第零話 プロローグ
宇宙で最も輝いてる惑星。数多の惑星の中で美しいと呼ばれている星、ポップスター。
その星で今からおよそ700年前、巨大な穴が至る所に現れた。
人々はそれに恐れて、いろいろな理由や言い伝えで遠ざかっていた。
宇宙人が攻めてきた印だとか、そこで死んだ子どもが近づいてきた人を引きずり込むだとか、ポップスターとは別次元の世界に繋がっているだとか…。
みんな、誰が作ったか知らない話に踊らされ、やがて世界中の穴は柵で囲われたりして近づかれなかった。
そんなある日、一人の青年が穴に飛び込んだ。
みんなは勇気とは思わなかった。無謀だとか、命を捨てに行ったと悲しんだり、呆れた。
1ヶ月、青年が穴に飛び込んだのも忘れかけていた時、彼は帰ってきた。
彼は見たこともない金銀財宝を持って帰ってきた。
驚いたみんなや、彼を労った王様に青年はこう言った。
「私がそこで見たものは、地底の世界とは思えない青空と綺麗な草原」
「誰が作ったのか知らないお城や、遺跡がありました」
「そこには数え切れないほどの宝がありました。 私は全部は持ち帰り切れませんでした」
青年の言葉に、王様は魅入られて捜索隊を結成した。
世界中の探検家たちも、二匹目のドジョウ狙いと言わんばかりに、穴に飛び込んでいった。
それから700年。
世界中に確認された穴は、4つ。
その穴に飛び込んでいった勇気ある探検家、のべ2万人。
お金をたくさん使って探検家を支えた国家、60以上。
帰ってきた探検家、0。
やがて人々は穴のことなど半ば忘れ去っていった。
もう、犠牲者を出したくないと逃げるように。
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「よしっ。 これで準備オッケー」
どこまでも畑が見える田舎町。 風見鶏が踊るように回る家がポツポツと立ち並ぶのどかな町で、黒装束の少女は帽子を被って家を飛び出た。
背中にはリュックサック、右手にはチラシが一枚。
チラシには、デカデカと目立つように煽り文句が書かれていた。
『七彩の宝玉、入団希望者募集!』
ウキウキとそのチラシを天にかざしては、少女は片手を離すと拳をつくり、天に再び突き上げた。
「私は、ーーケケ・キージは……世界最高の学者になるんだ!」
ケケ。 彼女の冒険は、思わぬ事で始まることになるのは誰も知らない。
そしてーーケケの住んでる町の少し外れ、とあるバス停。
「ねえ、サファイア。 最近この町で面白いのあるって知ってる?」
サファイア、群青色の球体をした青年をそう呼んだ小さな鳥は、チラシをくちばしでついばみサファイアに突きつける。
鬱陶しそうにそれを乱暴に手に取ったサファイアは、眠たげな眼を擦りながら、チラシをじっと見つめる。
「んだよ…ピッチ、オレまだ寝てたのに」
「一睡もせずに宝探してたからでしょ、ホラいいから読んで」
ピッチと呼んだ小鳥に促されてサファイアはまだ夢のなかからおぼろげな瞳の焦点を合わせ、そのチラシをジッと読んだ。
「ーー七彩の宝玉、入団希望者募集? 集合場所はーープププタウンのS集会所?」
「おかしいでしょ? 七彩の宝玉は入団希望の告知なんてしないのに」
「ああ…狙いはこれだろうな」
サファイアの指差す場所。 チラシの一箇所には、小さな文字で書かれていた。
「魔法士見習い、大歓迎」
「七彩の宝玉の入団希望者の受付はこちらでーす!」
ケケの辿り着いた先、とある町の集会所は人でごった返しで入り口が分からないほどだ。
ケケも、輝いた目でその入団希望者を眺めては、心を躍らせる。
すると、集会所の入り口から、一人の屈強な大男が出てきた。
「オレは七彩の宝玉のボンカース! 君たち入団希望者たちを七彩の宝玉のギルドへ案内する!」
「おおおお!!」
入団希望者の人々は輝いた目と歓喜の声で再び盛り上がる。 ボンカースの登場にみんな拍手喝采で、ケケもそれに釣られて手を叩いた。
「ただし! ギルドへの道は険しいぞ、オレに最後まで着いてきた者だけが、七彩の宝玉に入団する権利を得る!」
「勇気ある者は、オレについてこい!!」
「責任者、ボンカースねえ」
チラシをまんべんなく読みこんでは、サファイアはため息まじりに肩を落とす。
「行くの?」
ピッチのその問いかけにも「ああ」とだけ気の抜けた返事をしてサファイアは腰を上げた。 彼なりの、気遣いでもあった。 何も真相を知らない若者達への、警鐘の為に。
「もう何年も経てば、そういうルールも忘れられるよな」
「七彩の宝玉は、ティンクル・ポポしか入れないって話なのにな」