号笑 第五章「猫井順の蜿キ隨」
白っぽい青空に、大きな入道雲。蝉の声がうるさく響く中、こめかみから汗を流しながら歩く。
…ユキは、この暑さの中で無事だろうか?
そんなことを考えていると、橋の下に到着した。橋の下は、大きな影ができていて、とても涼しかったので、安心した。
今日もユキのために猫用ミルクを持ってきた。今朝は弟に発見されてしまい、口封じに手間がかかった。弟は、お菓子を買ってくることを条件に、親には言わないことを約束した。
橋の下には、いつものように段ボールが置いてあった。いつものように開けた。するといつものようにユキが…
いつものように
俺は笑ってしまった。
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笑ってしまったのが悪かったんだろう。
やはり俺は、もう今後一歳感情を露わにしてはいけない。
この先も、ずっと無表情の仮面を被り続けなければならない。
こんなの当たり前のことだったのに。
どうして今更苦しいんだろう。
誰か…。夏野。助けて。