すにーきんぐみっしょんin闇鍋
愚かなる者たちの会話
D「やっと出れたぞい……」
S「太陽がまぶしいでげす」
D「あ゛〜空気がおいしいぞい」
S「それにしても私たち、よく出れたでげすね」
D「まさか真上に掘ったら出られるとは思ってなかったぞい」
S「……上?」
D「ん?どうしたぞい?」
S「真上に掘り進んでいくのって無理でげすよね?」
D「ほわい?」
S「じゃあ、地面に絵をかくでげす」
______地面
│ ̄│ │ 重
│☆│ │
│ │ ↓ 力
S「足場が無いでげす」
D「でも確かにわしらは上に向かってほったぞい!」
S「考えておくれでげす。こんなことはありえないでげす!」
D「ん〜〜〜〜……?」
S「ほら?ね?」
D「……頭がくらくらするぞい……」
S「あ、陛下!ちょっとしっかり立って!」
そんな感じで今回もいきます。
〜つ〜れ〜づ〜れ〜
あの1話登場の牧師さんから、逃げ切ったみんなは、ワドルディの家で鍋ぱーちーをしています。あのあと、何があったのか。会話を聞いてみましょう。
水餃子をほおばりながら、サフィーちゃんが聞きました。
「あの牧師さん無事でしょうか?」
「無事ではないでしょうね……」
右隣のグーイの答えにサフィーちゃんは表情を曇らせました。
「あの教会を私が壊したからですね…」
「いや、でも僕たちも1回あの教会を破壊してるし」
「訂正してくださいカービィさん。破壊者はあなたのみです」
「まあ、どのみちあの教会にはぼくの埋め込んだ打ち上げ花火があったし、ダメだったね〜」
白雪はさらりと最低なことを言いました。リアン君は花火について聞きました。
「それにしても白雪は花火どんだけもってんのさ。あのへえボタンにも仕込まれてたし…」
「それは、内緒〜。そういえばへえボタンの花火だよ〜!あの牧師を仕込み花火で、っと、いだ〜!」
向かいのリアン君の箸から、もちきんちゃくが放たれ、白雪はとっさに凍らせましたが、硬くなったもちに額を弾かれました。どうやら墓穴を掘ったようです。
リアン君は平静を装い(顔が蒼く、手もがたがたしてます)、春雨をすすります。昆布を口(?)にくわえた状態のワドルディがそれに気づきました。
「まさかとは思いますが、一応、念のために聞きますよ?牧師さんをやっつけちゃったのって…」
あからさまにビクッとするリアン君。
「リアン君?」
みんなの視線があつまります。しかし、ここで復活した白雪の助け舟が入りました。
「リアンはわるくないと思うよ〜。ぼくのロケット花火でボロボロだった牧師さんを助けようとして僕を突き飛ばしたんだよ」
「そこまで聞くとリアン君は悪くはなさそうですね……」
うん、と白雪はうなずき、続きを言いました。
「そしたらさ〜、その拍子にぼくの持ってたへえボタンの隠しボタンが押されちゃってね、牧師さんに向かって打ち上げ花火が」
どっか〜ん
牧師、彼の最期のイメージが簡単に創造できます。南無阿弥陀仏…と。
とにかく、助け舟は泥舟だったようです。罪悪感で頭がいっぱいになったリアン君を、カービィのかけた言葉。
「ど、どんまい……」
それが、逆に彼を撃沈させました。泥舟とはもろいものです。
―☆―☆―☆―
「リアン〜、そこにイカ隠れてるよ?」
「…それを言うなら、そっちにも隠れてるけど…?」
「!…こっ…こやつ、出来る…!スニーキングのプロか!?」
イカやら水餃子やら色々あって……この鍋のジャンルはなんだ?
そのままみんなでがやがやと鍋を食べ進めていると、カービィが手を3回叩きました。
「みんな、ちょっと聞いてほしいことがあるんだ!」
「はい?」
「なんですか急に……」
カービィはみんなの反応をみて何故か満足そうに頷きました。
「みんなは鍋を勘違いしてるんじゃないかな」
「どういうことですか?」
「説明するよりも見せたほうが早いと思う。僕にとっての鍋は…」
そして、壁をこんこんこっ、と2.5回叩きました。
グオンッ、と壁とその付近の床が勢いよく回転して…
「っというかなんで勝手に僕の家リフォームしちゃってるんですか!?」
…回転して、10人ぐらいでも囲めるほどのこのテーブルより一回り大きいでしょうか、っていうぐらいのサイズの鍋が出てきました。
「おー!でっかー!」
「カービィさん、分かってますね……」
鍋を見て復活したリアン君の声に、舌なめずりをして目を光らせているグーイも続きます。シャレにならないほど恐いです。
「…だれも、僕の話は、聞いてくれないんですね…!」
ワドルディはみんなが盛り上がっている中、一人泣いていました。この辺の人々はよく食べますからこの鍋に興奮してしまうのは、仕方ないと言ってしまえば…仕方ないですね。でも、無視は良くないと思いますっ!
「この鍋で作って食べようじゃないか!」
…結局やることは普通の鍋とかわらんのですか。さっき勘違いしてるとか言ってましたよね?
「ああ、そう。……で?」
その空気の中で全く、なんの反応もしていない少女がいました。それに対して、カービィが手を上げます。
≪カービィ食物大臣≫
いつのまにか持ってきたマイクを手に持ち、サフィーちゃんが国会答弁のときのように、カービィを指名します。机にもいつの間にかマイクが向かい合わせに2つ置いてあり、カービィがそれに近づいて力説を始めました。
≪この鍋の大きさは我々の楽しみと期待に比例しています。それをバカにするのは、我々をバカにするということか!≫
何故か口調も、政治家っぽくなってます。後ろも盛り上がってそうだそうだと騒いでます。そんなアウェイの状況で少女は、表情を変えずに手をまっすぐに上げます。
サフィーちゃんは指名しようとして、
≪…えっと、お名前を、どうぞ≫
その少女を知らないことに気づきました。少女は設置されたマイクを台から外して、凛とした声でこう言いました。
≪私は深紅。馬鹿になどはしていない。興味が無いだけで≫
無表情でした。
―☆―☆―☆―
≪…というか、そもそもそんな鍋をどうやってコンロに置くのですか?≫←ワドルディ
≪僕のファイアで暖めるからモーマンタイ≫←カービィ
「大問題ですよ……。焦がすに決まってるじゃないですか……」←グーイ
≪と、いう意見がでているが?≫←深紅ちゃん
≪鍋だから焦げる心配なし!≫←カービィ
「いつかのサバイバルのときに、スープを蒸発させませんでした?」←ワドルディ
このような不毛な討論が10分程、続いています。サフィーちゃんは指名の仕事で忙しく、外野も野次を飛ばし放題のぐだぐだでした。そんなとき、グーイが手を上げました。
≪グーイ参謀長≫
何故に参謀長やねん!という突っ込みは置いといて…。グーイがマイクに近づき、静かに話し始めました。
≪私からもちょっとした意見です……≫
グーイがカービィのほうを振り向きました。
≪何故、パーティなのに酒を出してないんですか……?≫
この空間に電撃が走り、みんな、驚愕の表情で固まりました。あ、深紅ちゃん無表情。
「か、カービィさん、ま・さ・か、お酒を持っているなんてことは…ないですよね?」
ワドルディの言葉にみんな息を飲む。
カービィは首を傾げて、頭にクエスチョンマークを浮かべます。そして、ポンと手を叩きました。
「ごめんグーイ!すっかり忘れてた!」
「だからそこじゃないんですって!僕は未成年ですよ!?」
ワドルディの言葉は彼の耳には届きません。
「…もしもし!?ウィリーだよね?大至急ワドルディの家あたりに来て!」
カービィは電話でウィリーを呼びながら出て行きました。そして、30秒ほどで帰ってきて、ビニール袋を突き出しました。
「お酒!もってきたよ!」
「エコじゃないっ!」
リアン君のツッコミはどこかずれてます。
「いや、でもさー、僕の口の中から出したら…嫌でしょ?」
「なるほど!」
納得しちゃうのですか。エコバック持てばいいじゃん。
「えと、ざっと10人くらいだから…うん!1人2瓶!」
「いや何本もってきてるんですかそしてどれだけ飲まそうとしてるんですか」
「冷静かつ早口なつっこみですね……」
「あのさ、おいら未成年なんだけど…」
と、いうリアン君の言葉にカービィが反応しました。
「大丈夫さ!僕は登場してから19年だよ!」
「いや、そりゃカービィはいいかもしんないけどさ!」
「19でもダメですよね!?」
グーイがリアン君を振り返りました。
「大丈夫ですよ……。ここにいる全員が多分設定は未成年です……」
「設定とか言ったらもっとダメだと思います!」
「うい〜、も1本おねが〜い」
「白雪さんは何故既に1瓶空にしてるんですかッ!」
白雪はベロベロに酔っ払って床に、ぐでん、と伸びています。
気が付けば、既にほぼ全員にお酒が渡されていました。そのうちの半分は既に顔を赤くしてゴロゴロしています。
「みんなお酒にのまれるの早いですねぇ……。ん?ワドルディさんの分もありますけど……?」
と、既に2瓶を空にしたグーイが言いました。
「遠慮させていただきます。…グーイさんはザルですか…?」
「ザルという言葉はいまどき使わない気がしないでもないのですが……」
「あ〜ほらー!こんな話をしている間に死屍累々なんですけど!」
ワドルディは酔っ払って、早くも寝てしまった白雪とサフィーちゃんの頬をペシペシと叩いてみました。二人とも幸せそうに寝ています。
「へんじがないただのしかばねのようだ……」
「棒読みでそんな怖いこと言わないでくださいよ…」
そのとき大きな声が家いっぱいに響きわたりました。ニコニコ赤ら顔のカービィの声でした。
「最初はグーッ!!」
何故かその手には剣。
「じゃんけん…」
対する相手は目が据わっている深紅ちゃん。何故かその手にも剣。
「チェストぉおおおおお!!」
カービィの袈裟斬りを横に流して、上になぎ払い、カービィはそれを剣でとめて突きました。それを深紅ちゃんが交わしたので壁にザックリと剣が刺さりました。
「鍋がでかくてぇ…何が悪いかああ!」
「悪ィなんつってねェ…。ただそっちがつっかかってきただけ、でッ!」
二人はお互いに切りつけ合う謎のゲーム、むしろデスゲームを続けます。ただ、ワドルディの家の壁を削りながら…。
「二人とも!出だしじゃんけんにした意味はどこですかッ!」
ワドルディのツッコミを聞いたあと、三合ほど打ちあわせて、二人は止まり、こちらを振り向きました。カービィは何を聞かれているのかわからないといった感じで首をかしげました。深紅ちゃんはじーっとこちらを見ています。少しの間、見合ったあとカービィは口を開きました。
「えぇーっとぉ、それのどこがおかしいのぉ?」
「だッかッら!!ジャンケンならグーチョキパーでやってください!それから僕の家をどうするつもりですかッ!」
「ああ、そう…。で?それがどうした?俺は別に困らねぇ」
「それと、僕はいきなり口調とかが変わった深紅さんの対応に困ってます!」
カービィは首をかしげたまま頷きました。
「なーんだぁ〜それだけかぁ〜」
「わかってましたよ…。カービィさんの優先順位の最高位は食べ物であることぐらい…」
ワドルディは二人を諦め、まだ回復の見込みがある酔っぱらいを探しに行きました。すると、酔っぱらい二人に絡まれているリアン君を発見しました。
「そうですか……。私の酒はそんなに不味いですかねぇ〜……?」
「んむーんごんむむむ〜?」
「ワドルディ助けてッ!二人ともからみ酒なんだよー!」
そう言ってもがくリアン君の左右には、酒瓶を押し付けるグーイと、口にくわえた酒瓶をビカビカ光らせて遊んでいるカインがいました(果たして、カインのこれはからみ酒なのでしょうか?)。
その周りに転がる酒瓶の数は、ひー、ふー、みー………10本ジャスト!?
「一体3人で何本飲んだんですか?」
「えーっと、おいらが4本で…二人は3本ずつだったかな…?」
本物のザルはリアン君だったようです。
「そうですか、リアン君。僕はほかのひと達の様子を見に行くので!」
「ちょっ、ちょっとちょっと!まってくれよー!流石にこの空間には耐えられないって!」
「(すいません、リアン君。僕も命が惜しいんです…!)」
「そんな心の声っぽく腹話術しなくていいから!そこに頑張るならおいらを助けるのを頑張ってみてよー!おーい!」
ワドルディはたまらず逃げ出した!50ゴールド落とした! …なんちて。
ワドルディは再び生存者を探しに行きました。が、見るのは死人と酔っぱらいのみで、結局、まだつるぎのまいみたいなことをしているカービィと深紅ちゃんのところに帰ってきちゃいました。
「食物にぃ、罪は、なぁぁあああぁい!」
「調理側に罪はあんだろ。煮崩れしたじゃがいもなどは見たくねぇ」
「煮崩れさせるものかぁッ!トマトと同じナス科の植物をぉおおおああ!!」
ワドルディは深くため息をつきました。そして、深呼吸。そして、ゆ〜、っくりと家の惨状を見ました。
傷ついた壁、足の折れた椅子や机、日本酒でぐちょぐちょになった床。
彼は自分の心に向かって話しかけました。
僕は、僕を続けていく自信をなくしてしまいました。そんな状態でも僕を続けていくべきだと思いますか?
その問いに対する心の答えはいたってシンプルなものでした。
その答えを聞いたワドルディは何度も頷いて、息を整え………
「出てけやてめぇらぁああああぁあぁあああああ!!!!!!!!!!」
ワドはご乱心にあらせられるようでした。
―☆―☆―☆―
冬の寒気に1時間さらされたカービィ達は酔いがさめ、帰路につきました。
分かれ道にぶつかるたびに少しづつひとが減っていきます。
「それでは、私はこちらですので……」
「私はグーイさんの家に居候させてもらうので」
「うん、じゃあねグーイ!サフィー!」
「さようなら」
そして、残ったのはカービィと深紅ちゃんの二人でした。
「ん、そうだ。深紅の家はどこにあるの?」
「私の、家?」
「あれ?やっぱり深紅も落ちてきたから、家はないの?」
「?いや、私の家は教会の隣。落ちてきたとは?」
協会の…隣?
「い、いやなんでもないよ?隣ってどれくらい近いの?」
そんなはずは無い、と思い、カービィは聞いてみました。
「歩いて30秒ぐらい」
「…あのさ、今教会ってガレキの山になってるよね?」
「ああ、この間火事があって焼け落ちたそうで」
「そのとき、深紅ちゃんの家は?」
「私の家は石造りで燃えなかったので大丈夫。では、また今度に」
ここで、分かれ道が来てしまいました。カービィの質問攻めも辞めざるを得ません。
「結構楽しかった。だから、また話したい」
「うん!そう言ってもらえると嬉しいよ!じゃあ、また明日にでも!」
そう言って二人は別れた…ふりをして、悪いとは思いながら深紅ちゃんを追いました。
たどり着いた先には、ガレキの山。その隣の焼け野原には、深紅ちゃんの一軒家が、無傷で、建っていました。
「これは、一体…どういうことなんだ?」
久しぶりの空気に、カービィは冷や汗を流しました。