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小説「
第三十六話 復活
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作者名
ディン
タイトル
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内容
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「脱走者だー!! チュチュと新入りが裏切って収監してた侵入者を解放したぞ」 地下の『七彩の暴食』を閉じ込めていた牢屋を担当していた者達が、警鐘を鳴らして内外の仲間達に知らせている。 騒ぎを聞きつけて地下牢の内部から、或いは地上からの出入り口から『アニマ連合』のメンバーが反乱を抑え込もうと飛び込んで行くが、次から次へと吹き飛ばされている。 「なんだコイツら!! さっき捕まえた時と全然動きがちげえ」 アニマ達にとっての大誤算は『七彩の暴食』の強さだった。少しすれば制圧できるだろうとたかを括っていたのか、幹部が一人も出張っていない、必要最小限の戦力だった。 「オラオラァ!! ケケちゃんやピッチの野郎は無事なんだろなあ!!」 ホヘッドとバヘッドが叫びながら炎や泡を撒き散らして錯乱させると、ウォンキィは鍵を振り回して相手を牽制する。 狭い地下牢はしっちゃかめっちゃかだ。 アニマ連合にとってはこの地下牢はこの先も重要な拠点の一つ、易々と破壊するわけにはいかない。 余所者の『七彩の暴食』には知った事ではないが。 「くそっ、あいつら他人の庭で好き勝手暴れやがって……おい、増援はいつくるん……」 地上から様子を窺っていた衛兵が近くの仲間に声をかけ振り向くと、そこにはボロ雑巾の様に積み上げられていた仲間達、そしてそこには一人の衛兵をボコボコにしていた犬のアニマ……デッシーだ。 「オラァ!! 地下牢はどこなんだよぉ!!」 「ここです…だからここです……」 「うわー!! 兄弟ぃ!?」 涙目になりながら命乞いの如く正直に答える衛兵を放り投げ、デッシーはグローブを幾度も叩き合わせて笑みを浮かべる。 「地下にいるウォンキィとガルルフィが皆を連れてくる間に、オイラはここの掃除をしないとね……マスターやブレイドちゃんに手間かけさせるわけにもいかないし」 「ば、馬鹿か貴様!! こんな事をして……虹神様のお怒りに触れるとロクなことに」 衛兵が叫んだ途端、背後から鈍器で殴りつける様な音と同時に衛兵は前のめりに倒れた。 モソが郵便袋を振り回して、それが彼に直撃した様だ。 「おお、ラッキーじゃ。 ワシもまだまだ現役いけるの」 「マスター……殺してないですよね??」 バヘッドとホヘッドが倒れた衛兵を見つめて突っ込んだ。 外は既に一般市民もパニック状態だ。 外の衛兵が「反乱だ」と叫んで、地下からアニマ以外の種族が飛び出てきたのだ。 異常事態を確信するには十分すぎる事が短い間に起きている。 「ここにもサファイアとスノウはおらんのぉ……先に飛び出したと思ったのじゃが」 「マスター、それよりブレイドちゃんは……」 「ネスパーもいないけど」 メンバーの一人が辺りを見渡しながらブレイドを探す。 モソは彼に目を向けて質問に答える。 「あの二人は地下牢でサファイア達の捜索じゃ、任せればいい……」 モソがそう言った瞬間、皆は頭上に浮かんでるビジョンの様子に注目する。 アニマ連合の集会が始まる。 司会者の一人がここだとばかりに盛り上げようと叫んでいた。 第三十六話 復活 「さあ、皆さん!! 憎きティンクルやヒトガタに復讐を果たす時が来ました、国王様とアニマ連合の尽力により今日復活します……ダイナブレイドに盛大な喝采を!!」 「なんじゃ、あの騒ぎは……」 モソ達地下牢にいたメンバーは何事かと聞き尽くしてる間、ウォンキィ達は『けいたいつうしんき』を取り出していた。連絡先はーー同盟相手のメタナイツ。 「おい、なんかヤバい事になってるぞ!!」 「ああ、こちらも把握している。 あの集会にスパイで潜っているバル艦長が先着している。 現在上空から向かっている最中だ」 連絡を受けたメタナイツ、そのリーダーメタナイトも事態を把握しており、戦艦を向かわせてる最中だった。 ダークキャッスルまではもう数分で到着できる距離だ。 「『七彩の暴食』、『白の騎士団』、『真紅の窮鼠』、我らの同盟を快く組んでくれた同志諸君、今現在『アニマ連合』の勢力はダークキャッスルの集会に集結していると予測している」 メタナイトの持論を黙って聞いていた同盟のメンバーの一人、『白の騎士団』フロスティが質問する。 「つまり……そこにスノウやサファイア達もいる可能性がある、と」 「仲間を解放した『七彩の暴食』の証言が正しければ。 二人は先に連行され、あそこにいる可能性が高い。 ティンクルの持つ力……『複製』の力の為に」 メタナイトの言葉には不思議とみんなが耳を傾けていた。 それを信じてしまうほどに、集会の異常さが、画面越しから伝わるからだ。 「フクセーの力って言っても…俺らにそんな力ねーぞ?l」 ホヘッドとバヘッドがどこにあるかわからない首を傾げて唸っている。 『七彩の暴食』には数多のティンクルが所属するがそんな力は初耳とばかり、そんな中で通信中のメタナイトが答える。 「ひとまとめにティンクルと言っても、全員がその能力を持つわけではない。 私も種族はティンクルなのだが、そんな力が備わっているのか、信じがたい」 「それじゃあ、どうやってそんな力の判別を……」 ウォンキィの疑問は尤もだった。 静寂が支配しているうちに、無線の奥から『白の騎士団』のアイドランが思い出す様につぶやく。 「前に一度、スノウに見せてもらった事がある……確か仕事で強盗を捕まえようとしたけど、ひどく抵抗されて……」 アイドランの記憶はこうだ、スノウが捕まえた強盗が激しく抵抗し、周囲にまた危害が及ばんとばかりだった時、スノウは意を決したように……。 「そいつを口の中に吸い込んで、飲み込んだんだ」 「げぇ、食ったのか!?」 「それで、次の瞬間……アイツの頭に激しい稲光と、真っ白な体が黄緑っぽく変色していた」 「それこそがまさに『複製』、我々は『コピー能力』と呼んでいる」 無線から聞こえる音が段々と近づいてくる。 やがて足を止めるとモソやウォンキィ達とフロスティとアイドランが鉢合わせになった。 「あ、あんたらがサファイアのギルドのお仲間さん?」 「そういうそちらはスノウとかいう変態……いやサファイアの友達のギルドのお仲間」 互いに互いが初対面。 お互いに知り合いの話題を出す事で仲間であるのを確認すると安堵の表情を浮かべていた。 「こちらアイドラン、『七彩の暴食』と合流した」 「了解、こちらも今到着した。 速やかに乗り込んで、ダークキャッスルへ向かう」 あたり一面が真っ暗影に覆われ、虹の島のアニマ達は驚き逃げ戸惑う。 到着した戦艦ハルバードは底面からエアライドマシンを投下すると『七彩の暴食』と『白の騎士団』はそれに飛び移り戦艦へ移動する。 しかしその中で、ガルルフィは周囲を見渡しながら一人浮かない表情だった。 「どこに行ったんだ……チュチュさん」 彼は恩人である少女の身を案じていた。 ダイナブレイドの筒の部屋が競り上がりきった時、ピッチは驚きの光景を目の当たりにした。 ダークキャッスルには舞台を取り囲むようにアニマ、アニマ、アニマの大観衆。 その声援に応えるようにレオンガルフが挙手すると、騒ぎは一層デカくなる。 「国王様ー!!」 「アレが虹神様……なんて神々しい」 彼らはピッチとドロッチェ、カインの事など眼中にないかの如く思い想いに口にする。 そんな異様な光景をピッチは狼狽えながら見渡している。 すると、彼らの背後には巨大なシャボン玉に包まれた見覚えのあるティンクルの姿が二つ。『アニマ連合』に囚われてたはずのサファイアとスノウだった。 「サファイア!? どうしてここに」 ピッチは思わず叫ぶも、中にいる二人は生死もわからず、ただシャボン玉の中に眠り続けている。 その横から口を挟む様にレオンガルフが囁いた。 「問題ない、我々の計画の為に眠っているだけだ。 死んではないさ」 「静粛に!! 今から国王様の演説に入る」 翼を広げて一人の男が舞台に降りたった。 現在の『アニマ連合』のマスターであるクーだった。 彼の登場に観衆はさらにヒートアップするが、意に関せずにクーはレオンガルフにマイクを差し出し……受け取ると一気にそれは静寂に変わった。 「……ひとつ、昔話をしよう。 今から700年前、『七彩の宝玉』によるギルドブームが始まった頃、我らの先祖はポップスター各地の住処をギルドによって侵略されたのだ」 レオンガルフが改まって話したのは、島の歴史。 この虹の島にアニマが住み着くきっかけとなった、彼らにとって正当な歴史。 「奇しくも同じ運命を辿った虹神様と我々の利害は一致し、ギルドブームの発端となったティンクルやヒトガタの侵略者と先祖は日夜戦った。 虹神様のお力添えもあって、戦いは痛み分けに終わった」 これは、ピッチやドロッチェもダイナブレイドへの部屋に行くまでに音声ガイドで聞いた話だ。 つまりレオンガルフの話は、虹の島の共通認識であるとも言える。 「……では問おう。 我々が『今も』ここにいる理由は何故だ。 誰のせいでこの島に引き篭もる?? 『七彩の宝玉』が、あんな歴史を作らなければ、我々も虹神様も、この辺境ではない土地で自由に暮らせていたはずなのだ」 拳を突き上げてそう叫んだレオンガルフに呼応するように、会場からも老若男女の叫び声が聞こえてくる。 「そうだー!! 悪いのは皆『七彩の宝玉』だー!!」 「そう、全てのきっかけは『七彩の宝玉』なのだ!!」 会場から聞こえてきた、そんな叫び声を待っていたとばかりにレオンガルフが言葉を取り上げる。 両手を大きく振り上げて、横になぎ払い、身体いっぱい動かして大袈裟に演説を聞いている観衆を盛り立てる。 「そして、彼らは今もなお、『人類の選抜』と呼んで過去の過ちを繰り返そうとしている!! アニマを、我らを過去の様に陥れようとしているのだ!!」 この演説会場には、『アニマ連合』の幹部達も到着をしていた。 ナゴ、キャロライン、リック、ゴルルムンバの四人も会場に到着しており、レオンガルフが演説をしていた裏に待機している。 「レオンガルフ様は、もう国民に訴えているようね」 「おお、アレが虹神様か。 流石にデカいな」 リックが山を見上げるかのように手を額に当てて培養液に沈んでいるダイナブレイドを眺めている。 舞台裏という事で、正面から見ることは叶わないが自分達より巨大な姿は背後からでも神々しさを感じ取れる。 そんなダイナブレイドに見惚れてるリックを横目に、キャロラインの右手には鎖が。 それを引っ張ると繋がれた首輪と引っ張られるようにケケがよろめいて歩き出す。 「ぐっ…」 「残念ね侵入者、あなたがどんな目的でギルドに潜り込んだかは知らないけどこの島のアニマは皆ティンクルやヒトガタを酷く嫌ってるわ」 キャロラインの嘲るような笑み、絶体絶命な状況でもケケはそんな彼女を睨んでいる。 絶対に助けは来る。 まだ連中にはピッチやマルク、ドロッチェの事はバレていないはずだと彼女は確信していたからだ。 ーーが、そんな彼女の希望はあっさり打ち砕かれる。 「さあ侵入者ピッチ、ドロッチェよ。 今こそ決断する時だ、我々と共に闘うか、それとも絶望の道を歩むか」 「そ、そんな……ピッ君、ドロッチェさんも……」 「ああ、やっぱりあの二人もあなたと関係があるのね」 ケケがポロリとこぼした言葉は、キャロラインたちも聴き逃さなかった。 それを合図とばかりに舞台裏にゴルルムンバは拳を突き立て、壁を突き破る。 演説会場の背後から突如、『アニマ連合』の幹部が登場する形になった事で、聴衆のボルテージは最高潮!! 「キャロライン様!! リック様にゴルルムンバ様」 「ナゴ様〜!!」 観衆の歓喜の声を聞きながら、キャロライン幹部たちは堂々とレオンガルフの背後に立つ。 「おお、皆の衆遅かったな」 「申し訳ありません。 侵入者の捕獲に手間取ってまして」 キャロラインのその言葉に、ピッチとドロッチェは彼女の手に続く鎖の先を見据えた。 首輪をかけられボロボロの姿になったケケの姿!! 「ケケ!! なんでここに」 「はい、これで決まりね」 キャロラインはケケの首先に爪を伸ばす。 正面にケケ、背後にサファイアとスノウと仲間を人質に取られた形になってしまったピッチとドロッチェは足を止めて、念入りにと彼らの間にクーが降り立つ。 「やはり、侵入者の仲間だったか。 ピッチとドロッチェ」 「今の『アニマ連合』のマスター……クー」 ドロッチェは三つ星が飛び交う杖を構えて臨戦態勢だったが、人質を取られてる以上分が悪い。 それ以上手出しできない状況の中、クーの正面に立体映像の様な青い画面が浮き上がる。 「貴様らの荷物を改めて精査してもらった結果、今捕らえている『七彩の暴食』と関係がある様だな。 一体何の理由で虹の島に入ったかは知らないが……」 「私達はただ、旅行で来ただけですよ!! それなのに突然侵入者だとかどうとかで……」 「あなたには聞いてない」 キャロラインは冷たい言葉でピシャリと一瞥すると、ケケの背中を思い切り踏みつける。 背中に攻撃された傷の痛みで、ケケは潰れるような声で押し黙る。 「やめろ!!」 「キャロライン、やはりピッチとその女は関係が……」 「ええ、この女とピッチの持ち物に、共通するギルドマークもあったもの、仲間なのは確定かと」 キャロラインの言葉に、クーはふむと答えると、懐から郵便袋を取り出した。 「それなら、これも奴らと関係があるかもしれないな……」 (あれは……マスターの袋!! 中にマルク達がいるかもしれないけど) ピッチの予感は当たっている。 中に潜んでいるマルクも現状周りの状況を把握していたのだ。 しかし彼は冷静だった。 今ここで飛び出しては、囚われてるサファイア達に不利益が被ると考えていた。 袋の中で、先ほどと同じ様にーーフェニクロウを作って周りをパニックに陥れたあの時ーーパペットの準備をしていた最中だった。 「なんだか周りがうるさくて集中できねえのサ……クーって奴、どこに着いたのサ」 そう言って彼が袋から外を眺めた瞬間に飛び出した光景は、ピッチとドロッチェとカインとクー達が睨み合う様子と、国王の演説に絶叫する住民達……そして、キャロラインに踏みつけられている、ケケの姿!! 「……ケケっ!!」 「さあピッチよ。 貴様に最後のチャンスをやろう」 「チャンスだって!?」 「貴様が、アニマでありながらティンクルやヒトガタに利用されていたというのなら、悲劇だ。 我々は君を助ける義務がある」 「……」 ピッチやドロッチェは何も答えない。 今何を言い返しても無駄だと判断しているからだ。 「君が我々に忠誠を誓うというなら、地下に抑えてる君の仲間は元の村に帰そう。 尤も、二度と虹の島に近づかないという条件付きだがね」 アニマを引き入れる為の常套句だ。 他の仲間に危害を加えるのは想定内である。 「だが…二人のティンクルとこの女はダメだな、特にコイツは暴れすぎた」 「ひっ」 ケケの首先にキャロラインの爪がなぞる様に突きつけられる。 それを見てピッチは走り出そうとするがレオンガルフが手を出し静止する。 「ケケには手を出すな」 「我々は交渉をしているのではない。 命令しているのだ。 付き従うか、逆らうかだ」 笑みを浮かべながら、キャロラインはケケに馬乗りの状態で居座っている。 交渉の席は『アニマ連合』側が圧倒的優位だ。 勝ち誇ったかの様にキャロラインやリック達は油断し切っている。 「そう、決断するなら早い事……」 リックが笑った途端、背後からただならぬ気配がやってくる。 クーが持っていた宅配袋から、真っ黒な姿をした二股帽子を被ったティンクルが彼らの正面に突撃してきていた。 「な、なんだこいつ……どこから」 「マルクっ……!?」 ピッチもケケもドロッチェも、彼のことはよく知っている、だがいつものお気楽な様子とは打って変わってドス黒い姿は本当にマルク本人かと見間違うほどだ。 そして、そのマルクはまっすぐケケに馬乗りになってるキャロラインに突撃する。 「キャロライン、避けろっ」 「ーーえっ」 マルクが広げた大きな口はキャロラインを見事に捉えた。 後ろ飛びで避けたキャロラインはケケから離脱してしまいそのままマルクに押し飛ばされる様に飛んでいく。 「キャー!! キャロライン様が」 女性のアニマの悲鳴が轟くと同時に、会場はパニックに陥る。 突然信仰してる幹部が襲われたのだ、無理はない。 「くそっ、こんな時に侵入者か!! クー、二人のティンクルの『複製』のエネルギー抽出はまだか!!」 「もう間も無く、虹神様に注ぎ終えます」 確かにサファイアとスノウを包んでるシャボン玉は怪しく発光をしている。 異様な光景のそれがダイナブレイドを復活させる装置そのものだとピッチは確信すると、身を低くして飛び出した。 「ドロッチェ、僕がクーとレオンガルフを足止めする」 「ああ!? 俺にティンクルを助けろってかァ!?」 ピッチは素早い身のこなしでクーの持ってる怪しげな機械に足をかけた。 突然の襲来に、クーは力の限り抵抗する。 「止めろピッチ、これは反逆罪だぞ」 「罪もクソも余所者の僕には関係ないよ!! 友達のサファイアとケケをこんな目に合わせやがって!!」 クーとピッチの機械の奪い合い、突然のマルクの突貫によるキャロラインとリック達はそっちに手を焼いている。 レオンガルフは思わずうろたえ孤立しているとふと我に帰る。 「そ、そうだ……シャボンのスイッチを」 クーが持っていた装置は舞台の上に落ちていたのだ。 レオンガルフは目の前のそれに手を伸ばそうとしたその瞬間……。 黄色い大きな星型弾が、その機械を粉々に吹き飛ばさんとばかりに衝突した。 目の前には、星が旋回する不思議な杖を持って仁王立ちしているドロッチェの姿が。 「……とことん付き合ってやる。 ププビレッジ潰されるのは、俺もゴメンだってさっき言ったしな」 「……だが、どうする同志ドロッチェ、ピッチと組んでも我らアニマ連合相手に二人だけで暴れようと言うのか」 レオンガルフは至って冷静だった。 シャボンのスイッチを壊されても、狼狽える事はない。 サファイアとスノウの身柄はまだ彼らの手元にあったのだから。 その『はず』だった。 「悪いね、俺の『みつぼしのつえ』は自動制御機能付きでね」 ドロッチェが先ほど発射した星型弾は、まだ生きていた。 彼らの目と鼻の先にある、サファイアとスノウを閉じ込めているシャボン玉に向かって飛んでいきーー突き破った。 「それと二人じゃなくてーーたくさんだわ。 ほら、すぐ上に」 ドロッチェが指差した空の彼方。 そこには一つの戦艦の姿が。 「どわはは!! こんな時の為に、演説会場に足を運んだ甲斐があったものじゃー!!」 逃げ惑うアニマの中に、『メタナイツ』の一員バルが叫んでいた。 彼は所持していた『けいたいつうしんき』でメンバーに連絡を入れていた。 『ヒトガタの少女が人質になって騒ぎが起きている』と。 彼の連絡を受けたメタナイトはすぐに会場へ直行を指示、それと同時に『七彩の暴食』と『白の騎士団』もエアライドマシンで現場に向かっていた。 「な、なんだあの戦艦とエアライドマシンは」 レオンガルフが見つめる先は、巨大戦艦に追随するエアライドマシン。 マシンに乗ってる者たちは会場を這う様に飛び出し、ピッチやドロッチェ、サファイア達に手を取り回収する。 「ピッチ、もう大丈夫だぞ」 「ウォンキィ!! 皆も!!」 「こちらフロスティ、囚われてた三人とピッチとドロッチェは救助した」 見渡すと、確かにケケ、スノウも『七彩の暴食』『白の騎士団』のメンバーに担がれている。 エアライドマシンは急上昇し、ハルバードの上空へと舞い戻る。 「主砲準備オッケーダス。 目標、培養液の『怪鳥』」 「ようしドカーンといけ、ドッカーンと!!」 つうしんきから聞こえる部下の言葉に意気揚々とバルは叫ぶ。 それを皮切りに、ハルバードの主砲から黒い砲弾が飛び出すとダイナブレイドの培養カプセルへ一直線!! 「や、止めろー!!」 レオンガルフの叫び声は虚しく響く。 砲弾はカプセルへ着弾すると轟音を上げて火を噴き上げた。 勇ましい業火からレオンガルフを逃す様に、クーは彼の肩を足で掴んで飛び上がっていた。 復活目前だったはずのダイナブレイドはーーその姿は火の粉に巻かれて確認しようがなかった。 「ゲホッ、ゲホッ……うえっ、水飲んだぁ」 ハルバード甲板、救助されたサファイアとスノウは久しい空気を一杯吸い込み呼吸を整える。 辺りにはメタナイトやピッチ、ドロッチェにフロスティらと今回の作戦のために集まった四つのギルドがほぼ結集している。 「サファイアよ、お前さん地下牢におったはずでは」 モソの疑問はもっともだ。 ブレイドとネスパーは彼を探しに地下牢に残っている。 「ああ、俺もスノウもよく分かんねえけどいつのまにか水の中に閉じ込められててさ」 「多分転移魔法の一種だろうね。 瞬間移動か何かであの水泡に閉じ込められたんだよ」 スノウが足を振りまき水気を飛ばすと、甲板の先を見下ろす。 そこから燃えるダイナブレイドが見えていた。 「いやぁあんな化け物の復活に利用されてるなんてサファイアもまだまだだね……」 と、揚々と喋った途端に彼の後頭部に手痛い一発が飛んでくる。 フロスティやアイドランが血管を浮かべながら、スノウのこめかみに拳骨を擦る。 「お前が言うか??」 「どうせメスのアニマに言い寄られて騙されてたんだろぉ??」 「ごめんなさい反省してます」 スノウが反省の弁を述べてる中で、サファイアは身を乗り出して辺りを見渡す。 「……おい、ケケとマルクはどこにいるんだ」 「そ、そうだサファイア!! 大変なんだ、ケケとマルクがっ」 ピッチが目の前で見たあの光景をそのまま伝えようとしたその瞬間、ハルバードは轟音を立てて横に揺れる。 エアライドマシンに乗って戦艦を挟み込んでいるリックとゴルルムンバが、体当たりで応戦しているではないか。 「コラァ!! ピッチ、本当に俺らを裏切るつもりか」 「嘘、ヨクナイ、潰す」 リックの怒り狂う叫びに、サファイアは理解が追いついてない様子だ。 彼に分かるように、ピッチは端おって説明する。 「サファイア、アイツらはダイナブレイドを利用して外の世界の侵略が目的だよ」 「……へぇ、そりゃまた随分デカい野望だ事」 サファイアはハルバードの甲板から身を乗り出して、リック目掛けて飛び降りた。 追随する様に、スノウも反対側からゴルルムンバのマシンに向かって飛び降りると、二人の手には氷で覆われた巨大なボクシンググローブの様なもの。 それを相手目掛けて振り下ろすと、リックとゴルルムンバも呼応する様に拳を突き出しーー衝突する。 「『アニマ連合』の野望の邪魔はさせん!!」 「堅い話は無しにしろ。 こっちは仲間に手ェ出されて苛立ってんだ」 そして、この島の本願、ダイナブレイドの復活はーー。 「お……おお、虹神様!!」 レオンガルフが狼狽え、見上げて安堵する。 カプセルを破壊され、復活は失敗と思っていたダイナブレイドは自力で立ち上がりその神々しい羽を、尾を、頭部を虹の様に輝かせていたのだ。 復活は成功だ。 「……ココは、ドコだ」 「虹神様、あなたの新たな故郷でございます」 膝を地面につけて、首を下げてレオンガルフは叫ぶ。 ダイナブレイドは彼を見下ろし、話に耳を傾ける。 「700年前の、ティンクルとヒトガタの戦い、あの日の過ちが再び起きようとしています」 「700年…、アア、そんな日モあったナ」 「ええ!! 今こそ我らでティンクルとヒトガタを叩き潰して、アニマの歴史を新たに刻みましょうぞ!!」 胸に手を当てたレオンガルフは、忠誠を誓う様にダイナブレイドに誠意を見せて話していた。 この怪鳥を意のままに出来れば相手はいない。 例えば『七彩の宝玉』であろうとも。 だがダイナブレイドは嫌味ったらしい笑みを浮かべてレオンガルフを見下ろして、先ほどのカタコトとは違い流暢に言い放った。 「嫌じゃ。 妾は久しぶりに自由を得た。 好き勝手させろ」 それだけ言うとダイナブレイドは、羽を広げて大空へ飛び立った。
投稿者コメント
ダイナブレイドはメスなのでしょうか。 オスなのでしょうか。 アニメやゲームは一人で子育てをしているので、どうなのかわかりません。 オスならいけすかない感じ、メスならワガママお姫様みたいな感じかなって思いました。 次回以降どう続けるかはわかりません。
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