ワドルディ戦記4
「…はぐれた…」
あちらこちらがぼろぼろの戦艦の中でただ一人、ワドルディは呟いた。
メタ・ナイツを追いかけたはいいが普段から戦闘訓練を行っている彼らの体力にかなうはずもなく、息を切らして少し立ち止まっている間に見失ってしまったのだ。
「どうしよう…」
メタ・ナイツとカービィを探すべきか。
(こんなことならカービィがどこにいるのか聞いておくんだった…)
もしカービィを探し当てたとしても武器がない事にはどうしようもない。自分は素手では戦えないのだから。
ここからしばらくしたところに武器貯蔵庫があったはずだ。カービィが入ったのでいくつかの武器は奪われている可能性もあるが、いくらカービィでもすべてを持っていくことはできなかっただろう。
(よし!とにかく武器を探そう)
ワドルディは武器貯蔵庫の方向へと足を踏み出した。
「うわぁ…すごいことになってるなぁ…」
何とか武器貯蔵庫にたどり着いたものの、おそらくあちこちで起きた爆発の影響で扉はゆがんでしまっていた。
ロックを操作しようとしたが、案の定ピクリとも動かない。
少しだけ開いた状態のまま扉は停止しており、そこから転がり出たのか、辺りには貯蔵庫の中にしまってあったはずの武器が散乱している。
その隙間から中には入れないかと試みたのだが、どうにも狭すぎて入れないようだった。
「うーん…じゃあこの散らばってる物の中から選ぶしかないよなぁ」
得意の槍は落ちていないようだったので、他に扱えそうなものがないか探してみる。
「カッターは使ったことないし、ハンマーは…うーん、ちょっと重いかな」
早く選ばないと戦艦もろとも海に沈んでしまう。そう思った時、隅に落ちていたあるものが目に入った。
「パラソル…?」
自分と同じ仲間が使っていたのを見たことがある。彼らはふわふわと空から落下するのに使っていたが、カービィのように振り回せばそれなりに戦えるかもしれない。
ためしに振ったり突いたりしてみたが、なかなか使い心地がよい。
「よし!これにしよう!」
メタ・ナイツはどうなったのだろうか。とにかく急がなければとワドルディは慌てながら貯蔵庫を後にした。
「…とは言ったものの」
メタ・ナイツとカービィがどこにいるのかなど全く見当がつかない。とりあえずまだ被害の少ない部屋を渡り歩いているのだが。
「それにしてもみんな逃げちゃったんだなぁ…」
艦内には機械音と時々聞こえる轟音のみが響いている。
メタ・ナイツとはぐれてから出会ったクルーといえば、眠りこけていてこの事態に気付いていなかったノディくらいだった。(彼らには状況を説明して使えそうな脱出経路を教えておいた)
あの騒ぎの中眠っていられるなんて、ノディってある意味すごい奴らなのかもしれない。そんなことを考えながら走っていると
「あっ!」
視界の隅に映ったのは青いマントだった。
「メタナイトさまだ!」
カービィを見つけたのだろうか?慌てて後を追う。
「は…速…」
メタ・ナイツ以上に速かったメタナイトに何とか追いつきワドルディははあはあと息を切らしていた。
「ここは…」
ひときわ広く何もない部屋。見る限り被害も少ないようだ。
たしかここからは甲板に通じている。
(もしかしてカービィはここに…?)
甲板に通じているということは脱出できるということだ。
ここまでの経路も被害が少なく比較的安全なように思えたので、カービィがここを通って外に出ようとする可能性は高い。
少し高い足場に佇んでいるメタナイトになんとなく声をかけづらく、物陰に隠れて様子をうかがっていたのだが…。
しばらくすると、自分たちが入ってきた戸が開いた。
(!!)
「ふぅ疲れた〜…ん?」
広い空間にたどり着いた安堵感からか入ってきて早々に伸びをしたまんまるピンクはメタナイトの存在に気が付き足を止めた。
「ありゃ、せっかく外へ出られると思ったのに。簡単には通してくれなさそうだなぁ…」
残念そうな表情でメタナイトの方を見上げる。
そんなカービィの前にメタナイトが剣を投げ渡す。
「…剣を取れ」
「諦めようよー。このまま戦って共倒れしても君には何の得もないと思うよ?」
カービィは駄々をこねる子供のように渋っていたがメタナイトは無言でただカービィが剣を取るのを待っている。
やがてカービィも諦めたように
「損得の問題じゃなくてプライドの問題なのかな?だったら説得しても無駄かなぁ」
目の前に刺さった剣を抜いて真剣な表情になる。
一瞬の間の後
「これが最後だ!カービィ!いざ勝負!!」
お互い剣を構えると相手の懐へと跳び込んだ。
(どきどきどきどき・・・)
キィンッ!
剣と剣とがぶつかり紅い火花を散らした。