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小説「
第二十七話 元・鏡の大迷宮(ミラービリンス)魔導士シミラ
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作者名
ディン
タイトル
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内容
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『ぐはははは〜!! ラブリーシミラ、貴様もここまでだ〜!!』 漫画の大ゴマに、主人公を取り囲むアニマの魔導士の軍団。 そこのしんがりには、勝ち誇ったように彼らのリーダー格が主人公の魔導士に叫んでいた。 その宣言をあざ笑うように、魔導士は杖を取り出し振りかざす。 これが、この漫画のお決まりの『パターン』になっていた。 『鏡の世界よ、私に自由をもたらせ――鏡世界(ミロ・ワールド)!!!』 第二十七話 元・鏡の大迷宮(ミラービリンス)魔導士シミラ サファイア達は自分たちが迷い込んでしまった『もう一つの』ププビレッジを散策していた。 近くの大通り、知った者の経営しているはずの店、いつも人々が集まっている大広場――彼らが知っている場所は、ある程度見つけることができた。 しかし一つの違和感。 「こっちの向かいは、コンビニだったはずなのに……なんでガソリンスタンドがもう一つあるのサ」 そう、まるっきり同じ店が互い違いに存在している事。 ケケがエアライド免許を取るために通ったボルンの警察署も、全く瓜二つの建物が二つあった。 「どうしよう、メーベルさんの占い屋が無くなってる……レン村長の自宅もない!!」 ピッチは、混乱をしているのか不安げに右へ左へ顔を向ける。 いつも慣れてる村のはずなのに、まるでいつものププビレッジではないようで、ピッチは不安を募らせる。 ケケは、そんな様変わりをしたププビレッジを見つめては、唸り声をあげている。 『全年齢向け』の表示が相変わらずのサファイアが、ケケに声をかける。 「そんなに、似てるのか。 漫画と今が」 ケケの気になっていた事。 今彼女の目に見えているそれは、愛読していた漫画と同じような状況になっていた事だった。 「うん、やっぱりどうしても同じだもん。 この状況……あの漫画とそっくり」 ケケの言う漫画、『魔法美少女ラブリーシミラ』は魔導士に憧れる子供が皆読んでいたと言うほどの漫画だ。 そんな漫画と同じ世界に入り込んだ、となればファンにとっては興奮ものだが、今はそれどころの事態ではない。 「何としてでも、この世界から元に戻らないと!! そして、サファイアに美容液を買い直してもらうからね!!」 ケケは威圧感こもった目つきでサファイアを睨んだ。 サファイアの表情は、相変わらず分からないが彼は身じろぎをしてケケの圧に押し負ける。 「わ、悪かったって……ここから出られたら買い物に付き合うからさ」 サファイアがそう言って、近くの建物に身を預けた瞬間、後頭部に何かがぶつけられた音がした。 そのままサファイアは頭を抑えて身をかがめ、後ろを振り返る。 「ってぇ!! 誰だ!?」 そう叫んで背後を振り返っても、誰もいない。 そこにはちょうど建物の鏡がある場所で、人の気配はしない。 「……気のせいか?」 そうサファイアが首を傾げた瞬間に、今度は空から水が降ってくる。 ざばっと容器をひっくり返した様に大量の水がサファイアを被ると、ポリバケツが頭上に落ちてくる。 その一連の様子を、サファイアと距離を置いていたマルクとピッチは呆然と見つめていた。 すぐ近くにいたケケも、魚のように口を開けたまま見つめている。 彼ら三人はサファイアのその様子を、ただ見守るだけだった。 一つだけ言えることは、三位一体のこのモノローグ――『笑ってはいけない』――と。 「……おい、ホヘッドか? バヘッドの悪戯か?」 振り向きざまに、サファイアが声を荒げて叫んだ途端、目の前に先がひしゃげた帽子を被り、フードを羽織った魔導士がいた。 そいつはサファイアと寸での所まで顔と顔の距離を近づけると、一言叫ぶ。 「わっ!!」 「うおお!?」 突然の叫びに、サファイアは思わず声を上げて、一歩引きさがる。 サファイアと相対した魔導士は、その反応を見るや否や笑い出した。 「あーっはっはっは!! おっかしぃ!! うおお!! ですって、きゃはは!!」 両手を叩いて、子どものような反応をする魔導士、それを見て放心状態のサファイアに、後ろのケケ達は突然の劇幕を見守るしかできない。 しかし、その魔導士の姿をケケは見逃さなかった。 ハッと声にならない声を上げるも、すぐにケケは魔導士を指さした。 「あ、あなた――『ラブリーシミラ』の、作者の人っ!?」 「あーっはっはっは!! そう、そんな漫画!! 昔描いてたわねっ!! あっはっは!!」 ケケの質問に、何がおもしろいのか笑い声を上げながら答える『ラブリーシミラ』の著作者は、目にたまった笑い涙をぬぐいながら、腰抜けたサファイアに手を差し出す。 「ようこそ、私の世界へ。 はじめまして、『魔法美少女ラブリーシミラ』の作者、シミラよ」 シミラ。 自らをそう名乗った魔導士は、とてもやさしい声色だった。 敵意はなさげなその友好的な態度に、サファイアは警戒心を解いて、彼女の差し出した手と自らの手を差し出した途端――彼の手が、氷に包まれた。 「は!?」 サファイアは手をすぐさま引っ込めてシミラと距離をとる。 マルクは翼を広げて、シミラを睨んだ。 先ほどの友好的な態度は、すぐに偽りだと彼らは判断した。 「あーらら、残念。 もう少しで貴方の存在を取り込めたのに」 シミラのその言葉に、ケケは背筋が凍るような感覚になった。 あんな楽しそうな漫画を描いている人とは思えない違和感。 サファイアを取り込む……その言葉の裏は、何を隠しているのか。 「存在ってどういう意味? サファイアになりたいって事なの」 ピッチのその言葉に、シミラは顎に指をあてて上の空になる。 しばらく考えた後に、彼女は人差し指でケケ達を指さしながら、答えて見せる。 「別に、貴方にも、貴方にもなってもいいのよ。 そいつがたまたまターゲットになっただけ!!」 「全くもって意味が分からん!! 通り魔的にこんな事して、たまたまで済ますな!!」 サファイアは怒りに任せて、右手に意識を集中させる。 そこからは空気中の水分が集まると小さな氷の塊になると、やがてそれはテニスボールほどの大きさになる。 「サファイア、やっちゃうの!? 相手がどんな奴かも分かんないのに!!」 ピッチのその忠告に、サファイアは耳を傾けない。 彼はもうずっと振り回され続けてきて、シミラへの怒りは頂点に達していたのだ。 「言い訳は、懲らしめた後に聞いてやるよ!!」 氷の塊をシミラに向けて放り投げる。 サファイアから勢いよく放たれたそれに、シミラは目の前に鏡を展開させた。 そこに映ったのは――マルクの後頭部。 マルクがその鏡に映った自分の存在に気づいたのは、その数秒のズレがあってからだ。 マルクは後ろを振り返るとサファイアが投げたはずの氷の塊が、すぐ目の前に。 「は!? 何がッ!!」 マルクが呆気にとられたその瞬間、氷の塊がマルクの顔面に直撃する。 ほぼ不意打ちの状況で攻撃を食らったマルクはそのまま倒れこみ、一気に失神する。 すぐそばにいたケケは、すぐに駆け寄った。 「きゃあ!! ま、マルクさん!!」 しっかりしてください、とケケがマルクの肩を揺すって反応を確かめる。 幸い気絶をしているだけのようだったが、顔面に氷塊を直撃したのでダメージはそこそこあるはずだ。 氷の塊は、何事もなかったようにケケとマルクのすぐ横に転がっている。 「マルク!! くそっ、あの女!!」 サファイアが悔しそうに叫ぶと、すぐ目の前に立っていたはずのシミラの姿が見えない。 サファイアは周囲を見渡し、ピッチは空を飛びあがって、ププビレッジ一帯を確認する。 「シミラの奴、どこにもいないよ!!」 ピッチのその確認に、サファイアとケケも周辺を見渡して再確認する。 あの一瞬の隙に、シミラはどこへ逃げたのか。 「あんな一瞬で、遠くになんていけないはずよ……そう、確か魔導士シミラは、鏡やガラス、人や物が映る場所に潜り込めるの」 漫画でそんな展開があったの、ケケがそれを言うとサファイアとピッチは『誰もいないププビレッジ』の建物を再確認する。 窓ガラス、玄関扉のすりガラス――確かに、人が映る場所はたくさんある。 「チクショウ、さっき俺を背後から殴ったのも、そこからだったのか!!」 サファイアが悔しそうに窓ガラスや鏡を確認するために走り出す。 すぐそこにいたら這いずり出す!! そんな恨み言を叫びながら、ガラスや鏡を一枚一枚、確認する。 ピッチも、サファイアが届かない高い位置のガラスや鏡を飛びながら確認する。 そこには、シミラの姿は一切見当たらない。 「ダメだ、全然見つからないよ!!」 「そりゃそうよ、だって私氷の中も移動できるもの!!」 ケケの足元から声がする。 すぐそこを見下ろすと、確かにマルクの傍に落ちていた氷塊にシミラの姿が映っていた。 「えぇ!! そんな展開、漫画になかったのに!!」 「そりゃ、描く前に休載したもの。 これ、とっておきの『応用技』だったのよ」 シミラは、少し誇らしげに威張って答える。 ケケにとっては若干ネタバレされた気もして少し動揺したが、氷塊の中のシミラはケケを黙って見あげてた。 「ふーん」 「あ、あの……なんですか?」 シミラの何かを見定めるような目つきに、ケケは見下ろしながら問いかける。 シミラは、そんなケケの言葉に全く悪びれることなく答えて。 「いや、地味な見た目で結構派手なパンツ履いてるのねって」 「はあああああああ!?!?!?」 ケケはすぐさま氷塊を足蹴にして砕いた。 何度も、何度も、何度も蹴り飛ばし、やがて薄い氷の欠片になったら、何度も何度も足で踏みつける。 「地味で!! 悪かったですね!! これ、結構!! 気に入ってるんです!!」 涙目になって、何度も何度も叫んで氷の欠片を踏み潰す。 ケケの怒りのこもった叫びに、サファイアとピッチも思わず動きを止めて見守るも、彼女は肩で息をしながら、涙目でサファイアとピッチに決意表明した。 「サファイア、ピッ君!! あの女やっつける!!」 「お前、あの女のファンなんだろ?」 サファイアの言葉に、ケケは何度も首を縦に振る。 ケケが『魔法美少女ラブリーシミラ』に相当な思い入れがあるのは、サファイアとピッチも彼女の反応を見て既に気づいていた。 だからこその、ケケの反応だ。 「それはそれ、これはこれ!! 迷惑行為をしてる人を懲らしめるのも、魔導士の役目でしょ!!」 「その話、乗ったのサ……あの女にはちょいと痛い目にあってもらわないと気が済まない」 のびていたマルクが起き上がった。 真っ赤になった鼻を抑えながら、四人は鏡の世界になったププビレッジのど真ん中で、シミラの討伐へと作戦会議を開いた。 さて、サファイア達が鏡の世界に飛び出した後、ププビレッジと『七彩の暴食』の周りは少しばかり騒がしくなっていた。 それもそのはず、ギルドから飛び出てきたはずのケケ達が次々へと姿を消したとなればキャピィ族の皆や暴食のメンバーも目を疑うばかり。 「また、前みたいに魔法で別の場所に移されたのか!?」 「おいおい、それじゃあ今度は四人も失踪って話かよ」 ホヘッドやデッシー達も出入り口の辺りを動き回り、サファイア達の痕跡を探していた。 しかし、目撃証言も現場に残された痕跡も断定できるものは存在しない。 「くっそー、こんな時にネスパーが居てくれたらよぉ!! すぐに原因が突き止められるのに」 バヘッドやウォンキィがギルドの裏から走ってくる。 彼らは全力疾走していたのか、肩を上下させて息を切らして言葉を発する。 「ダメだ。 サファイアもマルクもいない。」 「エアライドマシンも、ネスパーの借りだしてる分以外は揃っているから、出かけたわけでもないみたいだ」 皆が顔を見合わせて、不安な表情を浮かべる。 キャピィ族の皆も、そんな『七彩の暴食』の事件に不安そうな顔をして見守るしかできない。 「この数十分で、サファイア殿たちを見た者はいませんかな?」 警察署長のボルンが、しらみつぶしに辺りの住民に声をかける。 皆、首を横に振って答えるしかできない。 「心配だねえ、ケケちゃんアタシの占いに来てくれる予定だったんだよ」 この村で占い師をやっているメーベルが、心配そうに呟いている。 横にいるのは、コンビニを経営しているタゴだ。 「マルクによぉ、新発売のお菓子が入ったら連絡する約束だったんだよ。 大丈夫かなあ」 その後ろでは、バーを経営しているリーゼントがトレードマークの男性のキャピィ族、サモが上の空で呟いた。 「サファイアとピッチに、珍しい酒が入ったから連絡をしようとしたら……こんな事になるとは」 皆が皆、突然の村の仲間の失踪に対応ができていない。 そんな彼らをまとめるべく、ブレイドが手を叩いて音頭を取った。 「とりあえず、マスターには連絡は私が入れとくよ。 ギルドの皆は引き続きサファイア達を捜索、他の皆は何か変わったことがあれば近寄らずに連絡しとくれ」 彼女の音頭で、ギルドにいるみんなが散り散りに走り出す。 キャピィ族の皆は、ブレイドに言われるがままに自分たちの居場所へ戻っていく。 そして一人残ったブレイドは――携帯を取り出してニュースを確認する。 「まさかとは思うが、『コイツ』がこの村にやってきたわけじゃないだろうね……」 彼女の携帯の画面には、大きな文字でニュースの題名が振られていた。 それの関連ニュースも、下へ下へとどんどん伸びていて……。 「コレが真実だとしたら、あの夢物語も現実の話ってことになるさね」 また起きた?! 鏡の奥から泥棒が?? 仲間割れか、ギルドの身内同士で抗争が!! 自分そっくりの偽物だとの証言も――?! 噴水の水面からヒトガタの魔導士の目撃証言も――。 一方、ここはシミラの作り出した鏡の世界『もう一つのププビレッジ』。 両脇の家から出てきたサファイアとケケは布やタオルを一杯抱えて、マルクとピッチはガムテープや画びょうを用意している。 「ごめんなさい、後で洗濯してお返しします……」 「俺らとあの女以外居ないから大丈夫だって、ほら用意するぞ」 サファイアがケケの独り言に一蹴。 彼らはププビレッジにある家の窓ガラスに布をあてると画びょうで固定する。 ガラスと外を遮断するように覆い隠されたそれは作戦の一部だ。 「ガラスや鏡からこちらを覗いて攻撃するなら、見えないようにしたらあっちから攻撃できないはずなのサ」 マルクは手早く窓に布をかぶせていく。 それに続くようにピッチは画びょうであっという間に固定すると、カーテンで中が見えなくなったように窓が隠された。 「家の中にある鏡は、寝かせれるものは寝かせとけ」 サファイアの忠告通り、ケケは姿見や手鏡を裏返しの状態でそっと床に伏せる。 洗面台の鏡は、外の窓ガラスと同じ要領でタオルや布で被せて遮断する。 「それで、これで全部のガラスや鏡を覆ったら次はどうするの」 ピッチの質問に、サファイアはニヤリと笑顔を浮かべる。 顔に張り付いている『全年齢向け』の表示も、もう慣れたもので不意に笑われることもない。 「ケケが最後にあいつと会話した場所、あるだろ。 あそこには氷の欠片がまだたくさんある」 サファイアが指さした場所。 ケケが最後にシミラと接触し、サファイア達が作戦会議を開いた場所。 そこはマルクがぶつかった氷の塊が溶けかけていたもののまだ残っていた。 「もう、あの女はここからしか出入りできないはずなのサ」 四人とも氷の塊から距離をとって様子を伺う。 既に布だらけに覆い隠された異様な外観のププビレッジに、道のど真ん中に不自然に氷の塊が残っている。 すると、その氷の中からマントと帽子を被った女の姿が見えた。 この騒動を起こした魔導士、シミラだ。 「いた!! どうする、引きずり出すか」 サファイアの急かすような言葉にマルクは翼を広げて彼を制した。 「まぁ、待つのサ。 アイツが出てくるときがチャンスなのサ」 四人の作戦は、シミラが出てきてから一気に抑え込む事。 シミラの様子を伺いつつサファイア達は静かに息をのんでいる――が。 シミラはただ一つ布のかぶさっていない氷の中で、好き放題に動いていた。 様々なポージングをして、まるでモデルのような動きで、一人遊びをしている。 ……そんな様子を、サファイア達は黙って物陰で伺うだけだった。 いや、もう既に彼女の独特な世界観に呆然としながら見守る事しかできないだけで。 「な、なんなんだあの女……突然一人で踊り出して」 サファイアは呆れるようにそれを見る事しかできない、ピッチはケケの傍によってシミラを憐れむように一言。 「なんか、一人ファッションショーしてるみたいで可哀想だね」 「ピッ君、黙っててあげて……」 マルクはそんなシミラの独特な世界観に飽きたのか、はたまた呆れたのか。 仰向けになって目を閉じていた。 「あーあ。 アイツが変わった事したら、教えてほしいのサ。 ケケ」 「アレで十分おかしいですけど、今から報告していいですか」 ケケはシミラを指さしながら、正論を吐きつつマルクに答える。 シミラは相も変わらず、鏡の奥で妙な動きをずっと続けていた。 ――そして、ここはププビレッジから離れた場所。 とある集会所。 「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。 ここ最近起きている『鏡の事件』の中間報告をいたします、ポピーです」 その集会所の一室で、『評議会』のヒトガタの職員が眼鏡を光らせて話を始める。 ポピーと名乗った男は、片手に書類を持って張り上げた声で話を始める。 「そして、今回の事件の犯人を確保するべく、重要参考人に来てもらっています……と、言うより犯人の上司ですが」 「は!? もう犯人が分かったというのか!?」 「誰だ、迷惑をかける不届き者は!!」 ポピーの発言に喚き立ったギルドのリーダー格たちは一斉に立ち上がって騒ぎ出す。 そんな彼らを見て『七彩の暴食』のリーダー、モソはお茶を飲んで様子を伺うだけだった。 ポピーは、立ち上がって騒ぎ出す集会参加者たちをなだめる。 まるでそれは子供たちをたしなめる引率の大人のようだった。 「落ち着いて、落ち着いて――事件解決のために、彼は国の掟を破ってまで来てくれたのです」 ポピーの招かれるままに、一人の男がやってきた。 巨大な鏡を二つ背中に携えた、大きな目玉のような姿をした男だった。 「皆様、お初目に……鏡の国からやってきた、鏡の大迷宮(ミラービリンス)の責任者のダークマインドと申します。 今回の件で、皆様に謝罪と協力をお願いしたいのです」 ダークマインドと名乗った男は、深々と一礼をしてリーダー達に挨拶した。 「まずは、我が国の掟を破ってここに来たバカを捕まえるお願いを」 ププビレッジ 「っぐ!!」 シミラの妙な踊りを見ていたサファイアは突然頭を抱えてうずくまる。 それと同時に、氷の奥で踊っていたシミラも急に倒れこんだ。 同時にほぼ起きたその異変に、ケケは悲鳴を上げてサファイアに駆け寄る。 「きゃあ!! サ、サファイア!?」 「い、いったい何があったのサ、サファイア!?」 マルクがサファイアの肩を持った途端に、サファイアはマルクの手を振り払う。 まるで何事もないように起き上がったサファイアだが、不敵な笑みを浮かべている。 そんなサファイアの異変に、ピッチはすぐに表情をこわばらせる。 強気な口調で、叫んだ。 「お前、サファイアじゃないな!! いや、サファイアを乗っ取ったのか」 その言葉に、サファイア――いや、元サファイアの『何か』は口角をつり上げて笑っていた。 同時に、彼らを囲んでいた鏡の世界の風景が、歪み始める。 「ふふふふふふ……私は私。 サファイアだけど、サファイアじゃない」 サファイア――いや、その誰かは顔を空へとむけて、両手を大きく広げた。 同時に、歪んでいたケケ達のいた『もう一つのププビレッジ』は、いつもの馴染みのある風景に戻っていた。 見覚えのある『七彩の暴食』のメンバーたちがいるど真ん中に、ケケ達はいきなり出現したように戻ってきていたのだ。 「わたしは美少女魔導士ラブリーシミラ!! 鏡の大迷宮(ミラービリンス)きっての魔導士、奇跡の大復活劇を特等席でご覧あれ!!」 サファイアを乗っ取ったシミラは嬉しそうに、頬を緩ませて勝ち名乗りを叫んだ。 それはププビレッジ、村一帯に響き渡った。 「そして、ここ最近この世界で起きている騒動を収めるために、協力を要請いたします。 なにとぞ、なにとぞ」 集会の席で、平身低頭とばかりにダークマインドは威厳のある声で頼んだ。
投稿者コメント
【人物紹介】 人名:ドロッチェ 性別:男 年齢:28歳 所属:真紅の窮鼠→無所属 種族:アニマ 魔法:三ツ星の杖を用いた魔法 【MEMO】 かつてププビレッジには『七彩の暴食』の他にギルドが存在しており、そこのリーダーとして活動をしていたのがドロッチェ。 ある事件で仲間を失ってからは自堕落になるも手に職をつけていた為生活には困っていない。 ケケのガントレットは彼お手製の傑作であり、腕は確かの様だ。
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