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小説「
第四十四話 怒れるマルク
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作者名
ディン
タイトル
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内容
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「ケケ!!」「ケケちゃん!!」 会場の中にある医療センター。 世界大会ということでこの場所も、世界各地の最先端の医療技術が集まる。 予選一組、二組で負傷した参加者達はそこで治療を受けながらも、部屋に備え付けてあるモニターで次の予選の様子や、自身が参加した試合のハイライトを眺める事が出来る。 ケケもその例に漏れずに、病室によくある様な真っ白なベッドの上で、顔や頭に絆創膏や包帯を巻かれていたが、仲間達の声かけに手を振って笑って見せた。 「あ、あはは……すみません。 負けちゃいました」 「何言ってるんだい。 大健闘だよ」 ブレイドはケケの頭を優しく撫でながら、優しく答える。 その横にはケケを救助した『白の騎士団』のフロスと「心配だから」とついてきていたスノウもいる。 「医者からは見た目ほど大した事ない怪我だって言ってもらえた様で」 「そうかい。 ウチもヤブイが参加できていれば良かったんだけどね」 ヤブイとは、ププビレッジ唯一の診療所の責任者で医者だ。 彼もまた『七彩の暴食』の冒険者であるが、ププビレッジの医者が足りないが故に今回の大会には参加していない。 「スノウ、迷惑かけたな」 「いやいや、それより僕はケケちゃんの成長ぶりに驚いたよ」 サファイアとスノウはケケのベッドの横に陣取り、会話をしている。 そんなスノウの言葉尻を取り上げて、ケケはVサインを突き出して威勢よく言い放つ。 「スノウさん、これで次からサファイア達と仕事誘う時に、私も呼んでくれますよね?!」 「うぇえ?! 今それ聞くわけ??」 ケケは覚えている。 スノウがサファイア、ピッチ、マルクを『四つの穴』の一つに誘った時に彼女だけ除け者にされた事を。 あれからケケは、事あるごとにブレイドに師事して、ピッチにはエアライドの技術と知識を受けていた。 その自信からか彼女の言葉は強気だ。 「おうおう白玉ぁ。 ケケちゃんはやる時はやるぜー!!」 「なんなら勢いなら『暴食』で一番だからな」 ホヘッドとバヘッドが、スノウを挟み撃ちする形で背後から囁いて見せる。 援護射撃だ。 「そのやる気を見習って欲しいメンバーも居るんだけどねぇ。 さぁさぁ、三回戦のメンバーもそろそろ発表じゃないのかい??」 ブレイドの言う通り、医療センターのモニターはハイライト動画から次の参加メンバーの発表に回っている。 「ウチからは……マルクとピッチが選ばれてるねえ」 「あっ、僕の名前も出たぁ!! よーし、ケケちゃん。 僕頑張るからね、テレビの前で応援よろしく!!」 「いや、ライバルだから一応」 フロスの容赦ないツッコミ、スノウは引っ張られる様に部屋を引きずり出され出ていく。 『七彩の暴食』のメンバーは、マルクとピッチの応援に向かう為に病室を出ていく。 「じゃあな、ケケちゃん。 ゆっくり休んどけよ」 大所帯だったケケの周りはどんどん数が減っていき、とうとう残っているのはサファイアとブレイドだけになっていた。 ケケはまっすぐ澄み切った眼差しで、サファイアを見つめている。 「サファイア、お前は仲間の応援にいっとけ。 ケケは俺が見守る」 メンバーと入れ替わるように、ドロッチェが入ってきた。 彼に促される様に、サファイアは立ち上がるとブレイドは背中越しに声をかけた。 「サファイア、あんたは第四組に自動的に選ばれたわけだ。 三人ともしっかり残りなよ」 「ああ、俺達の心配より他の奴らの心配をしてやれよ……」 それと。 と、サファイアの言葉を遮る様にブレイドはつぶやいた。 ケケ、サファイア、ドロッチェの視線が彼女に一斉に集まる。 「アドレーヌは私の獲物だ。 絶対に横槍を入れるんじゃないよ」 ブレイドの鋭い眼光に、ケケは喉を鳴らした。 誰も何も言い返せないその一言に、サファイアは真一文字に口を閉ざしていたが、静かに答えた。 「わかった」 「さて、俺はお二人に飲み物でも買ってくるとすっか。 ケケ、ブレイド、リクエストあるか??」 「あっ、わたし緑茶でいいです!!」 「私もケケと同じのを買ってきてくれるかい。 手をかけるねドロッチェ」 こうして、サファイアとドロッチェが病室を出て行ってその場にはケケとブレイドだけが残された。 足音で出て行った二人が遠ざかる様子を聞き耳立てて確認すると、ブレイドはケケの背中をさすって優しく声をかけた。 「……よく我慢したね。 えらいよケケ」 「……ふぐっ、すみま……せん。 ブレイドさんにも……特訓してもらったし……ボルン署長にも……色々パーツの事とか勉強……して……」 ずっと我慢を続けていた、ケケのまぶたは決壊していた。 ベッドには彼女の涙の跡がこぼれ、外に漏れないと必死に嗚咽を抑える。 「後は私たちに任せな。 大丈夫、アンタは頑張った。 『七彩の暴食』の誇りだよ、ケケ」 「はい…………はいっ!! ……っ」 ドアの向こうでは、いまだに自販機に向かわないドロッチェが扉に背をもたれかかって、腕組みで静かに怒りを抑え込んでいた。 第四十四話 怒れるマルク 既に会場は次の試合のセッティングが終了している。 楕円形の会場のど真ん中には、まるでスキージャンプの様なステージの向こう側に、壁と床に数字の書かれたエリアが至る所に点在する。 『第三試合、ポイントストライクのセッティングが完了しました!! 今回の試合は参加者全員で一斉にマシンで飛び出して、高得点のポイント獲得に挑戦していただきます!!』 司会者のウォーキーの言葉に、客席からは歓声と拍手が湧き上がる。 参加者達は横一列にマシンに乗って並んでおり、まるで巨大な山脈の様にポイントの描かれたエリアが見えている状態だ。 『ルールは至ってシンプル。 スキージャンプの要領で飛んでいき、より高いポイントの描かれたエリアに着地、突き刺した時点で競技終了!! そして参加者八十四名の内上位半分を勝者として、同様の競技を繰り返し……最大四名決定するまで続けます!!』 「なるほどね、じゃあマルクと僕で高いポイントを手分けして探して、一緒にそこに行こうよ」 「あっ、その手があったのサ。 ピッチ頭いいなお前」 マルクとピッチは横並びに作戦会議をしていた。 ウォーキーの解説を聞きながら耳打ちで話し合う様子は、二人だけではなく他のギルドの仲間とも取れるメンバー達に見られる様子だ。 『しかし、ポイントは先着順です!! 一人が獲得したポイントはその手番二人目以降が獲得する事はできない!!』 ウォーキーがエアライドマシンに乗って、フィールドの得点板に降り立った。 それと同時に『40』と書かれた得点板は灰色一色のただの床に変貌する。 『より高得点を奪って出し抜く為に、スピードで勝負するか、攻撃で相手を低得点に叩き落とすか!! コレが勝負の鍵となります!!』 「ふぅーん、これはつまるところ……僕たちの仕事に似てるねえ」 参加者の一人、スノウの言葉はみんなの真意を汲み取っていた。 全員が全員、感じていた。 「この競技……いかに手早くライバルを蹴落とせるかが鍵となる!!」 同じギルド同士の参加者達は既に集まって各々の作戦を決めている。 それはマルクとピッチも同じ事だった。 しかし、その小声の会話の中にマルクは聞き捨てならない言葉を拾う事になる。 「ほら……アイツらが……」 「ああ、無様にボロ雑巾になった……」 それと同時に、試合開始を告げるブザーが会場に響き渡るとみんなはジャンプ台の前に横並びになる。 『まずは1回目!! 叩き落とされても地面の高得点エリアに着地できれば勝ち抜けのチャンスはあるポイントストライク……スタートです!!』 ウォーキーの合図と同時に、参加者達は一斉に飛び出した!! 目指すは高得点のポイントエリア!! 小柄なピッチは参加者の間を縫う様に間を潜り抜けて、一気に先頭へと抜け出した!! 「ピッチ!! お前さんは100点目指しに行け!! 今この瞬間に限って作戦変更なのサ!!」 「マルク!?」 マルクに言われるがまま、ピッチは先にジャンプ台を飛び出して得点板へと飛んでいく。 その背後には、得点板に背を向けるマルク。 彼はあるギルドのメンバーの行く手を阻む様に立ちはだかっている。 「な、なんだお前!? 邪魔だよ、どけぇ」 「司会者も言ってたのサ。 叩き落としても構わないって……喧嘩売る相手、よく選んどけよこの野郎!!」 マルクは棘の鞭を取り出すと、ケケを嘲笑った参加者を一纏めに巻き付けた。 そのまま縛られた参加者達はマルクの攻撃勢いそのままに……床にある5点のポイントエリアに頭から真っ逆様!! 「ぎゃあああ!!」 『ああっと、『七彩の暴食』のマルク選手、早速ライバルを減らす作戦に出ている。 イリュージョンアイランズから参加のギルド『小物の道化師』、5点エリアに全員着地で終了です!!』 「いいぞーマルク!! ピッチ、今のうちに100点取っちまえー!!」 『暴食』の応援席にはモソ達が大騒ぎ。 次々とライバルを叩き落としていくマルクに、会場は大盛り上がりだ。 「よし、僕は今のうちに……100点エリアに」 するとピッチの前方にスノウが割り込んでくる。 振り向きざまに彼は笑いながら、ピッチに声をかけた。 「こっちは正々堂々。 恨みっこなしだ」 「当然だよ、スノウ!!」 「もういっちょぉ!! 得点ある場所に落ちるのを祈っとくのサァ!!」 マルクの怒りは収まらない。 彼はケケを嘲笑ったライバルを一人残らずこの一回目で蹴散らす勢いだ。 一人、また一人と床にある低得点あるいは確定済みの灰色エリアに叩きつけられ一回目の大半のギルドの得点が確定する。 『と、とんでもない事態です。 こんなに低得点あるいは0点で競技終了する参加者は歴代最多です!!』 ウォーキーの言葉が、文字通りマルクの逆鱗に触れた事を示すに文句ない理由だった。 実際電光掲示板にはほとんどのギルドが0点に終わってる。 0点のギルドは問答無用で競技終了予選敗退だ。 「よし、後は僕が良い点のところ飛んで……この試合終われば!!」 振り向きざまにマルクは巨大な得点板に目を向けた。 そこはもう殆どの参加者が得点を確定させており、数字の書かれた板はほとんど残っていない。 マルクは焦る中、地面に近い方からピッチの叫び声が聞こえる。 「マルク!! 80点はこっちにもあるよ!!」 ピッチの指示する先、地面の得点板にマルクは着地するとブザーが鳴り響く。 参加者全員の得点が決定した合図だ。 電光掲示板には一回目の予選を勝ち抜いた参加者の名前と顔写真、そして得点が羅列される。 「いやぁ間に合って良かったのサ……ピッチサンキュー」 「ごめんねぇ、せっかく先行かせてくれたのに……100点は取れなかったよ」 ピッチは溜息を吐いて落胆する。 確かに予選突破者の一位にはピッチの名前はない。 唯一の100点獲得者はスノウの名前が表示されていた。 「流石『七彩の宝玉』の元メンバー。 実力は伊達じゃないのサ」 「僕たちが勝ち上がるには、やっぱりスノウは避けて通れない壁だよ」 勝ち残ったメンバーは全員元のスタートラインにマシンに乗って戻っていく。 敗退したメンバーはそんな彼らとは逆方向に、係員の誘導で会場から出ていく。 マルクは敗退した連中を一瞥し、呟いた。 「ケケを笑った連中叩き落とすのも、これっきりなのサ。 ケケもそんな事を望んでる子じゃないだろうしね」 「うん、次は文句無しに正々堂々勝負だよ。 マルク」 そうして笑い合うマルクとピッチを横目にスノウは懐の振動に気づいて、『けいたいつうしんき』を取り出した。 通話先は……レッドの名前だ。 「やぁ赤君……そっちの首尾はどうだい?」 「今の所手掛かりなしだ。 本当にピンクの言う通りのこの島にあるのかね……『伝説のエアライドマシン』なんて」 会場から少し離れた場所に、自然や人工物が乱立する大きな島がある。 そこは今回の大会の決勝の舞台『シティトライアル島』。 まだ決勝戦前なので警備員が周辺をうろついているだけだが、彼らの視線を掻い潜る様に、巨大なお城の頂点にレッドは腰を下ろして、スノウと会話をしている。 「でも、グレープが言うにはアイボリーが『弄りがいある匂いがする〜』なんだって」 「なんだそれ、それだけで『伝説のエアライドマシン』って決めつけてんのかアイツら……今そっちの予選どんな感じだ?」 「今一回目が終わったよ。 半分以上は消えたんじゃないかな……もう後数分でレッドとサファイアの出番あるから、戻るなら早い方が良いかもよー」 スノウはおちゃらけてそう言うと、『つうしんき』を切る。 レッドは重い腰を上げると、予選会場の方角ーー地平線の奥を眺めて、エアライドマシン『ターボスター』に飛び乗った。 「やれやれ……本当にあるのかね。 伝説のエアライドマシン、ドラグーンとハイドラなんて」 「さぁ、ポイントストライクの残りの参加者も九名まで絞られました!! おそらくこの四回目で決勝に進める最大四名が決まります!!」 ウォーキーの司会に会場のボルテージはマックスだ。 生き残りにマルクとピッチの二人も残っている、客席の『七彩の暴食』も大盛り上がりだ。 「よーし!! マルクピッチここまできたらダブルで予選突破しろよ〜!!」 「一回目で敗退した俺らのためにも勝ってくれ〜!!」 ウォンキィ、デッシーの声援が聞こえる中、マルクとピッチは開いた口が塞がらないと言う様子で客席に戻ってる二人を見ていた。 「アイツら、この組にいたのか」 「ごめん、全然気づかなかったや」 負けた事を置いといて、既に応援に熱が入ってる二人は前向きなのか楽天家過ぎるのか。 マルクとピッチはよしと気合を入れて得点板と向かい合う。 そしてその横には鉢巻きをした金髪のヒトガタ……彼はバタービルディングの『バトルクラブ』ナックルジョーだ。 「アレが、あの青玉の仲間か……油断できないな」 拳をぶつけて、気合を入れるとワープスターに乗り込んだ。 そしてーーこれまで勝ち抜きを決めてきたポイントストライクの得点板、これまでとは違い10点や30点の得点ではなくて、1、2、3、4と数字の書かれたエリアとシャッターで閉じられたエリアが現れた。 床は、灰色一色に染められている。 「決勝を決めるにあたって、ポイントではなくて数字エリアに先着で到達した参加者が決勝に進めます。 それ以外に着地したらその時点で失格、4つのエリアを奪い合うサバイバル!! 予選通過決定戦いよいよ開幕です」 ウォーキーの合図と同時にスノウが真っ先にジャンプ台から飛び出した。 遅れるようにピッチ達が飛び出すと、得点板を背にするように振り向いたスノウはピッチ達の行く手を阻む様に巨大な雪の塊を作り出す。 「ごめんね皆、主役は僕が貰っちゃうよ!! スノーボウル!!」 スノウの作り出した雪塊に、ある参加者は押しつぶされ、ある参加者は弾き返される。 地面には最初の予選の様に得点は書かれていない。 落ちた時点で失格だ。 「ぎゃあ!!」 「さみーよ、つめてーよカーチャン!!」 九名の参加者の内二、三人が失格になるとスノウはそのまま予選通過用のエリアに飛んでいく。 しかし氷塊を突き破る様に大きなレーザーが突き破ったと思えば、奥からマルクとピッチが飛んでくる。 「スノウ、一人勝ち抜けは許さねえのサ!!」 「嘘ォ!? ……なーんてね⭐︎」 スノウはすぐさまマシンの上で手のひらを突き出すと、会場の床から氷の壁が迫り上がってくる。 スノウとそれ以外のメンバーを断絶するかの様に、行く手を塞いだそれ。 得点板方向に一人残ったスノウは鼻歌交じりに数字の書かれたエリアに向かっていく。 「じゃあね〜⭐︎ 決勝戦は客席でカチワリでも食べて雪の王子様を応援してくれたまえー」 「どいてろ、『七彩の暴食』!! こんな氷の壁ぇ!!」 マルクとピッチの後ろから飛び出す様にナックルジョーだ。 スノウの作り出した氷の壁に拳を思い切りぶつけると、放射線状にヒビが割れて一気に氷片が弾け飛ぶ。 まるでバケモノでも見たかの様に、スノウは口をアングリさせては、震え声を出した。 「あれ? 今回僕が主役の話なはず……」 「でかしたのサ、『バトルクラブ』。 ピッチ、突っ切るぞー!!」 マルクの合図と同時にピッチはスノウの横を突っ切った。 目指すは勝ち抜け用数字エリア!! 「……ッ ライバルは一人でも落としておきたい……ごめんねピッチ君!!」 そう言うとスノウは青い爆弾を背を向けてるピッチに向かって放り投げる。 それが爆ぜるとピッチは冷えた爆風に包まれて、氷の塊に閉じ込められる。 「何ぃ!?」 「ピッチ!!」 アイスボム。 スノウが特技とする氷の能力の応用技、サファイアのアイスソードと似た技だ。 氷の中に閉じ込められたピッチはそのまま地面に落下する。 『ああっと、ピッチ選手失格だぁ!! まだ勝ち抜きは決定してないが、残る決勝参加者はスノウ、マルク、ナックルジョーの三名になります!!』 ウォーキーの司会に会場のボルテージはさらに上昇する。 スノウは戯けた様子で手を振り、マルクとナックルジョーに敵意がないアピールをする。 「ごめんね、でもこれも勝負だからさ」 「ああ、お前がアドレーヌみたいにやり過ぎてないのは見ればわかるのサ……だから心置きなく、叩き落とせるってもんだ!!」 マルクは真正面からスノウに向かって飛んでいき、スノウもマルクとがっぷり四つで向かい合う。 互いに手を組んで押し合うと、マルクは大きな口を開いて光線を放つ準備をする。 「悪いな、この距離で喰らえば立ち上がれねえのサ」 「えっちょっと……それはまずいよ!!」 マルク砲、発射数秒前。 その直前にナックルジョーが二人に向かって思い切り回し蹴りを入れ込んだ。 「こっちも忘れるなァ!! 二人ともぉ」 その瞬間だった。 ナックルジョーが振るったはずの蹴りも、マルク砲も飛び出す様子が見られない。 ただ目の前には真っ白な一つの球が得点板に向かって飛んでいく様子だけ。 そこから弾き飛ばされたナックルジョーは、二回三回宙を回りながら、エアライドマシンはすでに地面に落ちて爆音を上げて大破する。 「チクショウ!!」 とはナックルジョーの声だ。 格闘家である彼は綺麗な受け身をとって、失格エリアになる地面についた。 すぐ横には仰向けのまま、得点板を眺めているピッチの姿。 ひと足先に失格になった彼は、その場を動かずマルクとスノウとナックルジョーの動向を見届けていたのだ。 「ど、どうなった……マルクは!? スノウは!?」 「クソっ、しっかり二人に蹴りを入れたと思ったのに……まるで手応えが無かった!! バリアか?」 得点板に突き刺さった白い球体が割れる。 そこには1番の得点板にマシンを突き刺したスノウの姿。 そして球体からこぼれ落ちるように、マルクが真っ逆様に落ちていく。 「マルク!! 失格になる!!」 「くそっ」 マルクはすかさず羽を伸ばして弱々しく飛んでいき、4番の得点板にタッチした。 その瞬間に、この競技のお決まりのブザーが聞こえるとウォーキーの司会が続けて聞こえてくる。 「しゅ、終了!! 終了です!! 現時点でスノウ選手とマルク選手以外の参加者は地面に落下!! 予選第三組ポイントストライク、予選通過者二名!!」 「やーどーもどうも!! かわい子ちゃんの声もっと聞かせてよー」 スノウの余裕を見せるその様子、マルクは息を荒げながら床に降りるとスノウに近づいて、問いかける。 「なんだ……今の技!? あんな技、サファイアも使った事ないのサ」 「まぁね。 これは僕のとっておきと言うか……奥義だから。 まぁ無闇な詮索はよしたまえ〜!! 勝ち残ってよかったねマルク君!!」 スノウはそれだけ言うとマルクの肩を叩き、会場を後にする。 ピッチはすぐさまマルクの元に駆け寄り、声をかける。 「マルク、おめでとう。 勝ち抜けだよ……」 「気に入らない……気に入らねえのサ!! あの野郎!! ボクに余裕かましてやがった……」 地面を思い切り踏みつけて、マルクは唇をかみしめてスノウを睨んでいた。 その原動力は。 「ケケを笑った奴らを相手に勝ち抜けたのは良い。 だけど、それだけじゃ足りないのサ!! この大会絶対優勝して、『七彩の暴食』も、ケケも文句なしの魔導士なんだって、証明して見せる!!」 「マルク……!! うん、絶対勝ってよ。 約束だ」 ピッチはマルクの覚悟を聞いて、想いを託す。 そしてサファイア……次の予選にやってくる彼もきっと、また。 シティトライアル 予選第三組終了 八十四名中二名突破 スノウ マルク
投稿者コメント
switch2当選しましたワー それと先日ディスカバリーのスターリーワールドの最新映像きましたね。 エアライダーもそうですが、こちらも新コピーや旧作からの追加コピーが来ないか、結構楽しみですね。
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