第6話:きょだいろぼっと
《BGM:『ロボプラ』キカイのせかいのだいぼうけん》
空はくすんだ灰色から、いつの間にか青く晴れ渡っていた。
「もうすぐさばんなちほーを抜けるよ、カービィ!早く、悪いやつらのところに行こう!」
「うん!」
その場にいた三人とも、カービィとロボボアーマーの力さえあれば怖いものなしと思っていた...しかし。
「あれ...橋がかかってない!」
対岸に渡るための橋が、無くなっていた。
「僕とサーバルちゃんでロボボのうでにしがみついて...ブースターをふかしてもらえば...」そう言いかけて、かばんちゃんは不思議な音に気づいた。
「うなり声...?カービィさん、どうかしました?」
「ぼくじゃないよ!」
「わたしでもないけど...え!?なにあれ!?」
大きな影が三人を覆う。
そこにいたのは――見上げるほど大きな、緑色のロボットだった。とても長い腕の先に、赤い装甲で覆われた四角い手がついている。
「ハァっはァ!見たかァァ、わが社のテクノロジーの恐ろしさをォォォ!」背後から、あのキンキン声が聞こえてきた。
「所長さん!?」
「あれはなァァ...研究員一同で何日間も飲まず食わずでェェ!43億ハルトマニーをつぎ込みィィィ!この『キカイ化侵略プロジェクト』のためだけに造り上げたァァァー!」
所長はまたケホケホと咳き込み、そして続けた。
「大規模開拓兼戦闘用ロボット...『鉄巨兵ギガヴォルト』だァァァ!」
《BGM:『ロボプラ』桃球発進!ロボボアーマー》
自身の名前に反応するかのように、ギガヴォルトは咆哮を上げた。
長い腕が大きく振りかぶられ、強く地面に叩きつけられた。
地面は抉れ、鋼鉄のタイルがひしゃげて外れる。カービィたちは、間一髪でかわした。
「やーっ!」
ロボボアーマーはギガヴォルトの手にパンチを何発も加えたが、分厚い装甲に少しへこみを作る程度だった。
「どうだァァ、ギガヴォルトの頑丈さはァァ!並大抵の攻撃では、傷ひとつつけられないぞォォォ!」
(そんな...もっとつよい攻撃を、どうロボボで出せばいいんだろう...)
その時だった。ロボボの操作パネルが、明るいピンク色に光った。
(なんだこれ?)
カービィは一か八か、操作パネルを叩いた。
「かばんちゃん、どうしたの?」
一方その頃サーバルは、二つのものを交互に見つめる親友のことが気になっていた。
「あのロボットの頭にあるバツ印の円いの...このタイルを留めてたものに似てる...」
小指よりも小さな、巻き貝に似たそれを凝視しながら、ヒトはその考える力を発揮した。
「これ、もしかして...くるくる回して締めたり、外したりできるのかな...?」
「かばんちゃん、あぶなーーい!!」
ガシン、と大きな音がした。
「え......」
見ると、ロボボアーマーが、すぐそこまで来ていた巨人の掌を持ち上げているではないか。
しかも、見た目がさっきとは違う。ボディは茶色くなり、大きな石の拳を握りしめていた。
「カービィさん、それって...」
「...なんかパネルをいじったら、岩が光になって、ロボボのくちにはいったんだ。ロボボも、コピー能力をつかえるみたい!」
「な...な...何が起こってるんだァァ!ロボボアーマーが岩をスキャンして、姿かたちを変えるとはァァ...これはコピーなんかじゃないィ!『性能スキャン』だァァァー!」
ロボボアーマーはギガヴォルトの手を投げ飛ばし、そして...
「“ロックンストライカー”!!」
右の拳から繰り出される、怒りのメガトンパンチ。赤い装甲が一撃で粉々になり、大きなネジがあらわになった。
「ああァー!だがヤツの弱点は分かるまいィィ!」
そんな所長の予想は、一瞬で外れた。
「カービィさん!そのバツ印のものを、回してください!」
「なななな何故だァァァ!アイツら、何故ギガヴォルトの弱点を知っているゥゥ!?」
「所長!声に堂々と出てます!」
カービィは一瞬戸惑った。
(まわすって...どうやって?)
しかし、ロボボの腕が、ネジに反応してぐるりと回転した。
「あ!」
さっきまで肘にあたった部分が前に出て、ネジのバツ印にカチリとはまる。
カービィは勢いにまかせ、思いきりネジを回した。
「たぁぁー!」
ネジが緩み、外れると同時に、ギガヴォルトの左腕が音を立てて崩壊した。
「ウワァァァ!」ケイン所長が絶叫する。
カービィは次いで、振り下ろされる右腕の装甲を破壊し、ネジを外した。
もはや声も出ない所長の眼鏡に――ブースターで浮かび上がり、ギガヴォルトの頭に飛び付くロボボアーマーが映った。
ギガヴォルトはカービィに向けてミサイルを発射し、悪あがきする。しかしカービィは、弾頭が来るより早く、頭のネジを回しきった。
ギガヴォルトの関節が緩み、全身にヒビが入った刹那――巨大な鉄の人形は爆発四散した。
「え...倒したの...?」
「あんな大きなロボットを、わたしたち三人で...?」
「...やったぁぁ〜っ!!」
カービィたちは大いに喜んだ。
研究員たちは「おまえ何もやってないだろ」という視線を猫耳のゲンジュウ民に向けていたが...やがて、また1人の研究員が所長に声をかけた。
「あの、所長...俺達の汗と涙とハルトマニーの結晶、どうなったんスか...?」
ケイン所長はしばらくワナワナと震え、それから悔し涙を流した。
「どうなったも......こうなったもないィィ!あのゲンジュウ民とストレンジャーめェェ!カンパニーとして、要注意人物に指定してやるゥゥゥ!43億ハルトマニー、きっちり耳をそろえて返してもらうからなァァァ!チクショオォォォ!」
所長のキンキン声が鉄の荒野にこだまする頃、すでに三人は対岸に渡り、姿も見えなくなっていた。