EP.6-8 Ensemble 8
最初はぎこちなかったタンバリンの扱いも、段々分かって来た
ような気がする。
緑さんと一緒に音楽を作っているという、至福の時。
ずっとこの時が続けばいいのに。
「時間が経つのは早いもので……次が、最後の曲になります」
気づかないうちに、もう1時間も経っていた。
遠くの空が淡い赤に染まって、何とも言えない幻想的な景色になっている。
「最後の曲は、ここにいる、兄が作詞してくれたんです」
湧き上がる拍手。
……しかし、僕が送ったのは詞だけだ。
緑さんの前で歌ったりはしていないから、メロディーはまだ
ついていないはずなのだが……。
まさか、駅からここまで歩く間に音を付けてしまったのか?
……やっぱり緑さんは、凄い人だ。
「実はまだ未完成なので、短いんですけど……折角だから、
皆さんに聞いてもらおうと思います」
あまりの驚きで身動き一つ出来ない僕に、緑さんが語り掛けてきた。
(今まで通り、曲に合わせて叩いてて)
(わ……分かりました)
僕にそう言った緑さんは、またマイクとギターを構える。
僕の詞と緑さんの歌声が、混ざり合う瞬間。
一体どうなるのか……胸の中がドキドキでいっぱいになった。