あしかのらいぶらりぃ
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執筆者: ディン/投稿日時: 2025/04/14(月) 15:35:11
投稿者コメント:
今回で『アニマ連合編』は終幕です。
本当はもっと早く終わらせるつもりでしたが話が風呂敷広げすぎてしまい、収束に時間をかけてしまいました。
次回は新章に入る前に短い話でも入れられたらと思っています。
第四十話 大団円
「カインからの連絡だ、国王は無事だってよ」
「オレ、コノ島守ル。 悪者、許さナイ」
クー派の動乱を抑え込む、二つの影!! 力自慢の二人は、この混乱を止める砦となっていた。
リックとゴルルムンバだ。 戦艦ハルバードがレオンガルフのもとへ行くのを援護するように、クー派の兵士達を力づくで抑え込んでいる!!
「最近、筋トレばっかで実戦は少なかったからなぁ……同志をいたぶるのは心無いが」
「デモ、戦エナイ市民狙うの、許さナイ。 オレとリックが、守る!!」

「……リック様ぁ!! ゴルルムンバ様ぁ!!」
クー派から逃げ惑っていた市民たちは、一気に大歓声だ!! そして国王派の兵士たちも、これ以上ない援護をもらい気力を吹き返す。
そんな姿を見て、先ほどまで二人と戦っていたスノウは中央に陣取り、手を突き出す。 意気揚々と彼は叫んだ。
「さぁ、お膳立てはしたよ!! サファイアにピッチ君!!」
「お前今までどこにいたんだよ」
すぐ横にフロスとアイドランが、厳しい突っ込みを浴びせていた。



「おお!!」
サファイアはしがみついた尾をよじ登りながら、クーが落ちていくのを見届けていた。 ダイナブレイドの背中には、仁王立ちして何が起きたかわからないといった表情のピッチがいた。
「やったぞ、ピッチ!! お前が、クーを倒したんだよ!!」

「うん、わかってる。 けど……ダイナブレイドは、クーの指示を聞いていたはずのこいつは、何で止まらないんだ」
ピッチは、現状の違和感を把握していた。 たいようのゆびわで動いていたダイナブレイドは未だに進撃を止めない。 急上昇と下降を繰り返し、島々の破壊を繰り返す。
「ピッチ、もう一度だ!! 重力魔法で、コイツを押しつぶして!!」
「ダメだよ、コイツの図体じゃ、時間がどれだけかかるか、それまでに被害が!!」
「じゃあどうすりゃいいんだよ……」
ダイナブレイドの上でサファイア達は成す術なし。 時間だけが悪戯に過ぎていく中で、ダイナブレイドはどんどん進行を続けていく。
被害は拡大していく一方だろう。 ピッチ達は比べようもない巨体では地上からの反撃も虚しいだけだ。
と、そこでサファイアは手のひらから冷気を全開させる。 虹神の身体に広がるそれに、ピッチも気づかないはずはない。
「こ、凍らせる気?! どれだけ時間がかかるか……」
「黙ってろ!! これしか思いつかなねえ」
その時ダイナブレイドに並ぶように、マルクが飛んできた。 彼の後ろにはケケが乗って突風に耐えながら二人に向かって叫ぶ。
「サファイア、ピッ君!! 一つ思いついたの!! 虹神様を止める方法!!」



「虹神様とクー様の援護をしろ!! 余所者を排除だー!!」
地上と空中ではクー派による反乱でごった返しだ。 『七彩の暴食』はじめの連合軍は必死に押さえつけているが、以前相手の士気も下がらない。
「くそっ、こいつらいつになったら諦めるんだ……よ!!」
ホヘッドが怒り任せに炎をまき散らし、ネスパーも超能力で必死に相手の動きを止める。 各々が特技で必死に反撃に転じてるが、体力にも限界が近づいてくる。
「頑張れ!! サファイア達がきっとなんとかするさ!!」
スノウは一人余裕と数十人を相手に凍結させている。 彼一人で広範囲に止める様子を見て、デッシーが何かを思いついたようだ。
「そうだ!! ネスパー、皆を宙に浮かせろ!!」
「え!? デッシーさん……何を!?」
時間がなかった。 ネスパーは言われるままにスノウやホヘッド達を念動力で浮かばせる。 ブレイドは一人地上に残るデッシーを見守って叫んだ。
「デッシー!! 何する気だい!?」
「こいつら一気に……片づける」
「一人残して逃げたぞ!! コイツをまずは片付けろ!!」
と、クー派がデッシーを取り囲んで飛び掛かったその瞬間!! デッシーは力一杯パンチグローブを地面にたたきつけると地表に放射線状に伸びるように亀裂が広がった。
それはあっという間に割れ裂けて、足を取られたクー派は一気に転がり足止めを食らう。
「よっしゃあ!! 今だお前ら!!」
「ぐわああ!!」
力自慢のデッシーの揺さぶりに、相手はただ困惑するのみ。 それを好機ととらえて、スノウやネスパー、ブレイド達は各々立ち止まった相手を抑えつけた。
「殺しはしないよ。 お前たちの負けさ」
剣を首元に突き付けて、ブレイドはささやいた。 悔しがるクー派を尻目に、ホヘッドとバヘッドはデッシーを肩車し、片手を持ち上げる。
「流石俺たちの格闘王!!」
「いよっ、デッシー監督のプププ一〜!!」
楽しそうな声をする横で、スノウは明後日の方向を眺めていた。 視線の先にはうなだれるクー派を取り囲むリックとゴルルムンバ。
「あっちも終わったみたいだね……さぁ、残りは上か」
地上を見上げる中で、ダイナブレイドにまとわる小さな影。 その違和感は『七彩の暴食』の皆はすぐに気づいた。
「ケケ……?!」


「おらおら、早くこっちに来るのサ!! 化け鳥」
ケケとマルクはダークキャッスルの広場を外れて海の方へと飛んでいく。 それを護送する様にサファイアとピッチはウィングスターで並走しつつ、ダイナブレイドに冷凍光線を当てていく。
その様子はハルバードにも見えていた。 彼らの針路とサファイア達の向きは一致している。
「一体何をする気だ?」
バルが双眼鏡で見守りながら呟いた。 メタナイトもそれを見守りつつ、部下の報告を受けている。
「二連主砲、整備完了しました!! いつでも発射できるダスよ」
「ご苦労。 本艦は引き続き虹神を追尾せよ」
「了解です――あっ!! ケケさん達が」
アックスが目にした光景。 ダイナブレイドの足元に潜り込んだマルクは、そのまま真下に落ちていく。 やられたと考えるのが賢明か。
「すぐに助けに行きましょう!!」
「いや、待て――目前にアイスバーグだ!! すぐに二連主砲発射用意せよ!!」
目の前には流氷が広がる大海原。 アイスバーグ海域に出たのだ。 甲板に飛び出したメタナイツは備え付けられた二連主砲の準備にかかる。
と、その外に広がる光景は彼らの目にとどまった。 ダイナブレイドにまとわっていたクー派を薙ぎ払うサファイアとマルクの姿!!
相手のマシンを奪い取っていたサファイアは次々と相手を甲板へと撃ち落としていく。 そしてマルクは、エアライドマシンを冷たい海へとドンドン突き落としていった。
「あらよ、いっちょ上がりなのサ!! アックス、いいところに来たのサ。 こいつらふん縛れ」
「え、はい!!」
甲板には武器も空へ飛ぶ足もない無力化したクー派が落ちていく。 好機とばかりに甲板からメタナイツの兵士が飛び出して、一気に取り囲む。
「お、おのれ……!! クー様や虹神様が黙っていないぞ」
「負けたんだよ、お前たちは」
とどめとばかりに、彼らの足元を冷気が纏わりつき氷結させる。 サファイアは懐から携帯通信機を取り出した。
「メタナイトって奴と話がしたい」
「こちらメタナイト。 君がピッチ君の友人の――」
「話は後だ!! 今すぐダイナブレイドの脚めがけて、ワイヤーをかっ飛ばしてほしい!!」
サファイアの突然の提案に、メタナイト達は呆気にとられる。 すぐ横にいたバルはメタナイトに囁いた。
「いかんですぞ、確証もない唐突な作戦は、余計な浪費につながるだけ」
バルの提言はもっともだった。 二連主砲のアームで掴みかかるのは簡単だが、相手は力有り余る状況。 逆に戦艦が引っ張られる恐れが大きい。

「……いや、君たちに賭けてみよう。 全ての責任は私が取る」
次の瞬間、二連主砲から鋼鉄のワイヤーが飛び出した。 それはあっという間にダイナブレイドの脚にまとわりつくが、その巨体に船が引っ張られる。
「なんじゃこの紐は、うっとおしい!!」
「いいぞ、そのまま切り離せ!!」
サファイアの指示通り、ワイヤーを分離させると虹神の脚にそれはぶら下がる。 好機とばかりにケケを乗せたマルクがそいつに最接近する。
「ケケ、頼むのサ」
「了解です!!」
ワイヤーを見事に掴んだケケはそのままダイナブレイドにぶら下がる状態になる!! マルクが一定の距離まで退避するとケケの手から電撃が走り出す。
「エネルギー……全開!!」
次の瞬間、ワイヤーからダイナブレイドの脚と電撃が走り出す!! そいつはあっと言う間に体全体を駆け巡りダイナブレイドは感電する!!
「ぎゃああああああ!!」
その様子は地上からも見えていた。 突然の稲光が虹神ダイナブレイドを覆いつくし、悲鳴を上げる姿!! クー派も、国王派も、国民皆が見守っている。
甲板から見下ろすレオンガルフ、ナゴ、そしてチュチュも――。 この様子を、ただ見守るしかできない。
少し前なら、信仰する神の危機。 否が応でも救いの手を差し伸べに行くところだったが――彼らは分かっていた。 全ての過ちを。
「……国王様」
「終わったのだ……全てが」

近海から顔を覗かせて、電撃に焦げ行くダイナブレイドを見上げるは、カイン。 その周りには、彼が避難させていた海の中で暮らす同志アニマ達が不安そうに見上げていた。
「……これで、本当に良かったのかな。 君がここにいたら、同意してくれるかな」
カインの瞼には、かつての故郷の姿が浮かんでいた。 綺麗だった海の底。 次々と海上から海面へと落ちていく地上のゴミ。
――そして、それに怒りを見せていた旧友達に……。
「僕は、何も変えられなかった。 一人じゃ何もできなかった、あの日勝手に飛び出した僕を、許してくれ……スイートスタッフ」

「おのれ……これしきの電撃で、わらわが負けるとでも」
クチバシから焦げた息を吐き出すダイナブレイドの脚めがけて、ピッチが真っすぐ頭から飛び降りていく!! 脚のワイヤーをしっかり掴みかかると、彼の体躯は一気に超重量となり、ダイナブレイドを一気に引っ張った。
「これで――おしまいだぁ!!」
猛スピードで落下していくピッチに引っ張られるように、ダイナブレイドは尻から海面に一気に着水する!! そのまま成す術がないまま、ダイナブレイドの頭はアイスバーグの流氷に打ち付けると、白目をむいて――海中に引きずり込まれる!!
それはまるで巨大な水柱――しぶきと地鳴りが響くと水しぶきが雨の様に一帯に降り注いで空に綺麗な虹を描いていった。
「……やった。 ピッ君、ピッ君が倒した!!」
ケケの歓喜を待っていたかのように、ハルバードや空中一帯から歓喜が響いた。 その歓声の中で、お腹を向けて浮かんでいたダイナブレイドの上にピッチはよじ登り、凍えた身体を震わせながら、親指を突き立てた。



  第四十話 大団円





 ダイナブレイド落下地点――その近海。
レオンガルフの指示の下、兵士達が小舟を出して辺りを見渡す。 やがて、一人の兵士が海に浮かぶ影を発見する。
「いました!! クーです、生きています」
『よし、しっかり回収しろ。 奴は反逆罪で逮捕して終身刑だ』


「虹の島の皆さん!! もう安心です!! 虹神様は鎮まりました!!」
リックとゴルルムンバは円陣の中心に陣取り音頭をとる。 その前には、クー派と呼ばれる兵士達を取り囲むように国王派だ。
そんな様子を空中から、ハルバードで見下ろしていたメタナイト達は見守る。
「いいのですか? このまま帰って」
艦長バルの疑問に、メタナイトは一言「ああ」と肯定して答える。 彼の眼下には、『七彩の暴食』や『白の騎士団』がアニマの皆に取り囲まれてお礼を言われる様子が見えている。
「我々の目的は果たされた。 何も知らない国民に、必要以上に恐怖を煽る必要はない」
「確かに……ダイナブレイドを放り投げた戦艦がやって来た等、パニックにしかなりませんな」
「ああ、しかし――随分と良い仲間に恵まれたではないか」
メタナイトはただそれだけを言うと一点を見下ろしていた。 視線の先には――『七彩の暴食』『白の騎士団』の集まりの中心……群青のティンクル、サファイアの姿。
仮面の奥から笑みを浮かべると、メタナイトは背を向けて艦内へ戻っていく。 目的を果たした以上長居する必要はないと言う事か。 ハルバードは静かに浮上しウィングを起動させる。
「帰って艦の修繕だ。 指針をオレンジオーシャンへ」


「悪かったわね、チュチュにケケ……貴方には酷い事を」
キャロラインとナゴは、チュチュとケケに頭を下げている。 傷だらけのブレイドを魔法で手当てするケケは、笑顔を浮かべてピースをする。
「私も、アニマだって嘘をついて潜入調査してたし、お互い様よ」
「本当に無茶をするね。 マルクやピッチに付いてないで一人で出歩くなんて!!」
ブレイドの𠮟責にケケは怯むが、それを見てチュチュは笑みを浮かべる。
「あっ、何で笑うの!?」
「だって、あなたとブレイド……親子みたいで……くくっ」
「おやおや、こんなデカい悪戯娘、手が焼くから面倒だねえ」
ブレイドがそう言ってケケを弄ると、彼女は頬を膨らませてみせる。 真っ赤な顔なケケを見て笑うチュチュに、ナゴは後ろから問いかけた。
「チュチュ、おミャー……どうするんだニャ」
「え? それってどういう」
ナゴの言葉に、キャロラインも同調した。 チュチュの様子を見て誰も気づかないわけがない。
「貴方はきっと、あの子達と一緒の方が幸せよ……ここは住みづらかったでしょ?」
キャロラインの言葉に、チュチュは否定できなかった。 半端ものという言葉に、彼女は苦しめられてきたがケケやサファイア達と一緒にいる事でその苦しみはなかった。
きっと、彼女は虹の島を出た方が――それが、二人の考えだった。
「そうね……でも、ここでもやるべき事ができたわ」
チュチュはそう言うと、ケケ達の方へ振り返る。 彼女は自信満々な表情で宣言した。
「この島を、『アニマ連合』を、差別のない場所に変えていく!! それができるのは、アニマとティンクルの半端ものに生まれた私にできる仕事だと思うわ!!」
「チュチュ……それ、凄い素敵な夢だと思う!!」
ケケも笑顔で、彼女の宣言に同意する。 そして、二人はしっかり握手をして約束した。
「次はププビレッジに遊びに行くわね。 そしてこの島でも『七彩の暴食』やそのお友達を大歓迎できるように、私も頑張る」
「分かった、私も立派な魔導士になって『アニマ連合』のお仕事手伝えるように頑張るわね」
ケケとチュチュ、女同士の硬い約束にブレイドやナゴ達はやれやれといった表情で、笑っていた。
「やれやれ。 ここと村の渡航費、どれだけかかるか知らないだろう」


「おっしゃあ!! 俺の勝ちだぁ!!」
両手にデザートを頬張りながら、ゴールテープを切って到着するサファイア。 観客のアニマ達も大いに笑ってその様子を眺めている。
「いやー、サファイア選手見事に一着。 食べたデザートの合計点もダントツです。 さすが優勝候補」
「ねぇ、何でププビレッジの『グルメレース』をやってるのサ」
マルクの疑問はもっともだった。 虹の島で、ププビレッジ名物をやる物珍しさに観客は大うけだが、マルクには『せっかく観光に来てまで』な話だ。
「二つのギルドの友好に乾杯だ」
とは、リックとサファイアの言葉だ。 ここぞとばかりに虹の島の腕に覚えのある料理人達は会場に集結し、次々と料理を作っていく。
「チュッポー!! 次はオイラが勝つぞ!!」
「リック、次、オレの番」
異国の競技に、虹の島のアニマ達は大いに盛り上がる。 マルクはその様子に呆れながらも、サファイアやリック達の後ろに着いて行った。
「ボクも混ぜろヨ、今度は」
そんな騒がしい様子を見ながら、海水に浸かっているカインと、砂浜に居座るピッチとドロッチェ。 三人は静かに離れた場所で会話をしていた。
「……おかげさまで、この島を戦争から守る事が出来ました〜〜、ありがとうピッチ、ドロッチェ」
「俺は何もしてねぇ。 全部ピッチやサファイア達のおかげだ」
ドロッチェはそっぽを向きながら、カインに返事をする。 照れ隠しなのだと、横にいたピッチは気づいている。
「正直じゃないねえ。 どういたしまして、でいいのに」
「バカ。 こっちはギルドに逆らった身だぞ」
ドロッチェも、故郷への進軍を阻止する為とはいえ、レオンガルフに逆らったのだ。 混乱に乗じてはいるが、本来なら許されるはずもない。
かといって、現状『アニマ連合』も半ば分裂状態、どさくさに紛れて逃げる事は不可能ではないが。
「でもね、『アニマ連合』だって海の向こうに戦争仕掛けようとしたし、お互い様じゃないかな。 どうしてもっていうなら、ボクが助けてあげるよ」
ピッチはそう言うと、ドロッチェのシルクハットの上に飛び乗り胸を張る。 その時だ、彼らの背後に二つの影――モソとレオンガルフだ。
「ピッチ、ドロッチェよ。 少し良いかな」
「マスター、国王様も」
レオンガルフは、三人の前に立つと頭を下げて地面につける。 土下座の形に、三人は驚くがすぐさまレオンガルフは顔を上げる。

「諸君らには、混乱を招いて申し訳ない。 全てこの島の責任だ、全国民に代わって、謝罪する」
彼の言葉は本心だった。 いつの間にか彼の後ろにはキャロライン達も集まっていて頭を下げている。 ピッチの後ろにはサファイア達が集まっていた。
「『七彩の暴食』、『白の騎士団』、『メタナイツ』……君達には、感謝してもしきれない。 復讐など何の意味も持たない、当たり前の事実を気づかせてくれて、ありがとう」
そう言うと、改まって『アニマ連合』の皆の頭を下げた。 圧巻の光景に、ピッチ達も声が出ないがキャロラインが続けて口を開ける。

「この島に来た時の、不当逮捕と冤罪。 許されるとは思わないけど、取り消すわ」
「こいつは、心ばかりのプレゼントって奴だ。 今度来た時、ぜひ寄ってくれ」
リックから受け取った紙切れに、ケケは目を輝かせる。 それは彼女がこの島で楽しみにしていた――。
「クラウディパークのケーキバイキング!! 年間招待券!? 行きます、今から行きます!!」
「ケケ、落ち着け」
マルクの突っ込み代わりの蹴りに、ケケは声を詰まらせる。 その漫才に、チュチュも、キャロライン達も皆が笑顔だった。
「楽しそうだな、外の世界のギルドの皆も」
どこからか、アニマの誰かがそんな言葉を漏らした。 それを聞き逃さなかったチュチュは国王レオンガルフに声をかける。
「国王様、ギルドのクエストに外界のお仕事って、受注できませんか?」
「ああ……今まではそう言うのは破棄していたのだが――今度から受けてもいいかもしれないな」
「よぉし!! それじゃあ今からおれ達とクエスト行ってくれるアニマこの指とーまれ!!」
意気揚々と指を掲げるホヘッドに、ブレイドがため息交じりに剣を突き立てる。 どすの利いた声で、ハッキリと囁いたのだった。

「あんた、仕事さぼりたいだけじゃないのかい!?」
「しまった、バレた!! どうしようバヘッド」
「俺に押し付けるなぁ!!」
『七彩の暴食』のお騒がせコンビ、ホヘッドとバヘッドにあきれ顔の様子を見てスノウは好機とばかりに挙手をする。
「それじゃあ、この雪の王子様とデートしてくれるカワイ子ちゃん、募集しまーす!!」
「もう仕事関係ねえじゃねえか!!」
フロスとアイドランは背後から後頭部を容赦なく打ち付ける。 スノウのボケにこなれた様子で処理をしたのを見て、サファイアはおおと感嘆をあげる。
「その調子で、この島に埋めて帰ってくれねえか」
「酷い!! 僕は一応先輩だよサファイア!!」

虹の島に、様々な笑い声がこだました。 もう、ここに昨日までの争う空気はない――姿形が違えど、いつかは必ず分かり合える日が来ると、ケケは確信したのだった。





 ――こうして、虹の島の長いようで短い旅行は終わりを迎えた。 帰路の飛行機の中で、ケケはお土産の山から菓子を広げてどんどん頬張っていた。
「ん〜!! 美味しい、七つの島の珍味、ご当地グルメ、暫く堪能できないのが惜しまれる〜!!」
「またそんなに大量に食って……ケケ、太っちゃうよ??」
ピッチの無慈悲な突っ込みと、ケケの喧騒が聞こえる中で飛行機の窓から空を見下ろしていたサファイアの顔をマルクは覗き込む。
「つまんない顔してどうしたのサ?? もしかして忘れ物」
「ちげえよ。 そんな事じゃなくて……そう、あれは」
サファイアの記憶の中、この島で起きたことに、一つだけしこりの様なものが残っていたのだった。 それは、サファイア自身もわからなくて、あの後スノウに聞いても何も帰ってこなかった一つの謎。



 ――『国王とその支持者、『70歳以上』の者はダイナブレイドに乗り込む事を禁ずる』――



(俺は、ピッチやケケ達と……大して変わらねえ歳のはずなのに……何なんだ、このモヤモヤは)


サファイア自身が感じたその違和感は、取れる事はなかった。 今も、そして――『あの日』まで。

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