フライ・ザ・ワールド
思えば、酷く長い旅をしてきた。
閉じ込められた、叩かれた、励ましてくれた、褒めてくれた。
私の歩むべき道はここではない。そう繰り返して、同じことが起きていた。…「永遠」という言葉を私はまだ知らない。 運命の歯車の凶悪はいったいだれなのか?歯車と歯車の間に傷をいれたのは誰なのか?
答えは一つ…しかいない。
この運命の凶悪は「私」なのだ。私が禁じられたワールドに足を踏み入れなかったかぎり、歯車は正常に回り続けたのだろう。
「…なんで、違うの…。」
思わずでてしまった言葉だ。なぜこんな言葉を声に出して言ってしまったのか。それは変わったからだ。歯車を傷つけたからだ。運命を変えてしまったからだ。目の外に見える世界は、残酷だった。何もかもが、消えていた。親友も、嫌な人も、家族も…。
ここは絶望の世界だった。
私は酷く長い旅をしていた。ずっとこのままがよかったから。ありとあらゆるものがあるこの世界を守りたかったから。
たった1つの小さいことで、歯車同士が回らなくなってしまった。途絶えてしまった。
私は絶望の狭間にいた。光が一筋も通らないこの絶望の狭間にいた。気がつくと目の前に鏡があった。よくわからなかったが呼ばれているような気がした。私は抵抗をしないでそのまま鏡、という世界に入った。
入る直前に聞き覚えのある声がした。あの元気で明るくて、何もかもが素敵だった人の声がした。
縛られていた。私は今縛られている。体の丸ごと。鎖を巻かれていた。ちょっと本気をだせば、外せそうな弱くて新しい鎖があった。でも、その鎖から逃げ出せれない。
わかっているんだ。
自分が何をしたのかを。
今思えば酷く長い旅をしていた。
その旅の終わりがここ。
絶望の鏡