EP.6-4 Ensemble 4
しばらくして、料理が完成した。
寒い冬の日によく似合う、温かいロールキャベツ。
思えば僕らが出会ったあの日も、こんな寒い日だった。
「出来ましたよー、どうぞ」
「わあ、美味しそう!いただきまーす!」
普通なら、何気ない日常の光景。
しかし、僕にとっては、緑さんと僕との「最後の日」。
つい、ロールキャベツを食べる彼女の姿を、まじまじと見つめていた。
「……どうしたの?早く食べないと、ロールキャベツ冷めちゃうよ」
もし、僕がキャベツの姿に戻ったら、あのロールキャベツのように、
「食材」として緑さんの前に現れることになるのだろうか。
彼女の口に入るのなら、それはそれで本望だが……
「いいえ。何でもないんです」
僕自身にとっても、人間として初めて見つけた楽しみだったのに。
「美味しかった!ごちそうさま」
気づけば、緑さんはロールキャベツをすっかり食べ終え、
身支度を始めていた。
きっとライブへ行くのだろう。プレゼントを渡すなら、今だ。
「あ、あの……緑さん!」
「ん?何?」
手にはこっそりと、あの紙を忍ばせていた。