EP.6-10 Ensemble 10
歌い終わった僕らを、観客の大きな拍手が包む。
「ありがとうございましたー!」
大盛況のうちに、ライブは終了した。
あの時……緑さんと出会ったときの思い出と、交差していく―――――――
「ありがとね、今日」
ライブの後片付けをしながら、緑さんが僕に言ってきた。
「い……いえ。僕の方こそ、ありがとうございます。あんなに綺麗な歌をつけていただいて」
「ううん、縁くんの詞が良かったんだよ、あれは!」
てきぱきと手を動かしながらも、僕と目を合わせて、世界一の笑顔を見せてくれる。
「いやあ……」
「よし、出来た」
片付けを終えた緑さんが、ギターケースを背負って立ち上がる。
「お待たせ。行こっか」
緑さんはそう言うと、僕の目の前に手を差し伸べてきた。
白くてか細い左手。
「はい」
その手を取って、僕らは歩き始める。
いつか街を案内してもらった時も、こうやって手をつなぎながら歩いたっけ。
「どうだった?ライブ」
「すごく、楽しかったです。最後の日に、あんなに楽しい思い出ができるなんて」
元の姿に戻った時に、どうなるのかはまだ分からないけれど……
きっとこの思い出は、一生忘れることはできないだろう。
「……そういえば、縁くん、どこへ向かってるの?」
何となく、ただ何となく歩いていたのだが、体が無意識にある場所へ向かっていた。
「僕が人間として、初めて地上に降り立った場所です」