決して逃れられない。永遠ということから。
あれからどのくらいの時間がたったのだろう。あの日、あの場所で自ら死の選択を選ぶなんて私は馬鹿だ。死んだんじゃせっかくの願いが叶っても自分には何も得ない。願い…私は生き返って欲しかったのだ。あの人に。生き返って欲しかった。…本来ならばあそこで消えるはずの私がなぜか生き残ってた。生き残ってた?なぜなんだ?
…あの時だ。あの時私をかばったからだ。かばってくれたんだ。だから私は生き残ってた。
考え事をしてたら急に目が覚めた。そして目の前にある光景でドッと冷たい何かが背中をよぎる。
目の前にある光景は人の死体だ。
「…またやっちゃったのね。」
そう呟きながら自分の手を見つめる。手には赤い水がたっぷりと付いている。普通の人ならこのことに驚いて精神がおかしくなってるのかもしれない。最悪の場合は狂人になってしまうぐらい自分のやったことはいけないのだ。
「ごめんなさいね。私が生き残るためにはこうするしかなかったのよ。」
そう言いながらふところに入っている小さい小瓶を取り出した。そしてその小瓶を地面におきぶつぶつと呪文を唱える。すると死体から魂がでてきて小瓶に吸い込まれていく。
「これで478匹目。まだこんだけしかいないのね…。」
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彼女がぼそりと呟く。
今ならチャンスだ。そう思って僕は腕に力を籠め、思いっきり腕を振り下ろした。
「いっけぇぇぇ!!」
力任せに振り下ろした腕が急に痛み始める。そしてお腹の辺りからとても熱いものが感じてくる。
「ッハ…ケハッ…クッ…ハッ…グ…ハッ…」
目の前がグニャっとねじれてくる。世界が横になってお腹のあたりから毒々しい匂いが漂ってきた。
?「…私を倒そうなんてね…。舐められたもんだわ。…貴方も魂となりなさい。」
彼女がそういうと急に体が楽になってきて、瞼がおもくなる。重さに耐えられず目を閉じてしまった。
?「哀れな奴ね。私を倒そうなんて…馬鹿が考えることじゃない。…それじゃ、おやすみなさ…」
最後に聞こえた声は全部言い切れずに途中で途切れてしまった。
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また一人、魂となって小瓶に吸い込まれていく。
「…今日はここまでにしようかしら。」
そう言って背中についている大きな羽を広げて闇が続く空えと飛び去った。
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私は普通の人と違う。見た目は似てても中身が違う。だからみんなは私を恐れ、逃げていく。逃げ場もないのに逃げ続けている。私はそれを追い詰めて殺す。
私がやってることはとても酷いとわかっている。でもこうでもしなきゃ私が生きていけない。生きていけないといっても死ぬわけでもない。心が生きていけないのだ。
本当はこんなことやりたくはないのだ。
「…あともう少しで開放されるのかしら。」
彼女は解放されると思っているのだが、現実はそう甘くない。なんせ彼女は願いを叶えているのだ。自分の手ではなく、偉大な人に叶えてもらったのだ。その代償は重い。
彼女は人ではなくなったのだ。
誰もが恐れる「禍神」になってしまったのだ。
もう禍神から逃げることはできない。逃げることも許されない。永遠に禍神に取り付かれたままなのだ。彼女は禍神の操り人形になってしまったのだ。
永遠に…ずっと離れない。
「さて、明日は誰なのかしら?」
哀れな人形は神からもう逃れられない。
逃げることも許されない。