あしかのらいぶらりぃ
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執筆者: 麻疹騙り/投稿日時: 2015/09/28(月) 17:43:11
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9月中難しいかもしれないですね☆←

一応書き溜めあるので7章は終わりますよ。ええ。
EP.7-1 Farewell 1
辿り着いたのは、ガラス張りのビルに囲まれた狭い路地。

人間としてここにやって来てからは、一度も訪れていなかったけれど、道はハッキリと覚えていた。


「ここは……?」

「ここで僕は、初めて、人間としての姿を見たんです。僕は……」


言葉が上手く出てこない。

“あの日”がまるで昨日のことのように思い出される。


「……そっか」

「あれから、もう1年が経っちゃったんですね」


口に出してみて、改めて感じる。月日が経つのは本当に早い。



「……僕、キャベツに戻らなきゃ」


空を見上げる。悪魔の“お迎え”は、まだだろうか。

青く澄んだ空には、季節外れのモンシロチョウが5匹、飛んでいた。


「あれ?珍しいね、こんな時期にモンシロチョウなんて」


軽々と舞う蝶たちがゆっくりと降りて来て、僕の肩に止まり始める。

あれよあれよという間に全ての蝶が肩に止まってしまった。


「ほら、モンシロチョウが集まって来てるでしょう?もうちょっと戻りかかってるんです」

「ふふ……あっ!肩!」


緑さんの言葉で肩に目をやると、蝶たちが止まっていたところに、黄色い卵が点々とくっついていた。

「ああ……!まだ産んじゃダメだよ!」


慌てる僕。それを見つめる緑さんの姿。

永遠の別れだというのに、涙一つ見せない艶姿。

その目は温かさに満ちていた。




「あの!」


改めて、緑さんと目を合わせる。

頭上の空にも引けを取らない、澄み切った瞳。


「何?」


目線がかち合う。

一瞬だけ“あの日”に戻ったような気がして……胸が苦しくなってくる。


「……まあ、忘れてください。キャベツが人間の女性に、恋をしただなんて」


僕が初めて緑さんと出会った日から、ずっと心の中にあった、もやもやした感情。

今まではどう表していいか分からなかったけれど、この期に及んではハッキリと、胸を張って言える。

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