テーマ1:騎士と悪魔と菓子と戦艦
「今年も、やってきたか」
メタナイトは、窓の外を見ながら呟いた。
コンコン、とドアを叩く音がした。
メタナイトは不満そうに溜め息を吐いてドアを開けた。
「トリックオアトリート!」
「…カービィか。」
そう、今年もハロウィンがやってきたのだ。子供たちが街を練り歩き、「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ」と言い、お菓子をもらう秋のとてもメジャーなイベントなのだが…
毎年、この戦艦ハルバードにもお菓子をもらいにやってくる者が大勢いる。それも、様々な形で。
「メタナイトーお菓子ちょうだいよー」
「…すまない、今はまだ準備が出来ていなくてだな」
「ウソつくなーっ!いっつもパフェ食べてるくせにー!!」
「それとこれとは別だろう」
当然のごとくカービィは、毎年お菓子をもらいにやってくる。ハルバードには、食糧の貯蔵庫があり、そこにお菓子なども入っているが、メタナイトはあまり渡す気になれないらしい。
「悪いが、別のところへ回ってくれないか」
「えーメタナイトのケチーっ!きょねんはくれたくせに何いってるのーっ!!」
駄々をこねるカービィに、呆れるメタナイト。
すると、平穏な空気をぶち壊しにするような鈍い音がした。
「え!?なになに!?!?」
「…また、刺客か……」
メタナイトは、その音がした方向へ向かった。
そこには、ガラスの破片と…メタナイトによく似た、仮面の騎士だ。
「なぜドアから入ってこない!!」
「ハァ?この方がオレ的にはいいんだよ、とりあえず菓子よこせ」
「…全く」
ダークメタナイト……メタナイトの心の闇が実体化した、鏡の国の騎士。彼は毎年、この時期になると(この時期にならなくてもだが)メタナイトに菓子をねだる。
当然、メタナイトは嫌がっている。毎年のように戦艦のガラスは破壊され、最終的には見るも凄惨なことになるのがオチだ。
「ダークメタナイト!!さてはキミもお菓子を狙ってるなーっ!!」
「あぁ、その通りだ」
「…ちょ、待て」
メタナイトが制止しようとした時には、時すでに遅し。
「どうして、こうなってしまったんだ…」
ダークメタナイトとカービィは、まだお菓子をめぐる戦いを続けている。艦内はめちゃくちゃになり、壁が崩壊寸前だ。
メタナイトは恐るべきピンクの悪魔と影の騎士を早く追い出さねばならぬ、と決意した。
メタナイトが剣を抜いた、その時だった。
「ハッピーハロウィン♪」
「…?」
「そっ、そなたは……っ」
「やっほー、カービィにメタ、それにダークまで!キミ達もお菓子をもらいに来たの?」
「うん、でも、どうしてキミがここに…?」
そこに突然として現れたのは__白い、純白の騎士、ギャラクティックナイト。
銀河最強の戦士、と謳われるほどの実力を持つ彼だが、彼の性格は銀河最強、と言うにはあまりにも軽い。
「何って、メタにお菓子をもらうからに決まってるじゃない」
「……はぁ、まったく…」
メタナイトが懐から出したものを見ると、カービィは目をたちまち輝かせた。
来年のハロウィンも、こんな騒ぎが起きるのだろうか。