あしかのらいぶらりぃ
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執筆者: 桜木ハル/投稿日時: 2014/10/01(水) 16:13:38
投稿者コメント:
ハルです。久々に小説を書きました。
これは、あしかのほびぃの連携サイトである「イルカ探検隊」に提出したものの加筆・訂正版です。
あしほびの方々にも気軽に読んでいただけるよう、ここに投稿しておきます。

カービィが主人公の、とにかくドタバタした喜劇を目指しました。
自分で「ドタバタ」ってタイトルに入れる時点で終わってますが(おい)
それではごゆっくりお楽しみください。
ドタバタ料理コンテスト!
 ここはあきれかえるほど平和な国・プププランド。広大な宇宙に浮かぶポップスターにあるこの王国では、住人達は自由気ままに、しかし争うことなく暮らしていた。
 そんなプププランドで、最近ちょっとおかしなことが起きていた。


「あーあ。もう家の中で遊ぶのも飽きちゃったなー」
 そう言って、カービィはゲームのコントローラーを半ばイライラした様子で床に置いた。
「持ってるゲームも全部クリアしちゃったしさ。データ消してやり直して、またクリアしたから消して……今何回目だっけ?」
「さぁどうだろ? 10周くらいはしてるんじゃない?」
 読んでいる本から目を上げず、ワドルディはあいまいに答えた。
「だいたいさぁ、こんなに雨ばっかり降ってるのが悪いんだよね。ワドルディが泣いた時よりひどいや」
「カービィだって! この前アイス床にこぼした時、このくらいざあざあ涙流して泣いてたじゃない。僕のを分けてあげたのに、まだ泣いてるんだからさぁ。ほんと食い意地張ってるよね」
「なんだとう!」
 ブンッ! と突き出されたカービィの拳。ワドルディはそれをひらりと避けて着地した。怒りに任せて体当たりしようとしたカービィは、そのまま勢い余って壁に激突した。
「あいたたた……何やってんだろ、僕は」
 たんこぶの膨らみ始めた頭をさすりながら、カービィは窓の外に目をやった。鳴りやまぬ雨の音。近くの空も、遠くの空も、そのまた遠くの地平線近くの空も、どんよりと重たい灰色の雲に覆われていた。梅雨でもないのにおかしいなぁ……。
 その夜、カービィは慌てた様子のワドルディに叩き起こされた。季節外れの大雨は、どうやら川を決壊させてしまったらしい。カービィたちの家も洪水に巻き込まれるかもしれないということで、ワドルディと一緒に丘の上のデデデ城に避難した。


 翌朝二人が目を覚ますと、城の中はすし詰め状態になっていた。連日の雨で、みんな気晴らしが欲しかったのかもしれない。山の上や海の中など、洪水とは関係ない場所に住んでいる人たちも、カービィたちのいるこの大広間に集結していた。
 驚いてしまったのはデデデ大王のほうだ。川の近くの数十人くらいを泊めたつもりが、広間をうめつくす人、人、人! 何百人もの人々を前にして、デデデは腰を抜かした。
「なんぞい! この騒ぎは!」
 あたふたと自室に逃げ帰ったデデデは、部屋を掃除していた家来の一人に言った。
「私にそんなことを言われましても……。大王様がおっしゃったんじゃないですか、みなさんを城に泊めるって」
「わしはこんなに大勢を泊めるなどとは言ってないぞい! とにかく、関係ない奴はとっとと追い出すぞい!」
 その時。

 バアン!

「だいおーう!」
「うわ、何をする……ぐぇっ!」
 部屋の扉をぶち破って、カービィが突進してきた!
「カービィ! 何するぞい! 危うく頭をぶつけるところだったぞい!」
「えへへー、ごめんねー」
 そう言って笑うカービィ。全く反省していないようだ。
「ねぇ、大王もこっち来てみんなと遊ぼうよ」
「みんなと、って――」
 デデデはその続きを言うことができなかった。彼の視線の先にあったのは、大広間で好き勝手に遊び回る人々の姿だった。
「なんじゃこりゃぁぁああああ!!?」
 割れた窓に散らばるガラス。美しいカーテンは無残に引き裂かれ、床一面は絵の具や糊でベトベトに汚れている。自慢の家具は削られたようにガッタガタ。その近くに落ちているいびつな木彫りの像は、もしかしてその家具のなれの果てか……?!
「お前ら一体どんな遊びをしたんだ! こんなのはすぐやめるぞい! ここはわしの城、好き勝手は許さんぞい! やることは全部わしが決めるぞい!!」
「やだよ、僕サッカーがしたい」
「僕は野球!」
「いいえ、あたしたちはお絵かきがしたいの」
「おれたちは鬼ごっこをしてたんだ。そっちこそ邪魔をしないでくれ」
「ええい、いっせいにしゃべるな! だったら公平にくじで決めるぞい!」
 みんなは配られた紙にしぶしぶ自分の希望を書き、箱に入れた。全員が入れ終わったのを確認してから、デデデは箱の中身をかき回し、そのうちの一枚をえいっと取り出した。
 そこに書かれていたのは――
「りょ、料理コンテスト……?」


 突然開催が決まったにもかかわらず、暇を持て余したプププランドの人々に、コンテストは快く受け入れられた。コンテストのルールは、くじで選んだ参加者3人の料理を、同じくくじで選んだ審査員3人がそれぞれ審査し、最終的に会場の全員が試食して優勝が決まるというものになった。
 参加者の3人は、コックカワサキ、アドレーヌ、カービィ。審査員は、ワドルディ、メタナイト、そしてデデデ大王に決まった。
「テーマもくじで決めるぞい! テーマは……『プププランド自慢の食材を使った創作料理』に決定ぞい!」
 デデデがテーマを読み終わると、華やかなファンファーレが鳴り、コンテストの始まりを高らかにうたい上げた。


 材料として用意されたものは、マキシムトマトや無敵キャンディー、元気ドリンクにさつまいも、様々なフルーツなど、いずれもプププランドを代表する食べ物や食材ばかり。これらの材料を好きに組み合わせて、参加者オリジナルのおいしい料理を作り出すことが、このコンテストの課題だ。山と積まれた食材を前に、カービィの腹の虫は思わず鳴いた。
「こら、カーくん。今は食べることじゃなくて作ることを考えなさい」
 アドレーヌがたしなめる。
「分かってるよ、そんなの。アドレーヌこそ、僕の料理をつまみ食いしないでよ」
「もちろん。負けないわよ、カーくん!」
 二人がそんなやりとりをしている間に、コックカワサキはあっという間に料理を作り上げた。
「できたー! おれのはこれ! 激辛カレーライスを元に作った、『激甘カレーライス』だよ〜!」
「おお、これはうまそうぞい! わしは甘いカレーが大好きぞい!」
 デデデは大喜びでカレーを食べた。
 しかし――
「うげぇ〜! 甘すぎて舌が溶けるぞい〜! ノドが! ノドが焼けるぅうう〜!!」
 デデデはその場にのたうち回り、甘い甘いと叫び続けている。その後何杯も水をおかわりしてやっと落ち着いた。
「どうやら大したことなかったみたいね。次は私の番よ!」
 アドレーヌはマキシムトマトを手に取り、包丁を彫刻刀のように、色とりどりのソースを絵の具のように扱い、華麗なステップで料理を完成させた。
「普通の料理じゃつまらないでしょ? だから私らしいアートな料理で勝負することにしたの!」
 そう言ってアドレーヌが差し出したのは、食べ物にはあり得ない色をした、トマトのような形の何かだった。
「どう? 名付けて『マキシムトマトとアンニュイな雨の昼下がり』!」
 その奇抜な色合いに、ワドルディは目を回した。
「いや、まずそうなのは見た目だけで、味は全然違うかもしれない」
 メタナイトはその怪しい料理を戸惑うことなく口に入れた。
 途端に表情をゆがめ無言になるメタナイト。その様子を見て、デデデは恐る恐るスプーンを近付け、少しだけすくうと口に入れた。
「まずい……ぞい……。もはや食い物の味じゃないぞい……」
「この色……何入れたらこうなるの……」
 ワドルディも複雑な表情をしてアドレーヌの料理を食べた。
「次は……カービィか……。カービィは何でも食べるからなぁ……きっと味覚もおかしいから、どんな料理が出てくるか……」
 静まり返る会場。重苦しい雰囲気の審査員たちをよそに、カービィは目を輝かせ、意気揚々と料理を運んできた。皿にはふたがかぶせてあり、何が入っているのかは分からない。ステージの真ん中で立ち止まり、一度会場全体を見回してから、カービィは勢い良く料理のふたを取った。
「じゃじゃーん! これが僕の料理です!」
 ほとばしる光の中、皿の上の物体はぐんぐん大きくなって――
「ま、魔獣だー!!」
 なんと、現れたのは料理ではなく、巨大なナメクジのような姿の魔獣だった!
「何これ気持ち悪い! これは僕の料理じゃない! さっきはこんなのいなかったよ!」
 魔獣を見て、メタナイトは剣を抜き叫んだ。
「こいつは『アメフラシ』だ! 普段は目に見えないくらい小さいが、暑くなって居心地が悪くなると巨大化して暴れ回るんだ!」
「どういうこと!?」
「恐らく食材の中にまぎれ込んでいて気付かなかったんだろう。そのまま焼いたり煮たりしたから、我慢できずに出てきたんだ!」
 メタナイトの声に反応して、魔獣が襲いかかってきた!

 ガキン!

 間一髪。メタナイトは剣で相手の攻撃をはじいた。
「カービィ! 最近の長雨はこいつのせいだ! 早く倒さないとプププランドが水に沈んでしまう!」
 でもどうやって? そう言いかけたカービィに、カワサキは何かを投げつけた。
「カービィ〜! おれのフライパンを使え〜!」
「りょーかいーっ!」
 フライパンを吸い込んだカービィは、コックをコピーした。そこに隙が生まれた。魔獣の攻撃を食らい、カービィは数十メートルも吹っ飛ばされた。動けないカービィに、再び魔獣アメフラシが襲いかかる!
「危ないッ!」

 バシィッ!

 ワドルディが躍り出て、パラソルでカービィを守った。
「カービィ、僕も戦うよ! 大丈夫、絶対勝てる!」
「ありがとう、ワドルディ!」
 差し出された親友の手を取り、カービィは立ち上がった。
 再び魔獣の攻撃! 今度はメタナイトが盾となり、敵の動きを止める。すかさず斬り付け、そのぬめぬめした皮膚に鋭い傷を負わせた。魔獣は動けない。
「カービィ! 今だ!」
 メタナイトが叫ぶ。それを合図に、カービィとワドルディは武器を構え、敵のほうに向き直った。お互いに目配せしてタイミングを見計らう。そして――
「うりゃぁぁぁあああああっ!!」
 二人は一体となって敵に突進した!

 ギャオオォォオオオオンッ!!

 すさまじい咆哮と共に魔獣の姿は消え、雲の切れ間からは太陽が顔を覗かせた。


 こうして、プププランドはあきれかえるほどの平和な日々を取り戻した。
 やはり雨は魔獣のせいだったのか、今日もプププランドは雲一つない青空だ。ほどなくして洪水もおさまり、川はいつもの穏やかな流れに戻った。なんとなくトゲトゲしていたみんなの心も、うっとうしい雨から解放されたことで穏やかになった。
 ただ一人、デデデ大王を除いては。彼は城の修理に追われ、すっかりやつれてしまったという……。

〜おしまい〜

この作品についてのコメント/評価 (3)
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