あしかのらいぶらりぃ
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執筆者: ディン/投稿日時: 2025/05/11(日) 00:25:49
投稿者コメント:
今回から新章シティトライアル編が始まります。
シティトライアルといえばエアライド。 最近新作が発表されましたね!
絶対手に入れたいのですが、その前にスイッチ2…抽選販売と言うこともあり、手に入るかどうか本当に不安です。
第四十一話 集う実力者達
「まさか、虹の島が我々に牙をむけていたとは」
『七彩の暴食』が虹の島の騒動を収めてから数日後、ここはギルドマスターが各々の問題を相談して解決に導く、会議場。
円卓のテーブルに世界各地のギルドの責任者たちが向かい合い、今後の世界のために話し合う場所。 そこにはモソも『七彩の暴食』の
代表として、時折参加している。
「しかし、今回ばかりは『国際指名手配』の仲間に感謝しなければなりませんな……おかげで無用な戦争にならずに済んだ」
「何を言いますか!! あの時好機とばかりにこちらに連絡を寄越せば、虹の島も『七彩の宝玉』も一網打尽にできたのに」
円卓の代表者たちは、各々の考え――好き勝手に喋りたい放題だ。 彼らも、モソの話を受けて虹の島の一連の騒動の一部始終をかいつまんでいる。
そこでの彼らの言い分は、「何故あの時虹の島をこちらに引き込もうとしなかった」、「スノウを捕える好機はあったはず」――だ。
モソは半ば呆れるように腰を上げて、円卓に手のひらを叩きつけて言い分を言い放つ。
「あの時は、そんな余裕もなかったんじゃ。 それに、今の虹の島は混乱していてギルドも機能不全――こっちがむやみに介入すれば、それこそ侵略じゃぞ」
「……虹の島の組織が分裂状態で、紛争になった。 こちらへ危害が及ぶ事は暫くない……ですか」
モソの言葉を受けて、誰かが言いまとめる。 その言葉に、会議を仕切っていた男たちが柏手を打つ。
「虹の島に関しては、もう終わりでいいでしょう。 次の議題に移りたい」
「チクタク殿、タートル殿……」
モソも見覚えのある二人組――ドロッチェに『真紅の窮鼠』閉鎖を突き付けたローリングタートルとミスターチクタクだ。
彼らは分厚い書類を片手に、巨大なスクリーンに映像を投影させる。 そこには――市街地や、火山、森にお城と多様なエリアが集まっている巨大な島の姿があった。
モソも、虹の島の観光で様々な景色を見たが、一つの島にこれほどはっきりとして景色が移り変わる島は見た事なかった。 これこそが、今回の会議の肝である――。

「それでは、四年に一度の祭典『エアライド・シティトライアル』の最終調整に入ります」



   第四十一話 [  ]実力者達




 ププビレッジ 『七彩の暴食』
虹の島での争いが収まって数日後、村に帰ってきたケケ達は今日も意気揚々と歩いている。
道行く先々で、キャピィ族の皆はケケ達に景気良く挨拶してくれる。
「おはようケケちゃん。 虹の島では大変だったなあ」
「近くの村でも、評判いいよ。 ケケちゃんの事」
「今度、ウチのコンビニの新商品試してみてくれよ!!」
「はーい!! タゴさんの新メニュー、楽しみにしてまーす!!」
片手には一口サイズの春巻き、農家の作った野菜が入った手提げ袋を持ち歩きながら、ケケは住居であるアパートに向かっていた。
虹の島の話は村でも評判だ。 ケケの活躍も、しっかり村の皆に届いていて、彼女の評判は上々だ。
そんな彼女も、自慢げに『けいたいつうしんき』でもう一人の信頼できる場所に自分の武勇伝を伝えている。
「それでね、ドロシアさん!! 私、虹の島でチュチュって子とお友達になったんです」
「そうかい、それは結構だ。 アンタも頑張っているんだね」
電話の向こうの相手、ドロシアもケケの長電話に嬉しそうな声色で応対している。 ケケも、ドロシアが自分を認めてくれている事実と、自身の成長を実感しているからこその楽しげな電話だ。
「こっちはこっちで、村の復興はしっかりできてるよ――アンタは、やりたい事をしっかりやりな」
「うん……ドロシアさん、本当にありがとう。 私のワガママを聞いてくれて」
アパートの中で、荷物をリビングに放りながらケケは会話を続けていく。 彼女は他愛のない世間話、故郷の村の近況、そして虹の島で出来た友人達の話をドロシアとかわしていく中で、脱衣所に到達した。
「それじゃあ、ドロシアさん。 私一旦シャワー浴びますので」
「ああ、サファイア達に迷惑かけるんじゃないよ」
そんな時だった。 ケケの視界にふと入った足元の体重計。 彼女自身、何かが脳裏によぎった――というべきか。 無意識にそこに足が向けられていた。
あと数歩、もうそんなところまで体重計との距離が近づいた中で――ケケは踵を返す。

「……うん、きっと大丈夫。 最近仕事で動き回ってるし、気にすることないよね!!」
そう言うとケケは衣服を脱ぎ棄て、風呂場の中に入っていった。 曇りガラスの向こうで鼻歌とシャワーの流れる音が聞こえる中で、ケケの記憶には体重計の事など既に忘却の彼方にあった。



 ププビレッジ サファイアの家
ギルド、診療所、レストラン、交番、村長の家――大通りにそんな建物が両サイドに並ぶ中、裏路地にサファイアとピッチの居住地はある。
彼らは朝起きると、横道になってる裏路地を通って大通りに出て、住民やギルドの仲間に挨拶をしながらギルドに出勤する。
そんな家に、神妙な面持ちでサファイアは色々な機会を家の中に放り並べ、その中央に居座っていた。 入り口付近には、ピッチとネスパーが神妙な面持ちでサファイアを見守っている。
「サファイア、肌年齢を計測する機械」
「正常範囲内だ。 ネスパー、反復横跳び終了したぞ」
「はい、計測回数は……サファイアさんの年齢からして、運動不足どころか、元気すぎる範囲内です」
ネスパーの片手に持ってる書類は――体力測定のスコアだ。 ピッチはそのスコアを書き並べてネスパーに渡すと……彼は何やら数値を書き入れる。
「これで全ての体力測定の種目終了ですね。 肉体年齢二十代前半。 年寄りどころか現役バリバリの状態です」
それだけを聞くとサファイアはヨシ!! と、意気揚々に両頬を叩いた。 仕上げにとばかりに、ネスパーは床に術式を書くとピッチとサファイアは横並びになる。

 『七十歳以上の者は、これに触れると電撃を流す』

ネスパーの描いた術式に、警告文が現れる。 物騒ともいえる内容だが、これが今回の肝。 虹の島で書かれた術式と似た内容で、サファイアはある事を試していた。
「行くよ、サファイア」
まずはピッチが術式に足を踏み入れる。 彼は当然七十歳以上ではないので、電撃は流れない。 次はサファイアだ、彼は静かに深呼吸をして、目を見開くと――術式に足を踏み出した。
ネスパーも、ピッチも固唾をのんで見守った。 床に描かれた術式に、サファイアの足が接地するまで、数秒――その瞬間、彼の身体に、電流が流れだした。
「あぶべべべべ!!!!」
「ダメだ!! ネスパー、ストップ!!」
「は、はい!!」


 お昼時、もとより青かったサファイアの顔色はさらに真っ青になっていて、村一帯を走り回っていた。 ギルドの皆はそんなサファイアに茶々入れる暇もなく、心配そうに見守っている。
「どうしたんだい? サファイアの奴」
ギルドのカウンターの側の窓から外を覗いて、ブレイドが心配そうにしている。 ガルルフィはカバンに道具を仕込んで、彼女の問いかけに答える。
「……健康維持のための運動なんだと」
「年寄りくさい事を……まずアイツはもう少し落ち着きが欲しいんだけどね。 で、あっちは?」
ブレイドが指差した先はケケの姿。 彼女はウィングスターの前に仁王立ち。 緊張した面持ちで、彼女はマシンの上に足を踏み出すと、警告音が辺り一体に響いた。

『エラー!! 設定重量をオーバーしています。 マシンの変更か、エアライダー登録時に登録した設定体重を変更してください!!』
「いやぁぁ!! 違う、コレは悪夢です!! 夢!!」
ギルドの玄関前、無慈悲にも残酷な警報を鳴らすマシンの横でうなだれるケケに、イローらキャピィ族の子たちはうろたえる。 子どもが必死に年上のお姉さんを宥める姿は側から見ても異常だ。
「ケ、ケケ姉ちゃん……」
「あっちもあっちで悲惨だ」
ピッチは目の前の悲惨な光景を目を細めて眺めている。 かたや年齢詐称、かたや肥満疑惑。 サファイアはともかくケケのそれはピッチも身に覚えがあった。
「ねぇケケ。 昨日の晩御飯覚えてる?」
「クラウディパークのケーキ」
「ちょっと待ちな、それが晩御飯だって?」
ブレイドの目が鋭くなる。 問題の原因はあっさり解明された。 彼女は背後からケケの肩を掴んで睨みをきかせる。 背筋を貫くような悪寒をケケはしっかり感じていた。
「……今日からダイエットだよ。 いいね?」
「は、はい……」


 ププビレッジの入り口の畦道。 そこにはギルドマスターであるモソと、ドロッチェの姿があった。 二人は雲ひとつない青空を眺めながら、立ち尽くしている。
「本当に来るのかよ。 その異世界のお客さんってよ」
「おお、連絡通りであればそろそろ降りてくるはずなんじゃが……ほれ、アレじゃ」
モソが指差した先。 空からは両翼の装飾を模った黄金の鏡が降りてきたではないか。 ゆっくり降下をしていくその鏡の向こうにはひとつ目玉のようなティンクルと、魔法使いのような姿をしたヒトガタ。
「『鏡の大迷宮(ミラービリンス)』の皆様ようこそ。 歓迎しますぞ、ダークマインド殿」
鏡は水面のように波打って、そこから人々が次々現れた。 目の前の光景にドロッチェはやや息を呑む。
「いやぁモソ殿。 招待していただき感謝します」
平身低頭ダークマインドはモソに腰を低くし感謝の言葉を述べる。 後ろからは彼のギルドの関係者、鏡の国の住民達が次々現れる。
「おお!! ここが外の世界か」
「マスター、早くエアライド会場って所に行きましょう」
観光気分の彼らは大騒ぎだ。 それを抑えるように柏手が打たれて取り仕切る者が一人。
「こら、あなた達!! ここの世界の人に迷惑かけないって約束だったでしょ」
「おお、シミラ殿」

シミラ。 彼女はかつてこの村でサファイアと対立をし一騒動を起こした鏡の国の魔導士。
鏡の大迷宮(ミラービリンス)きっての主力魔導士である彼女は、この世界の案内人兼監視係として精を出している。
「すみませんモソさん……迷惑にならない様にしましので、後サファイアさんはどちらに」
「おお、サファイアなら今の時間はこの村にいるはず……」
その時だった。 モソとドロッチェの視線の先には汗だくになりながら走っているサファイアとケケの姿。 横にいるシミラ達も、その異様な光景に黙って見守るしかない。
「ど、どうしたんじゃ二人とも」
モソの心配そうな言葉をよそに、サファイアとケケは声を荒げる。
「計測だぁ、ネスパー!!」
「ブレイドさん!! 次は何しますか!!」
指示を仰ぐや否や、サファイアは機械を肌に当て、ケケは腹筋運動の体勢に入る。 モソの言葉など届いてない様子だ。
「あ、マスター、ドロッチェ。 おかえりなさい」
「ピッチ……これは一体」
もはやシミラ達の歓迎ムードもどこへやら、目の前の騒動についていけないモソは開いた口が塞がらない様子。
「かくかくしかじかで」
「……なるほどのぉ。 友好の食事会でもしようかと思ったが、それどころではなさそうじゃ」
視線の先には汗だくになったサファイアとケケ。 スポーツドリンク片手に次々と運動をこなしていく二人に、ドロッチェが近づいていく。
「ちょっとは落ち着け二人とも」
「ドロッチェさん!! でも私、このままじゃ有名魔導士になってモテモテ計画が台無しになるんです!!」
ケケは半ばすがるように叫んでいる。 汗だくになりながらも、もも上げ運動をするケケは、ドリンクを喉にかき入れて行く。
「マルクさんも最近背中に乗せてくれないし……そういえばあの時も、最近重くなったって言ってたし」
「お、おう……と、とりあえず客人が居るんだから中断しようぜ、な?」
もはや子どものお守りである。 ドロッチェはケケを宥めていると、シミラが不適な笑みを浮かべながらゆっくりと二人の目の前にやってくる。

「ふふふ……いいネタが思いついたわ。 ラブリーシミラ、肉体鍛錬に勤しむ友人を助ける話」
「シミラ、お二人は本気だからちょっかい入れるのはやめなさい」
ダークマインドは静かに彼女を宥める。 それを振り払う様にシミラは力強く啖呵をきる。
「違いますマスター!! サファイアには迷惑をかけたし、ケケは私の漫画を楽しみにしてるって言ってくれた大切な友達!! そんな二人に手を差し出さないのは、私のポリシーに反します」
シミラの目は本気だった。 漫画のネタという不純な動機はあるものの、彼女が二人を助けたいというのは本心であろう。
「シミラ……」
「頑張りましょう、サファイア、ケケ」
「はい!! 私、頑張って痩せます!! そしてーーシティトライアルの会場でたくさん美味しいもの食べます!!」
ケケの大声の宣言に、鏡の大迷宮も、七彩の暴食も一気に肩を落とす。 ピッチは呆れる様に叫んだ。
「結局食い意地じゃないかケケ!!」
どこからか笑い声も聞こえる中で、ダークマインドとモソも静かにそれを見守っていた。 それを見守るかの様に、村の住宅の上からマルクは一人静かに佇んでいた。
「……」



 エアライド。 ポップスター各地で行われている、プロアマ問わず人気のロードレース。
ルールは至って単純明快、マシンに乗って規定の周回を先にクリアしたら勝ちのレースゲーム。
エアライド自体が、知識と技量さえあれば子どもでも簡単に免許が取れるので、世界中に移動手段として普及しておりこの世界では馴染みは深い。

そんな親しみある乗り物を、さらにエキサイトな競技にしようとポップスターの国々は集まって定期的に大会を開催している。
それがサファイア達も時々観ているお金を賭けるエアライドレース。 親しみを込めて『競星』とレースファンは呼んでいる。 中毒性もあるので、子どもは賭けてはならない。
もう一つは、『国際ギルド会議』と呼ばれる世界中の国のギルドが集まって、平和のために話し合う国際組織ーーそこが開催する世界大会!!



 ホワイトウエハース……スノウの所属する『白の騎士団』のある町。
「スノウ、なんか送られてきたぞ。 世界大会の招待状だと」
アイドランとフロスの二人はギルドのとある一室。 スノウの部屋に来ていた。
ギルドのリーダーであるスノウは、それを受け取るや否や、黙ったまま目を通している。
(……何が目的なのかな。 僕や桃君の様な『指名手配犯』にこんなのよこすなんて)
スノウは、ギルドの皆には黙ってはいるが国際ギルド会議が『七彩の宝玉』と一悶着あるのは知っている。 関係者である彼がその組織の大会に参加要請されるのは、まず罠か何かを疑うだろう。


とある山岳地帯……そこのギルドはホヘッドの様なファイアの能力を持つティンクルやアニマが集まっている。 見るからに暑苦しいギルドの中に、一人緑のスモッグと紺のミニスカート、赤いベレー帽をした少女がカウンター席に座っていた。
「あっついわねー。 いつ来てもこのギルドは……冷房とか扇風機とか無いの?」
「悪いな、アドレーヌ。 そんなの用意してもすぐイカれちまうのよ。 ほらこんな場所だし」
カウンター席で飲食の応対をしてる男にドリンクを渡されて、アドレーヌは一気に飲み干す。 喉に張り付いている汗はスモッグの中に滴り、袖をめくってその場で顔を伏せる。
「レッドぉ、早く帰ってきなさいよぉ。 スノウのギルドにでも行きたぁい」
そんな弱音をはいていたアドレーヌに気づかせる様に、酒場の玄関が勢いよく開く。 一瞬静寂がすると、そこにはレッドが一通の手紙を持って仁王立ちしていた。
「アドレーヌ、そこにいたか。 仕事行くぞ」
「…へぇ?」


 ププビレッジ……ダイエットを続けていたケケはそちらに集中していたばかりか今更シミラ達に問いかけていた。
「そういえば……どうしてシミラさん達はこちらに? いや、またお会いできて嬉しいんですけど」
「観光よ、ついでにこの世界でやるって言う『大会』にも興味があったからね」
「おお、そうじゃ。 ウチのギルドにも関係があるから、発表しようとしてたんじゃ」
モソはそう言って一枚の紙切れを持ち出した。 いつの間にか、彼らは『七彩の暴食』『鏡の大迷宮』無関係に集まってそれに注目していた。 そこにデカデカと様々なマシンが描かれていて、目立つ文字でこう告知されていた。


 ーー第2X回 エアライド・シティトライアル開催!! 参加ギルド募集中ーー

 ーー各地のエアライダー集え!! 地域の栄誉とギルドの誇りを賭けて、闘星開始ーー

「……これ、シティトライアルのチラシですよね? これが一体……」
聞き慣れない言葉に、ケケは首を傾げる。 ピッチもチラシを見るや「ああ」と声をあげて察した様子だ。
「まさか」
モソは待ってましたとばかりに、白髪の眉から眼光を覗かせて言い放つ。
「今年のシティトライアル、プププランドが主催での。 そしてーー開催国枠に……『七彩の暴食』が選ばれた!!」

「おお!!」
そう歓喜をあげて飛び上がるのはギルドの皆だ。 周囲から拍手喝采、指笛も飛び交う中でサファイアは柏手を打って笑みを浮かべる。
「おい、マルクはどこだ!! あいつにも知らせてこいピッチ!!」
「わ、分かった!!」
ピッチはサファイアに言われるまま急いで小走りに飛んでいく。 エアライドには疎いケケだ。 彼女は何が凄いのか理解できずに置いて行かれている。
「あ、あのブレイドさん……コレって一体」
「まぁ……ケケも参加するかもしれないから、今から知っておいた方がいいさね。 グルメレースや格闘王なんて目じゃない、世界規模の大会。 色んな国や組織が世界一目指して競うんだよ」


 バタービルディング バトルクラブ
サファイア達と虹の島のチケットを取り合ったギルド。 彼らの元にも、『世界大会』の一報は届いていた。
「世界一を決める大会!? こんな大会に参加しないなんて『バトルクラブ』の名が廃るよなぁ!!」
サファイア、デッシーの二人とやり合った男ナックルジョーは、ギルドの中心で勢い良く叫んでいた。 それに呼応する様にギルドのメンバー達は彼に喝采だ。
「頼んだぜ、ジョー!!」
「今度こそギルドに世界一を!!」
この様な形で、様々な国々地方のギルドは既にお祭り騒ぎだ。 エアライドの腕試し、そして彼らギルドの誇りを賭けてーー様々な思いが交錯する!!



 サファイア達ププビレッジから遠く離れたある刑務所。
そこには一人の刑務官が、一枚の書類を持ってある檻の前に立っていた。 そこはある集団達が収容されてる場所。
「……と、言うわけで今回の大会にウチからも出ませんか? と、お誘いがあったわけだ」
牢屋越しから、チラシを受け取った囚人達は集まってそれを見ている。 それはサファイア達も読んでいた『シティトライアル』のチラシだ。
「ウチで暇してるのはアンタらぐらいだ。 この大会で目立てば、仮釈放も考えてやらんことも無いと署長も仰ってる」
刑務官の言葉を聞き流しながら、囚人達は黙ってチラシの中身を読んでいる。 その中で一人の女囚人が、質問をした。
「この肥溜めな場所の広告塔になれって話じゃないか」
「馬鹿いえ、刑務所広告して行きたがる奴がいるか。 それは建前だよ」
嘲笑する職員に微動だにする事なく、チラシを持っているリーダー格のアニマの大男。 ゴリラにそっくりな体格の男は静かに笑って真意を読み取った。
「つまり、正規ギルドをたてるための『やられ役』になれって事か」
「ああ、スポンサーとしてうちも一枚噛んでいるんだ、観客を楽しませてくれたらそれで良い」
職員の言葉はもう、彼らが敗退すると決めつけてる。 だからこそ『仮釈放』なんて条件もあっさり出せるのだ。
「参加するギルドは、世界各地からーーと……ってギルドに、後……」
看守が次々列挙するギルドは、彼らにとっても有名どころばかり。 周囲が萎縮していく中で、リーダー格の男と女囚人は、あるギルドを聞いた途端目の色を変えた。
「まぁ、せいぜい楽しませてくれよ。 あっさり負けたらつまらねえ」
報告終わりとばかりに、小馬鹿にする様子で檻を出ていく看守の笑い声など、彼らには既に耳に届いていない。 檻が閉められる音をよそに、暗い監獄の中で男は静かに笑みを浮かべていた。

「それじゃあその日は頼んだぜ……『森林の暴君』のボンカースさんよ」
「ああ、楽しみにしていろクソ職員ども」
 ボンカース。 サファイアにギルドとしての活動を奪われた男には復讐の炎が湧きあがっていた。
握り拳を壁にぶつけて、ボンカースは不適な笑みを浮かべて、つぶやいた。
「待っていろ……『七彩の暴食』!!」


   第四十一話 集う実力者達

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