第四十二話 シティトライアル開幕!!
この世界にも、スポーツは星の数ほど存在する。 サッカー、バスケ、水泳、野球……それぞれの国に盛んな競技が存在し、国民はあるときはレクリエーションに、ある日は娯楽のための観戦に……様々な形で心身に影響を与えている。
そして、国や地域にもそのスポーツの得手不得手や隆盛もそれぞれ。 ある国はサッカーW杯で幾度も優勝したり、マラソンで金メダリストを次々輩出したり。
そしてそれらのスポーツや競技の頂点に存在し、プププランドのみならず、ポップスター全土で人々を熱狂しているスポーツがあった。 それこそ、サファイアやピッチも時折積極的に賭け事に利用しているーー。
第四十二話 シティトライアル開幕!!
『ご覧ください!! 四年に一度の世界の祭典ワールドエアライドカップ、今年はプププランドが開催国、既に世界中のファンが国立競技場に集まっています!!』
どこかの国の女性リポーターが、カメラの前で巨大な建造物の内部に入っていく観客をバックに叫んでいる。 この様子は全世界に生中継されており、大会期間中は視聴率も86パーセントを優に超えるというのだから、人々の注目度の高さを窺える。
このお祭りは、マスコミにとっても美味しい仕事というわけだ。
「この大会の期間中は、世界中の戦争やギルドの争いもやめようってなるほどなんだよ」
「へー。 そんな大会に参加できるなんて『七彩の暴食』って凄いのね!!」
競技場入り口付近のベンチで、ピッチとケケは観戦者の長蛇の列を見ながら会話をしている。 列の中にはエアライドマシンのお面をつけた子どもや、パンフレットを読み込んでいる大人たちと様々だ。
「ケケ、キミもその大会の参加者なんだから、浮ついたセリフは……」
「ピッくん、分かってる。 すごく分かってるから……嫌と言うほど実感してる」
そう言ってケケは黒装束を少し引き上げて、包帯が巻き付いた太ももを見せてきた。 これは激しいトレーニングの後の証拠である。
「ブレイドさん、凄い厳しかったんだもん……毎日筋肉痛でお風呂に入るのも洗面台に行くのもほふく前進しないと行けないぐらいで……」
「それ単に運動不足なだけだよね」
ピッチの情け容赦ない言葉に、ケケは耳を塞ぐ。 そんな二人の元にサファイアやマルク、ドロッチェ達が集まってくる。
「全員集合場所に集まったね」
ブレイドが中心で音頭をとって人数を確認する。 ケケ達いつものメンバーに、ホヘッドやバヘッド……デッシーやウォンキィ達と『七彩の暴食』のメンバーが勢揃いだ。
「今回は初めてのプププランド開催だからね。 自然とうちのギルドも注目度が高いよ!!」
そう、世界中の国の人達が集まるとはいえ、そこは世界大会。 プププランドのマスメディアも、自国のギルドにカメラを向けて熱を煽ってくる。
『ご覧ください!! あそこにいるのは最近話題になっている『七彩の暴食』のメンバーです!!』
「う、うわー。 凄いプレッシャー……勝手に撮って期待されてる……」
ケケは自身達に向けられているカメラに怯える様子だ。 ただそんな彼女も煽る様に、サファイアは肩を叩いて囁いた。
「活躍したら、世界中からキャーキャー言われるぞ」
青ざめていたケケの顔色に、血色が戻ってきた。 すかさずピッチが反対側から耳元で囁く。
「玉の輿にも乗れてお金に困らない優雅な人生も、夢じゃないんだよ」
ケケの口角が吊り上がっていくのが、近くからでも見え見えだった。 マルクはトドメとばかりに正面に陣取り、ケケを更に煽った。
「ギルドの人気も爆上がり、優勝ギルド所属の凄腕魔導士って肩書きも出来て、ウハウハなのサ」
「よぉーっし!! 絶対勝つぞー!!」
ケケの意気揚々と言う叫び声は会場前に響き渡った。 驚く通行人を他所目に、三人はケケの後ろで親指を立ててニヤついた。
「よし、緊張はほぐせたな」
「これぐらい調子に乗ってる方が、ケケらしいからね」
「逆に空気を飲むぐらいがちょうどいいのサ」
そんな様子をよそに、ドロッチェは三人にドン引きする様子で見つめていたと言う。
「鬼かてめーら」
競技場内部
すり鉢状の観客席から、中心部を見下ろす様にそこが今回の会場だ。
エントリーが済んだギルドのメンバーは、次々と自前のエアライドマシンに乗って空から競技場の中心へと降り立っていく。 それと同時に、観客からどこの国の誰か分かるように、スピーカーから選手紹介がなされている。
「ただいま入りましたのはアイスクリームアイランドのギルドから参戦のーー皆様盛大な拍手でお迎えください!!」
マイクに手足が生えたような一頭身ーーティンクルの男が紹介を終えると競技場から大喝采が巻き起こる。
競技場の中心は次々と参加者が降り立っていく。 その外では、参加者がマシンに乗って大会運営員から指示を受けて次々離陸して、競技場に向かっていく。 これは選手紹介を兼ねた開催式の一幕。
「やぁやぁサファイア。 君達も参加するんだね!!」
サファイアのすぐ後ろから真っ白な体躯の一頭身……スノウだ。 彼は笑顔でサファイアとケケの手を取り友好をアピールする。
「どさくさに紛れてケケにデートの誘いするつもりだろ。 それ」
「酷いな、そこまでデリカシーの無い事しないよ。 ただ今回は一緒に頑張ろうねって話をしに来ただけだって!!」
「スノウさん。 あなたもこの大会に?」
ケケの質問に、スノウは鼻下を指でなぞり、得意げになる。 そうは見えないが鼻がピノキオのように高くなってるように見えた。
「まぁね。 国の威信をかけるためなら、ってお願いは無碍に断るわけにいかないよ!! あ、そうそうさっき会場の外で美味しい出店見かけたから……」
スノウがケケに擦り寄って話しかけたのを遮るように、真っ赤な炎が割って入る。 その先を見るとーーレッドとアドレーヌ。
「お前、いつまで経ってもそのナンパ癖治らないな」
「赤君!! んもう、今ケケちゃんと良い感じだったのにぃ!!」
「アドレーヌ……あなた」
ケケはアドレーヌに鋭い眼光を向けた。 彼女にとっては旧友であり、ギルドと故郷に危害を加えた存在の一人だ。
「ケケ、久しぶり……少しは魔導士として真っ当になったのかしらね」
「ブレイドさんやドロシアさんにやった事。 謝っても絶対許さない」
ケケの言葉は『七彩の暴食』の総意だ。 サファイアはアドレーヌに噛みついてるケケを遮り、彼女を諭す。
「ケケ、大会でこいつはやっつけりゃいい」
「この子が? 私を? エアライドの知識すら碌になかった箱入り娘に……私は絶対に負けないから」
「まぁまぁ、サファイアもアドちゃんも……久しぶりに会ったんだしさぁ、難しい話は無し無し!! この後みんなで美味しいご飯食べに行こうよ」
空気を読めないのか、わざとなのか。 スノウが緊張した空気をほぐそうとしている最中、会場の観客席の最上段にスポットライトが向けられる。
「おお、間に合ったようじゃ。 開催式に」
観客席の入り口付近、モソと一人の男が出てくると会場の照明が一気に消灯する。 楕円状の競技場の中心部分にスポットライトが集まると、人々の注目が集まっていく。
「全く、こんなド派手な大会に我が社の資金を注ぎ込む羽目になるとは……」
「それがお前さんの保釈条件の一つじゃ。 それと、今回はワシから離れずにいるのじゃぞ……ハルトマン」
プレジデント・ハルトマン。 モソのすぐ後ろをついて行くように会場に姿を見せた男は、ただ一心に会場の中心を見据えていた。
「良いでしょう。 貴様が私を有効活用できるという自信があるなら……ね」
「ーーそれでは第2X回 エアライド・シティトライアル開催式並びに、グループリーグ抽選会を行います!! 司会進行はワタクシ、ウォーキーが執り行わさせていただきます!!」
司会役のマイク姿の一頭身、ウォーキーが叫んだ途端に360°の観客席から大喝采!! 同時に、ケケは東の方角から黄金の杯を抱えたティンクルがオレンジ色の五芒星に乗って飛んでくるのを見ていた。
「まずは前回大会優勝ギルド、『鋼鉄の術士』のビッグメタルン選手による優勝杯返還!! そして開催宣言!!」
ウォーキーの実況に合わせて、観客達の熱気は次々と増して行く。 地鳴りの様な絶叫に、鏡の国からやってきたシミラたちも、驚いている。
「す、すげー。 これが外の世界のお祭り……」
「こ、この大会だけが特別なのよ!! 私もまさかここまで盛り上がる大会だとは予想だにしなかった……」
「だが、だからこそサファイア殿達を応援するのに熱が入ると言うものだ。 シミラ」
「はい、ププビレッジの皆さんもどうぞ。 応援うちわです」
「シミラ殿、ダークマインド殿……そんなものいつの間に」
モソも驚くシミラ達の適応力に、ププビレッジの住民達もこの会場の熱気に飲み込まれないように必死だった。 空砲の砲弾が空をつんざく中、巨大なメインビジョンに参加者達の顔写真が映し出される。
「早速グループリーグの第一枠と競技の発表に参ります!! 参加者の皆様、客席の皆様メインビジョンにご注目ください!!」
「競技って……みんな同じじゃないんだ」
ケケの言葉に、ブレイドはああと答える。 参加者の顔写真が次々映し出されて行く中で、ブレイドは会話を続けた。
「競技はだいたい四つから五つの中から一つ。 今回は参加者がだいたい三百人ぐらいだから……一グループ七、八十人で勝ち残りを決めるんじゃないかな」
「そ、そんなに……それで何人勝ち抜けなんですか?」
ケケの質問に、サファイアがビジョンを見上げたまま応える。 彼は身体をソワソワ揺らしながら、自分が呼ばれるのを待ってる様子だった。
「ひと組生き残りが三、四人いれば多い方だな……毎回グループリーグでは全員敗退もよくある事だし」
「それ、グループ分けする意味あるの??」
ケケの疑問ももっともだった。 決勝の人数を絞るためとは言え、リーグ全滅となれば話にならないのでは? と。
「この大会はギルドの仕事のプライドを賭けた戦いでもあるのサ。 お宝争奪戦に『待った』や『ノーカン』なんて無いだろ??」
「な、なるほど……」
マルクの言葉にケケが納得していると、最後の参加メンバーの顔写真が表示された。 第一組のメンバーわけの終了だ。
「あ、ブレイドの写真あるよ」
「おやおや、先頭バッターかい」
ブレイドは少しばかり嬉しそうな表情を見せて、ビジョンの参加者……ライバルの確認をしていた。 その後ろで一部の『暴食』メンバー……ケケ達は胸を撫で下ろしていた。
「こえーこえー。 いきなりブレイドちゃんとぶつかるのだけはゴメンだわ」
「よかったなサファイア。 ブレイドちゃんとは決勝で戦う事になるな」
「……そうだな」
サファイアはビジョンを見上げて、ある顔写真に注目していた。 そこにいたのは、彼と瓜二つの……色違いのティンクルの姿……所属ギルドと名前も表記されていた。
「アイツも、参加していたのか」
観客席 最上段付近。
参加者は競技場集合がかけられているはずだが、全員が全員馬鹿正直に集まるとは限らない。 それも集合は慣例のようなものなので、観客席から自身のグループを確認するのは自由。 お咎めは無い。
その例に漏れず一人の紫色のティンクルが、グループ分けに目もくれず、パンフレットを読み耽っていた。 ある項目に目を向けると、おっと声を上げた。
「参加してたんだねー。 サファイア、『七彩の宝玉』解散以来だから……五年ぶりぐらいだね」
紫色のティンクルは嬉しそうに鼻歌混じりにパンフレットを畳んで立ち上がる。 すぐ後ろには一人の少年が立っていた。
「リーダー、グレープさん!! 呼ばれましたよ、第一組です!! 遅刻したら失格ですよ」
「はいはーい!! ねぇねぇ、僕がお願いしてた人達は呼ばれたかな?」
グレープ、そう呼ばれた青年は客席から離れて競技場に向けて階段を下って行く。 すぐ後ろについていた少年は、白い体に赤い三角の頭……ミサイルのような姿をしたティンクルだった。
「サファイアやスノウですか?? いえ、聞いた限りでは呼ばれなかったですね」
「つまり決勝戦で会えるわけだ!! 楽しみだな……ねぇミックン。 一組でいきなりド派手な事したら盛り上がるよね」
グレープは円盤に球体が旋回してるエアライドマシンを取り出してカスタマイズパーツを取り出し始めた。 横には鼻歌混じりに機械弄りをしている、淡い黄色のティンクルが、オレンジ色のワープスターにカスタマイズパーツを取り付けている。
「グレープ?? 手伝おうか?」
「大丈夫大丈夫、今回は試したい事もあるから、一人でやらせてよアイボリー!!」
そう言ってグレープはワープスターに飛び乗り会場へと走り出した。 会場へ続く通路から出口へ続く一本道。 目の前には外の光と歓声が近づいてくる。 グレープは不適な笑みを浮かべて、予選に向けて走り出した。
「さーて、ボクの爆弾に何人生き残るかなぁ??」
ーー連絡します。 予選参加者以外で観戦希望の方は観客席へ移動してください。 それ以外で準備をしたい方は控え室へご案内いたします。
「サファイア!! 早く早く、ブレイドさん達の応援に間に合わせなくなっちゃう!!」
「ちゃんと時間は余ってるよ」
駆け足でスタンドに走って行くケケをなだめながら、サファイアやマルク達はゆっくりついて行く。 その先にはププビレッジの皆に、モソやダークマインド達が待っている応援席。
「シミラさん!! 応援に来てくれたんですね」
「そうよ!! ラブリーシミラの加護をあげるんだから、負けたら絶対許さないんだから」
そう言ってシミラは一冊の単行本を取り出した。 中表紙を見るとシミラのサインが入っている。
「……嬉しい!! 絶対勝ちますね!!」
「優勝したら似顔絵も描いてあげるから」
「盛り上がってるところ悪いけど、もうすぐ始まるよ」
巨大なメインビジョンに緑や草花が生い茂る草原のようなレース場が映し出された。 スタートラインには横並びにエアライドマシンが並んでいる。
「コース:プランテス、草原をイメージしたシンプルなサークルコース!! 先に3周したエアライダー上位最大四名が決勝に進めます!!」
「よ、四人だけ!? 少なすぎない??」
「最大四人だ。 つまりライバル全員蹴落として一人勝ちも可能なんだよ」
サファイアが冷静に解説をするも、ケケは不安げにビジョンに映されてるブレイドを見守る。 ブレイドの強さは信じてはいるものの、周りも強敵揃いだろう、ケケは不安げにピッチに問いかけた。
「ブレイドさん、大丈夫だよね」
「ブレイドだから心配してないんだけどねー。 問題があるとするならば……」
シングルレース、ケケに忘れ去られていたもう一人の『暴食』の参加者がいた。 頭に泡を乗せているティンクルの男、バヘッド。
「くっくっく……俺はこの日のためにイメージトレーニングを幾度も繰り返してきた。 サファイアやマルク、ブレイドちゃんが相手だろうと容赦しねえ……そして」
先に断る、これは彼の妄想の話である。
「バヘッドさんすごーい!! 一着でゴールだなんて」
バヘッドの妄想の中では既にケケが彼に抱きついてベタ褒め状態だった。 彼は浮かれる事なく頭部の泡を髪の毛のように払ってカッコつけている。
「へっ、俺の手にかかれば、こんなレースそうめんみたいなもんだぜ!!」
「ステキ!! 速い男って私好きよ!!」
断っておく、ケケはそんなこと言わない。 全て彼の理想の流れである。
「バヘッドサン、オレト組ンデください」
「いやイヤ、俺トオレと」
「よせよ、俺の身体は一つだけだぜ!! あーっはっはっは!!」
しつこい様だが彼の妄想の話だ。 サファイアだのマルクから引っ張りだこのバヘッドは、有頂天の気分で口をバカみたいに広げて大笑い。 そんな彼を現実に引き戻すのはーー。
『あーっと!! 遥か後ろからバヘッド選手の前方に向かって爆弾が!! バヘッド選手気づいてなーい!!』
現実を引き戻すようにレース会場には真っ赤な業火と爆風が。 先頭から少し離れた所にいたブレイドは爆風と埃から腕で顔面を守ると、目の前の凄惨な光景に唖然とするばかり。
「こりゃ、派手にやってくれたね……先頭集団は全滅だ」
ブレイドの予測通り、エアライドマシンから脱落した参加者達はリタイアだ。 バヘッドも例に漏れず、口から煙を吐き出して気絶している様だった。
「な、何が……っ!?」
後方を確認しようとした瞬間、目も止まらぬスピードでそいつはリタイア者を抜き去っていった。 先頭のブレイドと距離をどんどん詰めて行く。 遥か後方には、爆発に巻き込まれずに済んだ参加者達の姿。
「あちゃー。 倒し損ねたか。 仕方ない、それじゃあ……」
ブレイドは振り向きざまに後続の一人のエアライダーの様子をしっかり確認していた。 あまりにも無慈悲な、ルール無用にも程がある攻撃は、彼女も、観客も、主催側も呆然とするほかない。
「や、やめな!! やりすぎ……」
「死・ん・じゃ・え」
どこから隠し持っていたか、もう一つ巨大な爆弾を後方に放り投げ、それは一気に燃え広がった。
会場のビジョンにも、巨大な爆音と砂埃は届いている。 一体何があったのか、そんな凄惨な光景に、参加者たちも立ち上がって見守るしかできない。
「そ、そんな!! ブレイドさん、バヘッドさん!!」
ケケの叫び声がこだまする中、砂埃が晴れていく。 ゴールラインを割ってるエアライダーは二人。 グレープと……もう一人は、ブレイドだ!!
「あんた……派手にやるにしてもやりすぎじゃないかい……これじゃあ祭りというより戦場だよ」
「申し訳ないお姐さま……僕も負けられない理由があるもんで……ライバルは一人でも少ない方が良かったんだけど」
『だ、第一組終了……シングルレース突破者、八十三名中二名!! 今から三十分後に第二組の予選を行います!!』
予定調和と言うべき、司会者の言葉の後は静寂が支配した。 そこにあるのは唖然か、恐怖か。 ド派手な試合が終了した直後、観客席からこだましたのは……。
「す、すげー!! あっという間に試合終わったぞ!!」
「コレコレ、この情け容赦無さがエアライドの醍醐味だよな!!」
「剣士のオバチャンもよく頑張ったぞー!!」
「グレープ!! グレープ!! ブレイド!! ブレイド!!」
客席からは四方八方からの大歓声。 その中で、一部の参加者たちは、客席なり控え室で一部始終を見て全てを察していた。
「レッド……」
「ああ、グレープも派手にやってくれたな」
アドレーヌは、レッドと客席から。
「んもう!! ぶどうくんったら、あんな派手にやったらボクの出番が地味になるジャマイカ!!」
「いやいや、そこかとツッコミどころ」
スノウはエアライドマシンを調整している最中、モニター越しにボヤきながら。
「おやおや、シャバのギルドは派手に動き回ってるねぇ……リーダー、準備はいいかい??」
「勿論だアイアンマム。 こっちは早くしたくて疼いてるんだ……『七彩の暴食』をぶっ潰せるなら、勝ち負けなんて二の次だ!!」
シティトライアル 予選第一組終了
八十三名中二名突破 グレープ ブレイド
ーー続いて 第二組の予選を行います。 参加者は所定の場所に集合してください。 繰り返します。
興奮冷めやまぬ客席は、この結果の受け止め方は多種多様だ。 モソはすぐさま立ち上がり、会場へ走り出す。
「ブレイドとバヘッド達の無事の確認へ向かう。 ヤブイ、ついてきておくれ」
「任せた」
「わ、我々もお手伝いします。 シミラ……」
「はい!! チップ、あとついてきて欲しいのは……」
『七彩の暴食』と『鏡の大迷宮』の応援集団も、一斉に散り散りに分かれて行く。 ビジョンには、次の予選の参加者が読み上げられている。
サファイアは観客席から立ち上がりながら、モニターにデカデカと映ったグレープを、睨んでいた。