EP.5-6 Sorrowful 6
「いらっしゃいませー」
一度、彼女に連れられて来たスーパー。
1人で買い物に来るのは初めてだった。
「鶏肉……どこだっけ」
今日は鶏肉を使った料理にしようと、何となく決めていた。
しかし、場所が分からない。
店員さんに聞くこともできなくて、しばらくさまよっていた。
出てきた時よりも更に外が暗くなった頃、ようやく家にたどり着いた。
ドアに手をかけると、鍵が開いている。
緑さんが帰って来たのだろうか?
「ただいまー……緑さん、いますか?」
部屋の中は電気がついておらず、真っ暗だった。
真っ暗の部屋の中に、月明かりに照らされた緑さんが、
1人で座っていた。
「み、緑さん……?」
普段なら明るく出迎えてくれる緑さんが、僕に見向きもしない。
「す……すみません。食材を買いに行ってたので。
すぐにご飯作りますね」
そう言ってキッチンへ向かう。それでも緑さんは何も答えない。
「……何か、あったんですか?」
まさか、写真立てを見たことを怒っているのだろうか?