あしかのらいぶらりぃ
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執筆者: 麻疹騙り/投稿日時: 2015/08/07(金) 19:25:39
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旅行に出かけてしまう前に5章を終わらせたいとか考えている
EP.5-7 Sorrowful 7
「あ、縁くん……」


緑さんは、僕が声をかけるまで僕に気づいていない様子だった。

「何か、あったんですか?」

「ううん、何でもないの」


何でもない、と言う彼女の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。

何もない訳がない。


「何でもないって……」


僕の前ではいつも笑顔で、優しい緑さんが、泣いている。


…………いてもたってもいられなかった。


「緑さん!」

思わず、彼女の両肩を掴んでいた。


「え!?」

「……緑さんが泣いているところなんか、見たくないです」


嗚呼、こういう時に限って、上手く彼女を励ます言葉が出てこない。



「…………いつも明るくて、笑顔で、僕を照らす……太陽のような
あなたが、泣いているなんて……何もない訳ないでしょう」


もう、僕自身でも、何が言いたいのかよく分からなくなっていた。


「だから……何か、あったんでしょう?話してください。
僕でよければ、力になりますから」


推定距離、30cm。丸くて綺麗な目のふちで留まっていた涙が、
ゆっくりと流れていくのが見えた。



「……………………ありがとう」


静かにそう言うと、緑さんは大きくひとつ、深呼吸をした。




「……実はね、今日は、私のお兄ちゃんの1周忌なんだ」

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