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小説「
第六話 穴
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作者名
ディン
タイトル
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内容
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「新入り……? あの白玉、サファイアの知り合いか」 酒場のその場にいた全員が、スノウとサファイアを黙って見守っていた。 相対する二人は黙したままだが、警戒心も解かずにサファイアは腕を伸ばす。 「今更何の用なんですか、七彩の宝玉の再結成でもするつもりじゃあない」 「もちろん、ボクはあの集まりには何ら未練もないし、メンバー全員誰も彼も、僕ですら連絡する気さえないんだから」 スノウはそういうと、一枚の書類を取り出した。 ただね、と一言付け加える。 「つい最近、穴が一つ見つかってね。 一緒に行ってくれる仲間を探してたんだ」 「穴……?! それってもしかして、伝説の」 ケケが大声で叫んだ。 スノウは、一つ頷くと笑顔を見せる。 「せいかーい!! それで、僕ら白の騎士団は現在一緒に伝説の穴について行ってくれる仲間を募集してたんだ」 伝説の穴。 それは誰もが知っている、あの青年が一人帰ってきたという、世界中に4つしか存在しないとされる、穴だ。 「な、なにぃ!!」 「あの伝説の、穴って本当にあったのか」 酒場のみんなも思わず立ち上がる。 彼らも、ギルドに所属して一獲千金を夢見る者たちだ。 突然現れた巨大なニンジンに、何も思わないわけがない。 そして、スノウが何も聞く前にところどころ挙手が上がる。 「俺も行きてえ!!」 「オ、おいらも!!」 「ダメー!! これはボクとサファイアの話だから、お連れはサファイアが全部決めてもらう」 スノウがその短い手を交差させ、バツをつくる。 一気に盛り上がりを見せていた酒場は一気に静まり返るが、スノウの眼は突き刺さるように冷たいものだった。 「死に目にあっても、助けられないからね」 スノウのその言葉に、みんなは一気に手を下げる。 スノウの言葉に全員が圧倒され引き下がった。 そして、スノウはまたサファイアに顔を向けて、笑顔を見せる。 「だから、サファイア一人にお願いしたいんだ。 ボクが知ってる中で信頼を置ける実力者は、キミしかいないからね」 「シトラスさんや、ピンクさん達は誘ったのか」 サファイアの言葉に、スノウは真顔に戻って口を真一文字にする。 その名前に、ケケも思わず喉を鳴らす。 「シトラスって、あの伝説の戦士で……ピンクは星使いの?」 「へぇ、ケケずいぶん詳しいのサ」 マルクは、ケケのその博識ぶりに思わず唸る。 ピッチはマルクの横に立つと、小さな声で囁いた。 「だって、ケケはその七彩の宝玉の募集チラシを見て、入ろうとしてたんだから」 「ああ、サファイアとお前がつぶした、ボンカースとかいうやつがやってた詐欺か」 スノウは、少しだけ長い溜息を吐いたら、肩をそっと落とす。 みんながわかるぐらいの、落胆の様子で。 「だーってさー、赤君や桃君は連絡よこさないし、ブドウ君は爆弾職人に転職したでしょ。 みど君に至ってはギルドはもう面倒くさいの一点張りで、一匹狼だもん」 「あの人たちらしいな」 サファイアも苦笑いで答える。 もはや二人の会話についてこれない各々の連中は、ただ見守るか自分たちの仕事の準備をするだけだ。 ケケもマルクも立ち上がる。 「どうするの、サファイア。 私たち、サファイアが受けるならついて行くけど」 「いや、スノウってやつはサファイアがメンバーを全部決めろって言ってたのサ。 ボクらが勝手に決めていいことじゃない」 「あ、そうでしたね」 ケケも一歩引いてサファイアの背中を見守る。 彼は、しばらく黙していたがケケにとってそれは何時間も長い時間のように思えた。 サファイアの背中が、初めて寂しそうに見えた。 「ピッチ」 「はいよ」 サファイアの呼びかけに、ピッチは彼の頭に飛んでくる。 スノウは、ピッチを見上げて見つめるとサファイアにまた問いかけた。 「サファイアのチームは、彼だけ?」 「いや、ケケとマルクも入れて全員で四人」 ピッチが後ろにいたケケとマルクを指さした。 スノウは四人を見つめるとしばらく黙っていたが、口を開いた。 「オッケー。 それじゃあサファイアとピッチ君とマルク君。 キミたちに依頼をする」 「え!? あ、あの私は!?」 ケケは思わず大声を出して叫んだ。 まさか自分だけが名前を呼ばれないとは想定外だったようで、彼女はスノウに当然食って掛かる。 「ケケ、落ち着け」 サファイアは彼女の前に手を出し抑える。 ケケは納得いかないと剣幕でスノウを見つめるが、スノウはケケの前に一本指を出して、答えた。 「キミ、魔導士になって、ギルドに入ってまだ間もないよね? このクエストはちょっと君にはまだ荷が重すぎるかな」 「うぐっ」 ケケは思わず声を詰まらせた。 自分がほぼ素人だというのを、スノウは完全に見抜いていた。 ケケは俯いて、唇をかみしめる。 スノウはケケの前に立つと、彼女の肩にそっと手を置いて優しく答える。 「今度依頼するときに、キミも呼べるように願っとくよ」 スノウはそれだけを言って、サファイアとピッチとマルクの三人を引き連れて酒場を出る。 ああ、そうだと外でスノウが付け足した。 「報酬は、六対四でいいね? 穴見つけたの僕らだし」 「宝が見つかればな……」 「あの青年以外帰還してない場所で、そんなに生きて帰れる自信があるの?」 ピッチはスノウに問いかけた。 彼は、ピッチに笑顔で答えて見せた。 「もちろん、だってつい先日そこから帰ってきたばかりだもん、僕は!!」 第六話 穴 酒場から、遠く離れた場所。 潮風がそよぐ、大海原。 地平線まで青が広がるその海岸は、子供や観光客に人気の遊泳スポットの海水浴場だった。 しかし、それは今も昔。 今はその海の沖合には、とても不釣り合いな巨大な穴が空いている。 この穴の存在が確認されて700年。 その日を境にその近辺の海では、せいぜい潮干狩りに制限されており、海で遊ぶのは法律で禁止されていた。 「この穴に、誤って落ちてしまって帰ってこない子供や、漁師が何人もいたんだよ。 冒険者たちの他にね」 沖合の岬の灯台から、望遠鏡でのぞいて見える穴。 サファイアやピッチはそれを見てただ感嘆の声を上げるだけだった。 「確かに、落ちたら一巻の終わりだな」 「あれが伝説の穴ってことで確かなの?」 ピッチの言葉に、スノウは一冊の書物を広げる。 迷いなくページをめくると、彼はある場所を突き付ける。 「語り継がれた物語と、大昔の冒険者が記録した穴の場所。 ほぼ完ぺきに一致してる。 あそこが四つの穴の一つに間違いないよ」 「なるほど、あれだけ危険だとスノウが人を選んだのも分かるのサ」 マルクが望遠鏡で眺める先。 そこには穴の付近で一隻の船が近づいているのが見える。 「おいおい、あぶねえぞ」 「ぼく達と同じ、穴のお宝を狙いに来たギルドのメンバーだ。 多分あそこを四つの穴と知っての――」 その時だった。 望遠鏡から覗いたらわかる。 そうでなくても、何か事件が起きたのかと思えるような、爆撃。 穴の付近から巨大な水しぶきが飛び出すと――船が、沈んだ。 「うわっ!! 大変だ、みんな沈んでるよ!!」 「スノウ、どこに行けば船を借りれる」 サファイアは灯台から駆け下りようと階段に一直線になる。 スノウは、彼を引き留めるように声を張り上げた。 「待った!! もう遅い」 「――あれは、ひどいのサ」 マルクも、その光景を見て思わず絶句する。 穴の付近には、肉食魚がうようよと出現すると船の破片ごと食い散らかしている。 そのおぞましい光景に、マルクは顔をしかめた。 「ああやって、弱い侵入者はあっという間に付近の魚のエサにされる。 だから、ボクは最初に実力者だけを連れて来いといったんだ。 分かる?」 スノウの言葉に、サファイアは黙ってその光景を眺めているだけだった。 彼は腕に冷気をまとわせ、震えてこう言った。 「ああ、よくわかったよ。 久しぶりにゾクゾクするよ――だけどやっぱりあんたは変わってないな」 サファイアは、それだけを言うと灯台の窓から飛び出した。 彼の着水地点である海には、ピッチがモーターボートを用意して待っていた。 「俺はああいうのを見逃せない性分でね!!」 「サファイア!!」 スノウも、サファイアの後を追って灯台の窓を見おろした。 彼が下を見ると、すでにボートはサファイアとピッチを乗せて巨大な穴に一直線に走っている。 「残念だけど、あいつはああいうヤツなのサ。 ケケを助けた時も、そうだったらしいしネ」 窓からマルクが翼を広げると、二人の後を追って飛び立った。 スノウは、一人取り残されると頭を掻きむしり、無線機を取り出した。 「誰に似たんだか――フロス、アイドラン。 準備は大丈夫?」 『ああ、もう俺たちも待ちくたびれてるぜ』 『あんたが見初めたっていう連中、結構好戦的で気に入ったぞ、スノウ』 無線からは二人の男の声がする。 スノウは、まっすぐ沈んだ船に向かっているサファイア達のボートを捉え、連絡をする。 「あのボートは、今から被災者を救助する。 キミたちは彼らの援護を頼む――その直後に、予定が変わるが穴の中へ突入する」 全速力で飛ばしていくボート。 サファイア達は舵をとり、穴付近にある沈みゆく船に近づいていく。 「サファイア、少し速度を落とすのサ。 溺れてる人たちに船がぶつかったら危険だ」 マルクに言われるとおり、サファイアはボートの速度を少し落とす。 片方をマルクが、もう一方をピッチが被災者がいないか確認する形で、ピッチが声を上げた。 「いたよ、サファイア!! 十時の方角に二人だ」 ピッチの言葉通り、バラバラになった漁船のような破片にバウンダー族のヒト型が二人溺れてる。 そして、彼らのすぐ背後には、浮き輪を付けた巨大なサメの姿が!! 「ガブリエルだ!! 間に合わん」 マルクは飛び出して、翼を大きく広げる。 翼からは数多の矢が現れるとそれはそのままガブリエルに直線的に発射される。 「アローアロー!!」 矢は見事ガブリエルに命中!! ガブリエルは驚き、そのまま海中に逃げ込むと、ピッチはボートに備え付けてあった浮き輪を二人のバウンダーに投げつけた。 「た、助かった!!」 「ありがとうございます!!」 ピッチは二人にタオルを渡すと、サファイアとマルクの横に並ぶ。 彼らの視線の先には、穴の前に立ちはだかる何人もの影。 「――あれが、このおっさんたちを襲ったわけか」 「見る限り、ギルドっぽいのサ。 ギルドメンバーが一般庶民襲うとはずいぶんと悪趣味なの――」 「ち、違います!!」 マルクの言葉を遮るように、バウンダーたちは叫んだ。 「彼らは、私たちを逃がしてくれたんです!! ここは危険だって」 穴の前の、男たち。 彼らも、サファイア達と同じこの穴に用があってやってきたギルドだった。 仮面の精鋭――愛称メタナイツ。 知る人は知る、実力者ぞろいのギルドだが、彼らは穴の前の岩場にただ怯えて集まっているだけだった。 「た、助けてくれ!!」 「そこのヒト、お礼は弾むダス!! ここから逃がしてくれ」 「まずい、奴らの攻撃が来るぞ」 サファイア達は、遠巻きからしかそれを眺められなかった。 もう彼らが乗ってた船は全体が海に沈んでしまい、何もできない状態。 それを眺めていると、穴から巨大な茶色い竜がメタナイツの背後から現れた。 「な、なんだあのドラゴン――」 その竜は、なんと巨大な口を開けると――彼らを一気に、丸のみしたのだ。 「う、うわあああ!! 食われたぁ!!」 ピッチも思わず叫びだすその様子。 この世のものとは思えない光景が、彼らの前に繰り広げられている。 『サファイア、聞こえるか』 「スノウか!? 大変だ、今穴の入り口にいる化け物が」 『あれは間に合わない。 今そのドラゴンの横に、僕らのギルドのメンバーがいるけど――多分、ヒットポイントを削りきる前に消化される』 確かに、茶色い竜の横には大きな船が砲撃をしていた。 そして、サファイア達の船の横には――スノウとその仲間二人。 「スノウ、あいつは何だ!!」 サファイアも、船の砲撃を横目にしつつ、穴の前に接近する。 横にぴったりくっつくようにスノウはドラゴンを眺める。 「グランドドラゴン、数千年前に滅んだとされる竜のデータだ」 「データって、どういうことなのサ」 「あいつは、数多くの時代の化け物をデータ化し、侵入者を阻む――穴の守護神、バトルウィンドウズ」 「穴の奥には、あいつがウヨウヨいるのさ、美しくないだろ?」 ――そして七色の暴食、その裏道。 ブレイドは、剣を手に取りケケと相対している。 ケケは黙したまま構えると掌から電撃がほとばしる。 「あんたが、お願いしたんだよ。 稽古をつけてほしいって、後悔するなよ」 ブレイドは少しだけ薄気味怖い笑みを浮かべて、ケケを睨む。 彼女は、覚悟を決めたように、言い放った。 「当然です。 私だって、いつまでもサファイアやマルクさんにおんぶにだっこじゃいられません!!」 ケケは、しっかりわかっていた。サファイア達と、自分。 チームといえど自分と彼らの溝はあまりに深く、大きい。 彼女の決意と決断は、七色の暴食の皆がしっかり分かっていた。 みんな、酒場を出て黙って見守る。 「いくよ!!」 「――っはい!!」 ――「今度依頼するときに、キミも呼べるように願っとくよ」―― スノウの、あの言葉がケケに突き刺さる。 彼女は唇をかみしめて、電撃を掌からまっすぐ放ち、叫んだ。 「次会ったときは、そっちから指名をしたくなるように、なっときますよっ!! スノウさん!!」
投稿者コメント
メタナイツはかわいい。彼らもハルトマンのようにたくさん出せたらいいなって思います。
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