5.5.蒼太の生前
蒼太の家で、私たちはたくさん話した。蒼太は、自分の生前のことを知りたがった。だから私の持ち得る蒼太に関する情報を全て話した。
「ふーん…、俺には兄と妹がいて、親友が2人いて、犬を飼ってて…そうか、普遍的で幸せな人生だったんだね。」
私が話し終わった後、蒼太はまるで他人事のように言った。
「教えてくれてありがとう。」
そう言って蒼太はどこか寂しそうに笑った。
「…こんなの知っちゃったら、会いたくなったりしない…?教えてよかったのかな…。ごめん、不安になっちゃって…。」
「…うーん…、どんな人たちだったのか、興味はあるけど…、会えないのはわかってるし、特に今すぐ会いたいとも思わない。…それに、今は愛依がいるだろ。」
「…そっか…!」
私がいるから寂しくない、ってことかな。嬉しいな。