6-2.現人神の失態
今までのことが殆ど思い出せない。団員たちに散々質問攻めにされたが、完璧に答えられた質問は一つもなかった。とりあえず私は自分の居場所を見つけるまで盗賊団の一員として加入することになった。
盗賊団の中での生活はとても楽しかった。団員たちと一緒にコミュニケーションをとったり、一緒に行動したり。封印される前はずっと狭い部屋の中に閉じ込められて、監視され、逃げ出そうとするとすぐに人間たちに捕まってしまっていた。私はその世界から見るとそんな存在だった。社会から切り離されて生きてきた私にとっては、とても新鮮な気持ちだった。
そんな日々がずっと続くと思っていた...自分のある「能力」に気づくまでは。
寝心地が悪い、暑い真夏の夜。俺はいつものように普通に眠っていた...が。
「ん...」
体が異様に熱い。何だか、目が覚めてるはずなのにボーっとする。誰かの甘い吐息が俺の中の思考回路を全て奪っていく。俺、可笑しくなっちゃったのかな。快楽の波が俺を襲い、俺は溺れてゆく。
全てを出し尽くし、意識の戻った俺は、やっと状況に気づいた。
悲惨だった。
何を、何をやってるんだ、私は。
ああ、分かったよ。私は、団長のことが好きなんだ。「恋」してるんだ。もっと団長の近くにいたいんだ。団長と繋がりたいんだ。...え?繋がりたい?傷つけたい?殺したい?
え?え?本当に私はなにをやってるの?ああ、もうわけがわからないよ。
溢れ出す欲望が。
抑えられない。
やめられない。
止まらない。
誰か私を止めて。誰か、だれか、ダレカ。
怖い。怖い。こんなの私じゃない。今の私はバケモノのようだ。もう、大切な人にこんなことできない。ここを離れよう。もう誰も悲しませたくない。逃げよう!