EP.8-2 The End 2
ガタン、と金属が叩き付けられる音がした。
先ほどの紳士が鉄板に“戻った”のだろう。
最期に、一つだけ思い残すことがある…………
……緑さんに、会いたい。
せめてこのままの姿でいいから、会わせてほしい。
再び言葉を交わそうとか、手をつなごうとか、
そんなことは望まないから。
元の姿に戻るとき、緑さんが言いかけた言葉……
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
『…ありがとう…………私も……』
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
何を言おうとしていたのだろう。それだけが知りたかった。
悔いにも似た思いが、小さくなった体を包んでいく。
そして、ふわりと体が宙に浮いた。
グレーのエプロンをつけたあの悪魔が、僕を持ち上げていたのだ。
その右手には、銀色に光る包丁が握られていた。
「えーっと……まずは…………お前だ」
僕がかつて見ていた料理本と似たような本を片手に、悪魔が僕に語りかける。
僕の声はもう、誰にも届かない。
包丁の冷たい感触が伝わって来た。
悪魔が僕に包丁を当てがっている。
もう、逃げも隠れも出来ない。覚悟を決めるしかなかった。
「キャベツさんよ……お前が一番、面白かったぜ」
また生まれ変わったら、もう一度…………
会えるよね……緑さん……………
また、いつか―――――――――――――――――
ざくっ、という身が切られる音。僕が聞いた、最後の音だった。
そして、
僕の意識は、そこで途絶えた。