鬼ごっこ
「わーい!今度は__ちゃんが鬼だよ!」
__ちゃんが言っている。
あぁ、またなのか。
その日はいつも通りの1日だった
ただ1つ違うと言えば、場所。
その日は__ちゃんのお気に入りの場所で鬼ごっこをしていたの。
そこは___の森って言って__ちゃんの秘密の場所なんだって。
そしてそんな場所で遊べるぐらいのものは、やっぱり鬼ごっこしかなくて。
私はいつも捕まって。
私はいつも鬼になって
みんなを追いかけて
でもやっぱり
捕まえることなんて出来なくて。
悔しかった
いつもいつも私は鬼にされる。
別に彼らに悪気なんてない。
ただ私は、そんな彼等を羨ましさと妬ましさを込めた眼差しでみていたの。
そして、3回目の鬼。
私は崖のところまで__ちゃんを追い詰めることができた。
もう、逃げ場はない、大人しく鬼に喰われれば、全てすむ話。
そんなとき、彼女は、急に笑い出した。
ひたすら、笑う。
壊れた蓄音機のように、その音を発し続ける。
あはは、あはは、あはは
おにさんこちらてのなるほうへ
あはは、あははははは
恐くて、辛くて、苦しくて。
ガンガンと頭になり響くその笑い。
それは、まるで、__ちゃんが__ちゃん自身を嘲笑っているかのように見えてしまって。
「なんで、笑うの。」
そう、ポツリと呟いてた。
笑い声は止んだ。
波の音も、風も、なにもない、その時間の中で。
そして__ちゃんは悲しそうな顔をして
さよなら。
__ちゃんの口がそう動いたのを見た途端、私の意識は薄れていった。
みんなみんな、夢だったの?
私は、鬼になる夢を見ていたの?
それとも私が、鬼の子だったの?
目を醒ますと、そこは牢屋の中で
悟った、ここは。
ここは、私の家の座敷牢だ。
予想はついていた。
そんなことをされる前に、抜け出した方が絶対良くて
不思議なことに扉に鍵がかかっていなかった。
抜け出すのはとても容易で___
残酷な真実を見るのも、容易だった。
倒れていた、私を産んでくれた、人達が
撃たれていた、とある人物に。
こっちを見ないで、私にはあなたたちをたすける術なんて無いんだ
バン、と銃声が1つ響く。
煙をふく人影の拳銃の弾は、私の眉間を___
さよなら。
あの日見た光景が、帰ってきた
私はいつも鬼だった
今度は、彼女が 鬼なんだ
けど私は、笑い返すこともなく
ただ、ありがとうとだけ言って
魂は肉体を離れて___嗚呼、さよなら。
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「逝った…ようね。」
まさか友達を含め友達の家族を仕留めることになるなんて。
運命を呪って、私は生きていく。
鬼さんこちら、手のなる方へ
彼女はそれだけ言うと
その家を去っていく。
残された彼等には、もうなにかをする力なんて無くて
ただその背中を開かない目で見つめ続ける
そのぐらいのことしか、鬼はできなかった
もう鬼ごっこはおわったのだ。