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小説「
第四十九話 最後のパーツ
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作者名
ディン
タイトル
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内容
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ププビレッジ 丘の上のレンガ壁…… 「ありゃもう完敗だな。 あんな強そうなマシンに勝てるわけねえ」 「何言ってるんだい!! ブレイドやマルクなら絶対なんとかしてくれるよ!!」 シティトライアルの経過はチャンネルを変えることで事細かく把握できる。 会場の観客がタブレットでカメラを変えて経過を確認するのとほぼ同様の手段で、各国のテレビ局はそれぞれ割り当てられたエリアにカメラを配備し、そこを独占的に中継している。 つまり、森エリアを知りたければ2チャンネル。 空中庭園エリアの経過を確認するなら8チャンネル……と、リモコンで随時操作するのだ。 「おいおいイロー、カメラ勝手に変えるんじゃねえよ!!」 『七彩の暴食』の応援団として観戦をしているププビレッジの住民達。 次々と画面が切り替わる映像のリモコンを持っているのはイロー、ハニー、ホッヘ。 彼らは『七彩の暴食』に憧れを持ち、いつかギルドに入るのを夢見ている、サファイアやケケ達と仲の良い子供たちだ。 「サファイアの兄ちゃん、どこに消えたんだろう」 「あのな、サファイアはさっき空に飛ばされたんだよ。 だから今残ってるのはブレイドとマルクで……」 タゴがそう宥めようとすると、三人の子ども達は目に涙を浮かべて睨みつける。 鬼気迫るそれに思わずタゴは口を閉ざす。 「サファイアの兄ちゃんが負けるはずがない!!」 「そうよ、きっと戻ってくるわ!!」 既に意見は平行線。 困ったなとタゴが頭に手をやっているうちに、ボルン署長が投影されてる映像に指をさして叫んだ。 「皆さん静かに!! あ、アレは……!!」 ププビレッジ 海岸の岸壁…… 「むぅ、サファイア達は流石に苦戦しているな」 スイートスタッフ達、海の住民達も『シティトライアル』には注目していた。 今はちょうど決勝戦と言う事なので海上に上がって、断崖絶壁に映像を投影して村の皆の様に試合を見守っていた。 「あの赤いティンクルの乗ってるマシン、なかなか強そうですね……」 彼らの目的は、ププビレッジで応援している村人同様サファイア達の応援。 ファッティホエールの一件からププビレッジの海底に移住していた彼らはすっかり村に打ち解け、今では毎週ププビレッジとの交流会を開いている。 そうする内に海の住民達もすっかり『七彩の暴食』贔屓になってしまった。 「スイートスタッフ様、流石にもう大勢は決したのでは」 だがこの試合はレッドやスノウ達の独壇場。 素人から見ても明らかだった。 サファイアやマルク達がここから逆転する道は見えそうにない。 「何を言う!! 黙ってサファイア殿達を応援しないか!! この村の海岸に住まわせてもらっている以上、我々にできるのは『七彩の暴食』の勝利を願うのみ。 それがせめてもの報いじゃないか」 スイートスタッフは気弱な従者や住民達に啖呵を切るが、内心先ほどの意見に同調していた。 ただサファイア達が白旗を上げていない限り、自分達が諦めるのは背信行為だ。 と複雑な心境だ。 時間は過ぎていく。 ここから更にブレイドやマルクもやられていくと、皆の悪い予感は現実のものになる。 誰かが目を閉じて顔を伏せようとしたその時……。 「待て、外から飛んでくるマシンは……」 スイートスタッフの後ろから、声が聞こえてくる。 映像に注目が集まったと同じ時間に、ププビレッジではイロー、ハニー、ホッヘが大歓声で叫んでいた。 「見て皆!! あそこから飛んでくるの……サファイアの兄ちゃんだ!!」 第四十九話 最後のパーツ 『サファイア選手が、ドラグーンに乗って戻ってきたぁぁ!!』 砕け散った隕石の中心に七色に輝く煙の筋は、まるで虹の架け橋のように。 会場の空を覆い見る者を魅了する。 その煙をかけた主人は空中を旋回するスノウのワープスターに突撃する!! 「う、うわぁ!!」 「スノウ、遊びはそこまでだ!!」 サファイアは右手に氷の剣を持ち、スノウのマシンの背後にそれを振るう。 ワープスターの排気口は見事に氷の蓋に覆われ、空中でのコントロールを失った。 「嘘だぁ!? 赤君、ぶどう君助けてぇ!!」 制空権を失ったスノウはワープスターもろとも真っ逆様に落ちていく。 マシンが先に地面に衝突すると業火を纏い爆散するが、肝心のスノウは寸での所でアドレーヌとフロスがマシンから身を乗り出すと、それぞれスノウの片足を掴んで宙吊りの姿勢で確保する。 すぐ近くまでグレープが飛んできてスノウに声をかけた。 「大丈夫かい、スノウ」 「助かったぁ……空中で戦うのはちょっと厳しかもね」 地上を蹂躙するのがハイドラとすれば、ドラグーンは空の支配者か。 空中戦では分が悪いとばかりにスノウはサファイアを見上げている。 「そんな事言ってる場合か!! オレ達の目的を忘れたか!!」 レッドが空を飛びながら叫ぶ。 サファイアのドラグーンとは睨み合いの様相で旋回を続ける。 もはやこの一騎打ちの図に横入りは野暮だ。 「アイボリー、さっさとスノウにマシンをよこせ」 『了解、近くの手頃なマシンを連れてくるね』 アイボリーはパソコンに何かを打ち込むと、スノウのすぐ近くにワープスターが一人でに動いて近づいてくる。 「やっぱりね。 この大会、妙だと思ったよ」 地下エリアに身を隠していたブレイドとマルクは、透過された天井から地上の様子を見上げていた。 もう既に試合は破綻している。 地上に足や身体が付いたら失格というルール等もう完全無視とばかりに、マルクは地に足をつけて不満顔だ。 「奴らの中に、この試合を自由に操作できるハッカーが居るってなら、八百長じゃねえか。 よくもまあ国際ギルド連盟もこの状況を黙認するよネ」 「まあその点に関してはウチもハルトマンを引き込んでるから、突かれたら何も言えないねえ」 ブレイドは苦笑いを浮かべながら、地下から地上へ繋がる坂道をこっそり登り、隙間から外の様子を眺める。 空中ではサファイアとレッドがやり合っているが、それ以外は地上を回っている様だ。 「マルク、マシンは動くね」 「ああ、今のところは。 またさっきみたいなイベントが起こらない限りは問題ないのサ」 「充分だ。 アドレーヌとアザラシだけでもこっちに誘導できれば、サファイアも楽になるね」 ブレイドはサファイアの後方支援の機会を伺っていた。 相手の隙ができればアドレーヌかフロスのいずれか両方をこの地下エリアに引き入れたら……と機会を伺っていたその時、彼女の視線は空に向く。 「あ、あれは……」 「ウォーキーさん。 実況はもうおしまいです」 実況エリアに武装をした兵士たちが雪崩れ込んでくる。 マイクやスピーカーの電源を無理やり切られ、テレビ局の職員やウォーキーは混乱する。 「な、なんだあんた達は!! 今大事な試合なのに、私には試合を楽しんでくれるテレビの前の人達が……」 と、ウォーキーが異議を唱える前に、兵士の一人が一枚のカードを突きつける。 そこにはこう書かれていた。 「国際ギルド連盟の……平和維持軍!?」 「今は緊急を要します。 『七彩の宝玉』幹部の逮捕にご協力を」 「ソード!? なんでアイツがここにいるのサ」 目を疑う光景だった。 サファイアやマルク、決勝進出者しかいなかったはずのシティトライアル島には、いつの間にか世界各国のギルドの名だたるメンバーがマシンに乗って取り囲んでいた。 そこには『七彩の暴食』のソードナイトも居たのだから。 そしてその異常さは、観客席にいた者達にもすぐに伝わる事になる。 「うわ、すごい!! あそこにいる人はクッキーカントリーの有名人!! フロランドやラスタードロードのギルドの人もいる!!」 ケケはまるでミーハーの様に大はしゃぎだ。 何も知らない客からしたら、これもイベントの一種かと勘違いしてもおかしくない。 「変だよ、決勝戦は参加者の仲間の妨害とか入らない様に徹底的に管理されてるはずだよ」 「その歴代のルールを覆さなけりゃいけないぐらいの緊急事態……って事だろ」 慌てるピッチと、対照的に落ち着いているドロッチェは先ほどの兵士達の介入とレッドがハイドラでそれを蹴散らした光景を思い出す。 「そもそもこの大会は、白玉どもを捕えるための大会でもあったわけだ。 オレ達一般ギルドが、アイツらをやっつけてくれたら、逮捕までの省けて一石二鳥って体裁の」 「そっか、予選やこの決勝戦でスノウ達をやっつけたら、お偉いさん達も奴らを捕まえるのが楽になる」 その目論見は外れたわけだが、とドロッチェは続けた。 「それで次はこの決勝戦だ。 サファイアやマルク、ブレイド……後はほぼ『宝玉』関係者なのをどうして放ったらかしにしてたのか。 疑問だったわけだが」 「事情を話せば、スノウさんやレッドの仲間であるフロスさん達も、こっちについてくれる……と?」 「ケケみたいな楽観視してるお上がいた可能性はある」 つまりドロッチェの予測はこうだ。 『サファイア達、あるいは『フロスやアドレーヌの良心』に期待をしていたがもう待ってられない』 それを聞くだけで、ケケは苦虫を噛み潰した様な表情で島の様子を眺めていた。 「なんか……サファイア達が利用されてるみたいで、悔しいですよ」 「ケケ、僕も同じ気持ちだ」 ピッチも内心怒りに満ちている。 何も知らない客や視聴者達の楽しむ声が『七彩の暴食』の皆にはノイズにしかならない。 「今この瞬間、試合に夢中になってくれていることが、一番の好機……」 地上に降り立った『平和維持軍』は小隊を編成してスノウ達に相対する。 彼らの推測では、試合を続けてスノウ達も疲弊し切っている。 その隙に一網打尽と言うのが、理想のシナリオだ。 ヘビーナイト族の男が、ワープスターに乗ったままスノウ達に剣先を向ける。 「試合は中断、全員その場を動くな!! スノウ、レッド、グレープ、アイボリー『七彩の宝玉』の主要メンバー並びに、彼らのギルドに属する者、国際ギルド連盟の名において全員逮捕だ!!」 「あら、僕もバレてら」 観客席にパソコンを見ているだけのアイボリーも、音声を拾い上げて状況を確認していた。 彼の周り『芸術は爆発』のギルドのメンバーは、仲間が捕まりそうだと言うのに至って冷静だ。 何も動じないし、動く気配はない。 「スノウ、グレープ。 地上は任せていいんだな」 空中でサファイアのドラグーンを追いかけてるレッドは『けいたい』で地上にいるスノウ達に確認する。 二人は笑みをこぼしながら、スノウは冷気を、グレープは大きな爆弾を構えて兵士たちに相対する。 「勿論だよ。 アイボリーの手も煩わせないよ」 「相手はたった二人だ!! 一気に捕えろ!!」 ほぼ同じタイミング。 地下エリアから地上に猛スピードでブレイドが『平和維持軍』と『七彩の宝玉』の争いに突っ込んでいく。 剣や銃器、魔法が飛び交う中で翡翠の鎧の男の姿が、マルクの目にも飛び込んだ。 「アンタ!! なんでこんな所にいるのさ」 「ばっかブレイド!! 仕事の邪魔するな」 スノウの吐き出した冷凍光線を間一髪で避けながら、ソードはブレイドを抱き抱えてビルの壁に押し付ける。 その二人を追うようにマルクが慌てて駆けつける。 「ソード、コイツはまさか」 「ああ、前も言ったろ。 オレの仕事は『七彩の宝玉』メンバーの討伐だ。 この大会はまたとない大チャンスってワケだ」 「なんでそんな大事なことを、私に話さなかったのさ!!」 「いや、言ったら絶対反対するし……」 ソードがブレイドを宥めようとした途端に、周囲に爆音が響いた。 グレープが爆弾を発破させた様だ。 ソードの仲間達はあっという間に吹き飛ばされ、ジワジワとスノウも横並びになってソードら三人に接近する。 「……マルク、お前はサファイアのところへ急げ」 「ん、ああ……頼んだのサ」 マルクの心中を察したソードは、彼の背中を押して空への飛翔を後押しする。 「ぶどう君、あの二人は多分サファイアの所で一、二を争う奴らだよ」 「ええ……そんなのを相手にしてたら作戦がいつまでたっても終わらないよ」 溜息混じりで文句を言いながらもマルクを黙って見届けるグレープとスノウの心境は、余裕か。 それとも。 『大丈夫だ、白玉、グレープ。 おかげでこっちの目的の目星はついた』 レッドからの通信だ。 空を旋回していたレッドはサファイアとの距離をとりながら少しずつ高度を下げて降りていく。 彼の行き先は……森林エリアと高層ビルのエリアのちょうど中間に位置する、水車を登った高台だ。 「地下にも無い、火山の中も探した。 大体そこに伝説のパーツがあるもんだから、似たようなもんだって考えちまう」 「そうそう、だから全部掘り返すつもりで隕石イベントも二回も起こしたもんね」 「あそこは掘り返したか?」 レッドのその通信を最後に、ソードとブレイドの背中にある水車の高台にハイドラが隕石の如く勢いよく突貫する。 まるで小さな地震が起きたように、振動と高波が市街地の床に溢れ出て、流れ込む。 「な、なんだい!?」 「ボムボム発射ァ!!」 慌ててブレイドが振り返るのを隙とばかりに、グレープは細いミサイル三発を発射する!! すかさずソードが剣でそれを弾き飛ばすと、流れ弾が高台の崖付近に落ちて巨大な水柱が立つ。 「クソ!! レッド待て!!」 ハイドラと爆弾で崩壊しつつある高台に、レッドに続いてサファイアが突貫する。 ほぼ同じタイミングで空を向かっていたマルクはすかさず急ブレーキをかけて、引き返す。 「サファイア、ちょっと待て!! ボクも行く……!?」 地上を見下ろす形で振り向いたマルクは、ミサイルで崩壊した高台の際に立つレッドと、そばにあるそれを凝視した。 コンテナや、カスタマイズパーツや、マシンとも違う。 あまりにも場違いな『部品』がレッドの足元に転がっている。 それは、高台を見上げていたブレイドやソード、観客達も見ていた。 誰もが一度は見たことがある。 巨大な『電球』、豆電球がそこには転がっている。 「な、なんだい……あれは」 「サファイア!! 絶対そいつをレッドに渡すなァ!!」 呆然としているブレイドと対照的にソードは鬼気迫る顔でサファイアに叫んだ。 それが答えとばかりに、グレープとスノウはマシンを急発進させてソードとブレイドの横をすり抜ける。 「にゃろっ、行かせるか!!」 ソードはすかさず剣を振い、二人を足止めしようと足掻く。 ブレイドも、隣の旦那の行動は奇行とは思わずにすぐさま剣を抜いて振り返る。 背を向けるグレープ達を襲うのは気が引けると言う物だが、ソードの焦燥っぷりからそうも言ってられない。 そして、シティトライアルの観客、視聴者達の注目も高台に集まる決勝メンバーに集中していた。 レッドが掘り起こした『電球』は、いったい試合でどう活用されるのか? 興味は自然にそこに集まる。 「見つけたぞピンク!! 最後のパーツだァァ!!」 「レッドぉぉ!!」 高台のど真ん中、岩や雑草ばかりの空間に場違いなそれに向かってレッドとサファイアは手を伸ばした。 ハイドラとドラグーン、二つのマシンから飛び降りて、まるでビーチフラッグの如く手が先につくのはどちらだと言わんばかり!! 「赤君サファイアにはコイツが効く」 そう言うとスノウは地面に術式を展開する。 それは彼が『虹の島』でも確認した、サファイアの弱点!! 『年齢が 『70歳以上』の者、電球に触れる事を禁ずる』 術式とサファイアの身体が重なった瞬間、電撃が彼の身体を包んだ。 身を貫くように一撃に、サファイアは思わず顔を顰める。 「ぐぁっ!!」 「まさか、本当にサファイアは……」 グレープが思わず目を疑った。 それは、決勝が始まる前日、彼らがこの島で話し合った時にレッドの結論は半信半疑だった。 「はは……ふはは、そうかそうだったんだね、オレンジ、ラベンダーちゃん!!」 スノウは、何かを察したかの様に剣戟を交わしながら大笑いする。 ソードとブレイドの攻撃を見事にかわしながらのそれに、ブレイドは薄気味悪くなり顔を顰める。 「何を笑ってんだい気味が悪いね!!」 「サファイア、無事か!?」 スノウとグレープを足止めしながら、ソードが声をかける。 電撃をまともにくらい、ドラグーンに突っ伏す様にうずくまるサファイアの正面にレッドは『たましいのうでわ』を左腕にはめ、右手に『フレンズハート』を持って立ちはだかる。 「計画は狂ったが、お前がこっちに来てくれたら問題ない。 さぁサファイア……いや、オレンジとラベンダー」 「贖罪の時だ!!」 レッドがそう叫んだ途端に左腕の腕輪が不気味に光り出す。 何事かとばかりに目を見開くブレイドに、スノウは彼女の疑問を察して口を開けた。 「サファイアは元ある場所に帰るだけさ。 ただし、サファイアだけじゃない。 彼の保護者にもしっかり責任を取ってもらうんだ」 「保護者だって!? サファイアの!?」 「ぎゃあああああ!!!!」 今まで聞いたこともない様な、つんざく様な悲鳴が辺りに響く。 頭を抱えて、ドラグーンの上でひざまづくサファイアの身体から、真っ白なモヤの様な物がレッドの腕輪に吸い込まれていく。 「くそっ!! サファイア、しっかりしろ!!」 ソードの叫びも虚しく、サファイアは膝をついて頭を抱えている。 それを見て、もはやエアライドの大会どころではないと、観客達も大騒ぎだ。 「お、おい……あれヤバくねえか」 「エアライドの攻撃アイテム……じゃないよなアレ?? 反則じゃねえのか」 レッドの常軌を逸した行動は既に観客達も予想外といった様子。 苦しむサファイアを見て、ケケやピッチは身を乗り出して叫ぶが彼には届かない。 「サファイア!! しっかりしろ!!」 「もうやめて、サファイアが死んじゃう!!」 ケケの叫びと同時に、レッドの頭上にUターンして空から降りてきたマルクが突貫する。 四つのカッターを顕現させ、レッドの頭目掛けて発射するが寸前の所でレッドはハイドラを浮上させる!! 「サファイアから離れろ赤玉ァ!!」 浮上するハイドラはマルクの咄嗟のキックを掠めて宙へ浮かぶ。 攻撃が中断され、うずくまっていたサファイアはドラグーンから崩れる様に落ちていく。 『主人のいなくなった』ドラグーンには、グレープが咄嗟に飛んできてワープスターから見事に乗り換えた。 レッドの背後には、電球を抱えているスノウとグレープ『七彩の宝玉』。 それに先ほど捕縛したはずのボンカースやアドレーヌ達。 そして会場の観客席からおもむろに立ち上がったのは、スノウやレッド達のギルドのメンバーだ。 「大会はもう終わりだ。 オレ達の目的は達成された」 マルクを見下ろしながらのレッドのその不気味な宣言は、まるで勝鬨を上げるかの様。 倒れているサファイアを脇で抱え上げるソードとブレイドの前に一歩進んだマルクは、翼を真っ黒にして大きな牙を剥き、睨みを利かす。 「ケケを傷つけた次はサファイアかよ? 逃すわけないだろ? お前達は今ここで、ボクが殺してやるのサ」 「残念だけどねマルク君、赤君の言う通りもう大会はおしまいだからね」 スノウの言葉の真意はいかに。 それはすぐに全員が理解することになる。 グレープは身体を真っ白に発光させると、両手を天に掲げて、シティトライアル島の地面は大きな亀裂をつくって地鳴りが響く。 「複製……地獄の業火(ビッグバン・クラッシュ)!!」 その瞬間、シティトライアル島だけでなく、観客席までもが真っ白な閃光に包まれた。 木々や岩だけでなく、火山、高層ビル、お城や中心街のビル群までもがあっという間に更地の様になっていく。 それを全世界に放映する前に、グレープの攻撃の影響で世界中の放送網はあっという間に壊滅、テレビ画面は砂嵐が次々と支配していく。 「きゃああああ!!!!」 観客席は宙に浮いている。 地鳴りは影響を受けないが風圧はもろに直撃する。 その直前にシミラは観客席前に巨大な鏡を張り巡らすと爆風は鏡にヒビを入れながらも、そこで受け止められる!! 「ぐっうぐぐ!!」 「シミラ、頑張れ。 私も手伝う」 ダークマインドもすかさず鏡を展開して爆風を抑え付け、彼らの姿を見てこの爆風に勝てると踏んだ客席の魔導士達は次々と防御魔法を展開する!! ミラーの能力、岩石や鋼鉄を壁の様にする能力。 やがて爆風が収まると、360度の観客席は防御魔法で一杯だ。 「シミラさん!! ありがとう」 「え、えぇ……だけど、大会が……スノウ達が」 その光景は誰が見ても分かる。 優勝を決める以前に、既に島は壊滅状態。 もはやこれはレッドやスノウ達『七彩の宝玉』の宣戦布告に等しい惨状だった。 第2X回 エアライド・シティトライアル プププランド大会 結果:参加者による破壊活動により大会中止 死傷者:奇跡的に死者ゼロ、重軽傷者数十名 国際指名手配犯『七彩の宝玉』および関連ギルドは現在国際ギルド連盟の全総力を上げて追跡中。 「うぅ……ブレイド、無事か」 「ああ、なんとかね。 生きてはいるさ」 瓦礫だらけの廃墟になった島の中で、ソードは剣で身体を支えながら立ち上がる。 彼の周りにはレッド達の逮捕のために集まった仲間達も、悔しそうに空を仰ぎ、瓦礫に腰を下ろしたり様々だ。 「サファイアとマルクを、この瓦礫から探し出さないと……」 ブレイドがそう言って振り向いた途端に、仁王立ちしているマルクと、腰を下ろしているサファイアの姿が見えた。 それを見て胸を撫で下ろしたブレイドとソードは、穏やかな顔で二人に近づいた。 「二人とも、生きててよかったさね」 「さぁ、マスターやピッチ達も心配してる。 まずはゆっくり休んで明日ププビレッジに帰ろう、後は俺たちに任せて……」 ソードがそう言葉をかけてマルクの肩を叩いた途端に、彼の視線がサファイアに注がれる。 ソードに気づいていないマルクは、驚いた様な表情でサファイアに問いただしていた。 「何を言ってるのサ……サファイア、なんだろ? お前」 『やはり……そうらしいぞ。 僕達は、蘇ったらしい』 まず彼らが感じた違和感。 腰を下ろしているサファイアの瞳は、いつもであればその体色と変わらない澄んだ藍色だったはず。 しかし今の彼の瞳はそれぞれ片目ずつが橙色と薄い紫色になっている。 その状況は、マルクも身に覚えがあった。 シミラがかつてサファイアの意識を乗っ取った時だ。 しかし、あの時はサファイアはすぐに正気の一部を取り戻したが、今はその様な様子は見られない。 『私も……生きているのね。 この子の、サファイアの心の中から解放されて』 いつものサファイアからは想像できない言葉遣い。 マルクやソード達はその違和感に真っ先にこの言葉を投げかけた。 「サファイア……いや、違う。 お前『達』は、誰だ!?」 「まさかレッドやスノウがサファイアを操っているのか!? アドレーヌ達の様に」 『ま、待ってください!! 僕達も久しぶりに蘇って、少し混乱してるのです』 サファイアの姿をしているその存在は、呼吸を整えてマルク達の前に膝をついた。 そして正体を明かす事になる。 『僕はサファイア・デラムの育ての親、オレンジ』 『そしてラベンダー、私達はーー』 『七彩の宝玉』から、サファイアを逃す為に彼に身を捧げた存在です。
投稿者コメント
シティトライアル編、完結です。そして最終章に入っていきます。 ここからが『七彩の暴食』です。 どうぞ最後までお付き合いください。 その前にちょっとしたサイドストーリーを挟むつもりです。 ここ最近結構シリアスストーリーな感じが続いたので、お口直しって感じで、書いていこうと思いますよ。
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