EP.4-10 Unrequited 10
しばらくして、緑さんが口を開いた。
「なんで、謝るの?」
「え?」
想像していない答えが返って来た。
怒ってないのだろうか?
「別に設定じゃなくてもいいのに!確かに2人にはそう伝えたけど、
私たちもう出会って結構経つし、もう他人じゃなくて友達だよ?」
「友達……」
聞き覚えの無い言葉だった。僕なんかが緑さんの友達で
いいのだろうか?
「だから、敬語じゃなくていいよ」
またいつもの、優しい笑顔に戻った。
「ありがとうございます。でも、やっぱり僕はこっちの方が……」
さっき喋り方を変えたら、全く言葉が出なくなってしまったのだ。
毎日緑さんに迷惑をかけることになってしまう。
「そっか、縁くんがいいなら、それでいいよ」
「すみません」
「ほらまた!謝らないでよ」
また、笑う。この笑顔に僕は惹かれたのだろう。
「じゃあ私、ライブ行ってくるから」
部屋の隅に置いてあったギターを持って、緑さんは部屋を出て行った。
また歌を唄いに行くのだろう。
僕が緑さんと出会うきっかけになった、美しい歌を。