ディメンションドア
バァン!!
黒い羽がまいおちるBAR内で銃声が響きわたる。
一般民は大騒ぎ。
銃声なんてよっぽどの事がなければ聞くことがないからである。
しかし翼狩りは別だ。
欲の為に狩る彼等は引き金を引くのに躊躇いなどあるわけがない。
悲鳴なんてものは彼等の耳に入らない。
入るのは欲を満たす瞬間の銃声。
聴いて当たり前なのだ。
「ちっ!逃がしたか!」
男が銃を投げ捨てて呟く。
「静かにね。慌てても意味ないよ?」
女の子が男を慰める。
こうしてBARは静けさに包まれた。
「おいリアン!ちゃんと前見ろ!!」
警告を促す声。しかし遅かった。
「うわっ!?」
ドン!
前方の木に物凄い勢いでぶつかった。
「イタタタ…」
頭を押さえるリアン。たんこぶで済んだのが幸いか。
「はぁ…ちゃんと前見ろって言っただろ。」
クロウィがリアンの手当てをしながら怒る。
「ごめんごめん!飛ぶのにあんま慣れてなくてさぁ。本当ごめん!」
このチャラ男め……
クロウィの中でそんな思いが膨らんでいったのは秘密。
「そういえば、クロウィ知ってるかい?ディメンションドアのこと。」
すっかりこぶがなくなったリアンが聞く。
「確かこの世界とは別の世界に行ける扉だろ。しかしここ最近は行方不明らしいが。最近は物騒だからディメンションドアでさえも隠れてるのかもな。」
クロウィがある程度説明する。
するとリアンが信じられない事を言った。
「実はそのディメンションドア。とある森に存在しているんだ。」
さほど重要な事では無いと一般人…下界の者達は思うだろう。
しかし空の民にとってはとても重要なのだ。
ディメンションドア。それはこの世界と別の世界を繋ぐ橋のような物。
しかし繋がっている場所は固定していない。
それはどの世界にも行ける可能性ということでもあり、別の世界からの襲撃を受ける可能性もある。
空の民は戦闘能力の個人差が激しい。
大木2つや3つを軽く倒す事が出来る者も居れば、小石1つ浮かせる事も出来ない者もいる。
大抵の空の民はその中間である。
その為戦力になる空の民はとても少ないのだ。
「マズイんじゃないか?それを知ってるのは王国の奴等だけのはず。」
そう。リアンが言っている事は王国の一部の空の民しか知らない極秘情報。
それを何故知ってるのか……
「まさかお前……」
「はいハズレです」
何処からともなく声が響き、黄色の羽が落ちてきた。
「彼は僕と同じ役柄ではありません。彼は一般民です。」
聞き覚えのある声が聞こえてくると同時に綺麗な黄色の翼がたたまれる。
ずっと黙っていたリアンが口を開いた。
「カネ…リオ……。」
それはとても小さい声だった。
「リアンさん。何処でその情報知ったのかは分かりませんが、あまり話さない方が自身の為ですよ。こっちも色々と忙しいので、余計な仕事は増やさないでもらいますか。」
警告はちゃんとリアンに聞こえたのかリアンは何も言わずに頷いた。
「無視されると、女は焼きもちをやくんだ。そこらへん、まだリアンの方か分かってくれてたなぁ。」
カネリオがその声に気付き振り向くと
風切リ刃を構えたクロウィがカネリオを見据えて立っていった。
「結構色男なんだから、そこらへんもう少し気を使かわなきゃ。モテないぞ」
って事実私もモテないのだが………
言った張本人もモテないという事実。
「これだから女性は嫌いなのです。勝手な思い込みをして、男性を困らせる。って僕男性と言われるほど育ってはいませんがね。」
カネリオはそう言いながら細い長剣を取り出した。
綺麗な黄色の翼が広げられる。
それと同時に漆黒の翼が広げられる。
「お喋りはここまでです。そろそろ仕事に移らせて頂きます。」
深い森の中、剣と剣がぶつかる音が響く。
リアンはそれを、ただ黙って見ることしか出来なかった。