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小説「
第十七話 怒り
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作者名
ディン
タイトル
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内容
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「これは一体どういうことなのサ……」 マルクとケケが空から見た光景。 それは真っ赤な炎と逃げ惑う人たちだった。 何があったのかはわからないが、他人事ではない、それだけは確かだった。 ケケは、マルクの背中から故郷の変わり果てた光景を見て、茫然としていたかと思えば、すぐにわれに返る。 次にマルクが気が付いた時には、背中の重みは消え失せ、真下には今にも地に着くケケの姿。 「ケケ!? 危ないのサ」 マルクの声にも見向きもせずに、ケケは火の手の中に次々に入り込んでいく。 しかし炎の勢いは増すばかり、飛んで火にいるどころか火事場に突っ込んでいくが、ケケはお構いなし。 「おい、ケケ!! 聞いてるのか――」 マルクの制止を振り切って、ケケは次々と奥に突き進む、マルクも後を追おうと地上に着地しようとするがそれを遮るように、火の手がマルクを襲ってくる。 「ぐあっち!! この」 羽をはためかせて火の粉を払いながら、マルクはいったん急上昇する。 辺りを見渡して、ケケが進んでいった方角を確認すると、小さな影が二つ見える。 「誰だ……」 マルクはその影を確認しようと、いったん接近をしようとするがすぐに下からの声が彼を引き留める。 「助けてくれぇ!!」 逃げ遅れた住民だろうか、火の粉に囲まれて動けない者が一人。 マルクはそれにすぐに目をつけるが、やはり火の勢いは強い。 「くそっ、この火の手さえどうにかできたら」 恨めしそうに火の粉を見下ろすマルク。 もたついていれば、それこそケケすら見失ってしまう。 覚悟を決めたように、マルクは直立に姿勢を正すと一つ息を吐いて精神統一のように目をつむる。 やがて彼の身体に亀裂が入ると、まるで上等な刀で切られた後のように真っ二つに。 分かれたマルクの身体の中心には、真っ黒な渦が現れる。 それに引き寄せられるように、近くの小さな火の粉から黒い渦に吸い込まれていく!! 「ちょっとの間、何か木や岩にしがみついておくのサ!!」 住民たちへの忠告、マルクの中心からの吸引は最大限にまで引き上げられた。 「――ブラックホール!!」 「ちょ、ちょっと待てマルクぅ!!」 目の前には、サファイアとピッチが到着していた。 汗だくになった二人は叫び声をあげてマルクを制止する。 そして、サファイアは足元から冷気を展開する。 「お前のブラックホールじゃ、家屋そのものまで吸い込んじまうだろうが」 サファイアが出した冷気は次々と家屋の根元にしっかりと張り巡らされ、固定される。 じわりと熱を帯びてる地面に氷がすぐに融解しかかるがそれを見てマルクは改めてブラックホールを展開した。 「ピッチ、お前はケケの後を頼むのサ!! ちょうど左の方角に走っていった」 「え、わかった!!」 ピッチはすぐにマルクの指示した方角に飛んでいく。 残されたサファイアは、マルクのブラックホールに耐えられるように家屋の耐久補強に、マルクは火の手の消火にいそしむ。 「一体、こんなこと誰がやったのサ」 第十七話 怒り 「『望遠鏡』は、穴の中には存在しなかった」 ドロシアと相対するレッドとアドレーヌ、レッドはガメレオアームの亡骸を蹴り飛ばしながらドロシアに向かって話しかけた。 「伝説の継承通りだとすると、穴の中には怪物と宝はワンセットのはずだ。 まさかこんな化け物から逃げおおせて宝を持って行ったなんて奴がこんな辺境にいるとは思えない」 レッドのバカにもしているような言いぶりに、ドロシアはいい気がしなかった。 帽子の奥から見える不快な目つきを見透かしたように、アドレーヌはあざ笑う。 「しょうがないじゃないですか、私が一番よく知ってますもの」 「それで、何が言いたいんだい」 ドロシアはいぶかし気な顔つきで、二人を睨む。 アドレーヌは、二本指を立ててドロシアに見せつけた。 「私たちは、二つの可能性を推察しました。 『望遠鏡』は『すでに持ち去られた』か『最初からそこにはなかった』か」 アドレーヌはまるで――探偵のようにドロシアの辺りを歩き回りながら持論を展開する。 ドロシアはアドレーヌを疎ましそうににらみながら、口をとがらせる。 「ガメレオアームが、怪物がいた穴は誰も近づけなかったんだよ? 持ち去られるなんて、絶対不可能だ」 ドロシアのその言葉に、アドレーヌは指を立てる。 そうだ、とドロシアがその言葉を言うのを待っていたかのように、笑顔で。 「そう。 部外者がここに入ってきて、『望遠鏡』をとろうものなら、ドロシアさん。 あなた達が絶対に死守するはずです。 そうでなくても、怪物がいるから入っちゃいけないなどと力説をして、説得するか――強硬策。 やり方はたくさんあります」 「何て言ったって、大切に継承しなければいけない、『願い星』の力のために伝えていかなければいけないお宝なんですからね」 「ちょうど、今この時のようにな」 レッドの言う通り、この現状はドロシアが『望遠鏡』を渡さないために死守をしている様子そのままだ。 ドロシアは額に脂汗をにじませながら、黙ってアドレーヌの持論に耳を傾けた。 「――そして、後者の『最初からそこにはなかった』。 つまり全てが嘘だった可能性」 アドレーヌは、二本指をなおしてガメレオアームの亡骸に目を向ける。 そしてアドレーヌはそのままガメレオアームの上に腰を下ろして、かかとで亡骸を蹴った。 「ガメレオアームが、穴に近づいたものすべてを食ってしまう話。 継承が途切れたらみんなが食べられてしまうという話」 「この話、よく考えたら同じ意味ですよね。 なんでわざわざこんな話をだぶらせる必要があったのか。 私だったら、そんな話を聞いたら――」 アドレーヌは、不敵な笑みを浮かべながら、結論付けた。 ドロシアにしてやったように。 「絶対穴に何かあるなって、そっちに目を向けちゃいますもん」 レッドは、腰に手をやって一つ溜め息を吐いた。 アドレーヌの話が終わって、一息ついたと。 「回りくどい話、もう終わりでいいな」 「ごめんねレッド。 でもドロシアさんのあの顔つき、見てよ」 アドレーヌの視線の先には、ドロシアがこわばった目つきで二人を睨んでいた。 アドレーヌは、笑いながらドロシアを茶化すようにまた声をかける。 「やだなぁ、怒らないでくださいよ。 私たち二人、ちゃんとあなた達の思い通りに一回動いてあげたじゃないですか」 アドレーヌは、一枚のスケッチを取り出すと後ろを掌でたたく。 するとそのスケッチからは一体の大きな一つ目の雲が出てきて、それはあっという間にアドレーヌを乗せた。 「ご褒美、くださいね」 「ま、待て!!」 ドロシアの制止もむなしく、アドレーヌの指さした方角に、雲は雷を放った。 その先は、一軒家の家屋。 そのまま雷に打ちひしがれて、炎上する。 その燃え上がった家屋の中から、いかにも荘厳な装飾のされた箱が露呈する。 レッドはすぐさまそれに飛び乗ると、燃え盛る炎の中にもかかわらず、涼しい顔で拳を振り上げる。 「なるほど、この中にあるのか『望遠鏡』は」 拳で箱を突き破ると、穴の隙間から白い筒のようなものが見えた。 レッドは笑みを浮かべるとすぐに手に取りたかだかと掲げた。 「見つけたぞ、ノヴァを呼び出すための――『望遠鏡』、まさに本物!!」 レッドが掲げてるそれは、まさに彼らが探し求めていたもののパーツそのものだった。 誇らしげに掲げるレッドに、ドロシアは顔色を豹変させ、すぐにとびかかる。 「それは――渡さないっ」 「ドロシアさん、ストップ!!」 ドロシアが飛び込もうとしたレッドとの懐に、一筋の雷が飛んでくる。 レッドのすぐ横を通った雷はそのまま村の奥に細ぼって消えていくが、その雷が放たれた方向は明らかだった。 「ケケッ!?」 ドロシアが見た光景は、勇ましくガントレットを構えて電撃を蓄電させるケケの姿。 レッドに標準を合わせて、ケケはにらみを利かせる。 「それを、すぐに捨てて出て行って!!」 ケケはレッドに向かって叫ぶが、レッドは顔色一つ変える様子はない。 アドレーヌは、そんな二人を見比べて笑みを浮かべる。 「どうしたの、ケケ。 そんな勇ましく登場して、ヒーローみたい」 「アドレーヌ、いったいどうしてここにいるの!? 村が燃えて、ドロシアさんに向かい合って――これじゃあまるで」 これじゃあ、まるで。 それを言った時にケケは喉に言葉を詰まらせた。 この現場状況下を見れば、話は明らかのはずだった。 口に出してしまえば、簡単に総括できる話。 きっと、アドレーヌやレッドも、ケケの推論を肯定してくるだろう。 あなたの言う通りだ――と。 故に、ケケは認めたくなかった。 アドレーヌも、ケケと同じこの村出身の――。 「――どうして、皆を苦しめるの?」 ようやく振り絞った言葉が、アドレーヌを、ケケ自身を傷つけないためのすれすれの言葉だった。 ケケは、アドレーヌの先にいる、ガメレオアームの亡骸に視線を合わせる。 「……穴の、怪物」 「そう、私たちが退治したのよ、この化け物を。 すごいでしょ」 ああ、英雄だって言えたらどれだけ気が楽だろう。 ケケは悲しい顔をしてそれを喉の奥でつぶした。 もしも、この村の状況下が穴の怪物――ガメレオアーム――の仕業だったとして、アドレーヌが今の仲間と一緒にたった今退治しました。 そうであれば、胸をなでおろしていただろう。 すごい、尊敬する。 アドレーヌの自慢を、めいいっぱい肯定してみたかった。 だが、アドレーヌはケケを今日初めて見たときに、こう言った。 ――どうしたの、ケケ。 そんな勇ましく登場して、ヒーローみたい―― つまり、 「あなたが、あなた達が」 アドレーヌが、 「そうよ、見て分からないの」 犯人。 「お嬢ちゃん、主役に陶酔してるところ悪いが、俺たちも仕事なんでね」 レッドが気怠そうに、望遠鏡を担いでアドレーヌの横に飛び降りる。 ケケは電撃をガントレットに溜めて、レッドに標準を合わせる。 一つ、静寂が流れた瞬間に、ケケのガントレットから一筋の雷が、レッドにまっすぐ飛び込んだ!! 「確かに速いが、威力が小さい」 レッドは高く跳躍して、ケケの電撃を回避する。 宙で翻し、体制を整えようと視線を向けた瞬間に、二股帽子をかぶった男の姿が!! 「はぁーい、矢の雨に打たれてみないカ?」 マルクだ。 彼は薄ら笑みを浮かべて、翼の前にアローアローの矢を展開している。 レッドは目の前に炎の壁を作るが同時にマルクの技が発射される。 炎の壁に、矢は一つ一つ確実に着火するが完全に抑え込むほどではない。 消し炭にできなかった矢はレッドの頬を掠めては傷つける。 「ちっ、仲間もいたのか」 レッドは大事そうに望遠鏡を抱えて、マルクから距離をとる。 それはアドレーヌとの距離も離れるのを意味する。 「アドレーヌ、援護しろっ」 レッドはすぐに声を上げるが、アドレーヌは直立不動で動かない。 いや、彼女の足元には、氷が張り巡らされており、靴も張り付いているようだった。 「ごめん、無理」 アドレーヌはそれだけを言って下唇をかみしめる。 彼女の目の前には、サファイアとピッチが二人目の前に立っていた。 「ウチのメンバーが、ずいぶんお世話になったみたいだな。 アドレーヌ」 「キミとドロシアの因縁には興味ないけど、ケケに何かあったら、『七彩の暴食』の男たちがブチギレるから、手出ししないほうがいいよ」 ピッチは笑いながら、アドレーヌの持つ絵筆を足でつかむ。 踏ん張りを利かせて、筆を持ち上げることも妨害する作戦だ。 「マルク、その人はファイア系の攻撃してくる。 アローアローとかじゃ、相性悪いぞ」 サファイアはマルクに聞こえるように大声で叫ぶ。 それを聞いたマルクも、ほほうと笑みを浮かべながら、口を大きく広げた。 「だったら、逃げ場も対抗もできない技をお見舞いするのサ」 真っ白な怪光線は、レッドに向かってどんどん接近する。 見上げるとマルクの攻撃が迫ってくるが、レッドは顔色一つ変える様子はない。 「おいおい、『望遠鏡』までも消し炭にするつもりか」 レッドの掌には、光り輝く鞭があった。 それを一回振り下ろすと、なんと骸だったガメレオアームが起き上がり、マルクの怪光線に舌を伸ばし――食べた。 「はっ?」 「何?」 マルクと、サファイアが呆気にとられその光景を見る。 レッドが、鞭を一回地面にしならせると、ガメレオアームは彼らに標準を定め、構えた。 「『インディウィップ』。 これでガメレオアームは、使い勝手のいい俺の奴隷だ」 レッドが鞭をしならせると、ガメレオアームは転がってサファイア達に接近する。 突然に猛スピードでやってくるガメレオアームに、サファイアは氷のドームを造って対抗する。 が、 ガメレオアームはサファイアのドームを突き破り、そのまま突進する。 崩壊したドームからは、サファイアのうめき声が聞こえる。 「うぐっ!!」 「サファイア!? 一体どういうことなのサ、ボロボロだったカメレオンが、動き出した」 マルクが目を向けると、ガメレオアームはサファイアの氷のドームを突破した後に、次はマルクに向かって突進してくる。 マルクはすぐさま飛翔して距離をとると、アローアローを展開して――。 「まずは、動きを封じてやる――」 マルクの攻撃よりも早く、ガメレオアームの長い舌がマルクを巻き付けた。 そのまま勢い良く、マルクは地面に引き寄せられて叩きつけられる。 「マルクさん!?」 ケケの呼びかけにも、地面に逆さに埋まったマルクは反応しない、ガメレオアームはすぐさまケケとピッチに標準を定めると、転がってこちらに向かってくる。 「来るよ、ケケ!!」 「任せて、電撃であんなのすぐに黒焦げに――」 その刹那、ケケの手足を絡めるように、幾多の縄が飛んでくる。 背後のアドレーヌは、キャンパスに縄を描いて、そこから本物の縄が飛び出している。 「ケケ、ごめんなさい」 「あ、アドレーヌ!?」 ピッチはすぐさまケケをからめとった縄をついばむが、間に合わない。 ケケは、自分を戒める縄を展開したアドレーヌを、後ろに目を向けて、威嚇するも――もう、ガメレオアームはすぐそこに。 「アドレーヌ……ッ!!」 腕に絡んだ縄は、緩まない。 アドレーヌは、ケケをもの惜しそうな顔で見届け、つぶやいた。 「さよなら、ケケ」 ドロシアが、ガメレオアームの前に飛び出した。 それは、ケケも、ピッチも、アドレーヌも確かに目にしていた。 「ドロシア……さんっ」 ケケの叫びもむなしく、ガメレオアームはドロシアに直撃し、その勢いある回転がドロシアをむしばむ。 彼女の身体は、その巨大な突進に骨が鳴り響くがケケに傷をつけまいと、執念でガメレオアームに立ちふさがっていた。 ガメレオアームの勢いは止まらない、ドロシアは傷だらけの腕でガメレオアームの身体を押さえつけて、必死に動きを止めていた。 「アタシらの村の、嫁入り前の娘に――傷一つつけさせるかよォ!!」 ドロシアは、その腕を突き上げて、ガメレオアームを空に突きあげた。 ガメレオアームの巨体は、そのまま空に浮かんで――。 「ドロシアさんっ!! ドロシアさんっ!!」 傷だらけの腕を抑えて、ドロシアは膝をつく。 ピッチのくちばしで縄をほどいたケケは、ピッチとともにすぐにドロシアのもとに駆け寄り、傷を見る。 「ひどい、すぐに医者に診てもらわないと」 ピッチの言う通り、ドロシアの傷は早急を要した。 これ以上戦う理由はないほどに。 「アドレーヌの奴、何てこずってんだ」 レッドは横眼から見て、アドレーヌを茶化そうとしていた時だった。 彼にも、遠くからいるレッド達からでもわかるほどの、殺意に似た感情。 ケケのガントレットの電撃は、必要以上に放電されていた。 既にガントレットの原型は見えないほど電撃が強くなっていき――ケケは、アドレーヌを睨んでいた。 どうして? 村のみんなをここまで傷つけるの? どうして? 自分の恩人にここまで非情になれるの? どうして? どうして? どうして? ケケの感情に、比例するように電撃は増幅されていく。 ケケの次の一言で、それは弾かれる。 「アドレーヌ……もう、許さないっ!!!!」 ケケはそれだけを言うと、ガントレットを思い切り前に突き出した。 電撃は、そのままアドレーヌに向かって――突貫していった。
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