あしかのらいぶらりぃ
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執筆者: ディン/投稿日時: 2023/06/20(火) 02:27:05
投稿者コメント:
ディスカバリーのボスキャラ達はアニマ連合の設定を考えてる時にとても良いタイミングで出てきてくれました(裏話)

流石に全員絡ませられるかはわかりませんけど、虹の島編でリックやクー達の他にギルドの中心メンバーっぽい!! ってキャラクター達の登場はゲームをプレイしている時から色々妄想していました。
第三十三話 バレた!!
「アニマ連合から脱出できるって……まさか彼女、アニマじゃねえのか?!」
牢屋の中にいる『七彩の暴食』の一人がチュチュを見て叫んだ。 少し騒がしくなった室内で、チュチュは狼狽えながらも、ブレイドは冷静だ。
「ティンクルの特徴は、一頭身の背丈に手足に指先が分かれてない事。 アタシやケケ、マスターの様に、一頭身でなく翼やウロコといった特徴が薄いのはヒトガタ」
「そして、アニマとはウロコや羽毛、エラ呼吸ができる海中や空中でも活動ができる者の事を指すのじゃ」
マスターのモソが、ブレイドの解説に割り込むように話し出す。 そして、目の前にいるチュチュを眺めていると眉をひそめて呟いた。
「しかし、この娘には――羽やウロコの様な特徴は一切ない」
牢屋にいる面々は、自分たちが最初に虹の島に来た時の事を思い出していた。 そういえば、と誰かが声を最初に出した。
「歓迎していた姉ちゃんは、ネコの姿をしていたし、しっぽもあった」
「空港で弁当を売っていた人も、犬の様な耳で器用に弁当を運んでいたなぁ」
そういえば、そうだ、と次々と皆が自分の記憶にある『虹の島の特徴』を語り出す。 段々と騒がしくなってきた牢屋の中で、サファイアが檻を思いきり蹴ると辺りは静寂に包まれる。
「話の途中だろ」
「それもそうだね」
横にいたスノウが同意する。 チュチュは観念したかのように溜息を吐くと、ブレイドの方を向いて言葉を出した。
「そうね、あなたの考えは半分正解――でも、私がここを出て行く理由にはならないわ」
「だけど、いつまでもお前が『そっち側』に居続けられる保障もない」
サファイアの言葉は、チュチュの心にどう届いたのか。 彼女は冷たい目つきでサファイアを睨むと、横にいたスノウは思わず身震いする。
「ちょっと〜サファイア。 女の子を怒らせないのがボクのポリシーなんだから、チュチュちゃんを怒らせるのは禁止だよ」
スノウは小声でサファイアの利き耳立てる様にささやいた。 チュチュは、暫く黙っていると何かを観念したかのように、目を閉じて――答えた。

「分かった、取引しましょう。 私の依頼内容は『自由』、そしてあなた達への報酬は『脱出』。 そして――」
「今後双方への接触はしない事。 言いたいのはそれだろ?? 今は念書を書く余裕ないから――そこの変態白団子が証人で契約成立だ」
「変態!? サファイア酷いよ、ひょっとしてケケちゃんにもそんな紹介してないだろうね!!」
スノウの悲痛な叫び声と同時に、チュチュは牢を背にして歩き出す。 彼女は背後のサファイア達に聞こえるように、呟いた。
「牢のカギをとってきてあげる。 ここの牢の中は魔力封じがあるけど、外に出たら問題なく行動できるわ」
「ああ、それともう一つ頼みがある」
ブレイドの声だった。 呼び止められたように振り向いたチュチュを見て、ブレイドは注文を付けたした。





 アニマ連合。 メタナイツの指令通り、『アニマ連合』でダイナブレイドの話を調べていたケケだが、流石に情報統制がされているのか、一部の者しか知らされてない話だろうかダイナブレイドの『ダ』の字も出ていなかった。
流石にスパイやコソ泥の様な仕事はした事はないケケだ。 彼女なりに不自然にならないようにギルドの中を動き回っていたが、意識を集中するたびに足がもつれたり、他人の背中に接触したりと、粗が出てきている頃合い。
「あらあらケケさん、少しお疲れかしら。 ちょっとここで休憩なさい」
ギルドの中にいる一人が、ケケをカウンター席に誘導した。 ケケは申し訳なさそうに愛想笑いをして腰を下ろす。
「は、はは……すみません」
自分の行動が怪しくないだろうか、ひょっとしてスパイだと悟られてないか、初心者のケケは内心緊張をしながら手渡されたオレンジジュースを両手で持つが、手が震えている。 『胃に穴が開く思い』とは、こういう事なのかと内心の動悸も少し大きくなる。
「そ、そうだ……とりあえず報告を」
彼女はそれを言って通信機を取り出した。 『メタナイツ』から提供された、現状報告用の通信機だ。 ここでダイナブレイドの情報があれば――そうでない場合も、定期的に連絡が欲しいと念押しをされている。
「今のところ、収穫なし……あっ、ピッ君やマルクさん達もそうなんだ」
仲間の連絡も、同様の答えだった。 現状、マルクやウォンキィ、ガルルフィの三人は、『レッドキャニオンでダイナブレイドの化石発掘に潜入』を実行中だが、敵が多いのかあまり目立った動きは出来ていない。 
(も、もしも……スパイ行為がばれたら――)
ケケはそんな事をふと考えていた。 そう言えば、と彼女は少し昔を思い出していた。 数か月前、彼女がまだ『七彩の暴食』にいた頃の話だ。


「余所者がウチに来たらぁ?? なんでそんな話をするんだい、ケケ」
数か月前、『七彩の暴食』。 そこで料理の仕込みをしていたブレイドに、『魔法美少女ラブリーシミラ』の単行本を手に持っていたケケが話した話題。
「いやぁ、ひょっとしてギルドの仕事にも、偵察とかそう言うのがあるのかなぁって……気になっちゃいましてぇ」
彼女が持っていた漫画の中には、主人公が『敵対するギルド』に潜り込んで『お宝の情報を出し抜く』話があった。 彼女はそれをのん気に『怪盗ものの主人公みたい』と真に受けていたのだ。
ケケのそんな暢気さに知ってか知らずか、ブレイドは暫く天井を仰ぐと、静かに答えた。

「真っ当なギルドに、そう言うのはないねぇ。 だってギルドも隣人関係が大事だからね」
「隣人関係……ですか」
「そうさ、よく言えば『同盟』ってやつだね。 偵察とか怪しい事をする連中と、仕事なんてできないから……あー、そうだ」
ブレイドは両手を叩いて、思いついたように笑った。 ケケのきょとんとした表情をぶっ壊すかのように、直球の質問だった。
「『森林の暴君』だっけ。 アンタを奴隷で売ろうとしたギルド、そこの奴がウチに急に来たら??」
「速攻で電撃浴びせて放り投げます」
ケケの言葉は即答だった。 眉間にしわを寄せ、怒りのままに叩き潰すぞとばかりの、ケケは威嚇するような低い声で答えた。 ブレイドは、笑っている。
「そう、つまりそういう仕事は受けない方も、ない方も幸せなのさ。 本来はね」

ブレイドの言葉は、本心だった。 こちらは余計な手を煩わせたくないし、余計な警戒心でこれから来る新メンバーに疑いをかけたくない。
もしもそんな事が起きたら――相応の処分は免れない、それは処分をする側も、きっと良い気持ちではないはずだ。
だが、今現在実際にケケやピッチはその仕事をしている。 それはサファイア達を助ける為と言う真っ当な名目があるものの、そんな事は『アニマ連合』の皆は知った話ではない。 いや、それだけではない。
(この島は――どこを見ても、ピッ君やウォンキィさん達の様なアニマの種族ばかり……敵に回る相手って、相当な数なんじゃない??)
ケケの予測は当たっている。 万が一の事が起きれば、ケケの逃げ場はどこにもない。 虹の島のどこも、ケケの敵だ。 バレないように平穏無事に、情報を集めなければ――。
「うぉーい!! ケーケちゃん!!」
「ひゃ、はぁい!!?」
背中を大きく叩かれると、喉から心臓が飛び出るほどに飛び上がった。 振り返ると、ナゴがニコニコと笑顔でこちらに迫っている。
「うぉお、な、ナゴさん!? な、何の用ですか、私今忙しくて――」
「いや、今休憩中だって聞いたんニャが……それより、お疲れならクラウディパークに行かニャいか!?」
ナゴの言葉に、ケケは思わず声を喉の奥に抑え込む。 それはすぐに『ごめんなさい』を言う準備だったのだが、ケケは頭の中で『虹の島のパンフレットを読んだ記憶』がフラッシュバックする。
「……クラウディ……パーク??」




 それはほんの数日前、バタービルディングでの『かち割りコロシアム』に、サファイアとデッシーが出場したあの日の夜――。
彼女はデッシーの優勝を祝う席で、パンフレットを読み漁っていた時に、ふと見たのだ。 この時彼女は、ホテルのバーベキューでたらふく食べてる最中だった。

「へぇ……ビッグフォレストの森林浴に、アイスバーグのおでん……レッドキャニオンの近海で取れた海の幸……いいなぁ」
彼女はそこの写真に写る食事に目移りをしている。 改めて言うが、彼女がそれを目にしてたのは、バーベキューの真っ最中である。
「えっ!! クラウディパークのふわふわクリームを使ったデザート!? うそ、こんな美味しそうなケーキバイキングがこんな値段で食べ放題!?」
彼女の目はひと際輝いていた。 そこに映っていたケーキの写真に目を奪われながら、バーベキューの肉や野菜を頬張っている状態だ。
「あっ、ケケちゃーん!! おかわりいる??」
「いります!! クラウディパークのケーキ、いります!!」
既に彼女の脳内はバーベキューとケーキでごちゃ混ぜになっていた。 食い意地が強いというか、食欲旺盛なその言葉に、ケケはすぐに正気を取り戻して、顔を真っ赤に――周りは笑ってクラウディパークを優先的に観光する順番に組み込んでくれたのを覚えている。

「しょうがないのサ、ケケのいやしんぼ」
「そんなに食って、そのうちギルドの入り口つっかえるんじゃね」
「ひどい!! サファイア酷い、ピッ君、あの青饅頭の頭に頭突きして!!」


こうして、皆の笑い声が響いたあの日の夜――ケケは顔を何度も横に振って、煩悩を振り払うと目の前にいるナゴを見る。
「あ、あのすみません――また今度に」
「なんなら、ケーキバイキングの無料招待券も、あるのニャ!!」
「行きます!!」
即答だった。 ケケは手を高々く上げて、ナゴの前に最敬礼をするかのように背筋を伸ばして答えた。
(ごめんピッ君、でもクラウディパークでも情報をしっかり収集するから、そう……これは)


  ――皆を助ける為に、やる事だから!! ケーキバイキングは、そのあと一番最後にするッ!!」

「……な、何の話だニャ??」
心の声が途中で漏れていたのか、ナゴは戸惑うが、ケケがついてく気満々であると確認をして笑顔になる。 そして、ケケの肩を持ってすぐに出口に歩き出す。
「ま、そう言う話でデートができるなら、良かったのニャ」
ナゴは満足げに、ケケを『アニマ連合』から連れ出していった。 意気揚々とギルドを出て行く。 中にいるメンバーの何人かは名残惜しそうにそんな二人の背中を見届けている。
「あー……やっぱぼくらじゃ幹部には敵わないか」
「なんだ、お前もケケさん狙ってたのか」
酒をあおりながら、何人かはケケとの会合を狙っていた内心をこぼしている。 彼らもケケを『アニマ』の仲間と信じて疑っていない。
「仕方ねえ、ナゴさんが目ぇつけたんだ。 俺たちはお零れにあやかろうぜ」
そう呟いた途端、チュチュがギルドの入り口を押し開けて帰還する。 少し肩を上下に揺らして、息を切らしている彼女は辺りをざっと見渡した。
「……新入りの、ケケさんは?!」
「ナゴさんとデートだよ。 クラウディパークだったっけな」
笑いながら下っ端のアニマは答えた。 それを聞いたチュチュは冷や汗を一つ流して、ギルドの壁にあるホワイトボードを眺めた。
「……ヤバイ、今あそこには幹部のゴルルムンバとリックがいる」
ホワイトボードはメンバーの出張先が書き込まれている。 チュチュはブレイドに頼まれた『お願い』を思い出していた。


「ウチの仲間が無事か確認してきておくれ。 サービスしてくれるだろ??」
「ええ、それぐらいなら……それで、名前は??」
「ケケって女の子と、ピッチとマルク。 後はガルルフィとデッシーにウォンキィの六人さね」
ブレイドは紙きれに簡単な似顔絵と名前を書いて、チュチュに手渡した。 その似顔絵を見たチュチュは暫く黙していたが、了解とばかりに顔を縦に振った。
「しかし、とんでもなくこき使うわね。 こっちの『お願い』も、しっかり聞いてくれるのよね??」


今すぐ追いかけなければ、チュチュの目的も達成できない。 彼女は分かっているのだ、『この機を逃してはいけない』事を。
『アニマ連合』を飛び出して、エアライドマシンの保管所へと走り出す。 額にはジワリと汗がにじんでいた。
「もうっ、どうしてこう勝手なの!! 『七彩の暴食』って」
チュチュは初めて知った、『虹の島』の外の人間の身勝手さに、憤慨をしていた。 自分をこき使い、そして勝手にどこか兵器と右往左往される自分が嫌になってきた所で、通りすがりに他の島から帰還してきたエアライドマシンが飛んできた。
「こらこら、邪魔だよ半端もの!!」
猛スピードで着陸してくるアニマ達は、チュチュを厄介者の様に扱って帰還していく。 巻きあがった砂ぼこりに咳ごんでいると、二人のアニマが駆け寄った。
「おい、お嬢ちゃん大丈夫か!?」
「あいつら、あぶねぇな……仲間だろ、ギルドの」
ウォンキィとガルルフィだ。 レッドキャニオンでの作業を終えた彼らは、ギルドに帰還したがチュチュのひどい扱いに憤慨し、彼女のもとへ駆け寄った。
「ええ、大丈夫。 いつもの事だから」
チュチュはそう言うと埃を払い、立ち上がる。 すると、ガルルフィが提げていたカバンから小さなマルクがひょっこり顔を覗かせるとチュチュと視線が合う。
「うわっ……何それ、人形??」
「生憎生き物なのサ。 ここはアニマ以外迫害されてるから、逃げてるんだけどネ」
マルクは手短に説明をすると、カバンの隙間からギルドの中を覗いた。 暫く黙っていると、横にいるチュチュに小声で問いかけた。
「おい、嬢ちゃん。 ここにケケって猫耳の女がいたはずなのサ……呼んできてくれヨ」




 場所は変わって、クラウディパーク。 澄み切った青空と、真っ白な雲の様な地面が特徴の島。 勿論、本物の雲のわけがなく、虹の島の由来の火山灰でそう見えているだけだが。
そこには三人の幹部が街のど真ん中に立っていた。 道を行き交う住民たちは、それを見て圧倒され立ち止まる。 何か事件があったのかと、野次馬もできつつある。
「あの女の子、可愛かった。 嫁にする」
三人のうち一番大きなゴリラのアニマ、ゴルルムンバ。 写真で確認したケケを気に入ったのか、ずっとそれを言っている。
そんな彼をたしなめるようにハムスターのアニマ、リックはゴルルムンバの脛を突っ込みの要領で叩いた。
「ダメだろ、デートはこっちの仲間に引き込んでから、もしもアニマじゃないならすぐ殺さなきゃ」
「殺す、ってのも穏やかじゃないけど――二人とも、ちゃんとクーの作戦理解してるの??」
この場の紅一点とも言うべき、ヒョウのアニマはキャロライン。 ケケの写真で気怠そうに仰ぎながら、目の前の男二人に呆れている。
「はい、ゴルルムンバ。 作戦は??」
「女、捕まえる。 裏切者、殺す」
直球すぎる回答。 漢らしいとも言うべき回答とも言い換えれる。 リックは拍手でゴルルムンバを称えながら、感服する。
「すげぇよ、百点満点だ」
「五十点よ。 ただ殺すだけじゃないでしょ。 はい、リック」
キャロラインの視線が隣のリックに移る。 リックは片手を高く上げて、元気よく叫ぶと自信満々に答えた。
「裏切者の一人に、ケケを処刑させる!! 出来たら仲間入り、出来なかったら全員皆殺し」
「そこまで行って完答よ。 貴方もやればできるじゃない」
キャロラインの褒め言葉に、リックは顔を赤くして後ろ頭を掻く。 それを羨むゴルルムンバも背にして、キャロラインはクラウディパークの飲食店の一角の扉を強く押し開いた。

扉に備え付けられていたベルが大きく鳴り響く。 店にいた客達は何事かと一気に注目がドアに集まると、キャロラインを見て思わず身をすくんだ。
「キャロラインさんだ……」
「こんなところまで来て、一体何の用が……」
野次馬の騒ぎに耳も立てず、キャロラインは右へ左へ目配せする。 やがて彼女の目にはーー見覚えのある三毛猫の模様をした大男の後ろ姿が!!
「何こんな所で道草食ってるのよオス猫ぉ!!」
「ニャァ!! お、おミャーはキャロラインっ!! お前らいつの間にここにぃ」
背後からキャロラインの鋭い爪を突き立てられ、ナゴは悲鳴を上げながら巨体を浮かせる。 リックとゴルルムンバは、それを見て大笑いする様だ。
「かっはっは、勝手な行動するからだ」
「ナゴ、説教されるの、好きか??」
ニャンでだよ……と、ゴルルムンバのボケに小声でツッコむナゴの横で、キャロラインは溜息を吐いて一枚の写真を突きつける。 ナゴはそれを見て、おおと声を上げる。
「アンタねぇ……けいたいつうしんきに『ダークキャッスルで待ってて』って連絡を入れたのに……そこからエアライドマシンでビッグフォレストに呼ぶ手筈だったのよ」
「ニャア、けいたいつうしんきはどっかに落としちゃってニャ。 そんで、そのケケちゃんにニャにか用か? キャロライン??」

ナゴからさほど離れていない影になる場所で、自分の名前の話題を出されたケケは、その耳を鋭く立てて聞き入る。 先ほどから、自分をケーキバイキングに呼んでくれたナゴが誰かに呼び止められていたのは横目で理解していたが、彼女はチャンスとばかりに『ダイナブレイド』の話題を探していた最中だった。 バイキングのお盆に、多種多様なケーキが山ほどあるが、偵察中なのである。 書き留めるためのメモ帳は、ポケットの中だが。
(ば、バレてない……バレてないよね)
ケケもつい先ほどまで心配している話。 スパイ行為がバレたらーー彼女の逃げ場は、無い。
ケケはこっそりと、ナゴとキャロラインの様子を隙間から覗き込んだ。 キャロラインの持っているのは写真の様だーー一体いつの間に撮影されたのか、そこに写っているのはまるで自分と瓜二つの女の子!!

 違う、違う。 大丈夫なはずだ。 ケケは心の中で何度もスパイ活動を振り返る。
『アニマ連合』の中でも怪しい素振りは一切していない。 ピッチやマルク達に密かに入れていた連絡も、漏れたり誰かに盗み見された筈もないはずだ。 何故、キャロラインはケケの写真を持ち歩いている?? ケケは、自分が写ってるその写真の背景に見覚えがあった。

ーー答えは単純、写真に写ってる背景はプププランドから虹の島に入った時の空港だった。 そして、そこで使う道具と言えば……パスポート。
ケケ達の荷物は、『アニマ連合』に潜入してから怪しまれないようにそこに置いている。 それがいつの間にか、詮索されていたのだ。



「ケケという、ヒトガタのスパイがこの島に紛れ込んでいるって情報がーー」
「ケケちゃんが?? ヒトガタ?!」
キャロラインとナゴの会話が一区切りした所で、床板を踏み抜く様な音がした。 ナゴとキャロラインが背後を振り返ると、そこには真っ黒に焦げた床板と、散らばっているケーキとお盆だけが残っていた。
最早、これは自白と同じであるがケケにとっては一人捕まれば良いという話ではない。 ピッチ達や、『白の騎士団』と『メタナイツ』にも大きな迷惑を被る話だ。
彼女は走りながら必死になって『けいたいつうしんき』にメッセージを打ち込んだ。 一つは謝罪、もう一つは……SOS。




 第三十三話 バレた!!




「ごめん、ごめんピッくん!! みんな!! パスポート、ちゃんと肌身離さず持っとくべきだった!!」

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