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小説「
第三十八話 虹の島の混乱
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作者名
ディン
タイトル
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内容
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「故郷を……奪還の為だけに虹神様を復活させると言うのですか」 数年前、『アニマ連合』が虹の島で絶対的な支持を手中に収めようとしていた時期の話。 幹部たちの会合の中で、クーは不満げな表情でレオンガルフに相対する。 「……クーよ、お前の理想は正しいかもしれん。 私もかつてはその様に考えていた」 レオンガルフは玉座の様な豪華な椅子に腰掛けて、クーをなだめるように説く。 「しかし、虹神様とご先祖の伝説からおよそ七百年、我らは歴史上虹の島の外に詳しい者は誰一人いないのだ」 「ティンクルやヒトガタを一方的に敵視するからでしょう!! 我らの理想の為にはすぐに戦わなければ」 「ならん!! 手順を間違えれば、今度こそ『虹の島』の様な居場所すら失うのかもしれない!!」 テーブルに握り拳を叩きつけ、レオンガルフは大声で諌める。 すぐ横にいた部下たちはすくみ上がり、それを見たレオンガルフは落ち着きを取り戻す。 「……虹神様は我らの計画のための切り札。 まだ不確定要素が多い今、『世界連邦』など決して許されぬ……」 そうして、説得させる様にレオンガルフは小さな声で呟いた。 「分かってくれ」と。 いつもの自信満々な声からは想像できない声は、クーを思い遣っての事か。 だが、クーは眉間にシワを寄せて……黙って聞いているだけだ。 会合に一緒にいたゴルルムンバも、ナゴもリックも、キャロラインでさえもそれ以上は口を開く事は無かった。 「……では、故郷奪還計画の最終目標は次の場所に決定する」 違う。 違う。 違う!! 国王レオンガルフは間違っている。 会議が終わってクーははらわたが煮えくり返る表情で廊下を歩いていく。 虹の島にいる事で外の世界の情報が入らない訳ではない。 上層部がわざと無視をしているのだ。 何故か?? それは街の至る所に存在していた。 「ですので、今こそ我らは外の世界と繋がりを」 「この売国奴ー!!」 「ティンクルやヒトガタと繋がって、また私たちの島が狙われたらどうするのよー!!」 『アニマ連合』以外の零細ギルド。 彼らの主張は『島の外にいるのは昔話に出てくる悪い人ばかりではないはず』だ。 だがしかし、虹の島のほとんどは『アニマ連合』の主張を信じきっている。 島の外と関わりを持つなど、タブー視されている状況だった。 「全く、今更ティンクルやヒトガタと対話なんてどうかしてるぜ」 「ああ、俺たちの平和の為だけに、なんであんな下等種族と手を取り合わなけりゃいけないんだ」 一般国民の声は、近くを通っていたクーにも届いている。ティンクルやヒトガタは、アニマの様に水中呼吸も、高い空を飛べない。 だからーー。 「どいつもこいつも……国の利益や理想の事しか考えていないのか……」 この島では、国民の思想の大半が国王派の理想を占めていた。 故郷を取り返し、アニマの優秀さを世に知らしめる。 住処を追われた彼らにとっては、それだけでも十分な成果であるはずなのだが、クーにとっては不十分なものだった。 「……くだらん、皆このかりそめの平和に毒されている」 自分たちの益のみを享受するべき。 まさにそんな空気が島中を支配していた頃に、クーの下にある団体がやってくる。 「クー様、我々は今こそ三つの種族で結託した組織を作り上げるべきです」 「三つの種族? 何を馬鹿げた事を」 クーにとってはその話は相手にならないものだった。 彼にとってはアニマ連合の思想は目の上にたんこぶだが、強大なもの。 いくら自分やこの様な団体が集まっても所詮は烏合の衆。 レオンガルフ国王やその支持者によって簡単に消し飛ぶものだと確信できる。 話にならない。 そう判断したクーは団体に背を向けて捨て台詞を吐き捨てる。 「確かに外の世界にも、アニマやティンクル達が仲良く生きている場所もあるだろう。 だがここは違う。 新興宗教の勧誘をするのは不適切だ」 お取り引き願おう。 そう言い捨てようとした途端に、団体の先頭に立っていた男はあるマークの入った書類を出し出す。 そこにはティンクルやヒトガタが集まって集会をしている写真。 そう、これは虹の島でよく見る光景に酷似している。 「島の外にも、あなた方と似た境遇の人々は存在します。 ティンクルは一頭身で気味が悪いと言われる場所、ヒトガタは……」 「……なるほど、この組織と我々で結託しようと? 理想論だ」 例え境遇が似ていても、互いを深層まで理解を深めることはできない。 クーは確信している。 アニマ連合の思想にどっぷり浸かった国民に理解を与えるのはそれ以上の努力と時間が必要だ。 「だが、『共通の敵』がいるとしたら……?」 クーと会話をしていた男が差し出したもう一枚の紙に描かれたギルドマーク。 それはこの虹の島に住んでる者でもよく知っていた。 『七彩の宝玉』、彼らの先祖と虹神様がこんな辺境の島に住むきっかけとなった、元凶だ。 「アニマ連合の主張は世界中のティンクルとヒトガタが敵で復讐相手、だが真実は違う。 我々は結託することができるのです。 四つの穴を踏破したことで、この世界に『ギルドブーム』を巻き起こした共通の敵がいた。 その敵は今度は『人類の選抜』と言う思想を抱えて今、我らの目の前に敵対しているのです」 男の主張に、クーは身震いし笑みを浮かべる。 なんだ、こんな近くにも自分の思想の正解はあるではないか。 「我々はまだ出来上がったばかりの組織で、弱い。 クー殿、あなたには我々の先頭に立っていただきたい。 この島を、アニマの思想を革命する為に」 そうだ、世界には共通の敵がいる。 今この場で三つの種族の誰が上だ下だの、不合理な議論だ。 そんな喧嘩を繰り返していればいつか敵に大きな遅れを取るかもしれない。 「だが、国民の思想は国王派が大半だぞ? 道のりは果てしない」 「覚悟の上です。 クー様ほどの方が味方につけば心強い」 こうしてクー派は作られた。 彼らの思想は『アニマ連合』のようで、そうでない。 地下活動でひっそり動いていた彼らは静かに「その時」を待っていた。 「国王は虹神様の力だけで全てを解決しようとなさってる。 だがそれでは不十分だ。 虹神様は「最終解決の為の武力」としてチラつかせれば、十分だと私は考える」 クー派のとある集会で、クーは己が考えを同志に披露した。 その理想を聞いた同志達は半信半疑で互いに顔を見合わせるが、ある一人が挙手する。 「クー様、虹神様が国王や我々の為に黙って従うとも限らないのでは?」 「戦争をしないとしても、言う事を聞かなければ海の向こうの同志にも誤解を受けて『七彩の宝玉』への対抗の前に、同志同士で潰し合いになるかもしれません」 同志の言葉は、もっともだ。 ダイナブレイドがクーやレオンガルフに賛同するとは限らない。 その言葉に、クーは含み笑いを浮かべる。 「その為のヒントはすでに掴んでる。 癪だが、『七彩の宝玉』の伝記にそれがあったのだ……」 そうして、彼はとある書物を取り出した。 それを見て同志達は身を乗り出してクーの話に耳を傾ける。 「みろ!! 虹神様はある宝石に興味を示していた!!」 「そのお宝と交換条件に、先祖と虹神様はティンクルやヒトガタとの戦争に協力したのだ」 書物には太陽の形をした指輪と虹神様の絵が堂々と描かれていた。 クーの堂々した演説に、人々は圧倒されのめり込んでいく。 「そして、その戦いに『七彩の宝玉』は手を貸したとされる。 宝石に虹神を意のままに操る、桃色に輝くハートの力を込めたのだ」 「そうか!! その宝石が我々の手元にくれば……」 クー派の一人が気づいた。 全ての答えは、この書物にあったのだ。 「たいようのゆびわを探し出せ!! 我々の手で、このアニマ連合を、虹の島の為に戦う答えがここにある!!」 第三十八話 虹の島の混乱 時間は戻り、現在。 レオンガルフが焼け落とされ、ピッチが飛び立った時間。 「サファイアおじいちゃん、デカい神様はピッチ君に任せておこう」 「スノウてめえ、後で覚えてろよ……」 電撃を受けて黒焦げになりながら立ち上がったサファイアは不機嫌そうに座りながら、戦いを中断する。 リックとゴルルムンバも仲裁に入って来たカインに注目している。 「カインよぉ、虹神様を兵器として使うっていうクーの考えは分かったよ。 でもそんな方法あるなら、なんでもっと早くしなかったんだよ」 「出来なかったんですよ。 この国には最近外の世界との繋がりを断つっていうルールが出来たので」 そのカインの言葉に、サファイアとスノウは顔を見合わせる。 彼らには思い当たる節があった。 なんなら彼らはその被害の当事者だ。 「そうだ!! 俺達は突然投獄されて」 「まさかあれのせいで!?」 カインは空を見上げながら二人に肯定する。 ダイナブレイドの暴れっぷりは地上でも分かるぐらいだ。 「鎖国政策は、流石にクー個人でひっくり返す事はできません。 ですが広報役を味方につけ今回のダイナブレイドの復活の政策を契機に、クーデターをしてしまえば、世界の同志達に自分達は味方だと主張して、敵対する相手にも自分たちの武力を見せつけられる。 一石二鳥です」 カインの話を聞き終えて、リックとゴルルムンバは膝を落とす。 彼らは無意味な戦いをしていたのだと気づいたのだ。 「俺、馬鹿だからそういう難しい話分かんねえけど……鎖国政策辞めちまえば、この島も昔みたいによその奴らに荒らされちまうじゃん」 「オレ、ソンナの嫌ダ」 「はい、僕も同じ気持ちです。 今語った主張はクー派の理想論であり、非現実的です」 現にこうして、リックとゴルルムンバに互角の人が外の世界にいる訳ですし、とカインが締めくくる。 「まぁ、外の世界のアニマがお前らに馬鹿真面目に手を貸す訳ないな。 ウチのピッチ達はこうして反抗した訳で」 「僕のとこのフロスとアイドラン達もね」 スノウは一仕事終えた様な笑顔で、その話をぶったぎった。 その直後に、エアライドマシンとその操縦士達がサファイアと彼の周りに次々と不時着してくる。 そこには『暴食』ら同盟側、『アニマ連合』関係無しだ。 「おお、上もなかなか元気の様だね」 「サファイア、そっち片付いたならこっち来てくれよ」 ウィングスターで接近してきたホヘッドが話しかけてくるが、サファイアは悔しそうに空を見上げて言い返す。 「行きたいけど、行けねえんだよ。 クーの奴のところに」 「ピッチ君の後に続けられないんだよね。 おじいちゃん」 「おじい……?? 何の話だよ」 訝しげな表情をホヘッドが浮かべると、急に三人の頭上にダイナブレイドが急接近する。 急降下とそのスピードに地面に顔を伏せて回避すると、ダイナブレイドにしがみついているピッチの姿。 「ピッチ君の後に続こうとした途端に、術式でサファイアが弾かれたんだよね」 「ああ、多分下手くそな術者が書いた術式が、余計なエラー弾いたんだろうよ」 「な、なるほど……あれはその警告文」 ホヘッドが頭上を見ると、サファイアとダイナブレイドが接近した結果だろうか。 先ほどから何度も見た警告文がまたデカデカと表示される。 『国王とその支持者、『70歳以上』の者はダイナブレイドに乗り込むことを禁止する』 「つまり、あの術式自体を書き換えればいいと」 ホヘッドのさりげない言葉に、サファイアとスノウが唖然とする。 彼の言葉は間違いではないものの、問題はそれを書き換えるのは誰かという事だが。 「あのね……術式って簡単に書き換えられるモノじゃないよ。 僕のギルドにも一人いるかいないかで……今近くにいるかなあ」 「ウチもネスパーぐらいじゃねえかなあ……この人混みからネスパー一人探すの大変だぞ。 おい、カイン……お前らは」 「僕もあの術式は専門外ですね」 「すまん、オレとゴルルムンバも……」 カイン達は申し訳なさそうに頭を掻いている。 ゴルルムンバは一人話についていかないのか、含み笑いを浮かべているだけだ。 「……ずいぶん仲良くなったな」 「拳より口で語るのも悪くないなって思ったよ」 スノウの自慢げな言葉に、サファイアは呆れる様に突っ込む。 「ほとんどカインが説得してただろ……」 サファイア達は、ダイナブレイドを見上げながら……一人先に向かっているピッチを見守っていた。 そして意を決するようにサファイアが言い出す。 「よし、ホヘッド。 手分けしてネスパー探すぞ」 「ネスパーなら、ブレイドちゃんと最後まで地下にいたから……時間的にはそろそろここに合流してもおかしくないな」 そう言ってサファイアとホヘッドは飛び出した。 残されたスノウは、一人空を見上げて置いてけぼりにされたのに気づいていなかった。 「……あれ? これいつの間に僕置いてかれた?!」 そんな様子を見て、リック達は初めての他種族との邂逅に笑いを浮かべているだけだった。 「よく来た……ピッチとやら」 ダイナブレイドの脚の上にはクーが居座り、地上を見下ろしていた。 ピッチはダイナブレイドの羽から吹き下ろす暴風で上手く体制を整え、クーに相対する。 「……一つ聞きたい。 国王に二の次に刃向かったコイツに、何でお前がそんな所にいても何も言わない」 ピッチの疑問は当然だった。 レオンガルフの言葉に「嫌じゃ」と即答したはずのダイナブレイドなら、クーが自分の身体に居着いているのに気づかないはずもない。 すぐにでも振り落とされそうだが、その様子も見受けられない。 「簡単だ……私は、いや我々は選ばれたんだ。 選ばれしものは高貴な存在を操る権利がある」 彼はピッチに見せびらかすように大きな指輪を見せつけた。 太陽のように赤く大きな宝石をあしらった指輪だ。 「それは……『四つの穴』のお宝!?」 「国王には敵勢調査の名目で渡航許可を頂いていてね。 『たいようのゆびわ』はその合間に我々で手に入れたのだよ」 ダイナブレイドの咆哮はかまいたちの様に時折二人の会話を遮る様に飛んでくる。 ピッチは何かを確信めいた様に苦虫を噛み潰す表情を見せる。 「四つの穴のお宝には、生物を操るものがある……そういえばリボンとか言う奴も」 ピッチは思い出していた。 スチールオーガンで戦ったリボンと言う女の事。 彼女は『七彩の宝玉』を騙り、クエスト参加者を騙していた。 そして彼女はワムバムロックなる怪物を使役する術を持っていた。 あの時彼女は『オリハルコン』なる鉱物を持っていたが、それは何らかの理由で使役が可能になっていたとすれば……。 「ある書物には、虹神様はこの指輪にたいそう興味を持っておられたと、お前も聞いただろう虹の島の伝説は、ダイナブレイドはこの指輪を交換条件に我々と同盟を組んだのが真実だ」 「……君たちの言う神様は、そんな物一つで島を壊したりしてたって言うのか……随分安い神様だね」 ピッチは精一杯の皮肉を言ってみる。 久しぶりの地方とはいえ、島のど真ん中でふんぞり返り、指輪一つで主人を簡単に変えられる神など、安い物だと感じたのは事実だ。 「何とでも言うがいい。 この指輪一つで我々は世界を変える事が出来るのだ……その手伝いを君はレオンガルフを通してとは言え、断ったのだ。 もはや我々は分かり合えないーー」 その瞬間だった。 クーは背後から引っ張られたかと思うと、杖で喉元を締め上げられる。 片翼は背中に回されて羽交締めにされた格好。 後ろを振り向くとドロッチェが睨みを聴かせていた。 「さすがフクロウのアニマ、その首簡単に回してこっちを睨めるのか……不気味なこった」 「貴様……いつの間に!!」 「ごめんね、クー。 僕もドロッチェも、スパイやってた時にその本を読んでたんだ。 半信半疑だったけど」 ピッチはそう言いながらクーの片翼に近づき指輪に手を伸ばす。 必死に翼を羽ばたかせ抵抗するクーだがドロッチェの拘束は解けない。 「動くな。 早くしろピッチ」 「おのれ……スパイどもめ……虹神様ァ!!」 クーが叫ぶと『たいようのゆびわ』は輝いた。 その途端ダイナブレイドは大きく翻り、ピッチとドロッチェはそのまま真っ逆様に放り出された!! 「うわあ!!」 「地上で指咥えて見ておけ、アニマが世界を!! 我々が主役となる瞬間を!!」 「ピッチ、てめえだけでもあのアホウドリ二匹にしがみついとけ!!」 ドロッチェは小柄なピッチをその手に掴むとダイナブレイドに目掛けて放り投げる。 投げ飛ばされたピッチは、小さな羽を羽ばたかせて必死にダイナブレイドに近づき、脚にしがみつく。 「……ドロッチェ!!」 「……俺は、『地上のアホ』を抑える事にする」 レオンガルフが呼び起こしたダイナブレイドに、虹の島中は大歓喜に包まれたまもなく、クーの一派のクーデターは人々に混乱をもたらした。 「何故だ?! なぜ国王様が虹神様から落ちたんだ」 「ええい、前国王はおしまいだ。 他種族を一方的に敵視し、自分たちの利益だけを追求して何になる!?」 そう叫んだ兵士の一人は茶色い羽を頭に差していた。 実はこれがクーの一派を指し示す証。 「我々は他種族と結託し、真の敵を打破する為に今こそ立ち上がるのだ!! 今こそ目覚めろ国民達……」 「なるほど、お前さん達の主張は大体理解したわい」 その横には髭を生やしたキャピィ族モソの姿が!! 蓄えたヒゲに触れながら、恍惚に主張を叫んでいたアニマの兵士に笑顔で肩を叩く。 「貴様は……レオンガルフの一派に軟禁されていた渡航者か」 「アンタらの理想に興味はないがねえ、まずは身内にしっかり言い聞かせる事が先決じゃろう」 モソが指差した先を兵士が見てみると、そこには目を疑う光景があった。 「よこせっ」 「きゃあ!!」 混乱に紛れて無抵抗の市民から金品を取り上げる兵士、むやみやたらに公共施設に銃剣を暴発させる錯乱者。 彼らの行動には統一された様子はまるで見受けられない。 「な、貴様ら何をしている!! やめんか」 コレでは統一されたクーデターとは程遠い、火事場泥棒ではないか。 そんな者達を、『七彩の暴食』はじめとする同盟メンバーは必死に押さえ込んでいる。 「逃げな、アニマの坊や」 「あ、ありがとうございます!!」 フロスティやアイドラン達は子供を庇い、メタナイツのメンバーは一気呵成にクーデターのアニマ達を押さえつける。 「つ、強い……」 「アンタらが口程にないダスよ」 「メタナイト様、Cエリアの混乱は抑えました」 上空を低空で旋回するハルバード、アニマ連合の攻撃を、周囲をエアライドを操る同盟のメンバー達が迎え撃つ中、メタナイトは内部で指揮をとっている。 「Bエリアも無事制圧した。 ……アニマ連合も一枚岩では無いと考えていたが、コレほどまで呆気ないとは」 半ば呆れる様にメタナイトは呟いた。 彼らが思う以上にアニマ連合、いやクー派は突貫工事の様だ。 拍子抜けも良い所だが、本命をまだ叩いていない。 「コレより先、戦場は激しくなる。 まずは一般市民を安全な場所へ避難。 散り散りになった同盟諸君は都度合流し、ダイナブレイドとアニマ連合主力への制圧に再度分散する」 「俺も行くぞ、メタナイト」 通信に、ドロッチェの声が割り込む。 メタナイトは呆気に取られるが、彼に自信に溢れた声はハッキリしている。 「ピッチの奴なら大丈夫だ。 俺はどこをサポートすれば良い? 教えてくれ」 「……分かった。 感謝する。 モソ殿も問題ないな?」 「おお、ドロッチェの力はワシがよく分かっとる…千人力じゃ……それに」 モソは配達袋から取り出した棍棒を振り回し、辺りを制圧していた。 その老体のどこからそんな元気が出るのか、疑問をよそに笑顔で答える。 「ここには別嬪さんのアニマもよくおる……これ以上可哀想な思いするのは酷じゃろうて、なぁブレイド」 「えっ!?」 「ブレイドちゃん通信聞いてたのか??」 ダークキャッスルの広場の片隅、そこにブレイドとネスパーは忍んでいた。 すぐ後ろにはケケとマルク、そして敵対していたはずのキャロラインの三人。 「ねえキャロライン、あれが本当にあなた達の言ってた主張なの? 子どもも、罪のない人達も困ってるのよ」 ケケは悲しそうな目をしながら、目の前の光景を指さしてキャロラインに問いかける。 彼女はうなだれ、絶望しながら瞼にそれを焼きつけるしかない。 「分からない……分からないわ。 私たちはただ……ご先祖の恨みを晴らす為に……」 「ご先祖様も良いけどねえ。 まずは身近な市民や友だちを大事にするべきだったね」 目の前から銃砲や武器が入り乱れる。 マルクは上空に飛び立ち無言でケケ達に飛び込んでくる弾を弾いていく。 「マルクさん!! 疲れてるのに無理しないで」 「ケケそっとしてやりな。 アイツは今気難しい時さ」 ブレイドの言葉を聞いて、ケケは立ち止まる。 背中を向けるマルクに哀愁を感じる中で、背後から足音が聞こえてくる。 「……半端者」 「ケケ、キャロライン。 ここにいたのね」 チュチュだ。 彼女は息を切らしながら仁王立ちし立っている。 辺りに見えるケケの仲間を見て安堵する。 「仲間にちゃんと会えたのね。 良かった」 「でも、今は虹神様が……アニマのみんなを!!」 「そうね、今は虹神様を殺さないと」 そのチュチュの言葉にキャロラインは睨みを利かす。 爪を出して臨戦体制に入る。 「殺す? あなた今……何を言ったのか分かってるの」 「キャロライン。 あなた達の理想は理解したくないけど考えは分かるわ。 でも目の前の光景を見て」 チュチュの言葉は、ケケ達の真意。 虹神様の暴走で、暴れて混乱している国民達は、果たして幸せだろうか。 「全てを止めるには、虹神様を倒すしかないのよ。 もう引き返せない」 チュチュの言葉にキャロラインは目を瞑り下唇を強く噛む。 彼女も、ここまで来て実のところは……。 「分かってる……虹神様にすべてを投げ打ったところで復讐は完遂しない。 だけど、あんな化け物どうやって止めれば良いの!? 分からない」 混乱だ。 何を信じて、何を疑えば良いか分からない。 うろたえるキャロラインを諭すように、自信満々に言葉が彼女を支える。 「その為に、集まりました」 ネスパーだ。 『けいたいつうしんき』を耳に当てながら、彼は複雑な術式を地面に書き写している。 意味深なネスパーの言葉に、マルクは久しぶりに笑みを浮かべる。 その反応に、ケケも真意をすぐに察する。 「あのバカ……久しぶりにも程があるのサ」 「サファイア、こっちこっち!!」 遠くからサファイアの姿が見えてくる。 駆け足でやってくる彼の姿を見て、安堵の表情を浮かべたネスパーはフードの下からも見える笑顔をキャロラインに見せた。 「今ここに集まったのは、『七彩の暴食』最高のチームですから、復讐なんかには負けません」 マルク、ケケ、そしてサファイアーー彼らは顔を見合わせ空を見上げる。 「あの怪物を倒せば、全てが終わるかは分からない」 「だけど、やるしかないですよね……みんなの為に」 「行くぞ、ピッチに続け!!」 その瞬間に、ネスパーによる『術式』の解除が終わった。 三人は空を舞う怪鳥に向かって飛び出した。
投稿者コメント
あけましておめでとうございます。 新年一発目いきなりここに投稿って暇なんですか? はい。 虹の島編もそろそろ締めくくりたいところですね。 駆け足気味で巻きにいっています。 次回辺りで話をひと段落できたら良いのですが……がんばります。
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