あしかのらいぶらりぃ
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執筆者: ディン/投稿日時: 2020/07/25(土) 11:54:15
投稿者コメント:
【人物紹介】
人名:サファイア
性別:男
年齢:???(見た目ケケやピッチに近い)
所属:七彩の暴食
種族:ティンクル
魔法:アイスやフリーズ系が得意
【MEMO】
この物語の主人公。
かつてとあるギルドに属していたが後に『七彩の暴食』に籍を移す。
既に伝説となった『七彩の宝玉』に詳しく、いつも友人のピッチと行動を共にしている。
年齢の割に大人びた性格だが時たま好戦的、はしゃぐ様子もある。
第二話 マルク
「なあなあケケちゃん、チーム組もうぜ」
七彩の暴食にきて3日が過ぎた。 ケケはカウンターに席を決めてはギルドのみんなから十分なほどの歓迎を受けている。
酒場に来るや否や、みんなが彼女をチームに誘ってくれる、その引く手数多な状況を決して彼女も嫌なわけではない、むしりチヤホヤされてる状況は彼女が「七彩の宝玉」の事件後サファイアとピッチにで愚痴ってた優雅な人生に相似してる。
ただ、ウザいしむさ苦しい。 自分とは年齢があまりにもかけ離れてるおじさんが色目使ってこちらに興味を持ってることは嫌でもわかる。
決してあちらも悪気があっているのではない。 七彩の暴食はケケが見る限り限りなく男ばかり、まあそこに女性が一人入れば一気に興味と注目の的になるのは間違いない。
彼らはケケを転校生の物珍しさ半分、自分のチームに華やかさを持ち込みたい発想でケケに勧誘してるのだ。


七彩の暴食の各チームの勧誘担当は、それぞれのメンバーからこうお達しが出てる。
「ケケちゃんが入ってくれれば、ウチの連中のやる気が…いやいや魔道士の居ないウチの戦力がアップするからな」
「可愛い。 同じ空間にいたい。 あわよくば」
「前一緒に仕事したチームにはめっちゃ美人のシリカって奴がいたんだよ! ウチも女子が欲しい!」

まあほとんどがそう言う考えの連中である。 ケケもため息混じりにカウンターに出ていたソフトドリンクを飲み干すと、近くにいたサファイアとピッチに向かって歩き出す。
「ねえ、サファイア。 何で仕事受けないの」
「面白いのがないからな」
サファイアはケケとは別にテーブル席に山のような書類を置いて頬杖をついていた。 片手に書類を一枚とっては溜息を吐いてすぐに不要と横に置いてと、まるで閑職の一環のような動きだ。
ケケはそのサファイアが不要と判断した受けない書類を一枚とっては目を通す。
「これなんか面白いんじゃない、新薬の材料集める為に虹の島に行くって」
「旅行じゃねえぞ、それにそれは一度受けたことがある」
サファイアは受けることのない書類をまとめて持ち上げては、カウンターの前に返却する。 受付の人はそれを手にすると新しい書類の山をサファイアに手渡した。
「材料探しとは言っても実態は密猟スレスレの加担で報酬も相場の半分っていうブラックだった」
「うわあ」
サファイアの生々しいクエストの実体験を聞いてケケは少し彼の苦労に同情する。 サファイアはまたすごいスピードで書類に目を通しては、不要と判断し横に置いた。

「ところで話変わるんだけど、サファイアはどう言う目的でギルドにいるの」
「本当に変わるな」
「だってサファイアも七彩の宝玉にめっちゃ詳しそうだったし」
ケケの矢継ぎ早の質問に、サファイアも深い溜息を吐いて腰を上げる。 すでに書類を全部目に通し終えた後は、さっきと同じ様に書類を返しにいく手筈だ。
「ギャラクティックノヴァって知ってるか」
「子供の絵本とかにも出てくる、叶え星だよね」
ギャラクティックノヴァ。 ケケたちの子どもの頃から、いろんな絵本に出てくる巨大な星。
それは絵本によっては形や色は違うが、全てに共通してる点は「どんな願い事も叶えてくれる、機械仕掛けの大彗星」の設定だった。
「七彩の宝玉は、そのノヴァを手に入れるってクエストを解散する前に受けたんだ」
「嘘!? 本当にノヴァあったの!?」
七彩の宝玉のワードが出てきた途端に、ケケの目がもの凄い勢いで輝き出した。 サファイアもギョッと彼女の目の輝きに驚きつつ、すぐに落ち着きを取り戻すと淡々と言葉を紡ぐ。
「あったがどうかはわからない。 ただ、七彩の宝玉が成し遂げられないノヴァの存在、オレは見てみたい」
「それにノヴァは4つの穴と関係があるって話なんだよ」
サファイアの横にピッチが話を割り込むようにやってくる。 4つの穴、ケケもそれを聞いて言葉を返す。
「700年前に、青年が財宝を持ち帰ってきたって言う穴の事ね」
「もう都市伝説だけどな。 その穴もそいつ以外帰ってきたやつはいないし、どこかの誰かが適当に脚色してるんだよ」
ケケは、その言葉をただ頷いて聞いているだけだった。 ただ、その顔色は興奮気味に見えてきて、サファイアとピッチもやや引き気味のそれを見守る。
「キモいぞ、どうした」
「私もノヴァ見たい! ねえ、ノヴァ探す為にさ、チーム組もうよ!」
「な、なにぃ!?」
その言葉に思わず酒場中の男たちの視線は一気に注目する。 まさか自分が狙っていたケケ自らが、チームの設立を宣言するとは思わなかったのだろう。
「まさか、ケケちゃんとサファイアが!?」
「やめとけお嬢ちゃん、サファイアは誰かとつるむとか絶望的に向いてない!!」
失礼な物言いが飛んでくる。 しかしケケはお構いなしにサファイアとピッチの手と羽を掴み笑顔だった。
「ね? いいでしょ」
「え? 僕も巻き込まれるの」
とはピッチの言葉だ。 もう何故かこの3人でチームが出来上がってるような図式だが、これもケケのまっすぐな性格が幸いしたか。
「え? ピッくんサファイアと仲良さそうだから大丈夫だと思ったんだけど」
「ピッくん!?」
「アッハハ!! いいじゃんピッくん面白い」
もう既にニックネームもつけられてピッチもケケのペースにハマってしまった。 もうこうなればサファイアも諦めてケケから手を離し握り拳を作る。
「ただ3人じゃ心許ないな。 オレとピッチ、そしてお前。 手を組んだとしてもその先二手に分かれた時に誰か一人になるのはチームとしては避けたい」
「そうだね、後一人チームに加わってくれる人がいたらいいんだけど」
ケケの言葉と同時に3人は周囲を見渡した。 七彩の暴食の酒場にいるみんなは、なぜか涙を流しながら勝手にもの耽っていた。

「み、みんな悪いな…オレはお前たちと一緒に頑張りたかったが…今日でチームを卒業する」
「オイ! ずるいぞお前抜け駆けなんか」
「チップ! お前ケケちゃんが目的だろうが」
「やっぱりここは医術に長けてる我輩が必要とされてると思うので、心苦しいですが」
「老いぼれ! お前ケケちゃん目的って丸わかりなんだよスケベオヤジ」
もう既に自分たちがケケたちのチームに入ると勝手に決めているようだ。 だがそれを呆れてみていたカウンターにいたピンクの甲冑を身につけたブレイドナイト族の女性が口を開く。
「あのさ、おっちゃん達…悪いんだけど」
「聞いてくれるな! ブレイドちゃん」
「俺たちの思いをケケちゃんに聞かれたかねえ」
「いや、でかい声で丸聞こえだし」
ブレイドと呼ばれた女性はカウンターに剣を突き刺し威圧する。 それに注目した男達の涙はひっこみ、喉を鳴らした。
「どうでも良いけど、サファイア達もうでてったよ」
「何ぃ! 早速クエスト受けに行ったのかよ」
「おのれ、もうアプローチかサファイアのエロ男」
「いや、マルクの出先きいてきたし、あいつの場所じゃない」
マルク。 その言葉を聞いた途端に酒場の空気は一気に冷え込む。 先ほどまでに騒がしかった男は、こわばった顔で震えるほどだ。
「マルクの…!?」
「あいつを……仲間に!?」



「ねえ、サファイア、ブレイドさんに聞いた場所にいるの? そのマルクって人」
「まだ仕事終わってなかったらな」
酒場の裏にある駐輪場のような広場。 そこには星やら箱の形をした不思議な乗り物がたくさんある。
「さすがギルド、エアライドマシンの貸し出しも設備が揃ってるのね」
「全部中古だけどな、うちには新型揃える金がない」
サファイアはそのエアライドマシンの中からオレンジの星形のようなマシンを取り出した。 フライトワープスターという機種だとは、のちにケケはピッチに教わった。

「それで、そのマルクって人はすごい人なの?」
「すごいな」
「すごいよね」
サファイアとピッチはほぼ口を揃えて即答する。 実力者である二人が認めるほどの存在に、ケケは心躍らせる。
「すごいの! どんな人なの」
「すげえ運が悪いよな」
「先週は歩いてる途中うんこ3回踏んだって嘆いてた」
ケケの顔は一気に冷えきった。 勝手に彼女の中で積み上げられてたマルクという存在の理想像が瓦礫のように崩れる音が心の奥で響いている。
大丈夫だろうか? ケケのそんな不安をよそに、フライトワープスターのセッティングを済ませたサファイアは彼女を手招きする。
「大丈夫だよ。 あいつの事はよく知ってるし、良いやつだよ。 運がすごく悪いけどな」
「ウンだけにね」
「汚い、やめて」
ケケのそんな不安をよそに、フライトワープスターは出発した。 ケケ自身、エアライドマシンは初体験だったのだが、その興奮をする暇もないほど不安が上回っていたのだった。



「ひ、ひいっ助けてくれぇ!」
とある森、頭にバンダナをつけて目差しをしているワドルディ族達が泣きながら走り続けている。
彼らの仲間の中には、綺麗な石を積み上げた荷車を引いて走ってるワドルディ達もいる。 何かの荷物を運ぶ最中だろう。
「チクショウ、もう少しだったってのに! チクショウ」
彼らのリーダー格のようなビッグワドルディは、背後を振り返りながら涙声で叫びだす。 背後からは無数の弓矢が彼らを襲うように飛びかかってきた。
「あんな奴が、村にいたなんて聞いてないぞ!!」
そして、挟み撃ちにするように目の前には巨大な毛糸でできた火の鳥が!
「フェニクロウ、やっちまうのサ」
どこから出てきた合図と同時にフェニクロウなるそれは火を吹き出した。 ワドルディ達は一気に飲み込まれて断末魔をあげる。
それを眺めるように、目の前には赤と青の二股帽子をかぶった男が。 茶色い靴を履いて、ボールの上に立っていたが降り立つとワドルディ達が運んでいた荷車を止める。
「全く、村に持ち帰る手間ができちまったのサ。 オマエら警察呼ぶから大人しくしてろよ」

「相変わらず悪運が強いな、マルク」
マルク、そう呼ばれた男が振り替えるとワープスターとそれに乗っていたサファイアとケケとピッチの三人が降り立った。
「おや、サファイアじゃないか。 今日は酒場で飲み明かす予定じゃなかったっけ」
「まあ、そのつもりだったんだがこの女がチーム作りたいって言うから、勧誘をな」
「ボクを? へぇ、でもボク今仕事中だし話ならまた後でーー」
ケケがマルクの背後を指差している。 彼の背後には、フェニクロウと荷台があるのだが。
「ねえ、あの鳥の火、荷台に燃え移ってるけど」
「は!? やべっ」
マルクはすぐさまフェニクロウを解除した。 フェニクロウはすぐにただの糸の山に戻るが燃え移った荷台は収まらない、マルクは慌てふためきすぐに荷台に飛び乗り火を靴で踏みつける。
「サファイア! お前の氷でこいつ鎮火してほしいのサ! これ取り返すのが仕事だってのに」
「わかったわかった! お前すぐ降りろーー」
サファイアも冷気を右手に纏わせて、彼に応えようとするが急にマルクが飛び乗ったからだろうか、荷台はバランスを崩してーー倒れた。

「あ」
「マルクーー!?」
そのままマルクも巻き込まれ転倒する。 現場には、無事だったはずの綺麗な石が土埃に塗れて、タンコブだらけのマルクが石の山に埋れていた。
そんなマルクを見て、ケケは先ほどの高揚感が薄れていくのが分かった。 彼女の心の中の崩れた理想像の瓦礫が、砂になって風で消えていく様に。
「大丈夫なの? あの人」
「強いのは強いんだよ、サファイアぐらいに」
ピッチの精一杯のフォローも、ケケには届いていないかもしれない。 とりあえず、マルクがこのチームのメンバーになるかどうかは、まだ分からない。
                                第二話 マルク

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