ロウの旅立ち。
これは今からほんの少しさかのぼった話。
8月19日の午後7時。
「エンドレスター?」
「そう、エンドレスター。」
僕たち5人が夜ご飯を食べ終わった時、その話が始まった。
発生原因はこの僕、ロウである。
「『エンドレスター。自然豊かで綺麗な四季がある星。幸せが永遠に終わらないという意味がある。』と書いてあります。」
「ティレさん検索ありがとうございます。ロウさん、そのエンドレスターがどうかしたんですか?」
僕は待っていたとばかりに昨日貰った紙を机に置く。
「ん?なになに?家の間取り図?」
「同棲する家が決まったんだ。だから明後日から住むことになった。」
4人は驚いている。
「よかったね!!住む家が決まって!!!じゃあ明日はパーティしなきゃね!」
ライナさんはいつものように楽しそうだが3人は驚きと焦りが混ざった顔だった。
「急だが…まぁそれがお前の彼女と話し合って決めたことならしかたねぇ。すぐにでも引越しの準備したらいいんじゃねぇか?」
「うん。分かった!!」
僕は引越しの準備をするために部屋へ戻った。
「えっと、これとこれと…。これは…いるかな…。」
こうして一人で色々準備をしているとドアの向こうから聞こえてきた。
水の流れる音、皿を置く音、そして仲間達の声が。
「いつかはこんな時が来ると思っていたが、ついこう急に来るとなんて言うか…なんも言えねぇな…。」
「うん、私もビックリした…。ロウさんが明後日で別の星で住むなんて。」
ここで水の止まる音が聞こえる。皿洗いが終わったのだろうか?
「…でしょうか…。」
かすかにティレの声が聞こえる。
そのあと少し間が開いた後に再びティレが話す。
「もう…ロウさんに会うことは…出来ないんでしょうか…。」
ティレの声は涙声だった。胸が痛む。
「いつもの…ように、喋ったり…一緒にミッションしたり…出来ないん…でしょうか…。」
僕はドアノブに手をかけた。
「そんなこと無いですよ。」
さっきから黙っていたレイの声が聞こえる。
「えっ…。」
「ロウさんに限ってそれは無いですよ。
たしかにいつもみたいにバカ騒ぎしたりは出来ないかもしれませんが、でもロウさんはそう簡単に私たちのことを忘れたりはしません。」
若干レイの声もいつもより少し苦しいのが聞いていて分かった。
「ロウは取り返しのつかねぇ馬鹿だが、あいつは俺らを見捨てたりするほどの馬鹿ではねぇ。それは今まででわかるだろ?」
「…えぇ…。」
「…だから、泣くなよ。あいつが…。ロウが安心できねぇだろ?」
さすがに泣きはしなかったが、ゼイドの声にはいつものような棘は無かった。
僕はただ、涙を流すことしか出来なかった。
8月20日。
パーティはCalm-cafeで行われた。
「ロウさん夫婦で暮らすんだぁ〜。いいなぁ〜。じゃあロウさんが抜けた代わりに私住もうかなぁ〜。」
コロアさんはゼイドの腕を掴みながら僕に話しかけた。
「やめろよ!!レイ達に悪いだろ!!!」
「何?私と一緒は嫌ってわけ?」
「いや、そうは言ってねぇだろ!!」
「まぁゼイドと一緒に住みたいとは思ってないからいいけどねぇ〜。」
「ロウ君、見たこと無い魔獣が出たら俺に言ってくれ。」
「はい、分かりました。」
「お兄ちゃんはいつも魔獣のことばっかりだね…。好きな人とかいないの?」
「恋かぁ…。考えたことも無かったなぁ…。」
「まったく、お兄ちゃんったら…。」
レイはソナさんのことに頭を悩ませている。
「ロウさん、これ上げるね!!」
「メイセちゃん、なにこれ?」
「それは使ってからのお楽しみ〜。」
「?」
メイセちゃんから貰ったものは後であけることにしよう。
そうこうしているとステージにライトがついた。
「この村を出て行くロウさんに、今日はこの歌を届けるよ!!!」
ライナさんのライブが始まった。
歌はあっという間に終わり、今日という日は終わった。
8月21日。ついに僕がこの村から出て行く日。
駅にはいつもの4人が来てくれた。
「じゃあみんな、元気でね!」
「おう!お前もな。」
「ミッションの事などは連絡で伝えますね。」
「あぁ。おっと、そろそろ電車が来たみたいだ。」
電車でクーリュまで行き、クーリュにある装置を使いエンドレスターへ向かうのだ。
「じゃあな。みんな元気で!!!」
4人は駅で電車を見送った。
「行っちまったな…。」
「ほんと、あっという間でしたね。」
「また、会えますよね?」
「大丈夫だよ!だって私たち、仲間でしょ?遠くにいても繋がってるよ。きっと。」
電車は時間的な問題だったのか人が少なかった。
「あっ、そういえばメイセちゃんからもらったものなんだったんだろう…。」
箱を開けてみると比較的小型のフォトフレームのようなものだった。
しかし画面の横にはイヤホンのようなものが付いていた。
「電源は…これか?」
電源ボタンを押してみると画面が映し出された。
画面には5人が揃った集合写真が写った。
『イヤホンを耳に入れて再生して!』とメイセちゃんのメモに書いてあったので耳に入れ、再生ボタンを押してみた。
『やっほ〜。聞こえる?
ロウさんには色々と悩み相談したね。恋の悩みとか友達の事とか。結構楽しかったなぁ〜。
これからは私なんかいなくても頑張って2人、4人で頑張って乗り切るんだよ?
たまにはカフェにも遊びにきてね。じゃあこれからも元気なロウさんでいてね!!以上、ライナでした!!』
『ロウさん、聞こえます?
私、ロウさんに今まで色々と迷惑かけちゃいましたね…。最後まで役に立てなかった…。
ロウさんは恥ずかしがり屋な私を少し変えてくれました。外に出ない私をよく外に出してくれましたね。
たまには帰ってきてくださいね。ご馳走しますから。あっ、でも奥さんのほうが料理上手でしたよね…。
では、ティレでした。』
『こうやって話すのってなんか変だよな…。
気がつくといつもそばにお前がいて、邪魔だと思ったときは多かったがいざいなくなるとなんか、おかしなもんだぜ…。
馬鹿で無駄にテンション高くて、ホントお前うっせぇやつだけど…、ここまで馬鹿なやつは今まで会ったことなかったぜ。
またいつでも帰って来いよ、相棒!!』
『ロウさん、レイです。
行方不明のお兄ちゃんを探して欲しいって言う理由でそれから一緒に色々ミッションしましたよね。
もうあれから2年ですよ。お兄ちゃんも見つかったにも関らずまだ私を仲間でいさせてくれて。
ロウさんはやはり凄い人ですよ。ちょっと馬鹿ですけど…。
奥さんと子供さんと、いつまでも仲良くいてくださいね。ひそかに応援してたんですから。
ロウさん、今までありがとうございました。また会いましょう。』
4人のメッセージが終わってもまだ止まらなかった。
頬を伝って流れていくそれはまだ、止まらなかった。
「ありがとう…。ありがとう…みんな…。」
8月22日、昼。
「で…なんでお前がいるんだよ!!!!」
ここはquartet♪基地。
「ん?いたら悪い?」
「ロウさん、家はどうしたんですか?」
「大丈夫大丈夫。ちゃんとシロカさんにはメールしたから。」
僕はスマホのメールアプリを起動し、突きつけた。
「えっと…6時に戻ります。あと…大好きだよ…。ハートマーク…。」
「んでそれに対する返信がね、了解です。だったんだよ。」
「完全に引かれてるじゃねぇかww」
quartet♪基地に笑い声が響いた。
END!