第3話:すてぃーるすとりーと(10/9更新)
《BGM:『あつめて』ちかのせかい》
どこまでも続く無機質な道を、三人はとぼとぼと歩いていた。
「木も岩も地面も、みんな機械にされちゃってる...」
「わたし、こんなことする奴ら、許せないよ!」
泣きそうな声でつぶやくかばんと、奮い立つサーバル。カービィには、二人はどこか対照的に見えた。
ふと、彼の目に何かが写った。
「ねぇ、あれ誰だろう?」
人影が一つ、こちらに近づいてくる。
「あれ...カバさんじゃない?」
「おーい!カバ〜!」
サーバルが同じちほーに住むフレンズの名前を呼んでみせると...無感情な声が返ってきた。
「......サーバル」
「え?そうだよ、わたしサーバルだよ?さばんなちほーはどうしちゃったの?何か知ってたら...」
そう言いかけ、サーバルはカバの様子がおかしいことに気付いた。体のあちこちにキカイが取り付けられ、目も虚ろだ。
「サーバル...アナタ、カンパニーニ仕事ハ頂イタノ?」
「え...カンパニー、って何!?それが、パークをこんなひどいことにしたの!?」
「!反逆因子...サーバル、クジョ...」
そうつぶやき、カバはいきなり攻撃を仕掛けてきた。
「わあっ...やめてよ!どうして急に...」
「サーバル...クジョ...!」
そのとき――桃色の影がさっと飛び出してきた。
「カービィさん!?」
カービィはとっさに息を吸い込み、空気のかたまりをカバに向けて勢いよく吐き出した。
カバは大きく吹っ飛ばされ、仰向けに倒れた。
「なにそれ?すっごーい!」
「『空気弾』だよ。ダメージは大きくないから、急ごう!」
見ると、カバは再び立ち上がろうとしているところだった。
三人は急いで、建物のもとへ向かった。
《BGM:『ロボプラ』コンビナート・ラボラトリー》
その建物はカンパニーの研究所であった。
「侵入者発見!排除セヨ!」
カービィたちが入り口を通ると、たちまち警報が甲高く鳴り響いた。セキュリティマシンのレーザー砲が、三人に狙いを定める。カービィたちは慎重に、光線をかわしていった。
「サーバルちゃん、気をつけて。どこから悪いひとが出てくるかわからないよ」
「へーきへーき!」
しかし、敵も黙っているわけがない。
「止まれ」
ちょうど廊下の十字路に差し掛かったとき、前に数人の小さな研究員たちが立ちふさがった。後からも、左右からも寸分違わぬ見た目のいきものが、光線銃を構えて駆けつけてくる。
「研究所内に不法侵入したゲンジュウ民は、即時駆除する命令が出されている」
「どうしよう...囲まれちゃった!」
「そうだ、ぼくに任せて!」カービィが歩みでた。
「すみませーん、ぼく達、だれかこんなひどいことをジャパリパークにしたのか聞こうと思ったんだけど...」
「...カービィさん!」
研究員たちがざわめきだす。
「ひどいこと、だと?」
「あいつら、ハルトマン様のありがたみを理解してないみたいだな...」
「射撃許可まだー?」
「全員静まれ。...命令通り、お前らを全員駆除することとする」
しかし、カービィの表情から余裕の色は消えていない。
「もぉっ、言ってもわからないならこうだよ!」
カービィは口を大きく開け、ものすごい勢いで吸い込みを始めた。
「みゃっ!?」
「うおおっっ!?」「課長ー!?」
リーダー格の研究員が、カービィの口の中に吸い込まれた。
「んーっ!」
ゴクン。とたんにカービィの頭に、華々しい火花を纏った青緑色の冠が現れた。
「コピー能力、スパーク!」
「な、何だあのゲンジュウ民は...」
「いや、ゲンジュウ民じゃない!DNAが明らかに違う星のものだ!」
「ストレンジャー(よそ者)か!?」
「ひるむな!撃てーっ!」
《BGM:『エアライド』スタジアム:ゼロヨンアタック》
カービィは素早く、敵の集団の懐に潜りこむ。
「“スパークアタック”!」
彼の体から、青白い電撃がほとばしる。近くにいた研究員は、みな感電して倒れた。
「!何っ...」
後からの光線を造作もなくかわし、振り向いて次の技を放った。
「“サンダーボルト”!」
稲妻に似た光の矢が敵を追いかけ、直撃。
「くっ...ならば!」
銃口がサーバルとかばんに向けられる。カービィはそれに誰よりも早く気付き、両手をぶんぶんと回し始めた。
「だめ〜っ!“ダブルスパーク”!」
ほどよくパワーをためて放つ、2つの光球。その内の一つは光線をかき消し、もう一つは残りの研究員に命中した。
「すごいすごーい!カービィ、なにそれ!」
「コピー能力、っていうんだ。ぼく、吸い込んだものの特徴を、自分のちからにできるんだよ!すごいでしょ!」
「すごいよカービィ!じゃあかばんちゃんを吸い込んだら頭がよくなって、わたしを吸い込んだら爪で攻撃できるようになるのかなー?」
「あはは...でも僕は吸い込まれたくないかな...」
「さて...どの方向に進めばいいんだろう?」
「多分、こっちだと思います」かばんが壁の模様を見て言った。
「よーし!悪いやつらをやっつけよう!」
その様子を、研究所長は監視カメラ越しに見ていた。
「おおォォ...何者だァ、あのゲンジュウ民とストレンジャーはァァ...ぜひとも研究したいがァ...仕方ないィ、例のマシンの実験台とさせてもらうぞォォ!」