たわわに実れ、火事の実や
「たわわに実れ火事の実や」
なんだ、ここは、真っ暗じゃないか…………っー頭が痛い……。
うっうっ、ぐすっあ、ぶあああぁ
誰かが泣いている。うるさいなぁ……。
暫く歩いていると真っ暗だったはずのボクの前に家がある、真っ暗なのにはっきり見える。はっきりわかる。ボクの目の前の家は
焼けている。
ボクは何も感じない、感じないのだ。あれだけ豊かな感情を持ったボクが何も感じない。
気づけば、さっきの泣き声も聞こえない。静かになっていい。
ボクは考えた
もしも、この家がボクの家だったら……
もしも、あれは、ボクの為の泣き声だったら……
もしも、もしも……
たくさんの「もしも」と頭痛を抱えながらボクは知らない……真っ暗な空間をあてもなく歩いていた。もうどれぐらい歩いただろうか……それにしても、足が痛くならない。こんなにも歩いたというのに……この頭痛もあまり苦にならない。あんなにもひどい頭痛だったのに……
ボクは走った。ひたすら走った。たくさん走った。ポップスターを一周できるのではないか?と自惚れてしまうほど走った。けれど、走ってどうにかなるわけでもなかった。
何も感じない自分が鬱陶しい…憂鬱だ…ボクはまた、逃げるように走った。いや、逃げた。鬱陶しい空間から逃げた。何も感じない…どこからくるわけでもない恐怖はボクを飲み込んだ。ボクは何も感じないはずなのに叫んだ。叫んだ。叫んだ。叫んだ。叫んだ。
「うああぁっぁぁぁぁあああぁぁぁあぁあぁぁ」
と泣き叫んでいる間に、ボクの背後にまたあの焼け焦げた家が現れた。
そこに、ボクに似た誰かがいた
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「…!!?」
ひどい寝汗とともに目が覚めた。いつもの…感情豊かな自分に戻っている。自分で言うのも変だが、
「なんだったんだろう……」
今自分はポップスターが無音なことに気付き、旅の途中で野宿しているところだった。まだ夜中だ。出かけるには早い。もう一度眠ろう。
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カービィは夢を見た。とてもとても長い夢。時計台が狂っていた夢、春に雪が降っていた夢、春夏秋冬日記帳の夢を見た。カービィはそのまま夢を再生し続けた。いままでここで話したこと全てが夢ではない。ドロシアの事は本当だよ。ドロシアがカービィに夢を見せた。夢をみせることで、苦しみを共有しあったつもりなんだろうね、
みんなも、夢を大切にして何者にもとられないようになろう
ボクはもう寝るね。おやすみ。さようなら