこなしでかわして真っ直ぐ走り出す。 ボンカースは急ブレーキをかけて旋回するとマルクに標準を立て直す。
「逃すか……」
「あっ、さっきまで僕がいた所。 滑りやすくなってるから気をつけた方がいいのサ」
確かに地面は凍っていて摩擦が効かなかった。 マルクの忠告通りボンカースのマシンは制御が効かなくなり、一気に廃墟に衝突する。
「ぬおおお!?」
「ボンカース!!」
観客席で見守る『森林の暴君』一向がボンカースの身を案じる。 ボンカースはギリギリの所でマシンにしがみつき、失格の条件である『マシンの破壊』から守った状態だ。
「あ、あぶねえ……放り出されたらあのガキに俺のマシンを集中砲火される所だった」
ボンカースは冷や汗を流しながら立ち直るが後方には、大きな口を開けてビームを今にも発射せんとばかりのマルクの姿が。 マルク砲発射数秒前。
「ボクは君に恨みはないけど、ウチのケケが世話になったってピッチから聞いてるのサ。 こいつはほんのお礼ネ」
「ち、ちくしょう……暴食風情が!!」
第四十七話 破神の襲来
高層ビルのエリア。 海岸線と森に挟まれているエリアの頂上に、サファイアは静かに佇んでいる。 試合開始から既に数分、この場で集められる強化パーツは大体取り切った。
「今の所……サイコウソクが最大か」
サファイアはパーツの収集具合を確認すると、ワープスターでビルから空へ飛び立った。空から会場の様子を見るに、大局に変化は見られない。 彼の目的は大きく分けて二つ。 スノウやレッド、グレープの隠している『何か』を聞き出す事。 そしてもう一つはーー『エアグライダー』の競技で見えた謎の物体!!
「レッドはアレにすごい執着を見せていた。 つまりアイツらがこの大会に参加した目的はあのマシンが握ってる……絶対にアレを渡しちゃいけねえ」
何も知らない口ぶりだったあの時のサファイアだが、彼もエアライドマシンに関する書物を読んでいる時に、見覚えがあった。 確かにアレは……。
「伝説のエアライドマシン。 聞いたことがあるよねフロス君」
地下エリアはグレープとフロスの一騎打ちだ。 だが二人は戦闘に興じる事なく、マシンに乗ったまま会話を続ける。 いや、フロスには戦闘の意思はある。 事実彼は巨大な氷ブロックを手にして幾つかグレープに投げつけた。 事実グレープの後ろには砕けた氷塊が散乱している。
では、なぜ彼は大人しくしているのか。 まさに周囲の地面に答えはあった。
「動かない方がいいよ。 ボクが用意したセンサーボムが一気に起動すると、ワゴンスターと言えども一気にリタイアだよ」
「……話し合いをしたいのか、脅したいのかどっちだよ」
フロスは冷や汗を流しながら、グレープの話に乗る。 だがグレープは一枚上手だ。 手にはサンダーボムが用意され主導権はこちらにあるとアピールする。
「僕たちは今それを探していてね。 一説にはコンテナの中にそれぞれパーツが入っているとか言われてるけど、砕いても当たりはしない」
「それを手伝えって言うのか?? それなら何でこんな脅迫じみた手を使うんだよ……スノウも参加してるなら邪魔立てする理由も無い」
フロスは少し安堵した様子で息を吐く。 グレープの目的は、大袈裟な戦争ではなくて協力の要請だ。 そうとわかれば警戒心を強める必要もない。
「それはそうもいかないよ!! この試合は個人戦、最終的に勝ちも、マシンに乗れるのも一人だ!!」
「まあ、ギルドの権威も懸けた戦いだしな……最後は恨みっこなしでパーツを奪い合うってワケになる」
『だが、お前が俺達を裏切って、パーツを独占したり他の奴に譲らないとは限らない』
グレープの持つ『けいたいつうしんき』からレッドの声が聞こえる。 その途端に地下エリア一帯に緊張が走る。
『ちょっと赤君!! 僕の友達を信じられないって言うのかい!! そりゃフロスはちょっと説教くさいけど」
「スノウ、そりゃお前がナンパを止めないからだ!!」
フロスのツッコミが地下に響き渡る。 彼は呆れる様に溜息を吐いてこの場を収める事に集中する。 相手の目的は大体把握した。 友人間で優勝を争うために、八百長に加担しろと。 事と次第によれば問題だが、既にスノウが一枚噛んでいる以上、フロスも知らぬ存ぜぬは通らない。
「わかったわかった、伝説のパーツとやらを探して、あんたらに……いや、グレープとレッドだったか? スノウを差し置いて初対面のあんた達に渡すのは気が引ける。 スノウに譲るから後は三人で取り合ってくれ……」
『さすが話がわかるねフロス!! ありがとう』
通信機の向こうのスノウは笑顔だろうか。 明るい声色を耳にするとフロスも安堵する。 あの『七彩の宝玉』の幹部のグレープと対峙していたのだ。 事と次第によっては、アドレーヌがケケを完膚なきまで叩き潰していた様な状況に、今度は自分がなっていたかもしれないと、心のどこかで不安に駆られていた。
タダの使いっ走りになるだけで済むなら、それに越した事は無い。
「それじゃあ契約成立って事で……グレープ!!」
「そうだね、それじゃあはい!!」
グレープは腕輪のしている右手をフロスの突き出した。 するとどう言う原理か、フロスの身体から真っ白な球体が飛び出してきたではないか。
「……なっ!? こ、これは」
「『たましいのうでわ』、これでキミは僕に抵抗できない」
グレープのその一言が耳に届くと同時に、フロスの目の生気が失せる。 催眠術にかかった様に呆然とした彼は、次の瞬間グレープに忠誠を誓うかの様に、頭を下げた。
すると、グレープはピンク色のハートを取り出すとフロスに思い切り投げつける。 するとフロスは一気に彼の横にまで走っていき、忠誠を誓う様に背筋を伸ばす!!
「いや、ここまで効果的だと思わなかったよ。 流石アイボリーの発明品『フレンズハート』」
「ぶどう君、フロスになるべく酷い命令しないであげてね!! せいぜい『パンツ一丁の宴会芸』までね?!」
「白玉、お前そんな事普段から命令してたのか?! ……アドレーヌには手を出すなよ?」
レッドの呆れる様な声を最後に通信は途切れた。 グレープは笑顔を見せたまま地上へ走り出すとフロスも素直にそれに追従していく。
「さぁレッドとスノウも仲間を作っていくうちに……次の作戦の準備、行ってみよう!!」
会場の観客席、人々はタブレット端末で気になる参加者の様子を見守っている。 ケケ達は定期的にブレイドとマルク、サファイアの画面に切り替えるが、状況の把握は困難の様で。
「ああ!! また画面が途切れる!! このタブレット、通信悪いですよ!!」
まるでテレビを叩き直す、いつか見た事のある風にケケはタブレットを小突くと映像の流れは一時的にスムーズになる。
「ケケ、一応借り物なんだからもっと大切に使いなよ……」
ピッチは不安げにケケを諌めてタブレットを見つめる。 貸与品である以上、万一があれば弁償だ。
「ケケ、ちょっと貸せ」
ドロッチェは右手でそれを取り上げると、手が空いたケケのポケットを左手で弄る。
「え!? ドロッチェさん、ちょっ」
「ほら、ガントレット。 お前普段から静電気流れてんだから、タブレットが調子悪くなんだよ」
そう言ってガントレットを引っ張り出すと、ケケの膝の上に放り出す。 渋々ケケはドロッチェの指示通りガントレットを嵌めた後にタブレットを持つと……。
「おぉー!! 動いた、ドロッチェさんありがとう!!」
「……えぇ、つまり回線じゃなくて、ケケが原因と」
「ブレイドからも聞いてるよ、こいつ素手で電撃流すと皮捲れるって。 普段から能力垂れ流してたら、皮も剥げるわな」
ドロッチェは頬杖ついてニヤリと笑うと、ケケはハッと何かに気づいた様で。
「つ、つまり普段から肌荒れが治らないのも……」
「ケケ、私美容の魔法勉強してるから、教えるわよ……?」
シミラがケケを慰める様に耳打ちをする。 今にも消えてしまいそうな声で、ケケは「お願いします」と、泣き言のように呟いて……グループの集団席最前列に陣取るダークマインドとモソは試合を見守りながら小声で囁いた。
「どこに行っても、年頃の子の悩みは難儀な物ですな」
「全くじゃ、ワシはシワや肌荒れの無い場所を探す方が難しいと言うのにほっほっほ」
その瞬間だった。 会場中のタブレットに災害通報の様な大音量とバイブレーションが鳴り響く。 画面上部に注目すると、小さな窓でだがハッキリと文字列が浮かび上がる。
– DANGER!! 隕石が落ちてきた!! DANGER!! −
「い、隕石!?」
ケケは思わず顔を空に向けると、確かに空は真っ赤に染まりシティトライアル島一帯に大小様々な火球が降り注いでいるではないか!!
『ああっと、今回のイベントが早速出てきたぞ!! マシンが破壊されない様に、注意してください』
ウォーキーのアナウンスを聞くや否や、それぞれ一帯で衝突、あるいは散策しているライダー達は空を見上げる。 ぼーっとしていると、自分達が巻き添えになりリタイアになる恐れがある。
「いきなりド派手だねえ……アドレーヌ、邪魔するんじゃないよ」
「それはこっちの台詞、年寄りは早く逃げたら?」
ブレイドは剣を振い、アドレーヌはコンテナからミサイルを取り出すと一気に隕石に向かって射出する!! それはド派手に砕け散り、中から大量のカスタマイズパーツが飛び出してくる。
「いいぞブレイド、その調子でドンドン破壊するのサ」
ブレイドとアドレーヌの頭上、デビルスターに乗ったマルクが砕けた隕石の隙間を縫う様に飛び回る。 中から飛び出たカスタマイズパーツを掠め取る様に、マルクは円を描く様に飛んでいた。
「マルク!! アンタ横取りするんじゃないよ!!」
「確率の問題、ボクが先に取っとく事でアドレーヌのパワーアップも未然に防ぐ算段だヨ」
マルクの屁理屈は無茶苦茶だ。 アドレーヌは地上から宙に向かってクラッカーを発射するが、マルクはクイックスピンでそれを弾き飛ばし、地上を見下ろした。
「おっと、それは宣戦布告と受け取って良いのか? アドレーヌ」
「バカね、空を見なさいよ。 まだイベントは続いているのよ」
そう、アドレーヌの見上げる先はマルクのはるか上空。 先ほどまでとは比べ物にならない、巨大な隕石がすぐそこまで迫ってきている。 下手をすれば高層ビルは一棟残らず消し飛ぶであろう大きさ、マルクとブレイドはそれを見つめて呆然と口を開く。
「マジか……」
「……退くよ!! あれじゃあどれだけタイリョクやボウギョを稼いでいてもひとたまりもない!!」
ブレイドの音頭と同時にアドレーヌもすでに距離を取っている。 だがマルクはデビルスターを空に向けると同時に、口を大きく開く。
「どうせなら、一か八か抵抗をしてみるのサ!!」
マルク砲。 口から巨大なレーザー光線が射出されると、それは隕石に一直線に直撃する!! しかし隕石の表面に亀裂が入ったが良いが破壊までには至らない!!
「硬すぎだろ!! 何で出来てんだコレ!!」
マルクのツッコミもさることながら、会場も隕石の地表への接近に息を呑む様に見守るしかない。
『この大きさでは近辺の空車は無論、ライダーが巻き添えでリタイア必至!! あの隕石を破壊できる人はいるのか〜!?』
ウォーキーの煽りも拍車がかかる。 会場の客席がざわつく中、会場向きのマイクをオフにして彼は一息ついた。
「いや〜流石は決勝戦、イベントもド派手だねえ……運営の差金でしょ、アレ?」
と、ウォーキーは笑いながら後ろを振り向くと大会運営グループはてんやわんやだ。 『けいたいつうしんき』や色んな通信手段で連絡を取り合い、運営の一番お偉いさんが大声で怒鳴り散らかす。
「どう言うわけだ!! あんなイベント今回は設定してないぞ!!」
「す、すみません!! プログラムに異常がありまして……」
ウォーキーはその時悟った。 この隕石は単なる賑やかしで起きたものではない。
「おぉ、ウォーキー君!! 君は客や視聴者が不安にならない様に、平然に実況を続けたまえ!! この事態は我々が収める!!」
「ど、どう言うわけですか……?」
ウォーキーは、この混乱する事態を把握する事ができなかった。
シティトライアル島、城エリア。
「いやぁ、こんな世界大会でしょっぱいファイアウォールで済ませるなんて、『不正アクセスしてください』ってお願いしている様なものじゃないの」
観客席はグレープとアイボリーの所属するギルドの陣取る場所。 アイボリーはノートパソコンを席に乗せて、決勝会場を背中にする形で高速でキーを叩く。
パソコンの画面にはシティトライアル島を真上から覗いた様な見取り図。 そこには小さいマークでサファイア達ライダーや、コンテナやアイテムの所在地まで丸わかりだ。
「もしもーし、隕石から逃げた一人がスノウの背後に接近中!! 『フレンズハート』使うチャンスかも知れないよ」
『了解!! 赤君と近くに来てるから一緒にやろうよ』
『ったく、足引っ張んじゃねーぞ白玉。 ところでアイボリー、肝心のマシンは……』
レッド達の目的の『伝説のマシン』。 彼らは島中をくまなく探しているが、その名は伊達ではなくパーツは一つも見つからない様だ。
「悪いね。 それらしいコンテナはジャミングされてるみたいで、パソコンからでは確認できないんだよ」
『不正対策はバッチリって所か。 それじゃあ自力で見つけるしかないな』
レッドが溜息混じりで呟いた途端、スノウがテンションを上げる様に大声を上げる。
『うわぁ!! このコンテナ見たことない色だよ!! 青っぽいけどスペードの柄みたいなのが描かれててキラキラ光ってる』
「なにそれ!? サンドーラやプランテスでもそんなコンテナ見た事ないよ??」
アイボリーはパソコンの画面と睨めっこしながら、スノウから送られてきた画像を凝視する。 確かにそれは青や赤、緑のコンテナとは全く別の見た事ないものだ。
『スノウ、それ砕いてみろよ』
『了解赤君!! なにが出るかな、お宝だったら良いな〜』
と、嬉々してコンテナを砕いているスノウの背後に、爆音と衝撃で城の壁が破壊される。 外から飛び込んできて肩で息をする様に疲弊したアドレーヌとブレイドが、すぐ背後に迫っていた。
「クソ……あのババア、しつこいわね」
「おや、そこにいるのは以前ケケをナンパした……スノウと言ったかね?」
背後の気配に勘づいたスノウは、コンテナの破壊を中断する。 それと同時にアドレーヌの絵筆は、彼の後頭部に突きつけられた。
「ごめんね、スノウ。 うちのギルドが勝つ為には仕方ない事だから。 負けて」
「……あ〜、赤君。 アドちゃんは今回の計画……」
『教えてねえ。 そもそもコイツも『人類の選抜』の全部は聞いてねえワケだからな』
『けいたいつうしんき』からの不審な声。 アドレーヌにとっては仲間の一人であるレッドの言葉だが、不穏に思えた。 彼女は筆を下げて後退りする。 スノウやレッドの様子が、いつもと違う。
「何を言ってるの……?」
「ギルドの誇りを賭けた綺麗事はおしまいって事だよ。 アドちゃん!!」
スノウの手には、グレープがフロスを洗脳した時と同じ『フレンズハート』が怪しく輝いている。 異変に勘づいたアドレーヌとブレイドは引き返そうと背を向けた瞬間にスノウはピンクのハートを彼女達に向けて……投げた!!
「……ッ逃げろブレイドさん!!」
アドレーヌはそう言うとキャンパスから瓦礫を山の様に放出し、城の入り口を塞ぐ様に埋め尽くす。 寸でのところで、城を飛び出したブレイドは後ろを振り返り、瓦礫の山の奥を凝視して叫ぶ。
「アドレーヌ!! 何があったんだい!?」
瓦礫の奥にいるであろうアドレーヌに向かって叫ぶブレイドの頭上に真っ赤な影が伸びている。 隕石の落下のイベントは佳境を迎えていた。 フィールドは隕石跡でボコボコ。 カスタマイズパーツが点在すると強化に絶好のタイミング。 しかしブレイドが見上げた先は空。 街どころかシティトライアル島を埋め尽くさんばかりの巨大隕石がトドメとばかりに落ちてくる。
「こ、こんなの……どうやって防げと言うんだい」
ブレイドがそう呟いた瞬間に、高層ビルエリアの最上階から一台のワープスターが飛び出してきた!! ブレイドが見たそのライダーは、彼女もよく知っている群青の男!!
「サファイア!!」
「アイスソード!! 二刀流」
そう言うサファイアの両手にはアイスソード。 彼はそのまま隕石に突入する直前に身体に冷気を一気に纏う。
「壊れろぉ!!!!」
叫び声と同時に何度も、何度もサファイアは隕石に剣を叩きつける。 ヒビが放射線状に伸びると今度はサファイアは剣を捨ててーー氷の膜を右手に何度も纏わせた。
「アイス……ライジンブレイク!!」
ワープスターから飛び上がり、隕石にその拳をぶつけると一気に粉々に砕け散る!! 観客席は隕石の破壊に大盛り上がりだ。
『や、やりましたー!! サファイア選手、巨大隕石を着弾前に破壊成功!! 大量のカスタマイズパーツもゲットでこの短時間で一気に優勝候補に躍り出たァ!!』
「やった!! サファイアすごーい!!」
ケケやシミラ達『七彩の暴食チーム応援団』も大喝采だ。 歓喜に酔いしれる中で、サファイアは城の入り口の瓦礫を掘り進めているブレイドのそばに寄る。
「ブレイド!! 無事か」
「アタシはね。 ただこの城の中にアドレーヌが生き埋めになっちまったね。 このまま死なれるのも後味が悪いからね……」
それを聞くとサファイアもああと頷いて瓦礫の撤収に手をつける。 二人は顔を見合わせて、笑みを浮かべて囁いた。
「あのバカをケケの目の前に突き出して、謝らせてやるのさ」
「良いな、それ。 乗った」
そう言い切って瓦礫を掘り進める最中に、背後から不穏な影が迫ってきていた。 残り数メートルと言ったところで、その影はサファイアとブレイドを覆うようにーー。
「てめえの相手はボクだったろうが!!」
聞き覚えのある声に、二人は背を向けるとマルクとボンカースが目の前で交戦していた!! しかしボンカースの方は目が虚だ。 視線が定まらない中で、ガムシャラに木槌を振るっているのをマルクは捌いていく。
「マルク!?」
「二人とも用事があるなら早くしろ!! こいつ、リタイアしたと思ったら突然起きてきてこんな状態なのサ!!」
マルクの指摘通り、ボンカースは上の空の様な状態で、三人の目の前に立ちはだかる。 レックスウイリーは既にボロボロ。 マルクが何度も攻撃してきた何よりの証拠だ。
『ちょ、ちょっとお待ちください!! ボンカース選手、先ほどマルク選手にやられてリタイアしてますよ!! 早く会場から戻って……』
ウォーキーの司会の慌てようから、コレは想定外の出来事の様だ。 マイクを切って彼は運営席に駆け込んだ。
「何があったんだ!!」
「ダメです!! 失格者をワープさせる装置も、通信も作動しません!!」
「監視カメラ全て破壊されています!! 警報装置も動きません!!」
「テレビ放送を中断させろ!! こんなトラブル世界に放送したら問題だ!!」
この異常事態は、決勝参加者や運営に関わる者達だけではない。 会場に来ている客や視聴者も理解していた。
「ど、どう言う事だいボンカース!! アンタリタイアしたんじゃないのか!!」
会場に応援していたアイアンマム達『森林の暴君』と刑務官達はボンカースの異常に真っ先に気付いたグループだ。 刑務官達は舌打ちをして、呆れた様に呟く。
「この期に及んで罪を重ねるとは……ボンカースめ、我々に恥の上塗りをするだけではなく、娑婆に迷惑をかけるなど」
「うるさい、それどころじゃない!!」
『森林の暴君』の誰かが、怒鳴り散らかして刑務官を黙らせる。 最前列で見守るアイアンマムは、不安な顔つきで中継で映るボンカースを見ていた。
「いったい……あの隕石の間に何が起きたんだい?! ボンカース」
空中庭園エリア。 スノウ、レッド、グレープの三人はそこから城エリアを見下ろす様に見守っていた。
彼らの視線の先には、ボンカースとアドレーヌと対峙している『七彩の暴食』の三人。 サファイア、マルクとブレイドが睨み合う様子だ。 ボンカースらが動き始めると、そこはバトルロイヤルさながら五人が一騎打ちの様相を見せ始める。
「あの二人が足止めしている内に、こっちは準備を進めないとな」
レッドがそう言うと同時に、グレープとスノウは勝ち誇った様な顔で球体に棘の生えた鋭い触手の様なパーツを二つ取り出した。
「ボクはもう仕事終わったよ赤君!!」
「僕もね。 フロス君がよく仕事してくれたよ〜」
二人の言葉を聞くとレッドは朗らかな笑みを浮かべた。
「よし、これで後は一つだけだな。 アイボリー、反応が無いところどこにある!!」
『う〜んと、高層ビルエリアだね。 そこの一番上!!』
確かに三人の視線の先には高層ビルの頂点に青く光るコンテナが。 あそこに彼らが望む最後の『伝説のマシン』のパーツがある様だ。
「良いところは譲ってあげるよ赤君」
「ほらほら、行っちゃいなよ。 サファイア達はアドレーヌ達が足止めしてるからさ」
スノウとグレープに背中を押される様に、レッドは高層ビルに向かってワープスターを飛び出した。 グングンと距離が近づく中で、ハッキリとスペード柄のコンテナが見えてくる。
「ピンク、とうとう俺たちの目的が現実になるぞ!!」
万一のため、レッドはドラゴニックファイアのコピーを装着し、敵襲に備える。 だが肝心のサファイア達仮想敵はアドレーヌやボンカースが足止めの真っ最中。 彼に横槍を入れる余裕はない!!
コンテナに近づいた途端にレッドはクイックスピンでコンテナにぶつかる。 一回、二回!! ヒビ割れていくコンテナの中身が露呈する。 緑が基調の、カブトムシの様な勇ましいツノの様なマシンのパーツが彼の目に飛び込んだ。
その瞬間、決勝会場に不穏なファンファーレが鳴り響いたのを、誰もが聞き逃さなかった。
空は隕石が降ってきた時とは違い黒く染まり、分厚い雲が覆い隠す。 会場の事態を知らせる、客席へのアピールになるタブレットのテロップには、この試合の決着を決定づける様なワードが流れていた。
決勝戦開催 二十分経過
リタイア者 九名中一名(ボンカース)
レッド が ハイドラ を 完成させた !!!!