EP.6-7 Ensemble 7
「今日はこの辺かな〜」
緑さんに連れられてやって来たのは、駅前の噴水広場。
1年前に、僕らが出会った場所だった。
「よし!」
緑さんが肩に背負ったギターを降ろし、準備を始める。
どうしていいか分からない僕は、ただ立ち尽くすことしかできない。
「あの、何かお手伝いしましょうか?」
「大丈夫だよ、いつものことだから。そこにいて」
楽器を準備する緑さんの姿は、普段とはまた違う凛々しいものだった。
「出来た。じゃあ縁くんは、そこに立って」
言われた通り、ギターを持ち座る緑さんの横に立つ。気づくと、
僕らの周りには沢山の人だかりが出来ていた。
この辺りでは有名なのだろう。
「みなさんこんにちはー!」
緑さんが観客に挨拶をすると、観客が一斉に拍手をした。
中には、緑さんに向かって手を振る人もいる。
「今日は特別ゲストが来ています。私の兄です!」
緑さんが僕を紹介すると、どよめきと共に拍手が起こる。
僕に向けられたものだと理解するのに、少し時間がかかった。
「ど……どうも」
「それじゃあ、早速1曲目に行きます。聞いてください」
緑さんが、歌い始める。
その歌に合わせて僕は、ひたすらタンバリンを叩いていた。