お食事会の提案
次の日。
「ウィスピー!きのうはありがとねっ!」
森の中で、カービィは意思をもつ大木と話していた。
『いやぁ、とんでもない。美味しかっただろう?』
「うん!それでね、リンゴを...もう10こくらい、もらえないかな?」
『10個?私のリンゴは、皆に公平に渡しているから...』
「でも、デデデ大王が!ほら、これ!」カービィは大きめの紙切れを、ウィスピーウッズに見せた。
『「ジャパリパークの皆様とのお食事会」とな...?ふうむ...』
「えっ、お食事会?」
時は遡って、2時間前。
「おう。ディメンジョンホールが安定しているなら、お前らの方とも友好を結びたい。だから何人か招いて、歓迎セレモニーを開こうと思う。そこで、山盛りのごちそうを食うんだ!」
デデデ大王が、一大イベントを提案した。
「すごーい!楽しそう!」
「お、しょ、く、じ、か、い〜っ!?」
ピンクの球体が、単語を聞きつけて砲弾のごとく飛んできた。
「ヨダレ、カーペットにかけんなよ...カービィ、お前もプププランドの有名人だから、出席してもいいぞ」
「ほんと!?わーいっ!」
「た、だ、し!お前も料理とか、いろいろ手伝えよ!働かざる者、食うべからず、だ!」
「いいよー!じまんのアップルパイ、フレンズのみんなにふるまおっと!」
それからデデデ大王は、かばんたちの方に向き直る。
「お前たちは、招待する連中を選んで、こっちに連れてくるんだ」
「あれ、でもあの穴は...」
「そうだ!おーい、ワープスターっ!!」
カービィが大声で呼ぶと、黄色い星形の乗り物がふわりと飛来してきた。
「ぼくのワープスターをかしてあげる!そうすれば、ディメンジョンホールまでとんでいけるでしょ!」
「これ、どうやって動かすんですか...?」
「わたし分かるよ!それっ!」
サーバルはワープスターに飛び乗ると、ふわふわ左右に動かしてみせた。やや心許ないが、乗り回すには十分だろう。
「サーバルちゃん、それどこで覚えたの!?」
「あの時の戦いだよ!」『ねー!』カービィとサーバルは、互いに顔を合わせる。
「よっしゃ...じゃあ皆、行ってこーい!!」
『おー!!』
「ウィスピーがわかってくれて、よかった〜っ!」
カービィはかごに山盛りの大きなリンゴを抱え、森を出た。
「あとはいちばで、いろいろ買おっと!おさとうと、はくりきこと、たまごと、バターと、シナモンと、あと、あと...」
「あれーっ、カービィじゃん!久しぶり〜っ!」
懐かしい声が聞こえる。
カービィの仲間、グーイだ。
「やっほー、グーイ!どしたの?」
「なんかさ、今日いやに皆忙しそうだから、なんか面白いことでもあんのかなーって!ほら!」
手も足もないグーイは、自慢の長い舌で広場を指した。
「“歓迎 ようこそプププランドへ!”でいいか?」
「ホレッ、ペンキならここにあるで!」
「ワドルドゥ、君は無理するなよ。あと皆、なるべくゴミ出さないでよ!」
キャピィやブルームハッターたちが、大きな垂れ幕にカラフルな文字を書いていく。
「みんなはりきってるね〜っ!そうだ、ぼくこれからいちばで材料かって、お城でアップルパイやいて、ほかにもいろいろ作るんだ。グーイもくる?」
「いくいく!オイラも手伝うよー!」
カービィとグーイは、市場で山ほどの材料を買い、デデデ城へ向かった。
その頃――かばんとサーバルは、ワープスターでディメンジョンホールを通り、元の世界に一旦戻っていた。
「!かばんたちが戻ってきたのです!」
まず二人は、図書館のもとへ。
「博士!助手さん!」
「かばん、穴の先で何か無かったのですか?われわれはお前のことを心配していたのですよ」
「それより二人とも、これ見て!」
「むむ?」コノハ博士とミミ助手は、サーバルから紙を受け取った。
「読みづらい字なのです...ふむふむ...
『ジャパリパークのフレンズの皆様へ 友好セレモニーの招待状
いかがお過ごしでしょうか。
先日貴女方のうち二人が空間の穴を通り、こちらへいらっしゃりました。
空間の穴は現在、非常に安定しており、直ぐには閉じないと考えられます。
そこで、皆様をこちらプププランドへとご招待し、友好セレモニーと山盛りのごちそうでのお食事会を開こうと思います。
パークの代表の皆様は、ぜひいらして下さい。
偉大なプププランド国王 デデデ大王より』
...成る程、山盛りのごちそうとは聞き捨てならないのです」
「博士、こんなうまい話には裏があるかもしれないのですよ」
「われわれは出席するのです、この島の長なので」
島の長である博士たちの出席が決まり、かばんは安堵のため息をついた。
「他の出席者はもう決まっているのですか」
「それが、まだでして...」
「ならこちらで決めさせてもらうのです。まず...友好セレモニーなら、あの5人は外せないですね、博士」
「かばん、この紙をちょいと借りるのですよ」
博士と助手は、何処かへ飛び去ってしまった。
「...行っちゃったね」
「じゃあ、僕たちはプププランドに戻って、カービィさんのお手伝いでもしようか」
「グーイ!つまみ食いしちゃだめ!」
グーイはぎょっとして、カービィの真剣な顔を見つめた。
「え...カービィ?なんか変なモン、食った?」
カービィとグーイは、しょっちゅうデデデ城の厨房でつまみ食いをする常習犯。そんな二人が城のキッチンにいる際、カービィがこんな事を言ったのだ。
「もしつまみ食いしたら、ぼくたちおしょくじかいに出られないよ!だから、今は...がまん...ぅ...」
大きな厨房では、コックカワサキが巨大なケーキを焼き、デコレーションしているのが見える。
「がまん...ぅぅぅ...」
「んんー!(これでよし!)」
「んーん、んんんんーん...(カービィ、ほんと大袈裟なんだから...)」
「んん、んんんんん〜っ!(じゃあ、ぼくたちもやるよ〜っ!)」
自らの口を、ガムテープで十字に塞いだカービィとグーイ。
セレモニーの準備がトントン拍子で進むなか、この調子で彼等は大丈夫だろうか...?
「んんんんんんんーんーん(そもそもこれだとオイラ舌使えないよ)」
「んっ...(あっ...)」
ヲマケ テーリィ流プププキャラファイル No.04:グーイ
『2』の事件の際、ハイパーゾーンから妹のブロッブ(今のところこの小説には登場しない予定)共々逃げてきた、悪意を持たないダークマター。長い舌が特徴で、カービィ同様コピー能力も使える。
...しかし、イタズラ好きで、ややトラブルメーカー。カービィとの関係は「親友」というか「悪友」に近い。
それでもカービィのよき仲間の一人であり、友達のピンチは見逃さない一面もあるので、それなりに好感はある。ちなみに、現在はアイスバーグの元デデデ城(『3』の)の一室に住んでいる。