あしかのらいぶらりぃ
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執筆者: 麻疹騙り/投稿日時: 2015/09/30(水) 11:52:46
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7章のタイトルをちょっと変えました。ご参照ください。

夏休みが今日で終わってしまうとか信じたくない。
EP.8-1 The End 1
……………………




まだ、なんとなく意識が朦朧としている。


気がつくと、そこはまたもや見慣れない空間だった。

緑さんと出会ったあの街でも、生まれ育った畑でもない。

無機質な冷たい金属の上に、取り残されていた。



ぼんやりと辺りを見回すと、僕と同じように無造作に置かれた、
卵・小麦粉・かつお節・青のり・ソースがあった。


「…………?」


もう、僕は、口を使って声を発することも、耳を使って声を聞くこともできないけれど……

……何と無く、彼らは僕と同じ“過去”を背負っているような感じがした。


『……如何でしょう』

「!?」


遠くで、知らない人の声がした。


『なかなか可愛らしい連中だったでしょう』


帽子を被り、黒いスーツに黒い靴。正装をした紳士のような男性。

……あの人は一体、誰に向かって喋っているのだろう?


『悪魔の狙いはこうです』


 “狙い”だと?

 そして、紳士はゆっくりと語り始める。



『1年間人間を経験した食材たちが、元の姿に戻るとき、必ず“別れ”を経験する。
そこで“世界で一番悲しいお好み焼き”をこしらえるつもりなんです』


“お好み焼き”という言葉を聞いた瞬間に、頭の中にあった数少ない記憶が蘇った。

緑さんのために料理を覚えていた頃、料理本でそんな料理を見たことがあるような気がする。

一度も作ったことは無いけれど、確かキャベツも入っていたような……。




全てを、察した。


どうして、緑さんにもう一度会えると思っていたのだろうか?

こうなることが予測できなかったのだろうか?


僕はもう、ここで――――――――――



『さて、私もそろそろ鉄板に戻ります。彼らを……焼かなきゃいけないんでね』


紳士の言葉はもう、聞こえていなかった。

頭の中が真っ白になっていく。

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