8話「暗雲と蜘蛛の謎」
「ここなのサ。」
影の中の空間を突き進むマルクは、ピタリと止まった。
「うおっと!急に止まらないで!」
キービィがぶつかった。
「ちゃんと止まれよ。」
マルクは言い返した。
カービィとの因縁を持っているのか、少々口が悪い。
もっとも、こっちはカービィの色違いのキービィであるが。
「さて、出るわよ。」
チルノを先頭に、皆が続いて空間から出ていく。
出た先は、いくつかの人にとってとても馴染み深い、あのプププランドだった。
しかし、いつもの呆れ返る程平和な場所ではなかった。
マルクたちが出てきた周りは黒く渦巻いていた。
近くには黒緑に染まった大きな樹が立っている。
「何なのサ?一体…」
「ここにも、マスターコアが…」
スマブラ界のマルスが言った。
「そんな…まさか…」
キービィが疑った。
と、その途端!
「うわぁ!?」
来太が叫んだ。
大きな樹の前に、巨大な蜘蛛が落ちて来たのである。
「クッフッフッ……ワタ…シ…は……マスター…ランザー…。」
「マスターランザー…?マスターコアの新手か…」
メタナイトは言う。
「ランザーって何?」
キービィは問う。
「さあ…」
皆分からないようだ。
『ランザー』に意味はないっぽい。
「恐竜、カメレオンに続いて、次は蜘蛛か…」
流石のキービィも、戦いが多く疲れてるようだ。
「僕は大体吸い込まれてるだけだけどね…」
スマブラ界のマルスは…仕方ない。
「ランザー…ボウル!!」
マスターランザーは2本の前脚から青紫の弾を放つ。
「そんなもの!」
スマブラ界のマルスは、それらを素早く斬り払い、マスターランザーの顔に斬りかかった。
しかし…
「うわあ!」
「クッフフ…甘い…ねぇ…」
マルスは、マスターランザーの口から出した糸に絡まってしまったのである。
「誰か…ほどい……」
マルスの声が途絶えた。
「マルス!助けるケロ!神具『洩矢の鉄の輪』!」
「グフッ…」
マスターランザーは怯んだが、もう遅かった。
マルスに巻き付いた糸がほどけた。
「マルス!大丈夫!?」
キービィはマルスに駆け寄るが、返事がない。と思うと…!
ズバッ
「えぅあっ!?」
キービィは悲鳴を上げた。
なんと、マルスがキービィを斬ったのだ。
「え、ちょ…マルス!何するの!?」
返事はせず、剣を構えて走ってくる。
その眼には光がなく、まるで生気を失っているようであった。
「こっち来るな!アイスボウル!」
マルクが放ったアイスボウルは、簡単に斬り捨てられた。
「ぐ…」
「危ない!ナイトビーム!」
メタナイトが剣の先から波動を撃ち、マルスをのけぞらせる。
「…なるほど。マルスの背中に糸がついている。マルスはあの蜘蛛に操られているみたいね。」
六花は見ていた。
「そうか。ならあの糸を斬り裂けば…」
ブラックピットは弓を引き、遠くから矢を放った。
プチッ
「ッ…」
流石の正確な射撃により、糸が切れる音がする。マルスの動きが一瞬鈍ったが、すぐに体勢を立て直し、高速でブラックピットに近づいた。
「ぐおおっ!」
糸が切れ、油断したブラックピットは避け遅れて斬られてしまった。
「どうやら、あと3本あるようね…」
六花は目を凝らして確認した。
「しかしあれでは近づきにくい…」
とメフィレスが言ってる時に、マルスの方から近づいてきた。
「今だ、鎖錠!」
岐部は咄嗟に鎖の絵を描き実体化させ、マルスを縛った。
「ありがと。闇弾《ダークバレット》!」
バチッベチッ
マルスの糸は残り1本となる。
しかし…
ベキベキ…バキッ
「鎖を破壊しただと!?」
マルクは驚く。
マルスは力のリミッターが外され、もはや戦闘マシーンと化していた。
「アローアロー!」
「アイシクルフォール!」
「スターピース!」
マルクとチルノ、ロゼッタは糸を目掛けて弾幕を撃つが、マルスのスピードが速くなっており、機敏に避けていく。
「糸ばかり狙っては駄目です!」
いつの間にか変身していたゴーオングリーンは、そう言った。
「え、でもマルスに傷つけたくない…」
キービィはそう反対するが、ゴーオングリーンは何も言わずマルスに向かった。
ゴーオングリーンはマルスより高速に動き、足元を狙ってブリッジアックスを振りかぶる…!
刃先を反対に向けて。
これにより、マルスは傷つくことなく転倒。
すかさずスマブランドのマルスが…
「ドルフィンスラッシュ!!」
「あれ、僕は一体…」
全ての糸が切れ、マルスは正気に戻った。
「よかった。蜘蛛の糸が切れたんだね!」
キービィが喜ぶ。
「でも、まだ終わってないよ。あの蜘蛛も倒さなきゃ…」
ルイージがマスターランザーを指す。
「クッ…『光なき暗雲』…!」
「まっ、周りが真っ暗に…」
マスターランザーは眼から黒い雲を出し、辺りを暗闇に。
「チッ…どこに行ったのサ…?」
探すマルクの背後から、飛びかかるマスターランザー…!
「ドラゴンキラー!」
スマブラ界のマルスが、何も見えない暗闇の中、お得意の横スマでマスターランザーを斬り裂く!
「ぐふぁぁ!な…ぜぇ…。」
「視覚ばかりに頼ってはいけない。さっきまでみんなに色々傷つけてしまったみたいだから、そのお詫びだよ。」
マスターランザーは、光に包まれていく。
周囲の暗雲も晴れる。
「なん…と…いうこと…で……」
マスターランザーはそう言いながら消えていき、包んでいる光はファイルとなった。
「ん…?」
それだけではなかった。
消えたマスターランザーの黒い体の中から、1人の少年みたいな蜘蛛が現れたのである。
「ワタシ…は…何をしていたのね?」
その蜘蛛は、6本の手に、おかっぱな銀髪、そして2本のツノが生えていた。
「きさまは…タランザ!」
メタナイトが言った。
お察しの通りであっただろう。
あやつりの魔術師、タランザ。
「…なるほどねぇ。ワタシは、そのマスタードココアって奴に憑依されてたのね。」
「不味そうな名前になってるのサ!マスターコアだってのサ!」
「そのファイルについて知ってるかい?」
マルスが問う。
「なんというか…たまたま落ちてたのを拾ったのね。よくわかんないけど、こんなこと書いてあったのねぇ。」
《第4項》
バックアップのおかげで記憶だけ助かった。
しかし、他はどうしようもなかった。
どれだけ早く、速く動いても。
俺には何が足りなかったのだろう。
何故、世界を救えなかったのだろう。
それらも、勇者たちに教えてもらえるだろうか…。
その記述は、すぐさま本へ収まった。
「例によって、1,2,3項の筆者の仲間ね。」
六花が言う。
「どういうことなのね?」
何も理解していないタランザに、キービィはこう答えた。
「か く か く し か じ か」
「ほう…小説って便利なのね。」
「メタい!」
「で、タランザはどうするの?」
来太は投げかける。
「ついていくのねぇ。さっきまでのお詫びなのね。」
「ありがとう!」
☆★タランザが 仲間になった!★☆
「さて、次すべきことは…」
「まだ項は増えていくのかな?」
「どうかな。」
ファイターたちは問いに問いを重ねていくが、そこでタランザが言い出した。
「せっかくここに来たんだから、あの小屋でゆっくり話し合えばいいのね。紅茶とドーナツも出すのねぇ。」
「お、気がきくね。」
キービィは礼を言いながらタランザの指差す方向を見ると、白く小さなドーム状の小屋があった。
「って、カービィの家じゃねーか!」
「いいのねいいのね。今はカービィどっか行ってるしねぇ。」
「借宿かよ…」
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「遅いなぁ…」
「そろそろ来てくれないかな…」
「今回はやけに遅いわね…名前に反して。」
マントの少女と羽の青年と白鎧の女性は、水にも浮かぶ美しい月光の下で座っていた。
「ごめんごめん!!」
とともにパッと3人の前に現れたのは、1人の少年。
近未来的な格好をし、頭にはコピー能力ジェットのような被り物が、右手には目のついた剣の生き物、ソドリィを持っていた。
「おお!最速氏!待ってたよ!」
マントの少女は、近未来的な少年を歓迎した。
「どうしてそんなに遅く…」
羽の少年は尋ねた。
「どうせなら生で戦況を見たいから拝見してたら、いつの間にか…」
「やれやれ、何してるの。そんなことしてる場合じゃないでしょ。」
白鎧の女性は言う。
「ホントごめんなさい!油断してました…」
「…まあいいわ。」
「勇者たちには会わなかったの?」
マントの少女は問う。
「無理だ。俺たちは記憶だけの存在。普通の人は俺たちを見ることもできないからな。」
「なるほど…あ、そろそろここも離れないと…。後で最速氏にも黄桃あげるね。」
「ありがと!」
「僕にももう1つ…」
「どうしよっかな〜。」
皆で話しながら、色とりどりの狂い咲く花と水に浮かぶ月を背景に、この場を飛び去った。
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あとがき
前が短くなり過ぎたので、今回は長く心掛けました。長過ぎたかも…。
そして、勝手ながらに新たな仲間タランザが登場。
キャラ紹介は第0話だと初めて読む方々にネタバレになると思い、ここに載せさせていただきます。
【あやつりの魔術師】タランザ(出典:星のカービィ トリプルデラックス)一人称:ワタシ 二人称:キミ
原作では勇者もといデデデを連れ去った、6本手の蜘蛛。笑い方は「クフフフフフ」。
攻撃技はタランザボウル、いわゆる魔力球しかないが、タランザ最大の特徴としてあやつりの魔術が挙げられる。
これは、あらゆる生物や無機物を操り人形のように操ることができるという術。
前まで女王の側近に仕えていたが、その女王が永遠なる眠りについてからは、1人で暮らしている。
グダグダした戦闘シーンになりましたが、読んでくださりありがとうございました!
次は黄桃sですね!
繋ぎにくい終わりになったかもしれませんが宜しくお願いします!