第1話 「とりま、クワガタにチョップしておけよ」
少し、その広い広い街を眺めて見る。
角がないビル…
先が丸くなっている電波塔みたいなのと…
丸い形の、デザインが全く同じな家…。
何だ、いったい。僕は目を疑う。
いつもの風景はどうしたんだ。
異世界にでもぶっ飛んでしまったのか…?
頭が真っ白になる。
「…もともとは…コイツのせいで…?」
気が付くと、なぜか叫んでいる自分がいた。
「うわぁぁぁ!!!戻れぃ!戻れぃ!戻れぃ!ここどこだよ!?僕誰だよ!!!うわぁぁぁぁ!!!」
〈僕の顔〉ではない、とても必死な顔。
眉が吊り上っていて、口が引きつっていて…。
そして愛らしい、多分メスであろう、自分のクワガタに力んだチョップをしていた。
クワガタについている、赤いリボンが取れそうだ。
しかし僕は、気にせずそのピンクの手を、愛らしいペットに打ちつけていた。
すると遠くから、ミュージカルでよく聴くような、高くて低い男性の声。
「Hey!そこのYou!!」
ふと見るとその男は、どこかで見たことのあるような顔だった。