EP.6-1 Ensemble
人間として過ごす、最後の夜。
窓の外には、美しい月が白く輝いている。
あの日以来、月を見る度に思い出してしまう。
月明かりに照らされた、緑さんの姿。
目から零れる、大粒の涙。
左肩のあの湿った感触――――――――――――――――
最後に、緑さんの心をほぐしてあげられるような、
何か良い方法はないだろうか。
「どうしようかな……」
テレビでも見れば、何か参考になりそうなことがあるだろう。
そう思ったが、緑さんはもうぐっすりと眠っている。
起こしてしまうわけにはいかない。
「うーん……」
何の気なしに机の引き出しを開けると、4・5枚の紙が入っていた。
見覚えのある模様。
僕は見たことがあった。
緑さんが、この紙にオリジナル曲の歌詞を書いているのを。
「……そうか、歌か」
思えば、僕らの出会うきっかけ……「縁」になったのは、
歌だった。
歌で始まった僕らの関係が、歌で終わっていく―――――――
――――不思議と、悪い気はしなかった。
僕の事なんて、別に忘れてくれても良かったけれど、
せめて、せめて……僕がこの世界に生きていた証を、
形にしたかったから。
「緑さん、喜んでくれるかな」