EP.6-6 Ensemble 6
しばらく黙って読んでいた緑さんが、顔を上げた。
「こ、これ……」
「どうでしょうか……」
自分でも詞を書く緑さんが、どんな感想を発するのか、怖かった。
「…………すごいよ、これ!とっても良い歌詞!」
紙を手にした緑さんの表情は、今までのどんな時よりも、
嬉々としていた。
まるで目から光が零れているように、キラキラと輝いて見えた。
「ありがとう!すごく、嬉しい」
そして、世界中のどんな人より美しい、笑顔。僕は安堵した。
良かった……こんなにも可愛らしい姿が見られるのなら、
夜を明かした甲斐があったというものだ。
「……あ、そうだ」
緑さんが何か思い出したように、部屋に引き返す。
しばらくして、緑さんは、手に何か持って帰って来た。
「これは……?」
「タンバリンっていう楽器。叩くと音が出るの。こんな風に」
緑さんが手に持ったそれを叩くと、シャラシャラと愉快な音が響く。
「これ、縁くんにあげる」
「いいんですか?」
「それ持って、すぐ外に出る準備をして。今から、一緒にライブ行こう!」
「え……!?」
驚く僕を後目に、緑さんはタンバリンを僕に持たせた。
「実は、私もね……お別れの思い出に、歌を一緒に歌えたらいいなって
思ってたの」
何てことだ。緑さんも僕と同じことを思っていてくれたなんて。
「でも僕、歌なんか歌えませんよ」
「うん、いきなり歌だと難しいかなと思って……だから、これ」
緑さんが、僕の右手に握られたタンバリンを指さす。
「これだったら、私の歌に合わせて叩くだけでいいし、簡単だから」
そう言い残して、緑さんは再び身支度を始める。
僕も急いで部屋に戻った。