EP.6-5 Ensemble 5
「あの……今日は、お別れの日、ですよね」
唇が震える。上手く喋れている気がしない。
「そうだね……」
緑さんは身支度を中断して、僕の話を聞いている。
はにかみ笑顔。
少し引きつっているようにも見えたが、改めて、
そんな表情も愛らしい。
「それで、僕、お別れの印にと思って……詞を書いたんです。
緑さんに歌ってもらう、詞を」
「え!?」
それまでの面持ちとは一変した、驚きの表情。
「僕はあの日、あなたの美しい歌声によって、あなたと出会いました。
僕とあなたの関係の始まり――――僕らの『縁』は、
歌にあると思うんです」
それは、緑さんがくれた僕の人間名。
名前の通り、不思議な『縁』で結ばれた僕らに、
相応しい終わり方だと思っていた。
「歌で始まった僕らの関係は、歌で終わらせるのが、適当かなと……」
「縁くん……」
緑さんは、僕を見つめたまま、呆気に取られたような……それでいて、
気持ち、嬉しそうな顔をしている。
「これ……お気に召すかどうか、分かりませんが」
そう言って、手に忍ばせた紙を渡した。
夜を徹して、緑さんのために考えた、プレゼント。